まず、SUMIKO自体販路が限られていてあまり広く目にするブランドでは無いと思いますので、簡単にこのブランドについて触れておくことにします。
SUMIKOは北米のアナログオーディオ専門ブランドで、1973年からこの事業を展開しているそうです。会社自体はアメリカにありますが、彼らの主力商品であるフォノカートリッジは日本製と明記されています。つまり日本メーカーによるOEM/ODM製品のブランドということになるのです。
ではその日本メーカーというのは一体どこなのかという話ですが、どうやらかつてカートリッジを自社ブランドで発売しつつ多数のOEMも手がけていた、エクセルサウンドではないかと言われています。実は現在もエクセルサウンドはオーディオアクセサリーのメーカーとして活動を続けていますが、以前のようなコストパフォーマンスに優れる普及価格帯のカートリッジは手がけておらず、超高級MCカートリッジをわずかにリリースしているようです。海外向けには多少バリエーションが多く用意されているようですが…。
さて、今回取り上げるヘッドシェルHS-12ですが、これも「MADE IN JAPAN」と明記されていて、これも日本メーカーによるOEMとなっているようです。こちらはJELCO(市川宝石)製HS-25相当品といわれています。ちなみにJELCOは最近まで積極的にアナログ用品を展開していましたが、新型コロナウイルスの影響でオーディオ関連事業を休止すると発表していて、今後が心配されます。
JELCO製のヘッドシェルの特徴として、最廉価モデルを除きロックピンが上下にきちんと用意されていて、カートリッジの水平がきちんと確保されるというものがあります。HS-25をベースとするHS-12も、やはりロックピンが上下に2つ用意されています。リード線も同じJELCO製のSW-50相当のように見えますが、経年劣化がありそうだったのでこれは交換します。
用意したのはKS-Remasta KS-LW-5700です。このリード線については後日別途レビューを書くつもりですが、ターミナルピンがいつも使うオーディオテクニカ製のシェルよりも太いため、予めお願いしてリードチップの対応径を広げて作成していただいています。
今回は元々Ortofon LH2000で使っていたClearaudio Virtuosoを移設するために用意しています。というのも、LH2000で使っていると大きめのノイズを発するので、おそらくリード線に傷みがあるのだと思うのですが、LH-2000の空間ではVirtuosoを装着した状態で太いリード線に交換するのは困難と思われたからです。
結構苦労しつつも、何とか取り付けが完了しましたので、この状態で試聴してみることにしましょう。取り付けの自由度が高い分、カートリッジの位置決めに手子摺るのです…。
カートリッジの特徴がより明確に
試聴はいつも通り、Technics SL-1200G+Phasemation EA-200の組み合わせで行います。
試聴には「Aja / Steely Dan」と「Chicago 18 / Chicago」のLPを使いました。
元々Virtuosoは妙に倍音を目立たせて輪郭がぼやけるというイメージがあったのですが、ヘッドシェルとリード線を一気に交換した効果は十分出ていて、バスドラムのアタックなど明瞭度が大幅に増した印象を受けます。
ただ、ヴォーカルやピアノなど、メインとなる音に常にリバーブの音が乗ったかのような、妙なエコーが追加された印象はより強くなってしまいました。おそらく今までは全体的な解像度が低かったことで、エコー成分で全体がぼやけたかのように感じられていたものが、ヘッドシェルやリード線のグレードアップで解像度や明瞭度が大幅に増した結果、元の音とエコー成分が分離して聞こえるようになってしまったのではないかと思います。
カートリッジとしてVirtuosoの印象は決して良くなってはいないのですが、今まで曖昧だった部分を暴き出したのはヘッドシェルとリード線の力でしょう。その意味で、HS-12の基本性能の高さは十分証明されたといって良いのではないかと思います。
強いて言えばカートリッジの取り付け位置を0.1mm単位で追い込むのがなかなか難しい構造となっているのがマイナス点かな、と思いますが、今となってはOEM元のHS-25の価格は十分コストパフォーマンスに優れるといって良いと思います。事業休止で入手性の悪化は懸念されますが…。
OEM先のSUMIKO HS-12は既に生産完了となっていますし、製造元のJELCOもおそらく流通在庫限りとなるでしょう。このタイプのヘッドシェルが必要な方は早めの入手をオススメします。
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購入金額
5,500円
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購入日
2020年04月17日
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購入場所
オーディオユニオン
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