今回のレビューテーマは、GPUコア性能の向上。
私がやってみたいこととして応募時に記載したのは、代表的なグラフィックベンチマークを行うとともに、Intel Quck Sync Videoを利用したHD動画のエンコードとHD動画からAVCHDディスクへのエンコードとオーサリングを行い、その処理時間と消費電力をCore i7-3770Kと比較するというものです。
今回レビューさせていただくCore i7-4770Kと比較対象のCore i7-3770Kは、共に倍率ロックが設定されていないCPUですが、オーバークロックは、個体差が出やすいこともあり、今回は共にデフォルトの設定で比較させていただきます。
Sandy Bridge , Ivy Bridgeからパッケージデザインが大きく変わりました。
Sandy Bridgeまでは、TDPが表示されていましたが、今回は記載がなくなっています。
初期のCore i7 3770KでTDP表記に誤記があり、途中で修正したのが効いているのかな?
ヒートスプレッダー側の大きさは変わりませんが、下部の形状が少し変更になっています。
ソケット側は、内側のチップ部品の数が減り、進化を感じます。
新たに、AVX 2.0の命令セットが追加になっています。TDPが77WWから84Wに程上昇していますが、GPUの性能アップとCPUの省電力の差が7Wになっているものと思います。
グラフィックス関連では、動作クロックの低い方が異なるぐらいで、仕様比較では、大きな違いは感じられません。
第4世代のインテル Core i7-4770Kは、第3世代のインテルcore i7-3770Kと比較して、GPUが刷新されました。
現在発表されている、第4世代のインテル Core i7-4700番台デスクトッププロセッサーに搭載されるGPUは、殆どがインテル HDグラフィックス HD4600というGPUで、Core i7-4770Kのみが、GPUのダイナミック動作周波数の最大値が1,250MHzと他のCore i7 CPUに搭載されるHD4600の1,200MHzより50MHz高速動作に設定されています。
Core i7 4700番台のデスクトッププロセッサーの中で、LGA1150ソケットに対応したCPUの中では、Core i7-4770Kが理論上は、一番高速に動作するはずです。
また、コアクロックの動作範囲が広くなったことにより、アイドリング時やグラフィックス性能を要求しないアプリの動作中には省電力で、パフォーマンスが必要な際には、ハイパフォーマンスで動作するよう設計されているのだと思います。
GPU-Zの表記でも、シェーダー数が16基から20基に増え、Direct X 11.1のサポートが分かります。
尚、DirectX 11.1 , OpenCL 1.2 に関しては、最新のドライバーで、HD4000も対応になっています。
このほか、DisplayPortも1.1から1.2にアップデートされ、4K対応になりました。
CPUも、Core i7-3770Kでは、アイドリング時にはx16で動作していたものが、Core i7-4770では、x8まで動作周波数が落ちています。この仕様も、低消費電力化に貢献していると思います。
今回発表された、Core i7-4700番台のデスクトッププロセッサーの中には、Core i7 4770Rという、今回インテルが、Intel Iris Pro Graphics 5200と命名したHaswell世代で最も高性能GPUを搭載したCPUがあるのですが、このプロセッサーは、BGA(Ball Grid Array)という基盤に表面実装されるタイプのCPUのため、基本的には単品で市販されることはないと思います。
液晶一体型のデスクトップPCとか、CPUが実装された状態で販売されるベアボーンキットやデスクトップ用CPUを搭載した大型ゲーミングノートPC等でデビューするのではないかと思います。
個人的には、このCore i7-4770Rが一番気になっています。
Haswell世代のCPUでは、最高性能のGPUを搭載したCPUは、組み込み若しくはモバイルに搭載されるという個人的には残念な状況です。
デスクトップPCは、外付けGPUを載せればOK。みたいなところが感じられて、寂しく感じます。
Haswell世代CPUに搭載されたGT1~GT3eと呼ばれているGPUと、IvyBridge世代 Core i7-3770K(HD4000)及びSandyBridge世代のCore i7-2600K(HD3000)に搭載されたGPUの実行ユニット数と演算装置数を比較したものです。
背景がブルーのHaswell世代のGPUの中で、赤枠で囲ったGT2と呼ばれるGPUが、今回レビューさせて戴くCore i7-4770Kに搭載されているHD4600というGPUです。
青枠で囲った旧世代GPUと比較すると、実行ユニット数で、Core i7-3770K比較で25%,Corei7-2600K比較では66%も増えたことになります。
GPUのパフォーマンスアップがどの程度効いているのかわかりませんが、CPUのTDPが、Core i7-3770Kでは77Wだったものが、Core i7-4770Kでは、84Wとなっています。
実行ユニット数の増加以外にも、JEPEGのハードウェアエンコードのサポートや、DisplayPort 1.2対応により、広帯域での画像出力にも対応しました。
第4世代
CPU : Intel Core i7-4770K
MotherBoard : GIGABYTE GA-Z87X-UD5
Memory : G.Skill F3-2400C10Q-32GTX
Boot Drive : A-DATA S510Series 120GB SSDx2(RAID-0)
Capture Drice : Seagate 7,200rpm 3TB HDD Barracuda ST3000DM001x2(RAID-0)
Data Drive : HGST 0S03191 7,200rpm 2TB HDDx2(RAID-0)
CPU Cooler : ENERMAX ETS-T40-TB
Power Supply : ENERMAX E1050EWT
第3世代
CPU : Intel Core i7-3770K
Mother Board : ASUSTeK Maximus V Gene
Memory : DDR3-2666 AVEXIR AVD3U26661104G-4CI
Boot Drive : A-DATA S510Series 120GB SSDx2(RAID-0)
Capture Drice : HGST 0S03357 7,200rpm 4TB HDDx2(RAID-0)
Data Drive : HGST 0S0319 7,200rpm 2TB HDDx2(RAID-0)
CPU Cooler : Cooler Master Hyper 212 EVO
Power Supply : SilverStone ATX12V2.3/EPS
※第3世代システムには、DDR3-2666 4GBx4のメモリを搭載していましたが、GPUが利用するメモリの速度を合わせるため、ベンチマークではDDR3-2400 8GBx4のメモリを差し替えて計測しました。
また、起動ドライブは、A-DATA S510 120GBx2(RAID-0)をベンチマーク専用に用意して計測しました。
ベンチマークでは、CrystalMark 2003R4,CineBench 11,3D MRK 11,Phantasy Star Online2を使って、Core i7-3770Kと比較を行いました。
トータルスコアでは、システムとして、18%パフォーマンスアップしています。
CrystalMark 2003R4のグラフィックス関連の項目別比較を行うと、
直線や曲線の描画、フォントのレンダリングなどを行うGDI項目では、33%、2Dグラフィックス描画関連のDirect Drawの項目では、346%と大幅にパフォーマンスアップしています。
また、3Dグラフィックス描画関連のOpen GL項目でも78%パフォーマンスアップしていました。
傾向的にみると、高負荷のテストの方が、HD4000と大きく乖離した好成績になるので、GPUエンジンとしての優秀さを物語っていると思います。
CineBench 11では、CPUのスコアは、10%も向上していませんでしたが、OpenGLのスコアが、約32%もパフォーマンスアップしていました。
HD4600,HD4000共に、Direct X 11対応なので、3D MARK 11で比較を行いました。
トータルスコアでも188%と大幅なパフォーマンスアップをしていましたが、グラフィックス関連の個別の項目でも、大幅な性能向上が確認できました。
Phantasy Star Online2 Benchmarkでは、トータルスコアしか表示されませんが、スコア自体は、3DMARK 11同様、80%以上の大幅なスコアアップをしていました。
アナモルフィック記録されたMPEG-2 HD動画、約6時間 112GBを、プログレッシブ Full HD MPEG-4 AVC 約40GBに圧縮しました。
動画は、22分割されているため、Pegasys TMPGEnc Video Mastering Works 5を使って、バッチエンコードを行いました。
エンコードに関しては、約3%の速度向上,消費電力に関しても3.5%程度向上していました。
このエンコードに関しては、CPU利用率が常に100%ととなる処理だったため、エンードに掛かるパフォーマンスのうちCPUで処理する割合が大きく、余り大きな差にならなかったのではないかと思います。
次に、同じ素材を使って、Pegasys TPEGEnc Authring Works 5を用いて、22枚の2層DVDに記録するためのAVCHDエンコードとオーサリングを行いました。
同じようにバッチエンコードを行いましたが、こちらは一つづつシーケンシャルに処理を行います。
この処理においては、CPUの利用率が50%程度となり、GPUの差が前回の試験より大きく反映されているものと思われます。
この作業では、処理時間が7% 電気料金に換算して16%の向上が見られました。
最後に、3時間11分 17.7GBのHDコンテンツを、MPEG-4 AVC 8.5GBに圧縮するエンコードを、CPUのみで行った場合、Intel Quick Sync Videoで行った場合、nVidiaのGPUを使った場合で比較を行いました。
エンコードに一番時間を要した、Core i7 3770K CPUのみでのエンコードを100とした場合、Core i7-4770K CPUのみでは、87%の時間で、TITANを用いたエンコードでは46.7%,HD4000のQuick Sync Videoでは20.5%,HD4600を用いたQuick Sync Videでは、18.5%の時間でエンコードすることができました。
今回利用したnVidiaのGPUは、SP数2,688基のGeForce TITANのOC版を用いました。市場価格で約14万円のシングルGPU最強のCUDAを用いたエンコードの約40%の時間で処理を終えたことは正に驚異です。
今回の処理においては、画質に関わる処理はすべて標準(Intel Quick Sync Video,CUDA利用のエンコードでは標準以外の選択ができない)
HD4600は、新たにJPEGハードウェアエンコードに対応しているようなので、そのパフォーマンスを確認しようと、Nikon D800E(3,630万画素)で撮影した603コマ約12.8GBのRAWデータを、バッチエンコードでJPEG変換してみました。
Core i7 4770Kでのエンコード時間は、29分54秒,Core i7 3770Kでのエンコードは、29分58秒でした。
残念ながら、JPEGハードウェアエンコード対応を確認できませんでした。
使ったアプリケーションは、Nikon Capture NX2でしたが、GPUのJPEGエンコード対応も、Quick Sync Videoのように、ソフトウェアの対応が必要なのかもしれません。GPU-Zのセンサーグラフを見ていても、GPU Loadの値が上がることはありませんでした。
最新のCPU Core i7-4770Kの統合グラフィックスに関するレビューをさせていただきましたが、私にとっては大きな進化を遂げた統合グラフィックスでした。
私は、普段ゲームはあまり行いませんが、高画素デジカメで撮影したRAWデータの現像や、動画のエンコードなどを日常的に行っています。
高画素デジカメで撮影した1コマ50MBを超えるRAWデータは、1コマ現像するだけで、一瞬ですが、CPUの利用率は100%に達し、同じく短時間ではありますが、CPUの温度も70℃近くまで上昇します。
デジカメのイメージセンサーの高性能化で、個人レベルでは、なかなか快適な現像環境を作ることは難しいですが、Core i7-4770Kであれば、快適に操作できると思います。
私は、普段はRAWデータでの撮影を行い、家で現像を行います。Nikon Capture NX2というNikonの現像ソフトを使い、RAWからJPEGへの変換も行います。
データは、RAW/JPEG共にPCのHDDに保管しています。
合成や印刷を行う際には、Adobe Photoshop CCを用いて行うのですが、Core i7-4770Kを搭載したPCでは、ストレスなく作業を行うことができました。
動画のエンコードも、マルチメディアコンテンツを消費する端末(タブレット/スマホ)の普及に伴い、コンテンツを生成する端末に負荷が掛かってきていますが、Core i7-4770Kに搭載された、進化したIntel Quick Sync Videoは、確実に処理時間を短縮できるので、心強い味方になると思います。
今回のレビューでも、個人的には、Quick Sync Videoの進化に一番興味を持って応募しました。
アナログ放送の終焉と共に、SD動画のDVDエンコードから、Full HD動画のエンコードに変わり、処理するデータ量が大幅に増えました。
CPUの性能がいくら向上しても、ソフトウェアエンコード(コンテンツの実時間以上に処理時間が掛かる)では、コンテンツを消費するデバイスの普及に応じたコンテンツ作成が追いつきません。
そこで、私はCUDAの登場以来、ハードウェアエンコードに対応したビデオカードを買い続け、エンコードに掛かる時間を短縮してきました。
そこに、HD3000というCPUに内蔵された統合グラフィックスでのハードウェアエンコードが登場し、その速さに驚きました。
HD3000は、HD4000,HD4600と進化し、確実にエンコード時間を短縮してくれます。
エンコードソフトウェアの制約なのか、統合グラフィックスの制約なのかはわかりませんが、未だに2パスエンコードができないとか、固定ビットレートでしかエンコードできないという制限はありますが、利用目的に応じてコンテンツを作成する際に、制約はあるが短時間でエンコードできる環境があることは、とても心強いです。
これから、動画は確実に4Kの時代になり、新たなコーデックと共に、高解像度/高ビットレートになって行きます。
今後の、CPU内蔵の統合グラフィックスの更なる進化に期待しつつ、レビューを終わらせていただきたいと思います。
それにしても、今回レビューさせて戴いた、HD4600の倍以上のパフォーマンスと推測できる、Iris Pro 5200は登場が楽しみです。機会があれば是非試してみたいです。
最後に、今回、このようなレビューの機会を戴いたzigsow事務局および関係者の方々に深く感謝いたします。
ありがとうございました。
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