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■ はじめに
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今回のレビューでは、第3世代 Coreプロセッサ Ivy Bridgeの「Core i5-3570K」と第2世代 Sandy Bridge のうちでも高評価を得ている「Core i7-2600K」において、定格使用時におけるCPU性能、内蔵GPU性能、消費電力、発熱量を比較する。
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■ カタログスペックを比較してみる
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テスト実施前に、まずは両製品のスペックを比較しておこう。
両製品のスペックについては、下記ページでご確認いただきたい。
2600Kと3570Kのスペック比較表
2600Kは4コア8スレッド、ハイパースレッディング・テクノロジーをサポートしている点で優れているが、3570Kでは製造プロセスルールがSandy Bridgeの32nmから22nmへと微細化されているので、カタログスペックからではCPU性能の優劣を判断しにくい。
内蔵グラフィックスの仕様は、2600KではIntel HD Graphics 3000(ベースコアクロック:850MHz)、3570KではIntel HD Graphics 4000(ベースコアクロック:650MHz)となっている。
動作クロックではIntel HD Graphics 3000が優位に見えるが、Ivy BridgeではDirectX 11に対応したということだけではなく、グラフィクスアーキテクチャが改良されているので、単純に動作クロックのみで性能比較すべきではないだろう。
TDPについては、2600Kが95W、3570Kが77Wとなっており、消費電力と発熱量については3570Kに分がありそうだ。
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■ テスト環境
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以下のパーツを用いてテストを行った。
なお、ASUS P8Z68-V PROは、BIOSがver.3203以降でなければIvy Bridgeに対応していないので、テスト前に最新版(ver.3402)にバージョンアップした。
【参考】ASUS Available model list with 22nm CPU support
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■ アイドル時のCPU温度と消費電力を比較する
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CPU温度の計測には「Core Temp」、消費電力の計測には「ワットチェッカー」を使用した。
CPU温度は全コア中の最大温度、消費電力は最大消費電力を採用した。
2600K 79W 36℃ (CPU使用率 ~3%)
3570K 83W 44℃ (CPU使用率 ~3%)
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■ フルロード時ののCPU温度と消費電力を比較する
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計測には、「OCCT」を使用した。
テスト時間は30分間とした。
2600K 170W 60℃ (CPU使用率 ~100%)
3570K 153W 65℃ (CPU使用率 ~100%)
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■ CPU性能を比較する
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Superπで3355万桁を計算するまでに要した時間と実施時のCPU温度、消費電力を計測した。
2600K 9分17秒 111W 47℃ (CPU使用率 ~20%)
3570K 9分00秒 105W 54℃ (CPU使用率 ~60%)
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■ CPU、内蔵GPUの性能を比較する
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○CINEBENCH
テスト実施時のCPU温度、消費電力も計測。
2600K
OpenGL:17.68fps 128W 45℃ (CPU使用率20~30%)
CPU:6.81pts 154W 52℃ (CPU使用率~100%)
3570K
OpenGL:20.80fps 121W 56℃ (CPU使用率20~80%)
CPU:5.93pts 131W 60℃ (CPU使用率~100%)
○PassMark PerformanceTest
テスト実施時のCPU温度、消費電力も計測。
※Intel HD Graphics 3000はDirectX 11をサポートしていないため、GPUの性能テストはDirectX 9、10の計測結果を採用した。
2600K
CPU:8747 155W 50℃ (CPU使用率50~85%)
3D 117W 45℃ (CPU使用率~25%)
DirectX 9 Simple:28.7
DirectX 9 Complex:16.3
DirectX10:3.52
3570K
CPU:7340 135W 59℃ (CPU使用率30~100%)
3D 111W 50℃ (CPU使用率~35%)
DirectX 9 Simple:27.5
DirectX 9 Complex:17.1
DirectX10:3.74
○3DMark Vantage
テスト実施時のCPU温度、消費電力も計測。
2600K
SCORE:P2282
GRAPHICS SCORE:1754
CPU SCORE:23227
160W 51℃ (CPU使用率10~100%)
3570K
SCORE:P3945
GRAPHICS SCORE:3119
CPU SCORE:19246
132W 58℃ (CPU使用率10~100%)
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■ 総評
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○CPU性能
Superπにおける計測結果ではほぼ差は見られない。
しかし、Superπを除くベンチマークの計測結果では、2600Kの方が良い結果が得られている。
CPUに負荷の掛からない単純作業においては同等のCPU性能を発揮するが、高負荷が掛かる作業では2600Kの方が高いパフォーマンスを得られるようだ。
○内蔵GPU性能
レビュー冒頭でも述べたが、動作クロックのみで比較すればIntel HD Graphics 3000を搭載した2600Kが優位に見えるのだが、テスト結果からは、Intel HD Graphics 4000を搭載した3570Kの方が優れているという結果が得られた。
Ivy Bridgeではグラフィクスアーキテクチャが再設計されているので、その恩恵が大きいということなのだろう。
○消費電力と発熱量
消費電力においては、3570Kの方が省電力という結果が得られた。
高負荷時には20~30Wの省電力が図られていた。
省電力ということは低発熱でもあると推測する訳だが、すべてのテスト結果において、省電力である3570Kの方が2600Kよりも発熱量が高かった。
省電力で高発熱という何ともいただけない矛盾した結果となってしまったが、これが噂の熱伝導機構の問題ということなのだろう。
殻割りが流行っている理由がよく理解できた。
○上記3点を踏まえると、3570Kは…
高負荷時には、2600Kの方が高いCPU性能を発揮したが、実売価格では3570Kの方が約5000円も安い。
低負荷時であれば、価格差に見られるほどの性能差は感じられないので、用途によってはコストパフォーマンスに優れたCPUといえそうだ。
省電力である点、Sandy Bridgeよりも高性能な内蔵GPUに魅力を感じる人にとっては良い選択肢になるだろう。
ただ、Core Tempのログを見ると、高負荷時にはCPU温度が跳ね上がり高止まりしているので、OC使用では扱いにくいCPUなのではという印象も持ってしまった。
ビデオカード搭載機を使っているPCゲーマーとしては、内蔵GPUが進化したことによって得られるメリットは小さいだろう。
PCをゲーム用途に使っている身としては、2600Kから3570Kに買い換えたいと思えるほどの魅力は感じられなかった。
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