レビューメディア「ジグソー」

使いこなせ…れ…ば…?

今回はプレミアムレビューのステラナビゲータのレビューをしたいと思う。

まずはじめに、今回のレビューで送付されてきたのは、ステライメージ6単体ではなく、ステライメージ6に加えて4,200円の公式ガイドブックが付属し、定価が33,600円となっているセット品だった。単体は実売で25000円前後、セット品が実売で28,000円前後となっているのだが、ステライメージシリーズのユーザーでなければ公式ガイドブック付属品を購入した方がいいだろう。

なお、このステライメージは、ノートブックとデスクトップPCなど、自身所有の複数台のPCで利用する場合でも、同時に使用しないという条件で1ライセンスで複数台のPCにインストールし、使用することができる。



■Windowsへのインストール

Windowsへのインストール一般的なInstallShield Wizardによるインストーラが付属するのでとても単純で簡単。まず何か問題が出るようなことはないだろう。
一般的なInstallShield Wizardが利用されているので迷うことはないだろう
一般的なInstallShield Wizardが利用されているので迷うことはないだろう
最新バージョンは現在Ver.6.5がリリースされており、Ver.6ユーザーは無償で同社ホームページからアップデータをダウンロードし、アップデートすることが可能だ。今回はアップデータ配布後に販売されたものであるからか、パッケージ内にアップデータCD-ROMが付属してきた。

Ver.6.5からは、64bit版のWindowsを利用している場合には、64bit対応版のステライメージをインストールすることができる。もちろん32bit版を利用することもでき、インストール時に、どちらか一方、または両方をインストールすることができるのだが、64bit環境がある場合には、より大容量のメモリーが利用できる64bit対応版のみをインストールすればいいだろう。

新規インストールの場合には、Ver.6.5のアップデータ単体を先に実行することで、Ver.6.0をインストールせずに、直接Ver.6.5のみをインストールすることが可能なので、インストール前にアップデータをダウンロードしておいたり、同梱されるアップデートCD-ROMからセットアップを開始すると、一度Ver.6.0をインストールするという手間が省ける。
アップデータから直接6.5をインストールする場合、6.0がインストールされていない場合には認証のためにVer.6.0のディスクが必要となる
アップデータから直接6.5をインストールする場合、6.0がインストールされていない場合には認証のためにVer.6.0のディスクが必要となる
32bit版、64bit版、またはその両方を選択できる。64bit版のWindowsを利用していて、特になんらかの事情がある場合でなければ64bit版だけで問題はないだろう。
32bit版、64bit版、またはその両方を選択できる。64bit版のWindowsを利用していて、特になんらかの事情がある場合でなければ64bit版だけで問題はないだろう。


■起動

ステライメージを起動するとこんな感じだ…なにやら飾りっ気のない無骨なアプリケーションが起動したという印象。
かなり素っ気ない画面だ
かなり素っ気ない画面だ


■ファイルのオープンから現像まで流れ

ファイルの選択自体はサムネイルから選択できたりといたって普通なのだが、選択後に開かれるファイルの状態をどのようにするかなどこのあたりから普通のRAW現像ソフトやフォトレタッチソフトとは少々勝手が違ってくる。

ファイル選択画面。右上のドロップダウンメニューで表示させるファイルを限定することができる。またCtrlキーやShiftキーを押しながらファイルを選択すれば複数選択も可能だ。
ファイル選択画面。右上のドロップダウンメニューで表示させるファイルを限定することができる。またCtrlキーやShiftキーを押しながらファイルを選択すれば複数選択も可能だ。
読み込み後の状態をどうするかを選択する
読み込み後の状態をどうするかを選択する

一般的なフォトレタッチソフトやRAW現像ソフトであれば、このような設定はなく、とりあえず画像が開かれるのであるが、ステライメージでは、画像生成にベイヤー配列を選択することで現像前の生データ状態を表示させたまま編集することができる。つまり、撮影時のCCDやCMOSなどの撮像素子から出たデータをそのままの表示させるのだ。

天体ではなく、一般的な被写体であれば、この生データを表示させるメリット、意味が殆どないため、普通の写真現像ソフトではこういった機能があることは極めて稀で、ステライメージは特異な存在であるといえるだろう。では、なぜこのような生データから編集する意味があるのだろうか?

それは、天体撮影の場合、極めて微小な光を現像せねばならず、そうなると、一般写真では無視できるレベルの微小なノイズすら天敵となりえるからではないだろうか。

どういうことか…。つまり単純にはこういうことである。

1、天体写真を撮る
2、1で撮影したのと同じISO感度、シャッタースピードでレンズカバーを付けるなどをして光が入らない状態でシャッターを切る

2をすることで、単純にノイズのみの画像が出来上がり、1で撮影した天体写真からノイズ成分のみを取り除くことができるという寸法だ。

最近はヘッドフォンなどでノイズキャンセルという言葉を聞いたことのある人もいるだろう。騒音ノイズと同等の逆位相音をぶつけることで、音楽以外のノイズを消すというアレだ。つまり、ここで行っているのは、ヘッドフォンなどのノイズキャンセルと同様に、写真にもノイズキャンセルの概念を持ち込んだということだ。

とはいえ、この機能自体は大抵の場合、デジタルカメラには「長秒時ノイズリダクション」などとしてデジカメ本体に搭載されていることが多い。しかしながら、これを利用する場合には、撮影後に毎回同じ時間をかけてノイズを削除する工程が入る。つまり、シャッタースピードが10秒であれば、撮影に10秒、そしてノイズキャンセル用の撮影に10秒、さらにそれらの2枚を合成し、実際にノイズキャンセルにかかる時間が毎回加算されるということだ。これではせっかくのシャッターチャンスも逃しかねない。

そこでステライメージでは、同じシャッタースピード、ISO感度、外気温で事前、もしくは事後にノイズ成分だけをもったデータを撮影しておき、その1つのデータを利用して、複数の画像のノイズキャンセルを行おうという具合だ。

また、ノイズ成分の中には、定量のノイズ成分のほかに、ランダムに発生するノイズ成分も存在する。そういったノイズも排除するために、さらに、ノイズ成分のみを含んだ画像を複数枚撮影して用意し、それらを合成することでランダムノイズの影響もできる限り少なくするようなオプションまで用意されている。

これらは、小さな光をより大きくして扱う天体撮影だからこそ必要な機能だと言えるだろう。
ベイヤー配列の撮像素子のデータをそのまま描画
ベイヤー配列の撮像素子のデータをそのまま描画
補正ファイルを指定してノイズを抑制する。ダーク補正だけでなく、場合によってはさらにフラット補正というレンズやフードによる減光やホコリ、チリなどの影を抑制するフラット補正も使うことができる
補正ファイルを指定してノイズを抑制する。ダーク補正だけでなく、場合によってはさらにフラット補正というレンズやフードによる減光やホコリ、チリなどの影を抑制するフラット補正も使うことができる
補正ファイルだけでは補正しきれなかったホットピクセルを取り除く
補正ファイルだけでは補正しきれなかったホットピクセルを取り除く
ベイヤー配列とはなんなのかというのもわからい人に説明しておくと、デジタルカメラによく使われるCCDやCMOSというのは、R(赤) G(緑) B(青) の3画素から色を組み合わせて表現している(それぞれの補色CMYの場合もあるが、そこまでわかっている人であれば説明は不要だろう) 多くの場合はこれらをRGGBの4画素を1組として色を再現させる。G(緑)が2倍なのは、人間の目の感度が緑付近がピークとなっており、緑の解像度を上げることで、人間の目で見た際の見た目の解像度が上がる為にG(緑)画素を多く使っていることが多い。つまり1000万画素の撮像素子であれば、R(赤)が250万画素、G(緑)が500万画素、B(青)が250万画素という振り分けがされており、それぞれの光の強さから見た目の色を再現させるという形になる。
ベイヤー配列からRGBカラーへ変換する際のパラメーターを設定して…
ベイヤー配列からRGBカラーへ変換する際のパラメーターを設定して…
ベイヤー配列からRGBカラーへと変換するとこうなる
ベイヤー配列からRGBカラーへと変換するとこうなる
ただし、いわゆる3CCDであったり3CMOSと呼ばれるような機材の場合にはこの限りではなく、3枚のCCD/CMOSを用意し、それぞれプリズムなどで光をRGBに振り分けそれぞれのCCD/CMOSで記録する形となるのでベイヤー配列ではなく、また、富士フィルム製のカメラで採用されているCCDハニカムシリーズもベイヤー配列に近いものの、より見た目の解像度を上げるような独自の配列と独自の画素を追加していたりするものや、SIGMAのFoveon X3などは理論的には3CMOS/3CCDに近いものの、1枚のCMOSの1画素でRGBの3原色を段階的に露光するようなベイヤー型ではない撮像素子も存在する。

ただ、ステライメージはこれらの一般的とは言い難い配列をしたCCDやCMOSには対応してはおらず、対応しているデジカメを所有していて購入を検討している場合には注意が必要だ。対応機種に関しては、同社の対応デジタルカメラリストを一読しておいた方がいいだろう。CCDハニカム搭載のFinePix Sx Proシリーズなどの場合でも、現像なしとハニカム配列を除けば現像は可能だ。

ステライメージ Ver.6:動作環境
http://www.astroarts.co.jp/products/stlimg6/spec/environm...
暗部や白潰れに注意しレベル補正を行う
暗部や白潰れに注意しレベル補正を行う
ぼやっとしているのでシャープフィルタをかけるのだが…
ぼやっとしているのでシャープフィルタをかけるのだが…
複数のアンシャープマスクを一度に指定できるマルチバンドシャープフィルタがとても便利
複数のアンシャープマスクを一度に指定できるマルチバンドシャープフィルタがとても便利
更にディテールを際立たせたい場合にはマルチバンドウェーブレットフィルタを使うとよさそうだ
更にディテールを際立たせたい場合にはマルチバンドウェーブレットフィルタを使うとよさそうだ
トーンカーブなどで調整して
トーンカーブなどで調整して
不要な部分を切り取って
不要な部分を切り取って
保存するファイル名、ファイル形式を選択して
保存するファイル名、ファイル形式を選択して
圧縮率を指定すれば書き出せる
圧縮率を指定すれば書き出せる
元のファイルが綺麗に撮影できていなかったのでカラーノイズはもう少し何とかしたいところだが、とりあえずできあがり
元のファイルが綺麗に撮影できていなかったのでカラーノイズはもう少し何とかしたいところだが、とりあえずできあがり
ちなみにこちらはSonyのα33本体が書き出したJPEGファイルを切り抜いてPNGで保存したもの。輪郭部分のディテールが飛んでしまっている
ちなみにこちらはSonyのα33本体が書き出したJPEGファイルを切り抜いてPNGで保存したもの。輪郭部分のディテールが飛んでしまっている
こちらはPhotoShop Elements 10のCamera Rawで現像したもの
こちらはPhotoShop Elements 10のCamera Rawで現像したもの
こちらはSILKYPIX Developer Studio Pro 5で現像したもの
こちらはSILKYPIX Developer Studio Pro 5で現像したもの
本体内現像エンジンや各Raw現像ソフトと比較してみると、本体内は明るい部分が飛んでしまっているのがよくわかり、Photoshop Elements 10 Camera Raw 6.5は現像後にレタッチする前提なのか描写が少々甘い。驚いたのはSILKYPIX Developer Studio Pro 5だ…。私がステライメージを使いこなせていないというのも大きく影響していると思われるものの、シャープネス、ディテール共にベストなのではないだろうか…?月という大きく明るい天体の現像であればSILKYPIX DS Pro 5も侮れないようだ。



では星野写真ではどうだろう?まずはSILKYPIX Develper Studio Pro 5での現像した写真から
SILKYPIX Developers Studio Pro 5で現像
SILKYPIX Developers Studio Pro 5で現像

そしてこちらがステライメージVer.6で現像したものだ
ステライメージVer.6.5で現像
ステライメージVer.6.5で現像


…う~ん、こちらもSLIKYPIX Developers Studio Pro 5に分があるように見える…。

星野写真の場合、ステライメージでは、簡単にディフュージョンフィルタと同様の効果が得られるスターエンハンスフィルタを気に入って使っているものの、現在の私のレベル…月、街から見えるレベルでの星野写真というのであれば、SILKYPIXと比較してステライメージの優位性…というものはあまりないように思えてしまった。

天の川が見えるような満天の星空の下、複数枚を撮影してそれを合成してS/N比を上げる(ノイズ低減させる)ようなステライメージの代名詞とも言えるであろうコンポジット処理などをしない、私のような素人の場合にはなかなか有用性が見いだせないというのが正直なところだ…。

感じとしては、RAWからRGBへの変換時の能力や、デノイズ、シャープネス処理など、ベースとなる基本的な処理でSILKYPIXが1歩先をいっているような印象とでもいえばいいのだろうか、フィルタを通さないような処理ではどうしてもSILKYPIXの方が見栄えがいい写真が出来上がってしまった。

もちろん筆者が使いこなせていないという点は大きいのだとは思うのだが、SILKYPIX自体も、それほど使いこなせているわけではないので、この差はいかんともしがたい。


■使用感

まずはじめに感じたのは、10年以上も前に、AdobeのPhotoShop 3.0やIllustrator 5.5などを初めて触ったときに持った印象と同様に感じた。どういった印象なのかと言えば、武骨なインターフェースで、おそらく使い方がわかれば、何でもできるだろうものの、とにかく使い方を覚えなければ何もできないのだが、どこをどうしていいのか何もわからない…なんというか、敷居の高い業務用ソフトといった印象だ。

ステライメージもそうなのだが、どうしても初心者、ビギナーを置いてけぼりにしてしまっている雰囲気があるのは否めない。

もし今回、ステライメージVer.6 公式ガイドブックがなければ、おそらく何もできなかったのではないかと思うほどのもので、敷居が高いと言わざるを得ない。天体撮影、現像に対する情熱の高い人であれば、実際に使えるようになるまで必死で覚えるであろうものの、「さぁどうぞ…」と初心者にこれを渡しても、実際にまともに使えるとは思えない…というより、私自身まともな使い方ができているかどうかというのも疑問であったりする。


価格的にはSILKYPIXと同様の価格で、各種フィルタやデジタル現像などの特殊な処理が行えることを考えれば、天体関連のみを趣味としている人にしてみればお買得のように思えるが、逆に一般の普通の写真も現像したいと考えた場合にはSILKYPIXや、Photoshop Elements/Camera Rawなどの方が有用なはずだ。特にPhotoshop Elementsであれば、ステライメージに搭載されているようなフィルタも、手順は煩雑にはなるができないこともない。

そういったことを考えると、気軽にステライメージを薦められるか?と考えた場合は少々難しい面があるように思う。もちろん、それらのソフトをすでに持っているような人で、どうしてもステライメージでなければならないという理由は、複数枚合成のコンポジットを自動化できるとか、スターシャープやスター円ハンスなどの独自フィルタを簡単に使いたいとか、内蔵されたデジタル現像(Raw現像とは別のもの)が必要だとか、そういった専門色の強い処理を行いたい時だけかもしれない。

万人に薦められるかと言えば難しいが、それ相応の知識と、ほかのフォトレタッチ、Raw現像ソフトではできないステライメージならではの処理を必要とするような理由があるのであれば、購入しても後悔はないだろう。ただ、ちょっと星空を撮影して現像したいというのであれば、ほかのソフトウェアでも不可能ではないし、星空以外の現像やレタッチなど汎用性はほかのソフトウェアの方が優れている面も多いので、購入の際にはよく考えて、できればデモ版を触ってみてから購入すべきだと感じられた。



それと…これはデモ版の話なのだが、raw画像が4枚までしか読み込むことができないという制限があるのだが、正直言ってこれでは多くのことを試したいと思っているユーザーが、しっかりとステライメージを体験するのは難しいように感じた。しかも、ユーザーインターフェースも前述したように、かなり難しい印象で、使っている人であれば何ら問題なく思い通りに使うことができるとは思うものの、デモ版で初めて使うようなユーザーが、ステライメージの良いところを感じられるに至るのかどうかというのも疑問に感じられた。ステラナビゲータ含め、もうすこし初心者、ビギナー向けのチュートリアル的な要素を取り入れることで、敷居を下げることができるのではないだろうか?



ただ、最後にこれだけは書いておきたいのは、もし数年後、私がステライメージを使いこなすことができていたとき、このレビューを見て…

「何を言っているんだ、こんなに素晴らしいソフトなのに、お前はただ使いこなせていないだけじゃないか!」

と言い出すことがあるかもしれない。とにかくそれくらいまだよくわかっていないというのが正直なところである。天文写真など何も知らないずぶの素人が、たかだか数週間程度しか使っていない程度のレビューであり、このレビュー"だけ"を参考にはしないで、是非、天文ファンで使いこなしている方々のレビューや話を聞いてみることをお勧めしたい…。

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