PCの性能を測るソフト、ベンチマークソフト。
MaxonのCinebenchやUL(Futuremark)の3DMarkなど有名なものもいくつかあるが、けっこうどのベンチマークも特徴というかクセがある。
Cinebenchは、OpenGLのモードはあるものの、事実上シングルコアの性能とマルチコアの効率性を観る「CPU特化型」ベンチだし、3DMarkやFINAL FANTASY系ベンチマーク、SQUARE ENIXのドラゴンクエストⅩ ベンチマークソフトは描画系に評価の比重が大きく傾いており、高いグラフィックス性能を要求するゲームをほぼしない自分としては、スコアとPC性能の関係性がイマイチしっくりこない部分がある。SteamのSteamVR Performance Testは、(こちらは自分はよく使うが)レンダリングパワー計測特化ベンチマークで、PC性能全体の評価ではない。
事務系作業でPCを使う事が多い自分としては、PC全体の使い勝手の評価をしたいので、上記「部分性能特化型」ベンチマークでは結果点数と使用感とが乖離することがあるワケ。そんな場合に使われている総合系ベンチマークとしては、Primate LabsのGeekbench 6やNenad HrgのExperienceIndexOK、UL(Futuremark)のPCMARK 10などがある。
しかしこれらも一長一短で、Geekbench 6はマルチプラットフォームベンチマークであることを重視するあまり、ヴァージョンによって中身が大きくいじられる傾向にあり、同じヴァージョン同士でないと、スコアだけでなく評価軸そのものの互換性がない。ExperienceIndexOKは懐かしのWindowsエクスペリエンスインデックス風ベンチマークだが、今度はシンプル過ぎて評価されている「中身」がよく判らない。これらの中では唯一PCMARK 10がグラフィックス系からワープロや表計算、ビデオ通話等まで、PCでよく行われている作業を総合的に評価していて、中身も詳しく、ヴァージョンによる評価軸内容の変更が少ないのでよく利用してきた。
ただPCMARK 10は、いまでも継続的に手が入れられてはいるものの(2024年4月時点での最新版は2023年11月17日リリースのVersion 2.1.2662)、ソフトとしてのその前作=PCMark 8とのリリースピッチ(PCMark 8が2014年、PCMARK 10は2017年)から考えると、新製品の更新がなさすぎる印象。というのも、PCMARK 10を開発したフィンランドの企業Futuremark Oyは、2014年にアメリカの認証機関=Underwriters Laboratories(UL、アメリカ保険業者安全試験所)に吸収されており、Futuremark時代の2000年代には、2~3年に一度と非常に密だった新製品リリースピッチが、買収以降は目に見えて落ちている。3DMarkは今後ヴァージョンや年度表記(3DMark2024など)をせず、ずっと3DMarkの名称を使い続けることを宣言し、その後も継続的にチョイチョイベンチマークが追加されるなど目に見えた進歩があるが、PCMARK 10は2019年の「PCMark 10 Storage Benchmarks」の追加以降、Edgeブラウザへの対応や言語の追加、バグフィクスなど手直しにとどまっていて目立った内容変更がなく、今後に不安を残す。
そんな中、ここZIGSOWのPRO会員で、ストレージ特化型ベンチマークながら世界標準ベンチマークとなっているCrystalDiskMark
の作者hiyohiyoさんが、かつて手掛けていた総合ベンチマークCrystalMarkを2024年3月末にリニューアルリリースした。
CrystalMarkは、かつて06(2002年)⇒08(2003年)⇒2004とリリースされてきたが、2017年のAMD Ryzen発売に合わせて9年ぶりに更新された2004R7を最後に、開発は終了していたベンチマーク。
それが今回、CrystalMarkRetroとしてリニューアルされたわけ。
CrystalDiskMarkで世界を席巻したhiyohiyoさんの新ベンチマーク=CrystalMarkRetroは、その名の通り、2D描画テストにテキストや図形を無限に重ねていくモードがあるなど、最近CGを用いたムービーなどが組み込まれることが多いベンチマークソフトに比べると、まさに「レトロ」な感じ。ただPC作業の半分以上が、書き物や検索、CDなどのリッピング、DAWやその音源プラグインの使用などがメインで、ゲームもブラウザ経由のソシャゲ程度しかしない、つまりPC性能の評価比重に関して、どちらかというとCPUとストレージに重きを置き、グラフィックス系はライトにとらえる自分としては、非常にしっくりくる結果が得られるベンチマークとなっている。
hiyohiyo氏の呼びかけでテスター協力し、リリース前のα版、β版、RC版も走らせているので、その結果も合わせてここに掲載する。記事書いている間に1.0.1もリリースされたので、変更点は一部条件下でのOS情報取得やDPI設定反映の不備修正で、「ベンチマーク結果は1.0.0と完全互換」とのことだが、念のために回してみた結果もまとめてみた。
■ベンチ環境:メインPC
【2×スレッド立派PC(Rev.5.00-Re-born-)】
・CPU:AMD Ryzen Threadripper 2990WX
・CPUクーラー:ENERMAX LIQTECH ELC-LTTRTO280-TBP
・M/B:ASUS ROG ZENITH EXTREME
・メモリ:G.Skill TridentZ Neo F4-3200C16D-32GTZN ×2 Total64GB(16GB✕4)
・VGA:msi GeForce GTX 1080 GAMING X 8G
・システムドライブ:PLEXTOR PX-512M9PeGN ×2(RAID0)
・一時保管用データドライブ:SanDisk SD9SB8W-512G-1122 ×2(RAID1)
・長期保管用データドライブ:WD40EFRX-RT2 ×2(RAID1)
・光学ドライブ:Pioneer BDR-209XJBK/WS
・カードリーダー&USBフロントパネル:Bullet IOP525
・電源:CORSAIR RM850(80PLUS GOLD)
・PCケース:CORSAIR Carbide Air 540
・フロントファン1:ENERMAX APOLLISH VEGAS UCAPV12-BL ×2
・フロントファン2:ENERMAX T.B.VEGAS QUAD UCTVQ12P
・OS:Windows 10 Pro
【結果一覧】リリース順は右から左に、α3⇒β1⇒RC2⇒1.0.0(release version)⇒1.0.1
1.0.0と1.0.1のスコアの差は計測誤差かな。CPUスコアは安定も、若干β1がスコアが違う??
1.0.0の結果表示(言語は日本語)。これは「水晶碧ちゃん」があしらわれている「Aoi Edition」。
1.0.1はもう一つのテーマ「AoiNight」で取ってみた。言語は英語。
Alpha 3のころはスポンサー用表示スペースが見えていて、右下のX連携のあたりのデザインも違う
48言語以上の多言語対応で、ワンクリック(「All」の部分をクリック)で、CPUとディスク、2Dグラフィックス(GDI)、3Dグラフィックス(OpenGL)の性能を計測するソフト。ディスクの所はターゲットを選ぶ部分がないが、Windowsのシステムがインストールされてるドライヴが選択されるらしい(hiyohiyoさん確認済み)。
ちなみにこれは「Aoi Edition」で、Crystal Dew Worldの新応援キャラクター「水晶碧ちゃん」があしらわれている。そしてベンチが終わると、その結果で「すごい、すご~い」などと、音声で寸評?してくれるが、それがないそっけない?無印エディションもあるので、会社などでの使用も安心??
Aoi Editionでない方は、地味な外観なのでご安心を?(色合いはいくつか選べる↑は「Dark」)
開発は3Dグラフィックス(OpenGL)の部分はkoinecさんで、のこりがhiyohiyoさん。CrystalMark 2004をベースとしているので、2Dグラフィックス(GDI)のあたりは、ランダムにテキストが表示されたり、円や四角が重ね描きで描画されたりと懐かしい感じのグラフィック。3Dグラフィックス(OpenGL)も線画で表現されるCPUチップは「コンピュータグラフィックス」黎明期を想い出させるし、ポリゴン性能計測時に飛んでくるCPUにはなにやら懐かしい刻印が...?
ディスプレイいっぱいに「CrystalMark」とテキストが埋め尽くされたり....
いにしえのCGによくあったような線画で描かれたCPUがぐるぐる回ったりする。
そんな「レトロな」外観のベンチマーク、実際に「ベンチマーク」として重要な機種間スコア比較はどんなものだろう。
【エントリーPCたち:ベンチに影響しそうな部分を抜き書き】
①メインPC/AMD Ryzen Threadripper 2990WXを積んだ自作PC
CPU:AMD Ryzen Threadripper 2990WX(32C64T、ベース3.0GHz⇒ブースト4.2GHz)
メモリ:G.Skill TridentZ Neo F4-3200C16D-32GTZN ×2(16GB×4=64GB、2133MHz駆動)
グラフィックス:msi GeForce GTX 1080 GAMING X 8G(ビデオメモリ8GB)
システムディスク:PLEXTOR PX-512M9PeGN(×2のRAID0駆動)
OS:Microsoft Windows 10 Pro
②サブPC/HP Pavilion Aero 13-be パフォーマンスモデル
CPU:AMD Ryzen 7 5800U(8C16T、ベース1.9GHz⇒ブースト4.4GHz)
メモリ:SAMSUNG K4AAG165WA-BCWE 計16GB(オンボード、3200MHz駆動)
グラフィックス:AMD Radeon Graphics Vega 8(Ryzen 7 5800U内臓)
システムディスク:Transcend PCIe SSD 220S TS2TMTE220S(2TB、換装交換品)
OS:Microsoft Windows 11 Pro(10 Proよりアップデート済)
③サブサブPC/キューブ型ベアボーンShuttle SZ77R5をフレームとしたPC
CPU:Intel Core i7-3770T(4C8T、ベース2.5GHz⇒ブースト3.7GHz)
メモリ:ADATA DIMM AX3U1600GC4G9-2G(4GB×2=8GB、1333MHz駆動)
グラフィックス:Intel HD Graphics 4000(Core i7-3770T内臓)
システムディスク:WD Blue 3D NAND SATA WDS100T2B0A(1TB)
OS:Microsoft Windows 10 Pro
結果比較は以下の通り。
①メインPC/AMD Ryzen Threadripper 2990WXを積んだ自作PC
英語表示だがスコアは再掲。なおこの機種間比較は取得時期の関係で1.0.0を使用。
②サブPC/HP Pavilion Aero 13-be パフォーマンスモデル
CPUのSingleの高さと、小細工を弄してないSSD(Disk)が素直に速い。
③サブサブPC/キューブ型ベアボーンShuttle SZ77R5をフレームとしたPC
全体のスコアは悪いが、CPUのSingleはさすがのIvy Bridge?
相変わらず、64スレッドを誇るマルチスレッド番長のAMD Ryzen Threadripper 2990WXをCPUに据えるメインPCは、Multiの性能が段違いだが、意外にもSingle性能は碧ちゃんに「ちょっとぉ...遅いかも??」とご褒美として罵倒されたお言葉をいただいた、2012年発売の第3世代Core、“Ivy Bridge”のT版=超省電力版であるCore i7-3770TのサブサブPCと大差ないのが、そういえばZen2発売前夜当時(2990WXの発売は2018年でZen2登場の前年)までAMD CPUの特徴(というか弱点)だったな、と。
一方、性能大躍進のZen2を、さらに推し進めたZen3アーキテクチャのRyzen 7 5800Uを採用したサブPCは、省電力版(U版)ながら、ブースト時は2990WXを上回るクロック周波数も相まって、シングルスレッド性能は劇的改善。
Disk性能は、比較したPCのメインストレージ構成・接続法がバラバラで、個々のPCに組み込まれたパーツの性能というよりは、接続形式の差がスコアに出た感じ。
・メインPC:PCIe Gen 3 x4のM.2 SSD 2台のRAID0(M/BのRAID機能)
・サブPC:PCIe Gen 3 x4のM.2 SSD単体使用
・サブサブPC:SATA 3.0接続のSATA 2.5インチSSD
メインPCは公称Sequential Read Speed最大3,200MB/sのSSDを使っていて、読み込みは公称値近くといい線行っている。一方書き込みはRAIDを組んでいるため、どこにデータを置くかなどの分散処理に時間を食うのか、公称Sequential Write Speed最大2,000MB/sの1/7程度しかない。
一方、サブPCは一つしか用意されないM.2スロットに、標準搭載の512GB SSDと挿し替えて、それより高速なSSDを装備させただけの単純構造なので、読みも書きも公称Sequential Read 3,500MB/s、同Write 2,900MB/sの9割弱程度スピードが出ている。
サブサブPCは、SATA規格の中では高速なSATA 3.0接続ではあるが、もはや速度的には見るものはなく、大きく水をあけられている。
グラフィック系、特にポリゴンを使った3D系の評価は、今となっては数世代前とは言うものの、発売当時最上級ラインだったビデオチップGeForce GTX 1080を搭載した別体ビデオカードを積むメインPCの圧勝。
内臓グラフィックスのサブPC(Ryzen 7 5800U=AMD Radeon Graphics Vega 8)とサブサブPC(Core i7-3770T=Intel HD Graphics 4000)では、2021年発売と2012年発売の10年近い差に加えて、元々内臓グラフィックスに定評があるAMDと、内臓グラフィックスは「映りゃイイやん」のIntelでは勝負にならず、10倍近いスコアでサブPCの圧勝...つか一部スコアはメインPCに勝っているって、Ryzen 7 5800Uの内臓グラフィックス性能、パないな。
トータルスコアと使用感、使い勝手とそれぞれのスコアのバランスもなんとなく納得性が高くて
・〇〇やりながら××するという並列作業が得意なメインPC
・(筐体的にも)複数操作はさせないが、一部処理はメインPCより速いこともあるサブPC
・ブラウジングや動画視聴なら問題ないが、アプリを走らせると重いサブサブPC
と納得性が高い。
このCrystalMarkRetroは、各スコアのトータルスコアへの影響度も公開されていて、それは以下の通り。
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ALLのスコアは以下の比率で算出した相乗平均
CPU:40%(シングル:20%、マルチ:20%)、Disk:20%(各5%)、2D:20%(各5%)、3D:20%(シーン1:5%、シーン2:15%)
※以上hiyohiyoさんのHPから抜粋転載(一部表記法改変)
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CPU性能とディスク性能というオフィス系やDAW系のソフトを使う際には一番効く指標が過半で、グラフィックスも2Dと3Dが同等扱い。これが自分の使用法と感覚が合ってるのだろう。
ただ3Dの中ではシーン2の比重が高くしてあって、良いビデオカード積めばきちんと交換効果が出る(はず)。
計測時間もPCMARK系ほどクソ長くなく、気軽に使える。
このベンチ、PC評価の標準指標のひとつになっていけばよいなぁ...
...現在企画中の、CrystalMark Retro 2.0では、なんとWin9x/NT4まで対応するつもりらしい...
これぞ「レトロ」!...なんか懐かしいOS名が??...Meは動き始めた、など...
hiyohiyoさんの苦闘?は続く....
CrystalMark Retro:Crystal Dew World
最近PCのベンチマークというと、CGで作成したムービー風のものが中心だったが...
ランダムに描かれたテキストや、線画で表される「CGらしいCG」が、ベンチの間には描画されていて懐かしい。
多言語対応だし、Aoi Editionはヴォイスも!
ベンチ完走後には、碧ちゃんが「すごい、すご~い」などと寸評してくれるので音量注意w
なおバイリンガル対応です(Languageの「Voice Language」で切り替え)。
"It's super super fast!!"
ゲーム以外の使用でも納得性の高いベンチ
最近、つよつよなビデオカードを積んでないと好スコアが稼げず、ゲームをわずかにしかやらない自分としては的外れなベンチマークが多かったが、これは納得性が高い結果で、PC性能把握にちょうど良い。
一発復活でなく、現在も開発進行中なのが、GJ!
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購入金額
0円
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購入日
2024年03月31日
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購入場所
Crystal Dew World
jive9821さん
04/15
確かThunderbirdやBurtonは結構縦横比が違う長方形だった気がします。
cybercatさん
04/15
ツッコミが鋭い...つか、突っ込むとこソコ?w