日本でも5年ほど前から知られはじめ、2011年の震災に端を発する節電志向に乗って電源選びの一つのポイントとして完全に定着した。
以前は「Gold」というとかなり高価な電源で、電気代でもとをとろうと思ったら、かなり長時間稼働のPCでなければダメだったが、現在ではミドルクラスの「入り口」といった価格設定のクラスでも「80PLUS Gold」を謳う電源が多くなり、気軽に選択できるようになっている。
ただそうなると、「性能」としては各社ほぼ同等になってしまうので、同じクラスであれば結局サイズや出力の選択...と選択のポイントがまた昔に戻った感じになってきた。強いて言うならばレーン設計とプラグインか否かで特徴を出している程度だった。
そこに出てきた新しい提案。
静音。
一般的なPCにおける熱発生源といえばCPUとGPU、そしてAC/DC変換でロスった電気を熱として発散する電源だ。そのためこれらには冷却ファンが付くのがお決まりだった。しかしここのところ上がってきた変換効率のおかげで、熱くないときはファンを回さない、という選択が出てきたのだ。
今回この「セミファンレス80PLUS GOLD認証電源」である「CORSAIR RM850」を検証する。
CORSAIRは多くの電源ユニットをラインアップに持つが、現在「80PLUS GOLD」のクラスにはCS、RM、HX(国内終売)がある。CSシリーズは最廉価なグレードだが、ErP Lot6に対応、自動回転数制御で低負荷時は冷却ファンの回転を抑える機能を持ち、コンパクト設計のセミモジュラータイプ。HXシリーズは7年の長期保証を謳うハイグレードタイプで、ハイブリッド・サイレントファンコントロール機能により低負荷時(850Wタイプは負荷20%まで)にファンを止めるという機能を持っていた。RMシリーズは中間グレードで5年保証となるが(ちなみにCSは3年保証)、フルプラグインでより細かい静音制御がされた「Zero RPM Fan Mode」を搭載した高機能電源だ。
この「Zero RPM Fan Mode」は負荷率40%まではファンを回さず、ファンによる騒音がない、というもの。さらにRMシリーズでは中負荷時(RM850の場合負荷率60%まで)にも「Low Noise」モードで回転するため、ファンが回転しても低ノイズな使用が可能になっているという。フルモジュラー設計のため、接続用のケーブルは多い。フルモジュラーなのですべてを取り去るとスッキリとはするが、メイン系の電源ケーブルが接続されない事はないので、そうすると18cmの奥行きはやや気になるところだ。
DC出力は以下の通り。
+3.3V:25A、+5V:25A(以上合計150W)
+12V:70.8A(850W)
-12V:0.8A(9.6W)
+5Vsb:3A(15W)
一番気になる+12Vは1レーンのドンと来い配分。複数のビデオカードなどを使う際も合計消費電力以外は気にせずつなげられる設計となっている。
またコンデンサは105℃品の電解コンデンサで日本メーカーのモノらしい(分解していないので確認できず)。
実際に使用してみた。
他の構成は以下の通り。
CPU:Intel Core i7-5960X Processor Extreme Edition
(Haswell-E、8C16T、定格3.0GHz、TB時最大3.5GHz、L3キャッシュ20MB)
CPUクーラー:CORSAIR H100i (簡易水冷)
M/B:ASUS X99-A (OC Socket-LGA2011-v3互換-、X99チップセット)
メモリ:Crucial CT8G4DFD8213 ✕ 8 (PC4-17000(DDR4-2133)、8GB、合計64GB)
SSD:Intel SSD730 240GB
ビデオカード:ASUS STRIX-GTX750TI-OC-2GD5
(NVIDIA GeForce GTX 750 Ti、ビデオメモリGDDR5SDRAM2GB)
PCケース:CORSAIR Air 540
OS:Windows 8.1 64bit
対照は同じ80PLUS GOLD認証電源「玄人志向 KRPW-G530W/90」
とした。
比較実験としてはOCCTを30分回したときの消費電力(サンワサプライ ワットチェッカーPlus TAP-TST7の目視観測)と騒音計(iPhone(5)アプリ 騒音チェッカー/INSPECTION+)での測定とした(温度も測定をしたが後述の理由で不採用)。
まず対照の「玄人志向 PC用電源 KRPW-G530W/90」。80PLUS GOLDながら80PLUS PLATINUMに近い変換効率を持つという電源は、OCCT中の消費電力は最大220Wと表示された。ファンに関しては電源スイッチを入れたときの初期動作時が70dB、OCCT中の最大が64dBとなった(ちなみに実行前は59dB付近)。この結果からは最大風速で回っているわけではないが、それなりの負荷がかかっているようで、12cmファンはそれなりの音を発していた。温度的には上昇は見られなかった。
一方、本品「RM850」は消費電力223W。数値だけ見ると誤差範囲とはいえ、KRPW-G530W/90を上回ってはいない。ただこれは当たり前で、同じ80PLUS GOLDクラスなのでほぼ同等の変換効率を持つはずだし、なにより定格に対する消費電力がKRPW-G530W/90のほうが有利だ。一般に電源ユニットの一番効率がよい変換は定格の半分の出力あたりで行われる。実際80PLUS GOLDの規定でも負荷率50%時が90%の変換効率を求められるのに対して、負荷率20%時と負荷率100%時は87%で良いことになっている。今回消費電力220W付近であり、変換効率約9割とすると要求電力は200W付近。定格530WのKRPW-G530W/90は4割くらいのオイシイところだが、定格850WのRM850では定格の1/4以下で変換効率が落ちるあたりだからだ。本来であれば同一の定格出力同士で比較すべきところだ。
一方騒音だが...なんと30分のOCCTの間RM850のファンは一度も回らなかった。室温20.8℃と涼し目の気候ではあったとはいうものの、驚きの結果。当然騒音は環境音の48dB程度で圧勝。
ただ、KRPW-G530W/90と比べてファンが回らなかったため表示は2℃ほど上昇した。しかし電源ユニット本体の温度は触ったところ差がなく、この差は温度センサーへの風の有無による気化の影響が入っている可能性が高い。RM850はCore i7-5960Xを4.0GHzにオーバークロックした際も30分のOCCTではファンが回らず、高い冷却設計を示した。
今回秘宝PCの構築にCORSAIRの80PLUS GOLD電源RM850を使用した。
80PLUS GOLDらしい高能率な変換と安定した出力、フルモジュラー式の取り回しの良さに加え、かなりの負荷時(~40%)においてもファンが回らない「Zero RPM Fan Mode」を備えており、大変静かな電源だ。それでいてシングルレーン70.8Aの仕様は複数枚のビデオカードを積んだ場合でも安心して使用できる。
CORSAIRの80PLUS GOLD電源では「ミドルクラス」の位置づけながら、非常に満足度が高い電源だった。
ほぼ唯一といえる問題点は奥行きが18cmと長いことで、回っても静かな大型(135mm)のベアリングファン搭載とのトレードオフとはいうものの、積む対象を制限する事になる。
しかし、設置状況がこの点さえクリアできればオススメの電源と断言できる。
【RM850(CP-9020056-JP)仕様】
出力:850W
DC出力:+3.3V=25A、+5V=25A(以上計150W)、+12V=70.8A(850W)、
-12V=0.8A(9.6W)、+5Vsb=3A(15W)
規格 :ATX12V v2.4 及び EPS12V 2.92 準拠
電源コネクタ数:メイン24ピン電源コネクタ=1、4+4ピン12V電源コネクタ=2、
6+2ピンPCI-E電源コネクタ= 6、SATA電源コネクタ=10、
ペリフェラル電源コネクタ=8、FDD電源コネクタ=2※
※ペリフェラル⇒FDD変換ケーブル使用
製品サイズ:W150mm×H86mm×D180mm
重量:約2.16kg
80PLUS:GOLD
保証:5年間
輸入元(株式会社リンクスインターナショナル)製品紹介ページ
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購入金額
0円
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購入日
2014年10月20日
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購入場所
5 Reviews ICE Tower秘宝
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