TOTO。現在も活動を続けるアメリカンロックグループだが、複数のメンバーが脱退したり鬼籍に入り、少なくとも当初の形ではもはやない。もともとBoz Scaggsのレコーディングやライヴで知り合ったスタジオミュージシャンが自分たちの表現の場としてバンドを組んだのが始まり。
その後少しプログレ臭を強くしたり、ブリティッシュロックに寄ったりしたが、原点とも言うべき「メンバーの多彩な音楽経験をバックボーンにし、高いテクニックに裏打ちされたロックを中心分野とするバラエティあふれる楽曲」をちりばめた“Ⅳ”でセールス的、業界評価的な面で頂点を極める。
しかし、ここからTOTOというバンドは徐々に形を変えていく。1~4枚目(完成直前)まで不動のメンバーできていたが、まずベーシストがオリジナルメンバーのDavid Hungateから交代する。ただそれは兄弟が2人もバンド内にいて(ドラマーのJeff PorcaroとキーボーディストのSteve Porcaro)気心も知れたMike Porcaroに変わっただけだったので違和感は大きくはなかったが、次にバンドの顔=メインヴォーカリストが変更となってしまう。もともとこのバンドは複数メインヴォーカルがとれるメンツがいて、1stの頃からバラードは甘い声のギタリストのSteve Lukather、ファンキィな曲は中域に深みのあるキーボーディストDavid Paichがとっていたが、ノリの良いハードな曲は高音域が冴えるロックヴォーカリスト、Bobby Kimballが担当していた。ただBobbyはハードロックが主体とは言いながらソウルやAORまで広く対応できていたのだが、Bobby脱退後に彼を超えるハイパートーンヴォーカリストFergie Frederiksenが1作参加したものの、押し出しのいいロックにはBobby以上の華があったが広いジャンルへの適応性ということで?続かなかった。そこで次の作品(6th)では幅広いジャンルへの対応力を持ち曲も書けるJoseph Williamsにチェンジする。JosephはTOTOのキモとなる部分=様々な要素を内包するジャンル不問のポップなロックとの相性は歴代ヴォーカリストで一番良かったと思うのだが、長くは続かずたった2作で脱退してしまう(2010年以降の再結成時には参加)。その初期参加時の最後の作品が本作。通算では7作目になる。
“Ⅳ”から一度ヘヴィな方に行ったり、逆にソフトな方に振ったりと振幅が大きかった彼等がTOTOとしての本流に戻ってきたのが本作“The Seventh One(邦題:ザ・セブンス・ワン~第7の剣~)”。ジャンルを限定せず溢れる才気と若い情熱をぶつけた1st、一巡りして原点に戻り最高の評価を得た4thに続き、同様の幅広いジャンルの曲を揃え、メンバーはよりパワーアップし、さらにそういった曲想によりマッチしたヴォーカリストを得てファンの中では最高傑作の誉れ高いのが本作。
「Pamela」。いわゆるTOTOシャッフルのこの曲、「TOTOらしさ」満載。8ビートから16ビートを行き来し、小節の区切りで奇数にしたりするリズムのシカケ、リヴァーブが強くかかったディストーションギターのバッキング、シンセブラスと言うより独特の音色のブラス風ラインのオブリとTOTOらしさ満載!(キーボードのSteve Porcaroは本作から正式メンバーを外れたが、サポートとしては加わっていて音色などは彼の影響が色濃く感じられる)
「Stop Loving You」は大ヒット曲「Africa(収録は“Ⅳ”)」のテイストとアメリカンロックの融合がTOTOらしい一品。コードの付け方が印象的なAメロから明解なサビ、ユニゾンなどシカケいっぱいのブリッジと、この理論とテクニックに裏打ちさされたポップス感、これぞTOTO!
「Africa」といえば、その昇華版ともいえるのが続く「Mushanga」。Jeffが作曲に関わったリズムオリエンテッドな楽曲で、同様にパーカッションで実父Joe Porcaroが加わりTOTOでしか..いや「Jeffがいた」TOTOでないと出せないノリを出している。スチールドラムはシンセかと思ったが、ライナー見るとホンモノのプレイヤーを呼んでいる(Andy Narell)。コーラスにはPatti Austinを呼んでるし、ゲスト豪華だな。
「Home of the Brave」はイントロはふわふわとした音色のシンセでラストの曲としては?と思うが(「The Seventh One」は日本盤のみに含まれ、一般的にはこの曲がアルバムの〆)、リズムインするとアメリカンロック!!David PaichとJosephという色合いの違うヴォーカリストの掛け合い、サビラス~ギターのリフが印象的な間奏のアタリが「明るい“Turn Back”」と言う感じ?さらにそのあとの超キメキメのフレーズがTOTOだな。
ただ残念ながら「TOTOらしいTOTO」は本作で終わる。一番ベストマッチと思われたJosephがバンドを離れ、一時レコード会社主導で参加したヴォーカリストJean-Michel Byronを挟み、専任ヴォーカリスト不在で活動することになり、Steve LukatherとDavid Paichが全ての曲を歌うことになる。ともに「抜ける」声質ではないので曲調も変わってきてよりハードでヘヴィなギターバンドになっていく(キーボーディストが一人になったのも影響したと思う)。そしてバンドの中核、かつ、バンドカラーとしての「芯」、ドラマーのJeffの事故死..
TOTOそのものともいえたJeffを失ってそのまま解散か...と思われたバンドはスーパーテクニシャンドラマーSimon Phillipsを得て存続するも、それはJeffがいた頃のTOTOではなく、車に例えれば「フルモデルチェンジ版」TOTO。同じバッジ(名前)で方向性も大体において同方向、そして昔の曲も演奏するがやはり別物。
cybercatとしては自分と同じTAMAのドラムを使う超絶テクニシャンとしてSimonはもともと大好きなプレイヤーだったのでその後も聴き続けたのではあるけれど、それは別バンドとして、という印象の方が強い。そういう意味では、本作はTOTOというバンドの一つの到達点かつ終着点といえるもの。この1枚に収められた様々なテイストの曲一つ一つに、込められたプロフェッショナル魂と歌心が感じられる超名盤です。
【収録曲】
1. Pamela
2. You Got Me
3. Anna
4. Stop Loving You
5. Mushanga
6. Stay Away
7. Straight for the Heart
8. Only the Children
9. A Thousand Years
10. These Chains
11. Home of the Brave
12. The Seventh One(日本盤のみ)
「Pamela」
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購入金額
3,200円
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購入日
1988年頃
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購入場所
jive9821さん
2015/06/02
それだけに、ポーカロ兄弟以外のメンバー構成が近い最新作の「XIV」には大いに期待していたのですが…。
cybercatさん
2015/06/02
おっしゃる通り現状では望みうる最高のメンツだとは思いますし、なにより?BOXの方は「イラスト系の剣のモチーフ」の装丁だしw、ということで期待は抱かせるんですが...
でも流れとしては初期の「JeffのTOTO」ではなくて、「フルモデルチェンジ後」の「LukeのTOTO」の系統のような気がしてます←つかメンツ的にそうにしかならない。
今度聴きこもうとは思っていますが。
カーリーさん
2015/06/02
cybercatさん
2015/06/02
↑
TOTOに関してはこれから後の印象がやや薄いので、改めて指折り数えて「そんな前か」と驚きましたが。
北のラブリエさん
2015/06/02
cybercatさん
2015/06/02
TOTO(東陶)の話は彼らのリップサービス、とのことのようですが。