このたびは、NUC(Next Unit of Computing) DC3217IYEのレビュアーに選んでいただきありがとうございます。関係者ならびに、zigsowユーザーの方々には本当に感謝しています。
応募動機
今回、NUCのレビュアーに応募したのはリビングで映像再生用のクライアントとして使うためです。リビングのテレビは42Z1でDTCP-IP対応のDLNAクライアント機能を有しているのである程度の映像ファイルは再生できますが、非対応の映像ファイル等を再生できないためにリビングで見る際にはわざわざDVD等に焼いていました。
しかし、NUCを使えばWindows OSが使えるので映像ファイルの形式に関係なく再生することが出来る上に省電力・省スペースでそれが実現できると思い応募しました。
パッケージ
まずは、パッケージを見ていきましょう。
パッケージデザインはインテル製品を使ったことがある方なら一目でIntelだなとわかるものですね。
そして、パッケージを開けると・・・
おなじみのメロディーが流れます。こういう遊び心は好きなんですが、光センサーで手で隠して再び開けると鳴ってしまうので箱を開けたまま周辺を動くと、その度にメロディーが流れるので少し鬱陶しいですw
付属品は、上記の写真にあるものが全てです。
・ACアダプター
・VESAマウント用プレート
・プレート固定ねじ
・組み立てマニュアル
・ステッカー
注意しなければならないのは、ACアダプタとコンセントをつなぐ電源ケーブルが無いことです。これに関しては『何で付けないんだ!?』という意見が多いと思いますが、この製品自体が各国用にローカライズされておらず世界共通のパッケージのようです。このため、各国に適合した電源コードをそれぞれ用意するとその分コストがかかってしまうため、電源コードを敢えて付属しなかったのでは?と考えています。
ちなみにACアダプタと電源コードとの接続に使うコネクタは某ネズミの形をしているので、購入する際にはミッキーケーブルというものを買ってください。
VESAマウント用プレートが付属しているので、VESA規格に対応した10点タッチ対応ディスプレイとWindows 8を使えば、いわゆる一体型PCを作成することも可能です。
ただ、当方が現在使用中のディスプレイがVESAに対応しているので試しにプレートを固定しようとしたのですが、残念ながらプレート固定できませんでした。
具体的には、4本のネジの内3本が締められませんでした。調べてみるとVESAのネジが締まらないことがたまにあるみたいなので、どうしても使いたいならホームセンターで規格に合ったネジを買うしかないですね。
組み立てマニュアルに関しては英語のみですが、基本的にはイラストでの解説なので困ることは無いです。
本体
本体サイズは実測値で、11.7cm×11.3cm×4.3cmというほぼ正方形の形です。CDケースと比べてみましたが、それよりも一回り小さいです。
実際に手に取ってみると、よりその小ささを実感できます。
天板
天板には電源ボタンとアクセスランプがありますが、リセットボタンはありません。また、電源ボタンはパワーLEDも兼ねています。
底面
底面には吸気用のスリットとゴム足が設けられています。ただし、ゴム足はそれほど高さがあるものではないので、エアーフローのためには100円ショップ等で売られているゴム足等を用いてかさ上げしてもいいかもしれません。
正面
正面にはUSB 2.0ポートが一つ設けられています。USBメモリや外付け光学ドライブ等のたまにしか使わない機器用ですね。
背面
背面のインターフェースは、左から電源コネクタ・USB 2.0×2・HDMI×2・ギガビットLANポートが設けられています。残念なのはUSB 3.0ポートが無いこと。
後述しますが、NUCには内部にmSATA SSD以外のストレージが増設できません。そうなると外部にストレージを増設することになりますが、その際に高速なUSB 3.0が使えないのはかなり痛いです。
NUCにはもう一つモデルがあり、そちらはギガビットLANポートの代わりにThuderboltが設けられています。大容量のストレージを使いたければ必然的にそちらになりますが、高速なギガビットLANが使えないのも痛いので、Intelが本気でNUCというジャンルを広めたいなら次期モデルでは絶対にUSB 3.0ポートを設けるべきですね。
側面
側面にはインターフェイスやスリット等は一切ありません。ちなみに、側面と正面、背面の素材は一体型の肉厚のアルミ素材で放熱ヒートシンクとしての役割も果たしています。
本体内部
本体内部へのアクセスは、底面のゴム足の真ん中にあるネジ4箇所を緩めます。ネジは完全には外れません。
底面の蓋を外すと、内部はこの様になっています。
各所を詳しく見ていきます。
メモリスロットはノート用のもので、2枚装着することでデュアルチャンネルでの動作も可能です。
mini PCI-Express(ハーフサイズ)用とmSATA SSD用のスロットです。
スロットは2段仕様で下段が無線LAN用、上段がmSATA SSD用です。
また、無線LAN用のアンテナも2本用意されています。
組み立て
それでは組み立てていきます。最初はメモリの装着から。
メモリは切り掛けの部分を確認しながら斜めに差し込みます。
差し込む際は、金属の端子部分が見えないようにしっかりと奥まで差し込みます。
差し込んだら、カチッっという音が鳴るまでメモリを倒します。コレでメモリの装着は完了です。メモリを2枚装着する場合は、1枚目と同様の方法で取り付けます。
メモリを2枚取り付けると、この様になります。
次に、mSATA SSDの取り付けです。
まずは、写真で赤く囲われている際のネジを取り外します。一つ注意しなければならないのは、このネジを外した際にネジがマザーボードとケースの隙間に落ちてしまう場合があるので、使用するドライバーは先端がマグネット仕様になっているものをオススメします。
mSATA SSDもメモリと同様に斜めに挿し込み、金属端子が見えないようにする。
指でSSDを軽く押さえながら、最初に外したネジでSSDを固定します。
固定が完了すれば、この様な状態になります。
メモリとSSDを装着すれば、寂しかった内部も結構詰まった感じになりますね。
後は、底面の蓋を元に戻してネジを締めれば組み込みは完了です。デスクトップの自作に慣れていれば何てこと無い作業です。
パーツ組み込み後の重量は実測値528gで、軽いですね。
UEFI更新
組み込みが終わってOSをインストールしたところですが、その前にUEFIを更新します。電源投入後、キーボードのF2キーを押してUEFI設定が画面に入ります。
UEFIのバージョンを確認すると、0020となっています。DC3217IYEのダウンロードファイルを確認すると、最新のUEFI(BIOS)は0036なのでダウンロードします。ダウンロードしたファイルはUSBメモリに移動します。
USBメモリを本体に挿し電源を投入後、F7キーを押すとUEFI更新メニューに入ります。メニューに入ったら、UEFIの入ったUSBメモリを選択します。
USBメモリ選択後、最新のUEFIが表示されるので選択します。
本当に更新するかを聞かれるので、YESを選択します。
更新が実行され、再起動をするとUEFIの更新は完了です。
更新後にUEFIを確認すると、ちゃんと更新されていることが確認できます。
後はOSをインストールします。今回は映像再生用ということで、メディアセンター用のリモコンが使えるWindows 7を選択しました。
リモコンがWindows 8に対応していれば8にしたかったのですが、メーカーのホームページで非対応となっていたので仕方ないですね。
ちなみに、mSATA SSDを搭載したOSの起動はこんな感じです。
めちゃめちゃ起動早いですw
17秒くらいで起動しているので、ストレスを感じません。
ベンチマーク
ベンチマークの前にスペックを確認します。
CPU-Zで確認すると、何故かi5-3427Uとなっています。スペックはi3-3217Uとなっているので間違っているわけではなさそうですが…。リネームなのかな?
最初はエクスペリエンスインデックスから確認していきます。比較対象として、VAIOのオーナーメードモデル・VPCF24AJを用意しました。
VPCF24AJ スペック
・Windows 7 Home Premium SP1 64bit
・Core i5-2450M 2.50GHz
・DDR3-1333 4GB×2
・GeForce GT 540M
・HDD 500GB
CPUのスコアは完敗ですが、プライマリハードディスクのスコアは2.0と圧倒的に勝っています。通常使用においては、SSDの恩恵があるNUCの方が圧倒的に快適だと思います。
グラフィックスに関しては、実際に仕様においてはほとんど差が無いと思います。ブラウザゲームならまだしも、このレベルでは快適なゲームは無理でしょう。
次に、PC MARK 7のスコアです。VPCF24AJの方がプロセッサ、グラフィック共に勝っていますが、NUCのスコアはVPCF24AJの2倍近いスコアです。
PC MARK 7は通常使用におけるOCの快適さを計測するベンチなので、SSDを搭載するNUCの方が圧倒的に快適なのが数字からもわかります。
CINEBENCHにおいては1ポイント近くの差をつけられてしまっています。CPUのパワーが必要とされる場面においてはNUCのパワー不足を実感するでしょうが、NUCでわざわざCPUパワーのいる作業の必要性を個人的には感じません。
そんなことしてもストレスが溜まるだけなので、性能の高いPCでさっさと作業を終わらせてしまったほうが効率的です。
あと、ベンチマークではないですが映像再生時のCPU使用率も調べました。
CPU使用率
・ブルーレイ再生 19%
・Youtube(1080p)再生 17%
・TSファイル(フルHD)再生 14%
再生支援が効いているので、CPUパワーは非力ながら使用率は低く再生も快適です。
ブルーレイのドライブとソフト、Youtubeの動画は以下のものを使用しました。
消費電力・温度・騒音値
消費電力についてはアイドル(起動5分後)、ブルーレイ再生、Youtube再生、TSファイル再生、ブルーレイプレーヤ(SONY BDP-S380)で計測しました。ソフトや再生動画は上記で紹介したものです。
全般的に言えるのは、NUCがかなり省電力であるという点です。アイドル時の14Wはもちろんのこと、ブルーレイやTSファイル再生時でも20W台というのは素晴らしいです。
ただ、ブルーレイプレーヤが再生中にも関わらず9Wというのには驚きました。単純にブルーレイを見るなら、プレーヤーを使ったほうが消費電力・リモコン操作の快適性という点で良いですね。
次に、温度と騒音値です。UEFIで冷却と静音のどちらに振るかを選べるので、それぞれを選んだ際の温度と騒音値を計測しました。
騒音値に関してはスマートフォンの騒音値計測アプリを使用しました。NUC本体の真横において計測しましたが、あくまでアプリなので参考程度にとどめておいてください。
UEFIにおける温度と静音に関しては以下のようになっています。
Quiet設定
Balanced設定
Cool設定
室温16℃
まず言えるのは、温度が高すぎることですね。この真冬の時期にも関わらずCPU温度が70℃台に達しています。UEFIの設定を変えても温度の低下はごく僅かなものです。
また、騒音値も殆ど変化が無くUEFIのデフォルトの設定ではかなり静音よりに設定されていることがわかります。
実際、Cool設定の際に耳を近づけてみましたが無音に近い状態です。
デフォルトの設定以外にもカスタム設定が出来るので、もっと冷却寄りにして冷却と静音のバランスが取れる自分なりの設定を見出す必要がありますね。
ファイル転送速度
省スペースPCということで、無線LAN接続時のファイル転送速度を調べました。無線LANのアダプタは以下のものを使用しました。
5GHz帯で、リンク速度は300Mbpsです。
転送には1GBのファイルを利用し、そのファイルの転送速度を計測しました。
有線と無線の転送速度の違いは一目瞭然ですね。無線ではRead・Write問わず6倍以上もの時間がかかっています。
インターネット接続やフルHDクラスの映像再生用のクライアントとしてなら無線でも問題ありませんが、NUCを省電力ファイルサーバーとして利用する場合にはこの差は無視できませんね。ただ、このモデルは大容量のストレージの接続にはUSB 2.0しか使えませんので無線LANでも困ることはないと思います。USB 3.0があったなら、断然に有線LAN接続なんですが・・・。
まとめ
今回は映像再生用のクライアントというテーマでレビューしましたが、その点においては非常に省電力かつ快適でいうことありません。単純にブルーレイ再生だけなら、プレーヤ推薦ですがw
ただ、このマシン1台で何もかもこなそうというのは無理がありすぎます。確かに電力は低いですが、いかんせんパワー不足です。搭載しているCPUを見ても分かるとおり、ウルトラブックがデスクトップになったようなものですから。
i5やi7といった性能の高いCPUとミドルレンジ以上のビデオカードを搭載したデスクトップがある方にとっては、非常に省電力で使いやすい普段使い用のPCになると思います。
ゲームやエンコード等といったようなマシンパワーが必要な作業のときにだけ高性能デスクトップを使うようにすれば、かなりエコなPCライフを送れるのではないでしょうか?
また、VESAマウントでタッチ対応ディスプレイ固定し、Windows 8と組み合わせればリビングやキッチンで使える省スペースPCにもなります。
NUCは確かに省電力なPCですが、私にとっては『Windowsが使えるメディアプレーヤ』です。ブルーレイも再生できてファイル形式にとらわれないメディアプレーヤは便利すぎます。
自分自身のレビューや他の方のレビューを見て思うのですが、NUCは人によって何かに特化したPCになっていると感じます。省スペースだけど性能はそこそこ、しかし、だからこそ限られた性能を何かに特化させることによって価値を見出す、NUCはそんなPCだと思います。
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