所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。網羅的ベスト盤。ある程度以上の活動歴を持つアーティスト、あるいはグループは、他者の作品への参加をする事もあります。それらのものは「主」が相手なので、「相手側の作品」ということになりますが、そういうケースではなく、自身の名を冠して出したものであっても、複数のアーティストが参加する作品に書き下ろした楽曲など、権利的にオリジナルアルバムに入れられないものもあります。そんな作品まで含めて、網羅的に34年間にわたる稼働の記録を集めたベストアルバムをご紹介します。
TOTO。1978年の“TOTO”
でデビューしたスタジオミュージシャングループ。Boz Scaggsの大ヒットアルバム、“Silk Degrees”
録音時の中心的ミュージシャンが組んだグループで、後にMichael Jacksonの“Thriller”
でも、彼らのプレイが音色の重要な要素の一つとなった凄腕スタジオミュージシャンたちが構成メンバー。40年の歴史を持つグループのため、メンバーチェンジもあり、現在オリジナルメンバーとして残っているのは、ギタリストのSteve Lukather (Luke)、キーボードのDavid PaichとSteve Porcaroのみ(Steveは一時脱退期がある)。これに6~7枚目のアルバム時に在籍した後離脱していたヴォーカリストのJoseph Williamsが、2010年以降の再結成では合流している。彼等は10年前の2008年に一度解散を宣言するが、2010年に期間限定と言うことで再結成、その時の感触が良かったのか、2011年に正式に再始動し、今に至る。
本作は、その再始動時にそれまでの作品から網羅的に曲をあつめたベストアルバム“IN THE BLINK OF AN EYE 1977-2011”。
選曲はレコード会社主導ではなく、メンバーが行い、「並び」もよく考えられているし、各曲に対して最低一人以上の当時のメンバーがコメントを寄せていて、ベストアルバムのつぎはぎ感が少ない作品となっている。選曲は、前述の1stアルバム“TOTO(宇宙の騎士)”から10作目の“Mindfields”のオリジナルアルバムの他に、他者提供曲やお蔵入り曲をあつめたレアトラック集の“TOTO XX 1977-1997”、映画“DUNE”のサントラ、
1984年のロスオリンピックのテーマ集
からも採られている。
特に最後の二つは、今となっては「盤」として手に入れるのはやや難しく、TOTOとしての参加曲数は限られていることもあり、「TOTOの演奏だけをディスクで所持したい」という向きにはこのベスト盤は最適なものとなっている("'DUNE' Original Soundtrack"の方は、他にもTOTOの演奏は入っているが、それらはまさしく「サントラ」で、曲として単体で楽しめるのは、本作に収められている「Dune (Desert Theme)」だけかな)。
曲のセレクトは、やはり鮮烈だったデビュー作“TOTO”と、グラミー賞6部門制覇アルバム“TOTO IV”
から多く選ばれているのは当然?として、リリース当時の正式メンバーであり、世論の評価的にもTOTO歴代最高のヴォーカリストと呼ばれながら、意外にも「オリジナルアルバムとしてディスクに残っている数」が少ないJosephに配慮してか、彼が参加した6~7作目の比重がやや重いかな、という気はするが、実際そのあたりがTOTO中興の時期でもあり、良曲も多かったのであまりおかしい感じはしない。一方レコード会社から押しつけられたヴォーカリストと言われる、Jean-Michel Byron参加の半ベスト半オリジナルの“Past to Present 1977–1990”のオリジナル楽曲からは1曲も選ばれていないのが、そのときのレコード会社のやり方に思うところがあったメンバーが選曲した結果か。
TOTOは、ロック、AOR、フュージョン、ポップス、ソウルなど非常に多彩な音楽性を内包したバンドだが、この作品は曲の並びもよく考えられていて、曲が切り替わったときの「もの凄い違和感」が少ないのが特徴(さすがに30年以上録音時期が違うと音の録り方はまるで違うので、その部分での「切り替わり感」はあるけれど、それも曲の並びがよく考えられているのであまり気にならない)。
彼等の1stアルバム“TOTO”の幕開けのインストルメンタル曲で、今でも彼等のライヴの幕開けの曲、「Child's Anthem(子供の凱歌)」で始まるのは当然?なのだが、次がわりに「異端」系作品である3rdアルバム“TURN BACK”
から、ハードな「Goodbye Eleanore」というのが意外。ヘヴィでソリッド気味のLukeのギターフレーズと、前に進むグルーヴのあるハネ系ロックリズムを叩かせたら今でも彼を超えるものはいない故Jeff Porcaroのドラムプレイが絡み、もの凄いエネルギー。特にこの作品はドラムスの録り方が迫力満点で、タム回しが目の前で叩かれたタムが揺れているのが描き出されるほどの大迫力。フレーズの合間に挟み込まれる、当時のベーシストDavid Hungateの小技が光る。
Jeffの繰り出す独特のリズムから「TOTOシャッフル」と呼ばれたヘヴィなハネ系リズムを持つヒット曲「Rosanna」~エキゾチックな「Gift Of Faith」と来て、ここで小休止。録音が古いのでさすがに音は浮いていて「切り替わり感」があるが、センスの良いDavid Paichのエレピソロと珍しいLukeのクリーンめの音のカッティングがオシャレな「Miss Sun」。これは恩師筋?のBoz Scaggsに提供した曲で、Bozが先に1981年にヒットさせており、それを自分たちで歌ったもの。ちなみにBozのレコーディング時と同じメンツ(Luke+JeffにPaichとHungateの両David)だけれど、Bozの時より「前に出る演奏」←自分たちの作品だからそりゃそうか。
所々に8~9枚目といった新しめの音源も挟みながらも、全体としては6枚目までを中心にしていた1枚目から、最高傑作の呼び声も高い7枚目“The Seventh One(ザ・セブンス・ワン~第7の剣~)”
が中心となる2枚目に移ると、小洒落たイントロから一転して、Josephの品のあるシャウトで曲の導入となる「Pamela」から幕を開ける。その後10枚目で当時最新アルバムの“Mindfields”からのオープンなロック「Mad About You」⇒1stからのフュージョンタッチの「Georgy Porgy」⇒最大ヒット作4枚目の“TOTO IV”の美しいバラード「I Won't Hold You Back」⇒最新アルバムのバラード「Melanie」と時代が相当前後に行き来するが、この間プレイヤーも結構替わっているのに違和感が少ないのがさすが。
2枚目のポイントは2曲のレアトラックで、ひとつは「Dune (Desert Theme)」。Frank Herbertの大作「Dune(デューン/砂の惑星)」を、David Lynchが映画化した時に、その音楽を鬼才Brian Enoと担当したTOTOが演奏したインストルメンタル曲で、壮大なメインテーマ。ちょうど大ヒットアルバム“TOTO IV”のあと、ヴォーカリストのBobby Kimballが抜けていたが、それが上手くハマって、インストロッカバラードという感じのこの曲に結実している。
もうひとつが、1984年のロサンゼルスオリンピックのボクシングテーマ「Moodido (The Match)」。Lukeのギターによる、かなりわかりやすい旋律を持った「ポップロック」(インストもの)だけれど、Jeffのキレのあるパーカッションが良い味出していて(血は争えんのかね...←父親のJoe Porcaroは今なお現役のパーカッショニスト/ドラマー)、所々の破裂音がボクシングの強烈なパンチという感じ。
ラストはやっぱり、彼等の魅力が詰まっていた1stアルバムから、デビューシングル=彼等の原点である「Hold The Line」で〆。
曲の選択が良く、これ一枚(一組というのが正確?)で、TOTOの歴史を俯瞰できる。
またこのアルバムが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患っていたベーシストのMike Porcaroの闘病支援のための日本ツアーに合わせて造られたので、今は亡きMikeの日本のファンに向けたメッセージが載っているのも特徴。
自身が闘病中でありながら、3.11後の日本のファンを気遣うメッセージが泣かせる
解説書も、カラーの方が曲ごとの参加メンバー一覧と写真付きの年代別のメンバー変遷、売れっ子スタジオミュージシャンだった彼等が1984年までに参加した楽曲一覧などと資料価値が高く、白黒の歌詞カードに関しては、原詩と訳詩のほかに、当時のメンバー(LukeとJosephにDavid Paich、Steveと当時は存命だったMikeのPorcaro兄弟、本作リリース時点のドラマーSimon Phillips)が各曲にコメントを寄せていて、特にLukeは全曲にコメントしているけれど、その内容が「今だから言える」系の内輪ネタも多くおもしろい。
資料的観点・ファングッズ目線で見ても充実した内容で、DSDリマスタリングのBlu-spec CDでもあり、これは「音源」ではなく「物理CD」で持っておきたいアイテムです。
各曲の参加メンバーや、メンバーのコメントもあって「モノ」としての価値十分!
あ、この作品日本ツアーに先立つ欧州ツアー用にも同じ企画のアルバムが造られたけれど、そっちはこの国内盤と重複する曲も多いけれども、8~10枚目の新しめのアルバムからの選曲が多いCD1枚のみのもので、(ほぼ)同名ながら「別物」(ジャケットデザインは同じながら、アルバム名に“IN THE BLINK OF AN EYE Greatest Hits 1977-2011”と入っているのが欧州盤)。メンバーによるコメントはもちろん、2曲のレアトラックも入っていないので、安いからって買っちゃダメよw
【収録曲】
<DISC1>
1. Child's Anthem [from 1st album 'TOTO']
2. Goodbye Eleanore [from 3rd album 'TURN BACK']
3. Rosanna [from 4th album 'TOTO IV']
4. Gift Of Faith [from 9th album 'TAMBU']
5. Miss Sun [from OUT-TAKE album 'TOTO XX 1977-1997']
6. I'll Be Over You [from 6th album 'Fahrenheit']
7. It's A Feeling [from 4th album 'TOTO IV']
8. Stranger In Town [from 5th album 'Isolation']
9. Till The End [from 6th album 'Fahrenheit']
10. The Other End Of Time [from 9th album 'TAMBU']
11. Jake To The Bone [from 8th album 'Kingdom of Desire']
12. I'll Supply The Love [from 1st album 'TOTO']
13. Carmen [from 5th album 'Isolation']
14. 99 [from 2nd album 'Hydra']
15. Wings Of Time [from 8th album 'Kingdom of Desire']
16. Don't Stop Me Now [from 6th album 'Fahrenheit']
<DISC2>
1. Pamela [from 7th album 'The Seventh One']
2. Mad About You [from 10th album 'Mindfields']
3. Georgy Porgy [from 1st album 'TOTO']
4. I Won't Hold You Back [from 4th album 'TOTO IV']
5. Melanie [from 10th album 'Mindfields']
6. Good For You [from 4th album 'TOTO IV']
7. Endless [from 5th album 'Isolation']
8. Tale Of A Man [from OUT-TAKE album 'TOTO XX 1977-1997']
9. Dune (Desert Theme) [from '"DUNE" Original Soundtrack']
10. I Will Remember [from 9th album 'TAMBU']
11. Lea [from 6th album 'Fahrenheit']
12. Africa [from 4th album 'TOTO IV']
13. Home Of The Brave [from 7th album 'The Seventh One']
14. Moodido (The Match)
[from 'The Official Music Of The XXIIIrd Olympiad Los Angels 1984']
15. Stop Loving You [from 7th album 'The Seventh One']
16. Hold The Line [from 1st album 'TOTO']
「Dune (Desert Theme)」
このベストでTOTOのほとんどが解る
特にLukeの解説・ネタバラシを読みながら聴くと楽しい。
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購入金額
3,200円
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購入日
2012年頃
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購入場所
jive9821さん
2018/03/26
一応新曲目当てで最新の方を買いましたが、あまりに選曲の偏りが激しく、ベスト盤としては不完全燃焼という感が強かったです。
cybercatさん
2018/03/26