レビューメディア「ジグソー」

低消費電力で平素は静かに、でもいざとなったらヤルときゃヤル!内に秘めた闘志、Intel HD Graphics 4000を持つCOOLなヤツ..

Intelより発売された第3世代Core iシリーズCPU、Ivy BridgeことLGA1155CPUとしては2世代目となる22nmプロセスルールを持つ新CPUは、その高い性能と比較的リーズナブルな価格で世界を席巻した先代、Sandy Bridgeの改良版にあたる。プロセスルールの微細化によって得られる基礎性能とスペースは、動作クロック上昇によるCPUの機能アップよりもむしろ、対抗(AMD)に対して数少ないビハインドとされていた内蔵グラフィックの強化に充てられるとともに消費電力の低減に使われた。そのため先代たるSandy Bridgeとはさまざまな点で差異がある。

それは商品ラインアップだ。

Core iシリーズはIntelのメインストリームCPUブランドだ。下位にはSandy Bridge世代の伝統のブランド、Pentium、Celeronがあるが、あくまでコンシューマ向けのメインストリームCPUとしては、Core iシリーズが中心となる。モバイル向けなど一部例外はあるが、2コア4スレッドで、1コアで2つの命令をさばくハイパースレッディング(HT)には対応も、CPUの負荷状態によって動作周波数を上げるターボブースト(TB)は非対応のベーシックな“Core i3”(2012年8月現在は)、その上級としてTBは有効もHTは必ずしも有効ではなく、型番によって4コア4スレッド(HT無効)か2コア4スレッド(HT有効)で、いずれにせよ4スレッドに制限される“Core i5”、ハイパフォーマンスモデルとしてHTとTB両対応で4コア8スレッドを中心とする“Core i7”ラインアップされている(“Core i7”ブランドのモバイル向けの一部は2コア4スレッド、さらにCPUソケットも異なるエンスージャスト向けの石として6コア12スレッドのものもある)。

その型番の命名規則は複雑だが、一部のCPUではそのCPUの特徴を簡単に見分ける方法がある。それは最後に付番されることがあるアルファベットだ。デスクトップ向けでは「K」「S」「T」「P」が使われている。このうち「P」は他とは意味合いが違って「内蔵グラフィックレス」ということを表すが、「K」「S」「T」はそれぞれ無印に対して何らかの付加価値がつけられていることを示す。「K」は「倍率ロックフリー」(厳密に言うと上限倍率ロックフリー)。ベースクロックを引き上げることなく最大動作周波数を引き上げることができるため、オーバークロックが容易となっている、性能を追求する石だ。一方、「S」と「T」は省電力性を追求した石だ。「S」が無印より若干TDPが低い“低電圧版”、「T」がそれよりさらに低い“超低電圧版”という意味だ。

Core i第一世代のNehalemまでいくと若干規格が異なるが、LGA1155プラットフォームのSandy Bridge~Ivy Bridgeでは「S」がTDP65W、「T」が同45W以下となる。基本2コアでTDPが低い“Core i3”を除く、4コア系の“Core i5”と“Core i7”は通常版(無印)や「K」のTDPが95WだったSandy Bridge世代は無印(K)95W⇒S 65W⇒T 45Wときれいに20W以上の差(もしくは約3割の削減)をつけて並んでいたが、ベースの消費電力の低減が図られたIvy Bridgeは基準となる無印のTDPが77Wとなったので、「S」番は15%程度しかTDPが低下せず、それでいて300MHz動作周波数が低められているので微妙な立ち位置となってしまった。

これに対して「T」番はIvy Bridge世代でさえ無印の6割のTDPと省電力性の優位性は輝いている。そしてIvy Bridgeではついにトップブランドの“Core i7”に「T」番がラインアップされた。微細化前のプロセスルールではHTとTB両対応の“Core i7”では「T」番に課せられるTDP45Wが担保できなかったのか、「T」番は“Core i3”系が中心で、4コア系では“Core i5”に唯一4スレッドのCore i5-2500T

がラインアップされたがほとんど市場には出回らなかった(それだけ選別が難しい石だったのだろう)。それがプロセスルールの微細化の恩恵を受けてHT有効の4コア8スレッドの“Core i7”に、待望の「T」番が現れた。それが本品、「Core i7-3770T」だ。
「Core i7-3770T」。このハイパフォーマンスモデルを表す“Core i7”ブランドと、“超低電圧版”を表す付番「T」を持つ石。その諸元は
 ・CPUクロック:定格2.5GHz/3.7GHz
 ・L3キャッシュ:8MB
 ・TDP:45W
 ・GPUクロック:定格650MHz/最大1150MHz
 ・内蔵GPU:Intel HD Graphics 4000
というもの。
CPUクロックは、定格もTBが効いた最大時も無印の「Core i7-3770」もしくはOCをしていない「K」番に対してそれぞれ200MHz下げられているが、GPUは変わらない。そう、他の「Core i7-3770シリーズ」や「Core i5-3570K」といった性能を出すための石に積まれているIvy Bridge世代の内蔵グラフィックの中では高機能版である「Intel HD Graphics 4000」がクロックダウンなどの制約を受けず搭載されているのだ。Sandy Bridge時代から含めても「T」版に高性能版の内蔵グラフィックが搭載されたのはデスクトップタイプでは初めてで、2012年8月現在唯一のものでもある。省電力系でも「S」番には一部「Core i5-2405S」や「Core i5-3475S」のような例外があるが、「T」番には前述の「Core i5-2500T」をはじめ、「Core i3-2100T」や「Core i3-2120T」や2コア4スレッドの「Core i5-2390T」といったSandy Bridge世代も「Core i5-3570T」や「Core i5-3470T」といった新世代Ivy Bridgeも、それぞれIntel HD Graphics 2000(以下HD2000)とIntel HD Graphics 2500(以下HD2500)といった下位グラフィックが積まれていた。

これはたぶん多くの場合ニーズを満たす。こういった超低電圧版のCPUは小型PCに積まれ、サーバー的に常時ONで使われる、あるいは、バリバリ仕事やホビーに使うのでなく「チョイ使い」のリビングPCなどとして使われることが多いだろう。その場合にはあまり高性能なグラフィック機能は必要ないだろう。

ただ、超低電圧版のCPUを使うシチュエーションで、現在最も電力を喰うパーツの代表であるビデオボードを積む、という選択肢はほとんどない。前世代ならばともかく、Intelの内蔵グラフィックの中では過去最高、DirectX 11対応の新世代であればその力を活かして「低消費電力で平素は静かに、でもいざとなったらヤルときゃヤル!」といったPCを組みたいという言うニーズも生まれる。この高性能版グラフィックHD4000を積んだ「Core i7-3770T」はそういう欲張りなニーズに応えた石なのだ。
ではその性能を評価してみよう。評価機は先日プレミアムレビューさせていただいたIvy Bridge対応のShuttle製 キューブ型ベアボーン「SZ77R5」。

「Core i7-3770T」の強化された内蔵グラフィックHD4000を評価すべく、グラフィックカードMSI R6950 Twin Frozr II OC

はもちろん外してある。一方、負荷時の温度上昇を評価すべくサイズの汎用温度計

をベアボーンの専用CPUクーラー「I.C.E.」の冷却フィンにつながるヒートパイプの根元に固定した。
根元に耐熱テープでセンサーを固定
根元に耐熱テープでセンサーを固定
表示部はベアボーンの3.5インチベイの目隠し板を抜くとちょうど温度計が入ったので、
さらに作動時にはベイカバーまで閉じていた。
さらに作動時にはベイカバーまで閉じていた。
そこに導けるよう配線し、カバーやスロットを余分に開けることなく通常作動状態を再現した。

今回この性能評価に参戦するのは...本品「Core i7-3770T」
OCコンテスト

の生き残り!歴戦の勇者「Core i7-2600K
ローボルテージな元祖4コア「T」!「Core i5-2500T
まず外形検分から....
表から見るとこの3種、2世代2ブランドの差はほとんどない。
刻印見ないと区別つかないな...
刻印見ないと区別つかないな...
強いて言うなら基板のベースの色が
左端のIvy Bridgeだけ少しベース基板が青っぽい?
左端のIvy Bridgeだけ少しベース基板が青っぽい?
Sandy Bridge世代のほうが緑が深い、というくらいだろうか。
一方裏は世代によって明確な違いがある。
中央のコンデンサの配置が明らかに異なる
中央のコンデンサの配置が明らかに異なる
裏面はおなじみのランドが並ぶ。Ivy BridgeもSandy BridgeもともにLGA1155なので違いは無い。
綺麗にランドが1155個並ぶ。...イヤ、数えたわけではありませんが(^^ゞ
綺麗にランドが1155個並ぶ。...イヤ、数えたわけではありませんが(^^ゞ
各CPUの主な諸元は次の通り。
「Core i7-3770T」は「7」と「T」を兼ね備える初めての石だ
「Core i7-3770T」は「7」と「T」を兼ね備える初めての石だ
いずれも4コアだが、スレッド数は「Core i5-2500T」は4に制限されている。CPUクロックはさすがに「まわす石」である「Core i7-2600K」が定格も最大も一歩リードするが、T系は定格と最大の差が大きいことが特徴だ。常に速いスピードで回る「K」番に対して「T」番は「ヤルときゃヤル」系。特に「Core i7-3770T」は定格と最大の差が大きく(1.2GHz)「本気出」したらスゴイことがわかる。L3キャッシュは「Core i5-2500T」には6MBの制限が課せられている。内蔵グラフィックの性能は型番的には「Core i7-3770T」>「Core i7-2600K」>「Core i5-2500T」だが、動作周波数は定格も最大も「K」番が頭一つ抜けている。「Core i7-3770T」と「Core i5-2500T」は定格周波数は同じだが、最大クロックは意外にも「Core i7-3770T」が最も低い。しかし、基礎性能が良いHD4000を内蔵する「Core i7-3770T」が、どれだけ他に差をつけるのか、逆に周波数の低さでやられてしまうのか、そのあたりがポイントだ。

なお、この頻回のCPUの換装にはグリス清浄剤とシルバーグリスのセット品「ワイドワーク COOLTIME&COOLSILVER WW-CTCS」

を用いたが、非常に綺麗に簡単にグリスの除去ができる優れものだった。

性能検証は例のごとく以下のセットで行った。

まず基本的な性能検証としてWindows エクスペリエンス インデックスをまわした。

さらに今までPCの検証に使ってきたメニュー、すなわち、
 ・起動
 ・CINE BENCH 11.5 Open GL
 ・CINE BENCH 11.5 CPU
  (負荷は高いが消費電力のブレが少ないテストのため目視で瞬間消費電力を記録)
 ・スクリーンショット取得
 ・FF14ベンチLOW
 ・スクリーンショット取得
 ・FF14ベンチHIGH
 ・スクリーンショット取得
 ・3DMark06 Advanced Edition 1.2.0
 (負荷の高いHDR2 - Deep Freezeのシーンで目視で瞬間最大消費電力を記録)
 ・Webアップロード&スクリーンショット取得
 ・シャットダウン
-所用時間約30分-

この間の消費電力を簡易消費電力測定装置「CUSTOM エコキーパー EC-03」

を使い、また温度上昇は先に述べたセッティングで「サイズ 汎用温度計 TM02-WH」

を用いてそれぞれ計測した。
結果は以下の通り
【ベンチマーク結果】
【消費電力・温度上昇】
なんと言っても驚きは「Core i7-3770T」の描画性能だ。さすがにビデオカードを入れた結果からするとたいしたことは無いが(↓以下を参照)

それでもSandy Bridge時代低消費電力CPUのトップ「Core i5-2500T」内蔵のHD2000に対してはもちろん、先代内蔵グラフィックの上位機種HD3000を積む「Core i7-2600K」に対しても、CINEBENCH 11.5のOpen GLで1.2倍、3DMark 06のSM2.0 SCOREで1.3倍、同HDR/SM 3.0 SCOREで1.4倍、
このスコアは2600Kを凌駕する!
このスコアは2600Kを凌駕する!
そして昨年頭の話題のベンチ、「ファイナルファンタジーXIVオフィシャルベンチマークソフト」

のLOWでは実に1.5倍の差をつけた。このFF14LOWのスコアそのものも驚愕で、CPUの内蔵グラフィックで1500に届こうかというスコアはすばらしいスコアだ。
内蔵グラフィックで1500に手が届きそう!!
内蔵グラフィックで1500に手が届きそう!!
もちろん快適にFF14を遊べるスコアではないが、シーンによっては十分なめらかに描画が行われていた。

一方CPU系のスコアは腐っても鯛?さすがに先代で長く最高性能品として君臨していた「Core i7-2600K」が面目を保った。しかし、「Core i7-3770T」のスコアは同じ低消費電力系の「Core i5-2500T」というよりは「Core i7-2600K」の方に明らかに近く(スコア的には1割弱のビハインドしかない)、確かな“Core i7”ブランドの存在感を示した。

消費電力に関してはおもしろい結果となった。上記30分のトータルの結果は予想通り順当に「Core i7-2600K」>「Core i7-3770T」>「Core i5-2500T」となったのだが、ベンチによって「Core i7-3770T」の消費電力が「Core i7-2600K」に近いときと「Core i5-2500T」に近いときが見られたのだ。CINEBENCH 11.5のCPUでは明らかに「Core i7-2600K」が突出して高消費電力で、高いスコアは消費電力と引き替えであることが判るが、3DMark 06のDeep Freezeは「Core i5-2500T」に比べてi7系の両者はほぼ同じ高さだった。それでいて「Core i7-3770T」のCINEBENCH 11.5のCPUテストでは「Core i7-2600K」に迫るスコア、3DMark 06の描画系のテストでは他を圧倒する性能をみせている。

温度上昇はM/Bからの観測値でなく実測値がとりたかったので、前述の温度計で直接測ったが、その性能の問題か、貼付位置の問題か、はたまたベアボーンの純正CPUクーラー「I.C.E.」の性能が良いからか大きな温度上昇は見られなかった。しかし、その温度上昇幅は予想通り、「Core i7-2600K」>「Core i7-3770T」>「Core i5-2500T」となった。
今回検証した「Core i7-3770T」、最新の22nmプロセスルールで製造されるIvy Bridge=第3世代インテル Core i7プロセッサー。
超低消費電力版である「T」番が、高性能CPUブランドである“Core i7”にはじめて付番されたものとして期待されたが、果たしてその期待を裏切らない出来だった。前世代Sandy Bridgeの高性能版CPUである「Core i7-2600K」に対してグラフィックス系の性能では完全に凌駕し、CPU系のスコアも肉薄する性能を魅せながらも、「Core i5-2500T」でみられた低消費電力・低発熱に近い結果を残した。一言で言えば「Core i7-2600K」の演算性能を「Core i5-2500T」の環境性能で実現したもの、と言え、この暑い夏に性能をガマンすることなく、環境に優しいエコなCPUであることが判った。
さらにPCI Express 3.0サポートなど将来に向かっての布石も十分で、基礎能力が高いCPUだった。

この夏はコレで決まりだ!!
  • 購入金額

    26,480円

  • 購入日

    2012年07月14日

  • 購入場所

    ドスパラ通販

コメント (8)

  • きっちょむさん

    2012/08/05

    レビューお疲れ様です。

    夏らしく気合いの入った熱い内容でしたね!
    さあ、夏休みの宿題の提出は誰が最後になるのでしょうw
  • cybercatさん

    2012/08/05

    きっちょーさん、ありがとうございます!
    今週でプレミアムレビューがらみは終了したいので、いつもより余裕がありますが(あと9時間以上「も」ある!w)、提出しました。

    つかいつもあとで誤字脱字が見つかるので、今FIXされたらやばいかもと....(^^ゞ
  • しばさん

    2012/08/05

    Ivyだけにちょっとパッケージが青いんですかねぇ~
    レビューお疲れ様です!!
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