Surface と iPad、Android端末。見た目や使い勝手が似通ってるため比べられることが多いですが、実際に使い比べてみると、目指しているトコロが違うように感じます。きっとそれは、iPad 等がケータイの進化形であるのに対して Surface が パソコンの進化形だからでしょう。
Surface の強み、それはモノを作れるデバイスである、ということ。
僕は「モノ作りができるデバイス」として、 Surface2 の創造性能を検証すべく、レビューしてみます。
「モノ作り」と言って何を指すか、というところですが、僕は(本業もそうですが)プログラムやシステムを作るのが趣味なので、今回はプログラムやシステムを作るのにSurface2 を活用する、という視点で話を進めます。
「レビューの前に」
レビューを始める前に、まずは構成の紹介を。
実はレビュアーに選出されるまで知らなかったのですが、Surface 2 はキーボード標準搭載じゃないんですね。知らないで「創造性能をテーマにレビューする!」と手を挙げてました。
店頭で何度か触って感じてましたが、「タイプしやすいキーボード」は Surface シリーズの魅力のひとつですよね。早速コレを買ってきました。
タイプカバー2
ということで、以下 Surface2 + タイプカバー2 の構成をベースに進めます。
Surface2の立ち位置は?
普段、プログラムはメインマシンで書いてます。
ディスプレイの解像度も2048x1152dotとそこそこ広く、快適にプログラムを書けます。
これ自体は今後も同じ立ち位置で使うのですが、 ただこれは据え置きのデスクトップなので、僕の部屋(ラボと呼んでる狭くて寒い部屋)でないと使えないんですよね。そこで、居間や寝室、外出先で作業したいときには Netbook などを活用しています。今回は、 Netbook などのデバイスと比較して、Surface 2 がどのように使えるかをレビューします。
比較対象にするのは、これ。
それとこちら。
S101でサーバの設定の図
これらを Surface2 で置き換えてみましょう。
まず Kindle。外出時のセルフソースレビューに使っています。元々ドキュメントを読むためのツールなのでソースも読めはするのです。
Kindleでセルフソースレビュー
読めはするのですが、レイアウトの問題で一覧性がいまいちなんですよね。またファイルの転送はUSB接続で母艦から転送する必要があるので、頻繁な入れ替えはちょっと手間です。
致命的なのは、この Kindle 3G はキーボードを積んでいるものの、テキストの編集ができないのです。全くの参照専用なんですね。
Surface2 で置き換えると、こんな感じになります。
Surface2 でセルフソースレビュー
実は Surface2 は、標準でエディタが入っていません(Notepadはありますが)。そこでエディタとしてWindowsストアから Code Writer を入れました。エディタがきれいに色分けをしてくれるし、Surface2 は解像度も高いので、一覧性は断然良くなりました。
またコードは SkyDrive 経由で母艦と連携できるので、転送も手間がかかりません。
スカイドライブとの連携
もちろんエディタなので、ちゃんと編集もできます。ただし、Code Writer は日本語に対応していないので、コメント文などの日本語が必要な部分は編集できないのです。ここは Code Writer の今後に期待。
次に S101 との比較を考えてみます。S101 はいわゆる Netbook で、ブームの際に買ったものです。未だ現役。が、Windows XP もサポートが切れるので、そろそろリプレイスを考えたいところ。
PCとして Netbook は非力なので、もともと eclipse や Visual Studio のような大型の統合開発環境などには向きません。ですから普段は秀丸エディタでの作文や TeraTerm からのサーバ操作に使っています。
Netbook でTeraTerm を使ってサーバ設定変更中
残念ながら秀丸エディタの Windows ストア版は存在しないので、Surface2 では秀丸エディタを使うことはできません。が、文章作成が目的なら、これ使っちゃえばいいんですよね。Microsoft Word!
Microsoft Word
ARMアーキテクチャのCPUを積んだ Surface2 の処理能力を単純に Atom と比べることはできませんが、体感的に十分に強力になったCPUのお陰もあって Word がサクサク動きます。このレビューも2割くらい Surface2 から Word で書きましたが、作文をする上では特に問題ありませんでした。
ただ表示を「下書き」や「アウトライン」にするとスワイプが効かなくなるので(なぜでしょう?)、印刷レイアウトだと画面狭くて嫌、というならWebレイアウトで編集するのが良さそうです。
ちなみに、Word も当然のように SkyDrive と連携できるので、母艦との文書共有は容易です。
TeraTerm からのリモートコントロールはどうでしょう。
Netbook では TeraTerm を使っていましたが、 Surface2 では Remote Terminal を使えば実現できます。有償ですが、280円なのでまあおやつを一回我慢すると思えば。
Remote Terminal
操作性はシンプルで、十分作業をこなせる程度に使えます。
ただし Linux の操作で頻繁に使うパイプ(|)が Surface2 のソフトキーボードにはないので、
タッチカバーなどの物理キーボードを持ってないと実質使い物になりません。これはご注意を。
調べ物しながらのターミナル操作も可能です
最後にもうひとつ、裏技的な使い方の紹介を。
何でもできるとは言え、Windows RT を採用する Surface2 では、さすがにコンパイラは動きません。これが Surface Pro 2 なら eclipse や Visual Studio も入るのですが。
しかしリモートデスクトップ(RDP)を使えば話は違います。
僕のメインマシンは Windows XP Professional なのでリモートデスクトップができます。S101 は Netbook の制約で 800x600dot の解像度しかなかったため、RDPで使ってもあまり実用的には使えませんでしたが、Surface2 の広大なディスプレイだと全く違和感無く使えます。
RDPできてしまえば Windows RT の最大の短所である既存プログラムとの互換性の無さを(仮想的にですが)解消することができます。この使い方、真面目にオススメです。
Surface2といえばやっぱりキーボード
さて、えらいキーボード褒めるけど実際どういいの? というところで論より証拠、見ていただきましょう、その実力を!
キーボードがないとこんな感じ。
ちなみにこれファミレスでセルフ撮影です。
キーボードを使うとこうなります。見比べると歴然です。
タイプカバーをつければ通常のノートPC並みに使えるので、前述のツール群と組み合わせればどこでもコーディングができちゃいます。
実際に開発作業をやってみました。寒かったので、居間のコタツに入って僕の部屋(ラボと呼んでる狭くて寒い場所)にあるメインマシンへログオンしました。
コーディング→コンパイル→デバッグ実行 まで。シンクライアント的な使い方ですね。画面の解像度が高いので、こんな使い方も全く違和感なくできます。コタツで作業できるのはいいですね。ぬくぬく。
[2014/01/05]
このときSurface2で作っていたアプリが完成しました→走るミク
http://www5d.biglobe.ne.jp/~yggsoft/software/index.html#runMiku
やってて気付いたのですが、Surface2 のファンクションキーは Fn キーと同時押しなので、コンパイル(F7)やデバッグ実行(F5)などのキーを使うときは要注意です。
周辺機器との連携は?
Surface2 の周辺機器、といえば筆頭はタイプカバーですが、その様子は前セクションにて動画でご覧に入れたとおり。ここはちょっと視点を変えて、家庭内のファイルサーバとの連携をレポートしてみます。
Surface2 はストレージ容量があまり多くありません。
その機動性やイニシャルコストと引き換えであることは理解できるものの、音楽や動画などのコンテンツを全てストレージに入れておくのはちょっぴり躊躇してしまうところがあります。SkyDrive がこれを補完するソリューションのひとつではありますが、標準では 7GB と、やはり大量のファイルを常時置いておくには無理のあるボリュームです。
その解決策のひとつがファイルサーバでしょう。すでに一般家庭にも浸透してきた感のある手段ですが、それだけに Surface2 でも当然に使えて欲しいツールです。
ファイルサーバ上のmp3
なんて。引っ張りましたが、当然のようにファイルサーバへアクセスできます。このあたりがさすが Windows ですね。
対象のファイルサーバは Ubuntu 10.04 + samba 3.4.7、接続は家庭内の無線LAN AP を経由して CIFS で接続しています。凝ったことはしていないので、市販のファイルサーバであっても同様に接続可能だろうと想像します。
ファイルサーバ上の音楽は、タップ(ダブルクリック)で再生できます。ただ、音楽再生アプリ「ミュージック」上でコレクションへの登録ができないため(コレクションへの登録はローカルファイルに限られているようでした)、ファイルサーバ上の好きな曲をリスト化して順に再生...という使い方はできないようです。残念。
次にプリンタとの連携を試してみました。
やっぱり Office を搭載しているなら、直接プリントアウトできないと不便ですよね。Windows RT 用のドライバってちゃんとあるのかな? と思いましたが、意外なほどにしっかりサポートされていました。
テスト印刷してみました
接続したプリンタはこちら。
プリンタは無線LAN経由で各PCと繋いで使っています。Surface2 を接続する際、最初は「PC設定」メニューから PCとデバイス - デバイス - デバイスの追加 でプリンタを追加できるかと思ったのですが、残念ながらこれではデバイスを見つけてくれませんでした。
そこで次の方法でプリンタを追加したらうまくいきました。
- コントロールパネルから デバイスとプリンター を開く
- ウィンドウ左上の プリンターの追加 を選択
- プリンターの追加ダイアログで「探しているプリンターはこの一覧にはありません」を押下
- TCP/IPアドレスまたはホスト名を使ってプリンターを追加するを選択して「次へ」を押下
- プリンタのIPアドレスを設定(僕はルータからDHCPで固定IPアドレスを振っているので、ルータの設定を参照しました)
写真でもWebサイトでも、直接印刷できるのは便利ですね。このプリンタは、Surface2 から細かい印刷設定もちゃんとできました。
もうひとつ試したのでついでに。
DELLキーボードを挿してみました(ぶれぶれです)
周辺機器の観点ですと、じつは普通のUSBキーボードも挿せます。持ち歩く、という点では実用的ではないですが、長文入力はたまにしかしない、というのであれば必要なときだけ普段使いのキーボードを挿す、という使い方もありです。
認識直後はキー配列がUS配列になってしまいますが、デバイスドライバの設定を変更すれば直ります。設定は次の手順です。
- コントロールパネル - ハードウェアとサウンド - デバイスマネージャー を開く
- キーボード - HIDキーボードデバイス を選ぶ
- コンピューター上のデバイスドライバの一覧から選択します を選ぶ
- 互換性のあるハードウェアを表示 のチェックを外す
- デバイスドライバの一覧から「Microsoft Basic Keyboard(106/109)」を選ぶ
- 次へ をタップ
- 警告ダイアログに「はい」をタップ
- 完了画面に「閉じる」をタップ
僕の環境では HIDキーボードデバイスが 2つ出てきましたが、一方を削除してもう一方を設定したらうまく動作しました。
Surface2 はキーボードが無くても自立しますし(他のタブレットみたいにスタンドが要らない)、正直 Surface 専用キーボードは通常のキーボードと比べると高いので、入力作業をあんまりしない方は、外付けキーボードも検討する余地はあると思います。でも僕みたいに「モノ作り」に使うなら、タイプカバー2 必須です!
使って気付いたオススメポイント
オススメはやっぱりタイピングしやすいキーボード!
最初っからこればかりですが、タイプカバー2 のキータッチは一般的なノートと比べても素晴らしく、ポーズではない、実用ツールとしての出来になっています。キーピッチ、配置するキー、妥協せずよく検討した結果だと思いますが、変にキーが省略されていない上に標準の日本語配列キーであるのが素晴らしい。おかげで、Linux などのサーバ操作も快適です(たまに | キーを搭載しないものがあるので)。
別の角度で気付いたポイントも 2つあります。
ひとつは Windows 8 自体の出来。いままでと違い過ぎるUIが、意外にも受け入れやすく、使い易いという点です。
実は僕、仕事でもプライベートでもまだ Windows 8 を使っていません。Windows server 2012 を触ったので勝手が大きく変わったのは知っていますが、また新しい使い勝手覚えるのは学習コストが高いなあ、と思って敬遠していたのは、事実でした。
実際に触ってみて実感したのは、この OS がタッチUIに最適化されているということでした。画面外から内側に向けて行うジェスチャーで制御する、という操作性は覚えやすく、またどのプログラムでも一貫しているため応用が利きます。タッチで確実に操作するためにアイコンはタイル状に大きくなり、操作の成否を即時にレスポンスするエフェクトも搭載されました。
基本的なフィーリングを覚えたらすぐ使えるようになる、という点で、さすが老舗 Microsoft 、よく考えているのだなあ、と感心しました。
もうひとつはバッテリーです。
この連休、早速 Surface2 を持って朝から晩まで東京を散策してきたのですが、8時間弱の間、子どもを撮ったり景色を撮ったり、撮った動画を一緒に眺めたりしていてもバッテリーインジケーターは50%を切りませんでした。通信をすればもう少し違うのかもしれませんが、この分ならバッテリーは全く気にしないで良さそうです。
鞄に放り込んで持ち出す、というのが現実的にできるのは気楽でいいですね。いままでは「ACアダプタどうしよう」なんて葛藤が必ずついて回りましたから。これも気に入ったポイントです。
Surface2 のキャッチコピーは
閲覧、参照に重きを置いたデバイスが多い中で、Surface 2 は Output、創造に力を入れているように感じます。キーボードの本気度、マシンパワーの高さ、そして Office 製品を標準搭載するという戦略。そういったスペック面からもそうですし、実際に使った上でも、モノ作りのためのツールとして整備されつつあるのを強く感じました。
動画やWebを見るだけならコレじゃなくてもいいでしょう。でもあなたがモノ作りの人で、アイディアをカタチにする手段に飢えているなら、Surface2 はあなたの創造力を、どんな場所でもサポートしてくれるデバイスとなるはずです。
そんな想いからキャッチコピーは、こうしました。
Creatablet, Surface 2.
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