レビューメディア「ジグソー」

リベルタッチ解体新書

1.新リベルタッチの概要と、その特徴
2.「限りない心地よさ」その秘密を解き明かす
3.従来モデルやライバル機種との比較
4.リベルタッチ最大の弱点
5.更なる「限りない心地よさ」を求めてのモディファイ
6.最後に。ぜひ「スパコン用キーボード」としての復活を

 

 

1.新リベルタッチの概要と、その特徴

 

「タイピングに限りない心地よさを」のキャッチコピーを掲げ、富士通コンポーネント(旧・富士通高見澤コンポーネント)が2007年に発売したリベルタッチ(Libertouch、FKB8540)シリーズ。

初代はJISとUSの2配列×白(051/W)黒(052/B)のカラーバリエーションで計4モデルがリリースされました。

その後2018年にJIS配列のライトグレー(G)モデルとしてかな印字あり(551/G)、なし(552/G)の2モデルが再販されました。

10年以上にわたる同シリーズの終焉を飾ると同時に、完成形と呼ぶにふさわしいキーボードです。

筆者はリベルタッチの他にもミネベアのRT6652TWJP、東プレのリアルフォースR2SA、IBMの5576-A01なども所有していますが、どれか一つしか持てないと言われたら迷いなくこの新リベルタッチを選びます。

 

一般的にメンブレンタイプのキーボードといえばコストダウンの産物というイメージが付きまといますが、本機は独立ラバードーム+コイルスプリングという唯一無二の機構をもちます。押し始めの荷重はラバードームが、ストロークエンドの荷重はスプリングがそれぞれ担います。スライダーが底打ちせずとも入力でき、その一方で力を込めると鉄板がしっかりと打鍵を受け止めてくれます。浅いタッチの人もしっかり打ちたい人も、ともに満足できる特性と筆者は感じています。かつては東プレのリアルフォースと並ぶハイエンドと称されたこともありました。

また同じ富士通のFKBシリーズの中でもコストのかけ方は尋常ではなく、キーを構成するパーツもキートップ、スライダー軸、ラバードーム、スプリングが全てのキーに奢られています。更にはハウジングも独立しています(プレート裏からはめ込む形式、後述の特許情報参照)。

 

独立ハウジングはスライダーとの組みつけ精度も高く、キートップのぐらつきの無さは東プレのリアルフォースやFILCOのMajestouchシリーズをはるかに凌ぎます。EnterやShift、スペースなど大きめのキーでもスタビライザーが要らないほどです。通常キートップを指先で撫でまわすと、大抵のキーボードは「カチャカチャ」と喧しく鳴ります。ところがリベルタッチは、それがないのです。※1

組みつけ精度の高さではIBMの「5576-A01」、Keychronの「Q1」が比肩しますが、リベルタッチはそれらの名機と同等、あるいはそれ以上と感じています。

実際にリベルタッチは1キーたりともスタビライザーを使用しておらず、代わりに大型キーの位置には防振ウレタン(ラバードームの荷重マップ画像参照)が貼られてあります。キー入力をする上で不快に感じられる要素を、徹底的に除去するよう考慮されていることが窺えます。

(※1:モディファイ時。出荷状態のままでは、やはりカチャカチャうるさいです)

 

90年代を代表する富士通の傑作・FMV-KB311と比べても、品質の高さは明らかです。311のインナーはメンブレンシートをプラスチックの上部と鉄板の下部で挟み込んでいますが、リベルタッチは上下とも鉄板の2枚重ね。抜群の安定感を誇ります。これは前述の独立ハウジングをしっかりと挟み込むための構造で、スライダーのぐらつきを最小限に抑える効果を生み出しています。
独立ラバードームばかりが注目されがちなリベルタッチですが、他のキーボードに比べて秀でているのはこの独立ハウジングだと私は考えます。実際にリベルタッチの技術の粋といえる特許情報では、ラバードームでなくキーハウジングが請求項(出願の要点)になっています。
(従来のレビューでは注目されなかった、独立キーハウジング。驚くほどぐらつきが少なく、奥にはメンブレンが見えます) 
 
 
2.「限りない心地よさ」その秘密を解き明かす
 
独立ハウジングがもたらす、圧倒的なストローク精度の高さ。それこそがリベルタッチの知られざる「真の実力」です。2007年の初代登場以降、メディアのレビューや関心はその大半がラバードームにありました。それしか無かったと言っても良いでしょう。たしかに独特のタッチに寄与していることは間違いありませんが、一般的なメンブレンキーボードとリベルタッチの最大の違いは、そこではありません。
通常タイプのメンブレンキーボードは、スライダーがメンブレンシートを覆うラバーシート/ラバーキャップを介してメンブレン接点に圧力を加えます。リベルタッチがメンブレンシートを直接押すのはラバーでもスライダーでもなく、公称/実測ともに3.8mmのストロークを持つ「コイルスプリング」です。実際に入力されるのは次のどの組み合わせか検証してみました。
 
①スプリング有り、ラバードーム無し
②スプリング無し、ラバードーム有り
③スプリング、ラバードームどちらも無し

左から順に①、②、③ですが、入力を受け付けたのは①だけでした。②はストロークするものの入力を一切受け付けず、③に至ってはストロークすらせず。かといって入力され続ける(=押しっぱなし)状態にもなりません。つまり「純粋なスイッチとして作動するのは、コイルスプリングだけである」ということです。検証②のとおりラバーがメンブレンを直接押すわけではないので、キー入力においての役割はダンパーのみという事になります。

また検証③のスライダーも同様で、実はぎりぎりのクリアランスで先端がメンブレンまで届きません。つまり底突きも発生しません。もしもスライダーが直接メンブレンシートを叩くことになれば、あっという間にメンブレンが傷んでしまいます。

そこで最後に重要な役割を担うのが、スライダーの先端に見えるコイルスプリングです。わずかに数ミリ出た部分が、アポロ月着陸船のごとくメンブレンに着地します。

 

いわゆる「底打ち」の感覚は金属プレートではなく、スライダーのストッパー(四角でなく、丸い部分)とハウジングトップの接触で生じます。その接触自体もキーの底(作用点)でなくトップ、つまり指先に近い部分(力点)で打った感覚が得られるため、わずかな入力でも打鍵の満足感が得られる構造になっている訳です。更にはスライダーがフッ素樹脂製(手触りからそう思われる)なのも、ハウジングとの接触をソフトに感じさせる一因です。「ガツン」と来ないのです。

 

もう少しだけ、メカニズムにも目を向けてみましょう。コイルスプリングの耐荷重ですが、10回の実測平均で30±10gほどでした。初代モデルのラバー荷重は水色の45gでしたが、当時のパッケージに描かれたストローク/荷重曲線と比較すると、初代から新型に至るまでのラバー変更の秘密が浮かび上がります。キー押下が45gのラバー荷重を超えると、実際のON荷重までは若干のラグが生じます。

そして3種類あるラバードームのうち最もピーク荷重とON荷重のラグを極小化できるのは、言うまでもなくオレンジの35g荷重です。よくよく考えたらラバードームの中央はなく輪の状態なのでラバーそのものがアクチュエーターになる筈もなく、また底打ちせずともソフトなタイピングを行なうならば、ラバー荷重はむしろ軽い方がいい訳です。

 

その一方でスプリングの正確な荷重ですが、恐らく35gではなく30gではないかと思われます。荷重ラグが大きすぎるとイニシャルからストロークエンドまでが間延びしてしまいます。だからといってラバーとスプリングの荷重が同じだと、アクチュエーションがシビアになるばかりでなく、ピークからONまでの間で心地よさを感じられる「溜め」、じわりとした感覚が無くなってしまいます。だから荷重ラグを少なくしつつも、敢えてゼロにはしない。

恐らくはその辺の検証結果がフィードバックされ、新型ではオール35gという結果につながったのでしょう。私の好みは初代の45gですが、そのような経緯から富士通としての最適解は35gという結論に至ったのではないか。筆者はそう見ています。

 

 

イニシャルをしっかりと受け止める、中空のラバードーム。入力を歪みなく、ストロークエンドまでサポートするキーハウジング。キーハウジングと寸分の狂いもなく、絶対に底付きすることのないフッ素樹脂のスライダー。わずか4ミリ弱のストロークでメンブレンシートを撫でるようにタッチするコイルスプリング。そして揺るぎない絶対の安定感を生む、2枚重ねの金属プレート。
これらの絶妙な組み合わせが、一般的なメンブレンやメカニカル、リアルフォースやHHKBの静電容量無接点、IBMやUNICOMPのようなバックリングスプリング等、いずれとも異なる独特の心地よいタッチを生み出します。
 

キータッチの表現で、やれリニアだ、タクタイルだ、クリッキーだという言い回しがあります。私の感覚ではどれも違い「それって、どういう意味ですか?」思わず聞きたくなってしまいます。私の語彙力が乏しいこともあり、レビュアーやライターの方が上記のような例えをされても今ひとつ分かりません。フェザータッチという使い古された言い方も「この人、本当に分かっているんだろうか」そう感じてしまう。

ならばお前はリベルタッチの感触を、一体どう表現するのだ。そう問われたら、迷わずこう答えます。

 

体操で10点満点の着地

 

これに尽きます。

鉄棒であれ床運動であれ体操競技の得点は、ほぼ全てがフィニッシュの着地で決まります。

キーの中央でも端でも、前後左右、更には斜めからタイプしても、確実に入力を拾ってくれる。

垂直にストンと落ち、ビタッと決まる。そして着地の直後、じわっと最後のポーズを決める。

そんな10点満点の着地が、打鍵のたびに訪れるのです。毎回、満点。

だから気持ちよくない訳がありません、これこそが「限りない心地よさ」の正体です。

 
私自身、リベルタッチの真価に気づいたのは入手から1年以上が経ってからでした。こうした富士通の執念ともいえるキーボードの傑作が、正しく理解されることもなく埋もれてしまうのは悔しい。そうした思いから、この拙いレビューを綴っています。
もしも過去のPCメディアがリベルタッチの特性を正しく評価できていたら、キーボードの歴史は間違いなく変わっていたことでしょう。そう思うと残念であり、当時のPCメディアを私はほんの少しだけ恨みます。もっともメディアだけのせいではありません、一番の責任はメーカーのマーケティング/PR不足です。
 
 
3.従来モデルやライバル機種との比較
 

リベルタッチの祖先ともいえるFMV-KB311との比較ですが、311が唯一リベルタッチに秀でるとしたら、キートップがPBT&含浸印刷(=昇華印刷)であることでしょう。リベルタッチはABS&レーザー、ただしキートップの厚みは実測で1.5mm、硬度もそれなりにあることからチープさは感じられません。

 

 次に初代リベルタッチとこの新型の比較ですが、初代はラバードームの標準荷重が45g(水色)。それに35g(オレンジ)と55g(白)が15個ずつオプションで付属します。

対する新型はオプション無しのオール35g。個人的には新型でも荷重が変えられると良かったのですが、富士通としての最適解は恐らく前項の理由によるものと思われます。

 

もう一つの変更点ですが、初代では本体背面にUSB1.1ポート×1が設けられていました。これが新型では廃止されています。初代はPC本体に接続するとUSBハブとしても認識されるため、デバイス認識や供給電力の関係で動作が不安定になるなども報告されていました。Rev.07以降では改善されたと当時発表されるも、個体によっては不安定なものも少なからずありました。

そうした不評もあってか、新型ではUSBポートを廃止。その分、電源投入後の動作も安定するようになりました。地味ですが嬉しいマイナーチェンジです。

 

その一方で、ライバルと目されたリアルフォースとの差は縮まったかというと、逆に水を開けられ、モデル自体も終焉を迎えるに至りました。

両者の埋めがたい差は、一体どこにあったのか。大きく3つの理由が考えられます。

 

性能やフィーリングは拮抗しつつも、リベルタッチがリアルフォースに勝てなかった理由。第1の要因はマーケティングにあったと言えるでしょう。

 今や日本を代表するキーボードメーカーとなった東プレは、Nキーロールオーバーなどを売りにゲーマー層へのアプローチやRGBモデルのリリース、それ以上にジャストシステムやPFUとのコラボレーションなども展開しながらリアルフォースの市場を開拓。日本代表と呼べる存在まで育て上げてきました。限定カラーの一太郎モデルのみならず、現在も販売されている「PFU Limited Edition」はHHKBとの棲み分けに成功した、まさにマーケティングの賜物と言ってよいでしょう。

 

対するリベルタッチはといえば、IC部品の枯渇という理由から再販のバリエーションもかな印字の有無にとどまり、さながら"大戦末期のゼロ戦"にも比喩されるほどの寂しい展開でした。

マーケティング戦略の失敗というよりも、もっと大きな富士通自体の経営戦略に負う部分も少なくなかったと思われます。

現に開発元の富士通コンポーネントでは製品ラインナップも先細りの一途で、また親会社の富士通もPFUの株式を手放すことが決まりました。HHKBを擁するPFUを手放すということはキーボード市場における戦略の転換でもあり、近年で明るい話題といえばモバイル向けの「LIFEBOOK UHキーボード」をリリースした位です。

 

リベルタッチがリアルフォースの後塵を拝した第2の理由ですが、プロダクトとしての「チューニング不足」と思われます。入力機器としてのリベルタッチの実力は、メーカー出荷状態では物足りないというか詰めが甘く、まだまだ改良の余地がありました。

 

 

4.リベルタッチ最大の弱点


リベルタッチとリアルフォース、幾多のメカニカルキーボードとの明暗を分けたもの。第3にして恐らく最大の理由は、柔軟なカスタマイズ特性ゆえの弱点が挙げられます。背面のUSBポートが1.1仕様だったり、デザインが古めかしいなどは有りますが、入力装置として見た場合の本質ではありません。

私が思うに一番の弱点であり、普及を阻んだものは「メンテナンス性の悪さ」。これまで10台以上のリベルタッチを分解整備してきたからこその実感です。

 

往復動作をする機械装置としての類型には、自動車やオートバイのピストンとシリンダー、あるいはトランペットなど管楽器のピストンバルブが挙げられます。特にトランペットの運指はタイピングにも通ずるものがあります。

もちろんリベルタッチは出荷状態でも使うことはできますが、より完璧なコンディションを長く保つにはメンテナンスが欠かせません。そのための手間ひまを注ぐことができるか否かが、評価をもっとも左右する部分です。

 

メンテナンスを趣味として楽しめる人には最高のツールになるでしょうし、逆にそもそもメンテナンスという考えがない人ならば「確かにタッチは良いけど、コスパが悪い」という低い評価を下すでしょう。その辺は、時おりユーズドで入手する個体のコンディション差でもよく分かります。


リベルタッチに完全なメンテナンスを施すには、キートップの分解清掃やグリスアップが必要不可欠です。実はこの分解がくせもので、ある程度慣れた現在でもそれぞれの作業難度は次のように感じています。

 

★★    キートップ(Assy)の取り外し
★     ラバードームの脱着
★★★   スプリングの脱着(紛失注意!)
★★★★★ スライダーの取り外し 
★★★★  キートップ(Assy)の装着

 

 

中でもキーキャップからのスライダー取り外しは至難の業で、キーキャップの隙間にマイナスドライバーを差し込み、牡蠣のカラを剥く要領で取り外します。この時に力の入れ加減を誤ると、キーキャップを破損する恐れがあります。

 

またキートップを本体に装着するのも意外と難しく、ハウジングに対し垂直に差し込まないとスプリングやスライダー先端の破損につながります。特にスプリングの破損や紛失はユーズドの個体にも時々みられ、せっかくラバー荷重を交換できるメリットが故障と隣り合わせになってしまいます。新型ではラバー荷重も35gのみ/交換を前提としない製品構成になりましたが、メンテナンスの失敗による破損を回避するためにラバー交換を封印したのでしょう。そうでなければ説明がつきません。

 

リベルタッチのサブコピーには「for Professional」と謳われていますが、これは決してプロの作家やライターばかりを指すのではありません。自動車に例えるならドライバーでなく、メカニックとしての腕前が求められます。レベル的にはメカニカルスイッチのハウジングを分解しバネを交換したり、ルブを施すなどのメンテナンスを厭わない。そんなヘビーユーザー、あるいは玄人向けの製品という意味も込められているのでしょう。同じことはキーボード史に残る名機・5576-A01にも言えます、

共にスプリングを独自の機構にしているあたりも一緒です。

 

5.更なる「限りない心地よさ」を求めてのモディファイ

 

前置きが長くなってしまいましたが、私の愛用品も若干の手間をかけています。以下のモディファイを施したところタッチが激変、まったくの別物といってよい程になりました。以下は私が施したメニューです。

 

1)筐体内の静音化および防振対策

2)チルトスタンドの加工

3)ラバードーム荷重の最適化

4)キースライダー(軸受け)の全ルブ化

5)エンブレムプレートの追加

 

まず筐体内の静音化および防振対策ですが、筐体下部は中空となっており左右にわたり補強のリブが設けられています。最上段のファンクションキー部分にはWAKIのPEスポンジシート(5mm)をカットし敷設、またメインキー部分のリブの隙間には岡安ゴム製のEPDMゴムシート(0.5mm)を1ライン当たり3枚貼り重ねています。1枚あたり440mmなので、計16本分で約7m。3枚重ねで、ようやくリブと同じ高さになります。

鉄板を上げてみると、しっかりと裏ネジの跡が。鉄板との密着ぶりが窺えます。

 

もう一つの防振対策、チルトスタンドの加工。ここにはタカチ電機工業のゴムシートを貼り合わせます。ノーマルのスタンドは素足なので、これでスタンド使用時の安定感が向上。ゴムシートの他にも

5mm厚の基板用スポンジを貼ります。これもタカチ製。チルトオフ(0)→オン(1)で角度がつくところを、私の好みでオフ(std比0.3)→オン(1)に変更。この0.3がちょうど良いのです。

 

 

そして一番の改良ポイント、キー荷重の最適化。親指や人差し指など力の加わりやすいホームポジション周りは高荷重の55g(白)、小指や薬指などの両端は新型標準の35g(オレンジ)、中間は初代モデル標準の45g(水色)を選択。リアルフォースの変荷重モデルのごとく、キー単位で変更します。水色は保守部品でも市販されていないので、初代からの移植です。

もともとはこうした荷重変更がリベルタッチ最大のセールスポイントだった筈なのですが、なぜ新型で廃止したのか。前述の破損防止のための封印もさることながら、保守部品としてのラバードームもあまり生産していなかったのでは。そう推察しています。

荷重の最適化を行なうにあたり、実はオレンジと白を2セットずつ、計4セット購入しました。オレンジは最初から付いているだろうと思われるかも知れませんが、実はこのリベルタッチ本体、ユーズド購入だったためにオーバーホールを兼ねて新品ラバーに全交換し、他を白や水色に置き換えました。

保守用のラバードームはダイヤテックのオンラインショップで購入しましたが、その後オレンジ、白ともに品切れになってしまいました。もしかしたら、私が最後の購入者だったのかも知れません。

 

そして最後の仕上げとして、Silicon GraphicsのFKB8520-214と同様、全てのキースライダ―にシリコンオイルをひとつひとつ手塗りしました。ここまで手間をかけると、キーを押し切ったときの打鍵感も激変します。手を加えないノーマルの感覚が「カタカタ」だとしたら「コトン、コトン」という節度ある反応が返ってきます。※2

塗布の仕方によってはハウジングがオイル漬けになるため、メンテナンス性を考えたらこのシリコンオイル塗布は諸刃の剣かも知れません。それゆえすべての人にお薦めできる訳ではありませんが、リベルタッチを好きでたまらないユーザーの方は、騙されたと思ってぜひ一度お試しいただきたいです。どれくらい違うかというと、ルブの実施前後ではリアルフォースの第1世代(106)と最新のR3くらいの圧倒的な差が出ます。手入れの行き届いたリベルタッチには、R3も太刀打ちできません。

ちなみに私が常用しているシリコンオイルはこちらです。

(※2:労力および費用対効果は、ルブが最強)

 

オリジナルのエンブレムプレート(銘板)はおまけみたいなもので、フォントがダサいと評判の悪かった初代ロゴと、生体認証やICカードリーダーの搭載カスタムを想定したブランクエリア(通称:フリスク置き場)を何とかしたいと思いました。賛否両論あったロゴですが、私は独自の機構と並んでリベルタッチのアイデンティティに感じており、新型でロゴが無くなったのは少し残念でした。

新型の外箱には「Keyboard for Professional」と書かれていますが、これ以上のものは望めない。そう思い「The Supreme Keyboard」、比類なき至高のキーボードと銘打ちました。今やリアルフォース、HHKBを除いてほぼ見当たらない国内生産「Made in Japan」も刻み、一気に満足度が爆上がりしました。性能とは関係ない部分ですが、たかだか一枚のプレートで道具への愛着が深まるから不思議なものです。

 

もっとも、ここまで手を加えても気になる点がない訳ではありません。贅沢をいえばキーキャップはABSでなくPBTであって欲しいし、また印字もレーザーでなく昇華印刷だったら。さらにはスプリングも38mmの標準ストロークのほか、Cherry MXのスピードシルバー軸に相当するような30mmのショートストローク、荷重に関しても各ラバードームと揃えた45gばねや55gばね等、複数バリエーションが有れば。そのあたりが残念です。

 

 

6.最後に。ぜひ「スパコン用キーボード」としての復活を

 

筆者は以前、リベルタッチの特許情報(特開2009-211930)を参照したことがあります。

出願段階では、キースプリングも交換させることで「ラバードーム荷重×スプリング荷重」のバリエーションも構想にあったようです。結局は実現しませんでしたが、その辺りの技術思想は現在主流のメカニカルスイッチが「ホットスワップ」という形で実現しています。そう考えると曲損しやすい剝き出しのスプリングは、メンテナンス性の面でもメインストリームにはなり得なかったと納得しています。東プレも、リアルフォースの荷重変更はユーザーに開放していませんしね。

 

製造元の富士通コンポーネントにおけるキーボード事業が自社ブランド/OEM含め縮小傾向にあったこともあり、一時はPFUがリベルタッチブランドを富士通グループ内でライセンス移管して、HHKBの兄弟モデルとしてリニューアルされないかな。そんなことも思い描いていました。しかしPFUが富士通からリコーの傘下に移り、また量販店でもデスクトップPCの売り場がノートの1割にも満たない現在、もはや復活の望みは限りなく薄いでしょう。

 

もし私が富士通のマーケティング担当者なら、リベルタッチを「スパコン用推奨キーボード」として認定し、リブランディング(Re-Branding)したいです。あくまでも空想の世界ですが、リベルタッチを新設計するとしてもスパコンの開発費に比べたら微々たるものでしょう。そして何よりも、比類なき最高性能を追究するスパコンにこそ最高品質のキーボードがふさわしいです。

たとえば新型を2千台、いや5千台生産したとしてシリアルNo.0001はその時々のスパコンに、

No.0002以降は一般販売用に。それを謳い文句にすればいいのです。たとえば2012年に完成しスパコンの頂点に返り咲いた「京」モデル用のキーボードがあったなら。あるいは現在も第一線級の性能を誇る「富岳」用に最適化されたキーボードがあるとしたら、どんなモデルだろうか。キーキャップをPBTにして、評判の悪いLibertouchロゴは、「京」なり「富岳」なり、その時代時代を担った意匠を刻んでくれればそれだけでも合格です。理想をいえば、次期スパコン登場の際には、キーボードも最高品質でリニューアル。そんなブランディングストーリーがあれば食指がそそられる人は少なくないと思いますし、私も必ず買います。

モバイルキーボードの雄・Happy Hacking KeyBoard(HHKB)の生産台数は25年間でおよそ60万台。平均すると年間24,000台。デスクトップキーボード市場がモバイルの10分の1だとしても、単一モデルで2,000台というのは控えめな数字でしょう。

スペックを越えた想いの共有、ぜひともリベルタッチ復活の暁には実現いただきたいですが、やはり夢でしょうか。スパコンのDNAやスピリットが感じられるキーボード、悪くないと思うんですけどね。

 

かつては5576-A01やThinkPadといった秀逸なデバイス生み出した巨人・IBMがメインフレーム以外のハードウェア事業をレノボに売却したように、最近の富士通もメーカーからサービス業へのシフトが窺えます。いずれはメーカーであることを放棄してしまうかも知れない、そんな思いもよぎります。ある意味でこの新型リベルタッチは、かつてIBMと互角の日米対決を繰り広げながらも、選択と集中を繰り返してきた富士通の「最後の徒花」なのかも知れません。

  • 購入金額

    28,800円

  • 購入日

    2021年07月頃

  • 購入場所

28人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (4)

  • aoidiskさん

    07/18

    面白い キーボードへの敬意 感じます。
    富士通キーボード 未だに打ちやすさを感じます。
    荷重 深さ 戻り そして筐体
    リアルフォース いくつか時に使いますが、
    個別の差はよく分かりませんが、性格の違いはなんとなく感じます。
    今後 に 僅かながら期待 してはいるのですが、
    もう 出てこないのかもしれ無いと思うとやっぱり寂しいですね。
  • Daisyさん

    07/18

    aoidiskさん>
    こちらにもコメントいただきありがとうございます。よくよく考えたらFMV-KB311の型番がFKB8520、リベルタッチがFKB8540なので正常進化版と言えるかも知れませんね。
    最近の富士通キーボードは極端なコストダウンの影響もあり、魅力的なものが無くなってしまいました。ミネベア製のように消えゆく運命なのかなと一抹の寂しさを感じます。
    レビューに特許関連の画像を追加しました。CHERRY MX系のように他メーカーが採用できないのは何故だろうと疑問を抱いたのがきっかけでした。富士通自体による復活が無理ならライセンスも塩漬けにせず、東プレかPFU、あるいは海外生産でもFILCOやアーキサイトがリベルタッチブランドを復活させてくれまいか。。。かと言っても、ミネベア→UACみたいになるのも嫌ですしね。
  • 名湯さん

    08/12

    はじめまして、久々にログインしたのですがすごいレビュー見させていただきました。
    私も10年ほど前キーボードにはまっていた時期があり、IBMの旧製品やNMB等々使っていましたが、それ以上とはすごく気になりますね。

    1つだけ選べと言われると私は何にしようかな… メカニカル系も味があって良いのですが、総合的に良かったのはThinkPad600系のキーボードでしょうね。ストロークが浅いことを感じさせない荷重・タッチのバランスは天使のキーボードと言われるのも納得でした。指が勝手に次のキーに吸い付くような感覚は長らく感じていません。
    惜しむべきは今の環境で使えないことですね汗

    リベルタッチ、40年近く前のIBM ModelMが名前を変えながらも今でも細々と生産されているようにロストテクノロジーになることない幕引きがされると良いなと願ってます。
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