以前ご紹介した本国においてよりむしろ日本で人気が高いロックバンドTOTOの6枚目。TOTOは最大のヒット作、“Ⅳ”
のあと迷走する。
きっかけはオリジナルボーカリストBobby の脱退だ。TOTOには何人かボーカルが取れるメンバーがいて、甘い声でバラードを得意とするLukeことSteve Lukather、低中域が充実したDavid Paich、そして伸びるハイトーンのBobby Kimballと役割分担ができていた。そこでBobbyの後任として伸びる高域のハイトーンボーカル、Fergie Frederiksenを迎えたのだが、迎えてみるとBobbyの味は実はフレキシビリティにあったということに気付く。Fergieはロック調のハイトーンボイスが映える曲では光るが、TOTOの多彩な曲についてこられない。時にクロく、時にアーシィに、フュージョンタッチに...そんなTOTOの多彩な楽曲をあまねくこなすにはFergieは一本調子すぎた。
はたしてFergieは1枚で去り、ボーカリスト探しでこのアルバムはリリースまでに時間がかかった。白羽が立った新たなボーカリストとはJoseph Williams(映画音楽の巨匠、John Williamsの息子)。彼はBobbyより少し甘い声でロックのパンチという意味では前任のFergieの方がはるかに優れていたが、なによりソウルからポップス、ロックからダンスまで幅広い曲に対応できる懐の深さがあった。
「Till The End」。Josephのイントロデュースを兼ねるこの曲は、最初のイントロ部分の♪Hey,hey,hey..♪というソウルフルな掛け声でもうFergieとは違うな、というのを1小節でわからせてしまう良い演出だ。曲もブラスのラインとLukeのミュートリズムギターとディストーションが効いたリフとの対比がおもしろい仕上がり。間奏のキラキラとしたエレピのフィルインや、よく動くベースが単なるロックでなくて、クロい薫りぷんぷん。そのわりにはLukeはかなり弾きまくってるw
「I'll Be Over You」。“Ⅳ”のLukeの名バラード「I'll Be Hold You Back」を髣髴とさせる美しい曲。この曲ではAORの大御所Michael McDonaldを迎えている。ただしMichael色はさほどに強くなく、流麗なコーラスワークにその片鱗が見えるだけ。見事に「ザTOTOバラード」になっている。
「Don't Stop Me Now」はcybercatがTOTOの楽曲として好きな曲ベスト5に入るが、いかな間口が広いTOTOとしても異端の曲。インストの曲は他にもあるがこの曲はニュースタイルJAZZとでも言おうか。ロックはもちろんフュージョンですらない。弱音器のついたペットで哀愁あるアドリブを全編に渡って聴かせるのは巨匠Miles Davis!フィードバックのかかった泣きのギターで寄り添うLukeのプレイが聴きどころ。「まだ吹き足らねぇ~~」とばかりに曲が終わってもひとしきり吹いているMilesって...
結局TOTOってバンドは、各メンバーのスタジオワーク、サポートワークで培った多彩な音楽性を芯に持つ、カオスな魅力、ごった煮の味わいがいいわけで、前作がちょっと一本調子すぎたのか。本作は王道のアメリカンロックから前述のジャズ、ソウルナンバーもしくはファンク、といっても通る「Fahrenheit」などごった煮の魅力復活で旧来のcybercat含めた日本のTOTOファンは胸をなでおろす。ただアメリカでのセールスは必ずしも良くなかったみたい。アメリカって「自由な国」ってイメージがあるけど、「カテゴリー」や「クラス」、「ジャンル」に意外とうるさい。意外に階級社会で「越境」を許さないんだよね。TOTOの良さはジャンルにこだわらないおもちゃ箱をひっくり返したような意外性なんだけど。わかってないなァ...www
【収録曲】
1. Till The End
2. We Can Make It Tonight
3. Without Your Love
4. Can't Stand It Any Longer
5. I'll Be Over You
6. Fahrenheit
7. Somewhere Tonight
8. Could This Be Love
9. Lea
10. Don't Stop Me Now
「Don't Stop Me Now」
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購入金額
3,200円
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購入日
1986年頃
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購入場所
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