Intel Core i7-4770Kのプレミアムプレビューです。お題は「統合型VR」。より進化した電圧制御システムにより、パソコンの消費電力はさらに低下しているのか探っていきます。
#0 統合型VRとは?
統合型VR(Voltage Regulator)とはIntelが長年開発を続けてきた電圧制御技術FIVR(Fully Integrated Voltage Regulator)がいよいよ形になったものといえます。
ちなみに「Fully」がイミフなので、今ではiVR(Integrated Voltage Regulator)と呼んでいるようです。
このiVRにより、今までマザーボード上に実装していた電圧制御チップをCPU内に格納し、CPUパッケージ単位でしか制御できなかった電圧をCPUのコア単位で制御できるようになりました。これらの技術革新を搭載したのが第4世代CoreシリーズのHaswellであり、今回のお題でもある統合型VRです。
電圧制御がCPUに統合されることで何が大きく変わるのかというと、コア単位で消費する電力を制御できるということです。負荷のかかっているコアには適切な電流を流し、負荷のかかっていないコアへの電流は抑えておけるということです。簡単に言うと、今まではシングルコアで動作しているのに、4つのコアすべてに同じ電流が供給され、シングルコア動作なのに電力消費は4倍だった。これがコアひとつだけに電力供給するだけでいいとなれば電力消費は1/4に削減できるといえます。いささか適当な例ですが、要は無駄な電力消費を抑えられるというのが統合型VRの利点です。
さて統合型VRによってより細やかな電力制御ができるようになったということは、コア単位での電力消費をコントロールできるようになったこと以上に大きな意味を持ちます。それが低電圧での安定したシステムの運用です。余分な電力消費を抑えられるようになったといっても、電圧を落としすぎてはシステムの安定した動作は見込めません。そこで、統合型VRが低電圧でも適切な電圧制御を行なうことでシステムの安定を保ちます。
さらに、電圧制御がCPUに統合されたことで、電圧制御がより高速に行えるようになっています。これは電圧を落としていた部分に負荷がかかった場合、今までより高速に安定した電圧を供給することが可能ということです。つまりスリープ状態からの復帰が速くなるということですね。OSのスリープからの復帰というわけでなく、休止状態だった部分が活動状態に入るまでの時間が速くなるということです。
これは予想なのですが、ゲームなどでVGAに高負荷がかかっている状態でもCPUは低負荷ということはあります。ここで急にCPUにゲームの処理が渡されても淀みなく処理を再開でき、画面でカクつくというようなことがなくなる。そういうメリットがあるのではないかと思います。
最後に統合型VRの利点をまとめると、
・余分な消費電力を抑えられる。
・省電力での安定した動作が可能。
・休止状態から復帰が速い。
といったところでしょうか。
では、大きく進化したというHaswell世代のCore i7-4770Kを実際に触ってみたいと思います。
#1 Haswell キタ━(゚∀゚)━!
というわけで我が家にもHaswellさんがいらっしゃいました。
まさかこんな日が来ようとは……。
MALAYの表記がとっても嬉しい。
コスタリカ産じゃないのかよ!? だって? いいんですよいいんですよ。私はこの半年CHAINA表記しか見てませんから。マレーシア産でも超嬉しいのです。
まずはIvy Bridge世代のi7-3770Kとの比較から確認。
とはいっても、製造プロセスは同じ22nm。動作周波数も同じです。拡張命令セットにAVX2が追加されたことくらいですね。と思ったけど、TDPが77wから84wに増えているんですね。イメージ的には消費電力が増えているんじゃないかと思われちゃいますよ? まぁ熱量は増えているのでしょう。実際に動作させるとかなり熱いですしね。
今回のテスト環境はこちら。
基本的には以前のテスト環境を引き継いで、CPUとM/B以外は同じです。KRPW-PT500W/92+がHaswellに対応しているということなので、電源はこれをチョイス。
基本情報。
CPU-ZのCore speedが微妙に気になります。なぜ3.5GHzじゃないんだろう……。スクリーンショットを撮るだけでTurboBoostがかかるんでしょうか?
#2 各ベンチマーク時の消費電力を計測
では計測に入ります。
設定は基本的にAuto。一般人の一般人による一般的なテストということで、設定はいじらないことを前提にしてテストします。
消費電力を計測するのは格安のワットチェッカーelemoni。
3秒毎に表示が切り替わる仕様なので、9秒毎に消費電力を計測。それの平均値を表示しました。
アイドル時はそれほど差はありませんが4770Kのほうが省電力です。スリープ時は、これはもう計測不能ですね。3770Kでは計測できるのですが、4770Kではelemoniがピクリとも反応しません。iVRによる「深いステート」での動作というのは、こういうところに現れるのかもしれません。
次に3DMark実行時の消費電力。
縦がスコア、横が消費電力です。
すべてにおいて4770Kの消費電力が高いですね。スコア比で見ると4770Kが約20%高く、消費電力も同じように約20%上がります。ただ、CPUテストになるとさらに消費電力は上昇する傾向にあります。これはCPUに余力があるので、さらに多くの電力が供給されているのではないかと思います。
お次は定番のCINEBENCH。
こちらも4770Kのほうが消費電力は高くなります。CPUテスト時の消費電力がスコア比を超えて大きくなっているところも同じですね。
さらに面白いのが、フルスレッドでのテストは消費電力が激増し、シングルコアでのテストは消費電力が急降下しているところです。
実はiVRを実装はしているものの、コアごとの電圧制御はできていないという噂もあったのですが、これをみる限りではコアごとの制御は行なわれているようにみえます。
お馴染みのゲーム系ベンチマークを5種類。PSO2やFFⅩⅣは負荷のかかり方に偏りがある(後半の処理が重いので消費電力が激増する)のであまり妥当な平均値とはいえませんが、やはり平均値で表示しています。
順当にスコアアップ分消費電力も上がっています。PSO2の消費電力が一際高くなっているのは平均値をとったためで、全体的な傾向としては他のゲームベンチと同じでした。
今回は消費電力が主題なのでスコアは参考程度のつもりでしたが、GPUはかなり強化されていますね。FFやDQも1280×720まで落とせば問題なく遊べそうです。
さて、すべてにおいて4770Kの消費電力が高いという結果になってしまいました。これはどう考えてもM/Bのデフォルト設定の挙動の問題な気がしてなりません。ASUSとGYGABYTEに分けるべきではなかったのかもしれません。一般人の一般人による一般的なテストは失敗だったように思えます。でも言い訳させてください。ASUSはITXのZ87マザー出してないんです。できるだけ環境合わせようにもできなかったんですよ。
だが、しかし!
見た目は面白みのないテスト結果になりましたが、常時elemoniに張り付いていた私にとっては少し面白いテストでした。
まず4770Kですが、消費電力のブレが少ない。
80w消費しているのなら、テスト中はほぼそのままの数値で推移していました。3770Kは70wだったとしても、そこから65wまで落ち込んだり、73wまで上昇したりと忙しなく変化してました。3秒毎に表示が切り替わるelemoniでそれが観測できるのですから3770Kは相当電力供給が安定していません。
次に4770Kは電力供給がスムーズ。
これはどういうことかというと、高負荷時に電力消費が跳ね上がるのは4770Kも3770Kも同じなんですが、低負荷になったときの数値の落ち方に差が出ます。3770Kはなだらかに落ちていくイメージですが、4770Kはストンと落ちます。そして、負荷がかかるとスーっと消費電力が上がり、負荷が減るとストンと落ちる。この挙動が非常にスムーズに移行しているように見受けられました。
つまり、徹底的に余分な電力を消費していないんですね。そのことが目に見えて観測できたのが面白かったのです。表には現れない部分ですが、統合型VRの威力を確認できたと思います。
というわけで、今回のテストでは負荷をかければ消費電力が増えるのは当たり前。それは統合型VRでも変わらないが、余分な電力消費を抑えている挙動は見受けられた。
そんな結果でした。
ぶっちゃけ両方TB切っとけ的なテスト結果でしたが、 統合型VRの挙動は確認できたので長期的な消費電力を計測すれば差が見えるんじゃないかと思います。
とりあえず時間切れというかオーバーしてしまったので今回はここまでです。
いくつかテストしてみたいことが増えましたので、結果はまた後ほどということでご容赦ください。
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