■「SSD 320」シリーズ/エントリークラスの定番となるか
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Intelの第三世代の「SSD」(Solid State Drive)
「320」シリーズは、MLC NANDフラッシュメモリに25nmプロセスを採用した第3世代の「SSD」になります。
プロセスを微細化することにより、従来品と比べて最大30%の低価格化を実現した製品となるそうです。
インターフェースには「SATA 3Gb/s」が採用されており、容量の異なる6モデルが用意されています。
容量ごとに性能が変わり、今回レビューする「120GB」のモデルでは「シーケンシャルリード」が「130MB/s」、「シーケンシャルライト」が「270MB/s」の能力があります。
また、ランダムアクセスについては、「4Kランダムリード」が「38,000 IOPS」、「4Kランダムライト」が「14,000 IOPS」となります。
※IOPS(Input Output Per Second):1秒間におこなうことができるI/Oの回数。数値が高いほど能力が高い。
パッケージに梱包された「SSDSA2CW120G3 2.5"」
「Installation Guide and Warranty」などとともにおなじみの「SPEED DEMON」ステッカーが同梱されている
そのほかにも「2.5"HDD変換マウンタ」のほか「電源ケーブル」や「SATAケーブル」などが同梱されている
「SSD 320」本体は2.5インチサイズで厚みを調整するフレームが標準で取り付けられている
インターフェースには「SATAⅡ」(3Gbps)が採用されている
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「SSD 320」120GBタイプの内部
内部の基盤を確認してみるとチップが片面に実装されています。
コントローラには「PC29AS21BA0」が搭載されており、キャッシュメモリーには「hynix」の「Mobile SDR」(512Mbit)シリーズの「55S5162EFR-60M」(64MB)が搭載されています。
四隅のねじを取り外すとあらわれる基盤
コントローラの「PC29AS21BA0」と「hynix」の「Mobile SDR」「H55S5162EFR-60M」(32M×2,166MHz)が確認することができる
「120GB」タイプの基盤は片面実装で、製造プロセス25nmのIntel製のMLC NANDフラッシュメモリの「29F16B08CCMEI」が6基と「29F64G08ACMEI」が4基の計10基が搭載されている。
「29F16B08ACHEI」が6基「29F16B08CCMEI」が4基搭載されている
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「SSD」の用途は工夫次第で無限大
「SSD」は2.5インチサイズだから、ノートPCにしか使用することができないなんてことはありません。
もちろんデスクトップPCにも使用することができます。
そのほかにも、eSATAやUSB接続のポータブルディスクとしてなど、工夫すればいろいろな方法で使用することができます。
NASやメディアサーバーなどのディスクを「SSD」にすることで、パフォーマンスの高い環境を構築することもできることでしょう。
そこで今回は、自宅でリモートデスクトップ接続やインターネット閲覧など、業務やホビーで使用している液晶一体型PCに搭載されている「ハードディスク」(HDD)を「SSD 320」に換装してみます。
また、OSには「Windows 8 Release Preview」をインストールして使用してみようと思います。
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世代の古いPCをリフレッシュ
「SSD 320」に換装するPCは、富士通製の液晶一体型のPCの「FMV-DISKPOWER EK30X」です。
この「EK30X」に搭載されている「HDD」を「SSD 320」に換装することで、リフレッシュをおこなってみます。
「CPU」には「Core2Duo」(Merom)が搭載された、数世代古い機種です。
「CPU」や「ハードディスク」は、標準で搭載されているものから高速なタイプに換装して使用しています。
さらなる高速化をおこなうために、「SSD」の性能の恩恵を受けようと思います。
さらに数年間は現役マシンとして使用することができるようになるのではないかと期待しています。
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OSやアプリケーションの起動速度を上げるだけではない「SSD」
「SSD」はモーターなど可動部分をもたない部品になります。
そのため「発熱」や「消費電力」を抑えることができるはずです。
部品が密集した省スペースPCの内部の温度上昇や電力の消費を抑えることができる「万能部品」ではないでしょうか。
「SSD 320」に変更することで、内部にこもる熱を下げ、環境をよくすることができるかどうかを確かめてみたいと思います。
また、「消費電力」を抑えることで「エコ」な環境になったことも確認したいと思います。
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「EK30X」の「HDD」を「SSD 320」に換装する
「EK30X」は液晶一体型のコンパクトなPCです。
拡張スロットやPC内部にハードウェアを追加したりするスペースなどがありません。
そのため、カスタマイズする選択肢は限られてきます。
簡単に交換することができる部品は、以下のは3つです。
・CPU
・メモリー
・ハードディスク(HDD)
富士通からリリースされた液晶モニター一体型の「FMV-DISKPOWER EK30X」
「CPU」と「メモリー」は、マザーボードが対応している最高のスペックのものと換装済みです。
もう1つの「HDD」をより高速なものに交換することには限界があります。
また、「HDD」には可動部分があるため、高速なものと取り換えると「熱」の問題や「消費電力」の問題などが発生してしまいます。
液晶一体型のPCの中では「CPU」や「HDD」の換装が比較的簡単な機種である
そのようなこともあり、現時点で「SSD」を選択することは、もっとも最適な手段だと考えられます。
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「HDD」を取り外す
「HDD」を換装するには、3つのカバーを取り外す必要があります。
ダウンロード:「EK30X FMV取り扱いガイド」(PDF)
「電源ケーブル」や「キーボード」、「マウス」など接続されている「周辺機器」をすべて取り外します。
周辺機器を取り外すには、側面の「コネクタカバー」(赤枠)を取り外します。
「PUSU OPEN」と刻印された「ロックボタン」(オレンジ枠)を押しながら「コネクタカバー」をスライド(赤矢印方向)させながら取り外します。
側面の「コネクタカバー」(赤枠)を取り外す
「周辺機器」をすべて取り外したら、「上部カバー」(赤枠)を取り外します。
「上部のカバー」は「PULL」と刻印された部分(オレンジ枠)をつかみ、手前(写真の場合)にスライドさせて取り外す。
「上部カバー」(赤枠)を取り外す
「上部カバー」は「PULL」と刻印された部分をつかんでスライドさせて取り外す
次に「HDD」にアクセスするために「本体カバー」を取り外します。
「本体カバー」はパソコン上部の2カ所のネジ(オレンジ枠)を取り外した後に、「PULL」と刻印された部分(真ん中のオレンジ枠)をつかんでスライド(赤矢印方向)させて取り外します。
最後に「本体カバー」を取り外す
「本体カバー」を取り外すと、赤枠に搭載されている「HDD」を確認することができます。
「HDD」は赤く囲まれた部分に格納されている
「HDD」は「HDD固定レール」(オレンジ枠)のレバーを押しながら(赤矢印方向)取り外します。
取り外す前に、接続されている「電源ケーブル」と「SATAケーブル」を「HDD」から取り外します。
「HDD固定レール」の2箇所のレバーを押さえながら取り出す
「HDD」を赤矢印方向に引き出すと取り外すことができる
「HDD」から「HDD固定レール」を取り外す
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「SSD320」の取り付け
「SSD 320」を換装するための準備をおこないます。
付属の「HDD変換マウンタ」に「SSD 320」を取り付けます。
付属の「HDD変換マウンタ」と「取り付けネジ」を用意する
PC本体に取り付ける方向を確認しながら「HDDマウンンタ」を取り付ける
「HDDマウンタ」に「HDD固定レール」を取り付ける
「HDD」を取り外した時と同じ要領で「SSD320」をPC本体に取り付けよう
きちんと取り付けが完了したら「電源ケーブル」と「SATAケーブル」を忘れずに接続しよう
換装が完了したら、取り外した「カバー」をすべて取り付けます。
OSのインストールを開始する前に「SSD 320」が正しく接続されたかどうかを「BIOS」で確認します。
「電源ケーブル」や「周辺機器」をPC本体に接続しなおして、PCの電源を入れたら「BIOS」画面を表示させます。
「BIOS」を表示させるには、電源を入れたのち「Fujitsu」ロゴ画面が表示されたら「F2」キーを押します。
「SSD320」が正しく接続されたことを「BIOS」で確認できた
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「EK30」の「SATA」動作モードの設定
「EK30X」は、標準では「SATA」の動作モードが「IDEモード」で動作しています。
そのため、「SATA」の動作環境の恩恵を受けることができません。
そこで、HDDを効率よく動作させるための「AHCIモード」に切り替えます。
「EK30X」にはギガバイト製のマザーボードが採用されています。
そのため、あの有名なコマンドが存在します。
「BIOS」画面を表示させた後に、「Ctrl」+「F1」キーを押すことで追加されるメニューから「AHCI」を「有効」にする設定をおこないます。
「BIOS」のメニューに「Debug」が追加される
追加されたメニューの「Debug」→「SATA AHCI Mode」を「AHCI」に変更します。
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OSのインストール
「BIOS」で「SSD 320」が正しく認識されていることができたので、新規に「OS」をインストールする作業を進めていきます。
今回は「Windows 8 Release Preview 」をインストールします。
ダウンロード:「Windows 8 Release Preview ISO イメージ」
さっそく「Windows 8」のインストールを開始します
「Windows 8」のセットアップ画面
OSのインストールが完了したらディスクの状況を確認してみましょう。
「コンピュータ」を右クリックして表示される「管理」を選択して表示される「コンピュータの管理」で「記憶域」→「ディスク」を選択すると接続されているディスクを確認することができます。
「Windows 8」インストール後に「デバイスマネージャー」と「コンピュータの管理」の「ディスク」を表示させたところ
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「SSD 320」を管理する
OSのディスク管理ツールではなくIntelが無償で提供している管理ツールの「Intel SSD Toolbox」を使用すると、より詳細な管理をおこなうことができます。
最新のバージョンは「3.0.3 」です。
ダウンロード:Intel Solid-State Drive Toolbox
「Intel SSD Toolbox」を使用することで、ドライブの状況を確認したり、自己診断や推奨される設定をおこなうことができます。
「ホーム」画面では「モデル」や「ファームウェアのバージョン」を確認することができる
診断用スキャンには基本的な機能をテストする「クイック」と読み取りと書き込み機能やすべてのハードウェアエラーを確認する「完全」がある
「System Tuner」では「SSD 320」を動作させるためのOSの設定値の推奨を表示したり設定をおこなうことができる
「システム情報」では「EK30X」で「SSD 320」が「AHCI」モードで動作していることが確認できる
また、最新の「ファームウェア」の適用をおこなうこともできます。
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「HDD」から「SSD 320」にデータを移行したい場合
Intelから無償で提供されている「Intel Data Migration Software」を使用すると、「HDD」に保存された「OS」や「データ」をすべて「SSD」に移行することができます。
最新のバージョンは「1.1」です。
ダウンロード:Intel Data Migration Software
参考:インテル Data Migration Software の使用方法
移行が完了した「SSD」をPCに接続すると「HDD」で動作させていた環境をすぐに使用することができます。
ダウンロードサイトでダウンロードした「tih_s_japanese_build_14135.exe」を実行した画面
「HDD」の環境に「SSD 320」を接続したのちに「Acronis 機能搭載 Intel Data Migration Software」を実行してデータの移行をおこなうことになります。
データの移行はメニューにしたがっておこなうだけ
「OS」を含めた環境をそのまますべて移行したい場合には「Intel Data Migration Software」を使用すると簡単におこなうことができます。
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ベンチマーク
「HDD」や「SSD」の速度を測定することができる「CrystalDiskMark Nano Pico Edition」を実行してデータを取得してみました。
ダウンロード:CrystalDiskMark Nano Pico Edition
「WD20EARS」(HDD)の測定結果
「SSDSA2CW120G3」(SSD)の測定結果
「AS SSD Benchmark」を使用した「SSDSA2CW120G3」(SSD)の測定結果
予想通り、SSDの方がよい結果がでています。
特に、「Windows」の処理速度の動作にかかわる「ランダムアクセス」が大幅に向上していることが確認できます。
「SSD」の強みがいかされています。
今回は、初期の「SATAⅠ」(1.5Gbps)に接続した場合の測定結果ですが、もちろん対応している「SATAⅡ」(3Gbps)に接続すれば、よい結果を期待することができます。
「SATAⅡ」に接続した場合の測定結果
同じく「SATAⅡ」に接続した場合の「AS SSD Benchmark」の測定結果
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PC内部の温度変化
SSDに換装したことで、PC内部の動作環境に変化がでたかどうかを確認してみました。
確認には「HWMonitor」を使用しました。
「WD20EARS」(HDD)環境の測定結果
「SSDSA2CW120G3」(SSD)環境の測定結果
「SSD 320」の環境の方が「CPU」の「消費電力」や「発熱」などの数値が下がっていることが確認できる
※この環境では「SSD320」の動作温度の確認をおこなうことができませんでした。
計測の結果、CPUの環境に変化があり、「SSD 320」の環境では最大値が最大10℃下がっていることが確認できます。
また、消費電力も少しですが差が出ていることがわかります。
一般的な操作をおこなって動作を確認してみましたが、「HDD」の環境よりも「CPU冷却ファン」が安定した動作をおこなうようになりました。
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「Windows 8 Consumer Preview」の起動について
「HDD」と「SSD」の環境では「Windows 8 Consumer Preview 」が起動する動作にも変化があらわれました。
起動に必要な「サービス」などのプロセスが、「SSD」に交換することで「読み取り」スピードが向上し、処理がより早く効率的におこなわれていることが確認できました。
確認には「Windows 8 Consumer Preview 」用の「Windows アセスメント&デプロイメントキット(ADK)」に含まれる「Windows Perfomance Toolkit」を使用しました。
「Windows Perfomance Toolkit」に含まれる「xbootmgr」コマンドを使用すると、「CPU」や「HDD」上で動作する起動にかかわるプロセスの状況をトレースすることができます。
「CPU」と「HDD」上で処理されるプロセスの状況(「HDD」上、「SSD」下)
「HDD」と「SSD 320」の環境では、起動は「SSD 320」が早く、プロセスが完了して落ち着くまでに約20秒ぐらいの差がでました。
「SSD320」の環境では、プロセスの読み込みとCPUでの処理が効率よくおこなわれているのではないでしょうか。
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メンテナンス
PCは定期的にメンテナンスすることで、よい環境で動作させることができ、PCをより長く使用することができるようになります。
例えば、長期間使用していると、ファンなどにホコリがたまったりして、正常なエアフローを確保できなくなるおそれがあります。
エアフローが確保できなくなると、PC内に熱がこもって部品に負荷をかけてしまいます。
そのようなことが起きないように、定期的なメンテナンスを欠かさないように心がけましょう。
無理な解体作業は破損する恐れがあるので、できる範囲で清掃などをおこなってみましょう。
普段におこなうことができない「CPU冷却ファン」などの清掃をおこなってみた
「EK30X」の場合は、スタンドを取り外すことで「CPU冷却ファン」などにアクセスすることができます
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パフォーマンスをあげながら、省電力効果も期待できる
「SSD 320」を使用することで、「OS」や「ソフトウェア」が動作するために必要なファイルの読み込みの速度が上がり、効率よく処理することができるようになりました。
ボトルネックが解消されたため、各パーツでスムーズに処理がおこなわれる環境になりました。
バランスよく各パーツで処理されるようになったため、無駄な負荷がかからなくなり、全般的に安定した動作になり、さらに発熱も抑えられる環境になりました。
「SSD」はやはり万能な部品ではないかと感じています。
動作も快適になったので、「Windows 8」がリリースされた後も、問題なく利用することができると思います。
zigsow 運営事務局 さま
Intel さま
レビューに選定していただきありがとうございました。
古いPCをリフレッシュすることができ、さらに長く使用することができるようになりました。
また、エコな動作環境を手に入れることもできました。
ありがとうございました。
konbu_chaさん
2012/07/27
確かにHDDと違って、開けても大丈夫ですよね。
Windows8、迷ってます。
tomoさん
2012/07/27
「Windows 8」いい仕上がりでリリースされてほしいです。
リーダーさん
2012/07/27
Windows 8 楽しみです
tomoさん
2012/07/27
白輝望さん
2012/07/27
256GBなどの容量上位機種ではもっと多くのチップが乗っているんでしょうか??
それと、SSDの速度ですが、Core2機種でももっと出るんじゃないかなーって思ったんですが・・・
Seqで200MB/s程度は行く気がするんですが、こんなものなのかな?
Solid-State Drive ToolBoxで最適化はもうされてると思いますが、データ移行後の最適化で私は早くなりました。
tomoさん
2012/07/27
速度ですが、「SATA」が初期のものなんですよ~
速度強化難しいとは思いますが、いい結果が出たら報告しますね。