もうすでに半世紀前にもなるが、Gordon Mooreが「ムーアの法則」を提唱し、実際近年までほぼその通りにコンピュータは進化してきた。最近は半導体製造プロセスが原子サイズに近づいており、作動速度を左右する高クロック化も以前に比べると頭打ちになってきていて、以前ほどは「数年前のPCは使えないほど遅い」ということもなくなってきた。
ただ、やはり処理能力向上への要求は今も変わらずあるし、最近はアプリケ―ション/ソフトウェア側の対応も進んだので、特にサーバー/ワークステーション系では「単一アプリのトップスピードよりも、複数アプリ/タスクの並行処理能力」が求められるようになってきた。
cybercatは現在、Intel Core i7-5960X Processor Extreme Edition(以下5960XEE)を中心に組んだPCをサーバー的役割で使用しているが、Xeonなどサーバー専用CPUを除くと当時最強だった「8コア16スレッド」というスペックも、プロシューマー向けウルトラハイエンドCPUの世界では、すでに「普通」の性能。
そんな構築後3年を経過したSOHOサーバーに手を入れることによって、業務効率は改善されるのかを検証する。
今回入れ替え対象(対照でもある)となるコンピュータの構成は以下の通り。
【秘宝PC改】
・CPU:Intel Core i7-5960X Processor Extreme Edition
・CPUクーラー:CORSAIR H100i(CW-9060009-WW)(CORSAIR LINK制御)
・M/B:ASUS X99-A
・メモリ:Crucial CT8G4DFD8213 8GB DDR4-2133 ✕8 Total64GB
・VGA:ASUS STRIX-GTX750TI-OC-2GD5
・システムドライブ:Intel SSD750 SSDPEDMW400G4
・データドライブ:非搭載
・光学ドライブ:非搭載
・カードリーダー&USBフロントパネル:非搭載
・電源:CORSAIR RM850(80PLUS GOLD)
・PCケース:CORSAIR Carbide Air 540
・OS:Windows 10(Windows 8.1アップグレード)
以前、「8コア16スレッドの怪物」としてレビューした、Intel Core i7-5960X Processor Extreme Editionこと5960XEEも、3年経つと陳腐化してくる。特にここ数年では1スレッド当たりのトップスピードは大きな飛躍はないが、マルチスレッド性能の充実とソフトウエア側の対応強化で、「複数の仕事を同時にさせた際の効率化」は進歩が大きいと思われる。SOHOや小規模の会社では、このあたりのCPUが載ったマシンをサーバー用途、あるいはワークステーション用途で使用している会社もあると思われるので、仕事の効率化が図れるのではないだろうか。
一方、「3年」と言うと会社会計的に言うと、「次の」投資の判断時期。一般的に会社の「儲け」を考えた際に、大型機器や高額器具、システム開発など、多額の資金が必要だった「買い物」は分割計上される。日本の企業(個人事業者含む)に対する税金は、単年度の利益に対して掛けられる。前述のような高額支出があった場合、その年の利益を圧迫して、場合によっては単年度赤字になるかもしれない。逆に次の年度はその物品に対する支出がないため、見かけ上利益が劇的回復する。この会計年度内の大型投資の有無による利益の波うち現象を少なくして、その会社の収益力を見極めるためにも、大型投資案件には、会計的に「減価償却」という考え方が採用されている。
「一度投資すれば、ある程度の期間使い続けられる物品」に関して、対外的には一括支払いであったとしても、会計上は複数年分割して「支出」があるような計算とする方法だ。これだと大型支出案件の有無による収益の波うちを抑えられ、その会社の収益力が判断できる。この「複数年分割」にの年数に関しては、購入したモノの種類や額によって決められているが、サーバーは「耐用年数6年」の「器具及び備品(有形減価償却資産)」となる。
特例として購入額10万円未満のものは、経費として一括計上もできるのだが、2014年発売当初は5960XEE単体でも売価10万円を超えており、減価償却対象品となる。今回対象となっているサーバーは当時購入した場合、およそ36万円(この期間メモリが乱高下したので、どの月に購入しているかで大きく上下するが)。6年間の減価償却を定額法でやれば半分、定率法でやれば29万ほどが「償却」(つまり会計上の支払)が終わっている。耐用年数が半分終わった時にその償却済み額以下の追加投資で大幅な作業性アップが図られるのならば「アリ」の話だ。
...ということで、3年前に建てたSOHOサーバー機に最低限の改修を入れて、より高い処理能力を持たせ、サーバー自体も延命させるという命題。
このミッションに最適なのは、AMDの復活の狼煙、Zenアーキテクチャのコンシューマー用最高性能CPU、AMD Ryzen™ Threadripper™ 1950X(以下1950X)。2018年3月現在の販売価は約12万円だが、3年前にほぼ同価格だった5960XEEと比較すると、コア数とスレッド数は倍、ベースクロックもブーストクロックも上回る仕様性能を持つ。
CPUを5960XEE⇒1950Xへと変えると、当然5960XEEのソケット=FCLGA2011-3とは物理的互換性はないので、M/Bも入替対象となる。Ryzen™ Threadripper™用のM/Bは、種類が多くないこともあって価格差があまりないが、その中でも最低額に近いベーシックボード=ASRock X399 Taichi
を選択。これは現行M/BがASUSのX99-AというX99チップセットM/Bシリーズの中ではベーシックなグレードだったからだ。またCPUクーラーはCORSAIR H100iの後継に当たるCORSAIR H100i V2であれば、TR4用金具も同梱するが、無印のH100iにはないので、今回は巨大になった1950Xのヒートスプレッダに 合わせて、それを完全に覆う数少ないCPUクーラーの中から、大型二連ファン仕様のENERMAX ELC-LTTR280-TBP
をチョイスした。
交換対象になる3パーツ合計は約18万で、この3年で減価償却した額以下であり、この額でサーバー機が性能アップ&延命が果たせれば大変有意義。もちろん、新しいマシンには新しいパーツが似合うので、メモリーはDDR4としてベーシックな2113ではなく、より高クロックな2667や、さらに言えばOCメモリの3200などの方がよいだろうし(とくにZenアーキテクチャはメモリクロックの影響を受けやすいので)、記憶媒体も最新の高速でコンパクトなNVMe M.2 SSDを使用したほうが良い。M/Bとして選択したASRock X399 Taichiは、メモリはオーバークロックメモリの3600+まで対応、M.2ソケットも3つあり、NVMe RAIDにも対応しているので、さらなる高速化への道を残すが、今回は「3年前のIntel ワークステーション/小規模サーバーに必要最低限の手を加えて、性能アップによる業務効率化と延命をはかる」というミッションなので、ここには投資しない。メモリやSSDまでここで変えてしまうと、ほぼ買い替えに近い状態になってしまうので、「低予算」という趣旨に反するからだ。
また、今回の設定は稼働中のサーバーの部分的増強で総費用を抑える手法だが、一から組んだ際に、メモリなどがベーシックグレードでも性能を発揮するのが期待できるかという点は重要だ。DDR4も高クロック品はまだ高価だが、ベースグレード品はかなりこなれてきている。中古で入手、という手法も考えると、古くても規格的に使いまわせるものは使いまわす、というテで行きたい。
なお、今回は可能な限り交換必須なもの以外は交換しないスキームで構築したが、ライセンス上OSに関しては旧環境のキャリーオーバーではなく、別ライセンスを用いたため、OSが比較対象機のWindows 10の無印から10 Proになっていることだけはご了承いただきたい。
今回、「低予算でもハイエンドが欲しい!コスパ最強PC自作」が与えられたお題。そのため、上記のように「3年前に組み立てたSOHOもしくは小規模な会社において、サーバー的に使っているintel Core i7-5960X Processor Extreme EditionベースのPCに必要最低限の手を入れて、性能アップデート&寿命の延長を図る」という設定で構築してみた。
すなわち元PCは「X99チップセットM/BベースのHaswell-Eマシン」。うまい具合にこの世代からメモリはDDR4になったため、物理的互換性はある。またSSDも(これは元と換装したという設定)PCIe接続のIntel SSD750ならば問題はない。ビデオカードは今となっては「高性能」というほどではないが、GPGPUなどでガリガリ使わないならば今でも十分現役クラス。電源もあれこれボードを積まないならば、トータル容量は十分だし、接続端子形状/数的にもほぼ足りる...
ということで、換え「なければならないもの」はCPUとそれに合致したM/Bだけ(今回は主に対応金具の問題でCPUクーラーも交換したが)。
「元」となった、Core i7-5960XEEベースPC=秘宝PC
したがって元PCからガンガンパーツを外していくことになる。
まず拡張ボードを外したのち、結線をすべてはずし、その後CPUクーラーの金具をはずす。冷却ブロックを取り、万一それが「暴れた」ときも基板などを損傷しないように、ここで簡易水冷(CORSAIR H100i)をケースからはずし、撤去する。その後M/Bの固定ねじを外して、M/Bをケースから外す。
1950Xの方の準備は、ケースサイドにかかっている紙の封印を破り、黒発泡スチロールのアウターケースを取ると、中から円錐を途中で切ったようなプラ素材の容器が出てくる。この容器の裏側にあるダイヤルをねじると1950Xが固定されている部分が取れる、という造り。
凄いデカイパッケージ。Mini-ITXケースより一回りしか小さくないくらい。
付属品はステッカー(左上)とCPUクーラーのブラケットとトルクスレンチ
ここまででも結構手順を踏んでいるが、まだM/BにCPUを取り付ける準備まで行かない。CPUである1950Xは、それをしっかり固定した台座と一緒に取れるので、台座を分離する作業がある。針金のストッパーを取り去り、上下からつまんでプラスチックの枠を外すとようやく、CPUが剥き出しになる。
針金のストッパーで固定されているプラ枠を取って初めてCPUが裸に...
かなり大きなCPUで、ほぼクレジットカード大と言えばイメージが掴めるだろうか。
ただ、このRyzen™ Threadripper™は他のCPUのようにCPUを剥き出しにしてからソケットに落とし込むのでは「ない」。オレンジのプラ系素材の「枠」が付いており、これをソケットTR4のガイドに沿わせて入れることで、装着ミスが起こりづらい形になっている。
「OPEN 3->2->1」、「CLOSE 1->2->3」と刻印があるので迷わない。
まず、ソケットTR4のカバーを付属のトルクスレンチで「3⇒2⇒1」の順に外す。そしてCPUスライドガイドの青い部分をやや開くような形で押さえるとスライドガイドがポンっと飛び出す。
代わりにRyzen™ Threadripper™をガイドごとスライドイン。
そのガイドに嵌まっている透明プラスチックのダミーカバーを抜いて、オレンジのスライドガイドに装着されたままのRyzen™ Threadripper™をスライドイン!
そしてスライドガイド⇒ソケットカバーの順に閉じて、今度は「1⇒2⇒3」の順に付属のトルクスレンチで絞める。絞めるとき気がついたが、このレンチ、きちんと絞めすぎ防止機構が付いている優れものだった。
CPUの取付というとナナメ挿入によるピン曲がりや装着カバーを押さえる針金がストッパーにかかりづらいなど、気を付けなければならないことや難しい事が多いが、最高級CPUであるにもかかわらず(だからこそ?)、ストレスフリーで確実な装着が短時間に出来る、良いソケット構造であると感じた。
この後はメモリを戻したあと、M/Bをケースに組み戻し、結線⇒CPUクーラー取付⇒拡張ボード戻しと進んで無事Ryzen™ Threadripper™マシンが完成した。
以前と同じ回し方だと、クーラントチューブがファンに当たったので、取り回しを逆にしてある。
今までのCore i7-5960XEEでも8コア16スレッドで、個人ではなかなかその性能を使い切れなかったが、さらに立派になった「コアもスレッドも2倍」のスレッド立派Threadripper PCによる性能向上は、「低予算でもハイエンドが欲しい!コスパ最強PC自作」の項に記載した。
【スレッド立派PC(Rev.0.10)】
・CPU:AMD Ryzen™ Threadripper™ 1950X(本品)
・CPUクーラー:ENERMAX LIQTECH TR4シリーズ ELC-LTTR280-TBP
・M/B:ASRock X399 Taichi
・メモリ:Crucial CT8G4DFD8213 8GB DDR4-2133 ✕8 Total64GB
・VGA:ASUS STRIX-GTX750TI-OC-2GD5
・システムドライブ:Intel SSD750 SSDPEDMW400G4
・データドライブ:非搭載
・光学ドライブ:非搭載
・カードリーダー&USBフロントパネル:非搭載
・電源:CORSAIR RM850(80PLUS GOLD)
・PCケース:CORSAIR Carbide Air 540
・OS:Windows 10 Pro
もともとZIGSOWに参加したときにはAMDマシンを使っていたcybercat。何事も「一強」は良くない、と判官贔屓な部分もあったかもしれないが、AMDの独自性に魅せられていたのもたしか。
20世紀末にGHz競争でIntelに競り勝って以降、若干輝きを失い、ミドルランク以下でしか存在感を示せなかったAMDが、復活の狼煙としてリリースしたZenアーキテクチャシリーズ。その中でも個人向けで最上位となるのが、コンシューマー用CPUであるRyzen™を二つくっつけたようなプロシューマーシリーズ、Ryzen™ Threadripper™。
その特徴は
・強力なマルチスレッド性能はIntel以上の分野もある
・やや不得手なシングルスレッド性能も比較的高めのクロックでカバー
・同時に複数の使い方をするサーバー的用途や、重い作業の傍ら使用継続という場面で魅せる
・消費電力はやや高いが、ワットパフォーマンス自体は悪くない
というモノだった。
自分としては複数作業を行っても、「引っかかる感じ」が5906XEEよりも少ないので、もう少し手を入れて、いっそのことメインマシンを変更しようかと思っている。
3年前のIntelエンスージアスト向けCPU、Core i7-5960X Processor Extreme Editionの部分リプレイスとしてハイコストパフォーマンスな提案となった、Ryzen™ Threadripper™ 1950X。
..また、面白い時代がやってきたようだ。
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このあと、このCPUを積んだPCは、キャンペーンで入手したM/Bへの換装、メインストレージ・テンポラリーストレージ・データストレージのストレージ系追加/増強、ビデオカードの高性能タイプへの換装、I/Fの追加、劣化による冷却系の入れ替えなどを行い3年後においてもメインPCを張る存在に。
ただし、本CPU=AMD Ryzen™ Threadripper™ 1950Xが、2021年10月配布開始の次期OS=Windows 11に対応しないことが発表されたため、増強・改造は打ち止めとすることにした。
ここにその最終スペックを記載しておく。
【スレッド立派PC(Rev.4.00-final-)】
・CPU:AMD Ryzen™ Threadripper™ 1950X(本品)
・CPUクーラー:ENERMAX LIQTECH ELC-LTTRTO280-TBP
・M/B:ASUS ROG ZENITH EXTREME
・メモリ:G.Skill TridentZ Neo F4-3200C16D-32GTZN ×2 Total64GB(16GB✕4)
・VGA:msi GeForce GTX 1080 GAMING X 8G
・システムドライブ:PLEXTOR PX-512M9PeGN ×2(RAID0)
・一時保管用データドライブ:SanDisk SD9SB8W-512G-1122 ×2(RAID1)
・長期保管用データドライブ:WD40EFRX-RT2 ×2(RAID1)
・光学ドライブ:Pioneer BDR-209XJBK/WS
・カードリーダー&USBフロントパネル:Bullet IOP525
・電源:CORSAIR RM850(80PLUS GOLD)
・PCケース:CORSAIR Carbide Air 540
・フロントファン1:ENERMAX APOLLISH VEGAS UCAPV12-BL ×2
・フロントファン2:ENERMAX T.B.VEGAS QUAD UCTVQ12P
・OS:Windows 10 Pro
...結局構築時と比較すると、このCPUの他はガワと電源しか残ってないじゃないか...
【AMD Ryzen™ Threadripper™ 1950X仕様】
CPUコア数:16
スレッド数:32
Base Clock:3.4GHz
Max Boost Clock:4GHz
L1キャッシュ合計:1.5MB
L2キャッシュ合計:8MB
L3キャッシュ合計:32MB
プロセスルール:14nm
ソケット:sTR4
TDP:180W
メモリータイプ:DDR4(最大2667MHz)
メモリー・チャネル:4
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2021/09/19 メインPCの最終スペック記載
メモリや、SSDはそのままでも充分速い!コスパ抜群な部分リプレイスが可能
「Zenアーキテクチャはメモリの高速化が効く」と巷では言われてる。ただ、現在はメモリが高止まりしている時期で、CPUに(ひいてはM/Bも)合わせてメモリを刷新するとかなりの出費になる。また、SSDもひところの2.5インチSATA SSDから、(PCIeスロット利用SSDを経て)M2.スロットを使うコンパクトで高速なSSDに移ってきているが、もう少し従前のものを使い倒したい..ということで今回「CPU」と「M/B」という最低限だけの交換をコンセプトに「部分リプレイスPC」を作成した(実際にはCPUクーラーの取付ブラケットの問題から、CPUクーラーも新調←CPUクーラーの入手時期や冷却ブロックの形状如何では購入しなくても済んだ可能性もある)。
ただ、そんな「ボトルネック」を残した部分リプレイスで高速化は果たされるのか?という点を、ベンチマークと実運用で検証してみた。
まず、比較対象となる元PCだが、約3年前に組んだ「秘宝PC」がベース。つまり、Intel Core i7-5960X Processor Extreme Editionを中心に組んだ、マルチスレッドデーモン。違いはSSDが当初のSATA 6GbpsのIntel SSD730(SSDSC2BP240G4R5)から、NVMe接続のIntel SSD750(SSDPEDMW400G4)になっていることと、OSがWindows 8.1からアップグレードでWindows 10になっていること。
まずはどちらかと言えばCPUの、というより画像系のベンチマークだが、高負荷系以外はCPU性能もスコアに影響するという「3DMark」。
低負荷の方(上側)がより差が大きい結果に。特にIce Storm系のスコアはCPU系がダブルスコアな上に、ビデオ系も3割前後上昇している。一番最新のDirectX 12対応のTime Spyでは、描画に関して「CPUができる事」がほとんどないのか、差は少ないが、それでも約5%スコアが良い。CPU系は2割以上のスコアアップ。スコアから見る限り、1950Xでは最低2割以上効率が良いことになる。
おもしろいのが並列処理を観る「Sky Diver」。おおむね「マルチスレッド番長」である1950Xの方が良いスコアなのだが、8スレッドだけ5960XEEの方が優れている。これは何度やっても再現性があるので、ブレではないし、低スレッドに行くにしたがって5960XEEのスコアが伸びて(というか表現的には「高スレッドでも1950Xのスコアの落ち込みが少ない」というのが正しいのだろうけれど)、最小スレッドの8スレッドでは1950Xと逆転する...というならまだ話が分かるのだが、1950Xの8スレッドのスコアは、より並列化が進んでスコア的には落ち込むはずの24スレッドのスコアより悪いので、単に低スレッドに強い5960XEEと高スレッドに強い1950Xという傾向的なものだけではないようだ(バグ??)。
次に、よりオフィス系作業に近いベンチマーク「PCMark」から、最新の「PCMark 10」。
トータルスコアの差は2割だが、チャットやビデオと言った映像系の差が少ないのを除けば、おおむね25%増しという感じ。
画像系はむしろ5960XEEの方わずかに良い。が差は誤差程度。
その他のベンチマークは項目が少ないので一覧で表すが、まずマルチスレッドが一番「効く」ベンチである「CINEBENCH R15」は、ビデオカードを換えてないので、OpenGLはほぼ誤差範囲内だが、CPU描画機能を使った並列処理、「CPU」はスレッド数がヤヴァイ↓。
一方、ほぼ純粋な描画系のベンチとなる「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」のビデオカードが同じ状況ではスコアの差はほぼない。
おもしろいのが、圧縮解凍系のベンチマーク、「7-Zip ベンチマーク」。並列化が効くこのソフトのベンチマークの数値そのものは、コア数・スレッド数ともに倍の1950Xの方が圧倒しているのは当たり前?なのだが、1950Xは解凍のスコアが良く、5960XEEは圧縮のスコアが良い傾向にあること。得手不得手があるのだろうか?
ではベンチマークのスコアではなく、実際の使用状況をシミュレートした状況ではどうだろうか。
単発のソフトをPCで実行して差を調べるという手法では、5960XEEですら待たされる感覚はほとんどなく、むしろ操作する方が「人間ボトルネック」となり、純粋なCPUによる差が出づらいので、次のような形で評価した。
・「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」を走らせる
・「CINEBENCH R15」のCPUを走らせる
・「7-Zip」で8.58GBのmp4ファイルを7z形式に圧縮する/もしくは/7z⇒mp4に解凍する
以上を同時に行って必要な時間を計測した。
つまり、重いファイルの高圧縮・解凍系作業と、CPUを使った描画を行いながら、同じpcでゲームを行っているようなシチュエーション。
ベンチマーク系は、7-Zipが動いている間はループもしくは再走させて負荷を与え続け、実際の評価は7-Zipでの圧縮・解凍の所要時間で比較。
これは劇的な差が付いた。さすがにコア倍、スレッド倍でクロック数も上の1950Xの圧勝。
ただ、ベンチマークでもその傾向が見られたが、両CPUには解凍と圧縮の得手不得手があるようだ。展開(解凍)は1950Xが約1/5の時間で終了する「圧勝」なのに、圧縮は2/3の時間短縮に過ぎない←これでも十分速いが。実はこの「多重ベンチマーク」状態だと、単体のときよりもそれぞれのベンチマークのスコアは当然落ちるのだが、1950XのCINEBENCHの計測中のスコア変動に注目すると、展開(解凍)時は落ち込みが1~2割程度の範囲に留まり十分速いのに対して、圧縮時は非道いときには1/10程度まで落ちる。圧縮と解凍でスレッドの使い方に違いがあるのかも知れない。
3つの重めのソフトの同時実行は「あり得る」シチュエーションをシミュレート。
1950Xに良いことばかりでも仕方がないので?スペック表上の唯一のウイークポイントともいえる電力消費の状態を計測した。もともと、Ryzen™ Threadripper™はTDPが高く設定されている。1950Xに関して言えば180Wで、5960XEEの140Wに対して3割近くも高い。ただ、TDPはどちらかと言えば「熱設計用の想定消費電力」にすぎず、平時は省エネだが、ピーク時のみバカ喰いする、というタイプだと高めに表記されてしまう。そのため、実際にアイドル時と高負荷時の消費電力を計測した。
OCCTを30分かけ、その間のPC全体の消費電力をワットチェッカーで追った。結果として1950Xはアイドルが74W、実行時165~257Wだったのに対して、5960XEEはアイドル63Wで実行時145~220W。電力消費量の積算は出来ないワットチェッカーなので最低最高電力の単純比較となるが、約15%内外の差。アイドル時でもPCに全力負荷をかけた場合でも、1950Xの方が15%程電力を多く消費すると言うことになる。そのため消費電力絶対値としては、1950Xはその高い処理能力と引き換えに電力食いであると言える。
ただし、「ワットパフォーマンス」で見た場合、前述のベンチマークの結果から消費電力増加分に相当する15%以上の高速化がされているので(ベンチ内容にもよるが、最低でも20%以上の向上で、ザックリ25%内外あたり)、タスクあたりの消費電力、という意味では良好な結果となる。まぁ、アイドル状態でも差があるので、「仕事をさせていないと無駄飯食い」とも言えるかも知れないが。
この価格でこの性能は反則技
重い作業をやらせても3つくらいならスルスルこなす。個人で使う分には、処理を「つまらせる」のは至難の業??
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