このレビューを書いている2022年の時点で新品はおろか、ユーズドでも目にすることの少なくなったキーボードです。
今やキーボードのスイッチはメカニカルが全盛、メンブレンは廉価製品というのが相場ですが、かつてはメンブレンが主流。その中でも富士通のFMV-KB311はメンブレンの完成形の呼び声も高いモデルです。
本機はその流れを汲む富士通高見澤コンポーネントのOEM品で、Silicon Graphics社のワークステーション用に供給されていたものです。
Windows95登場前の製品なのでキー配列はJISの106キー、インタフェースもUSBが普及する前のPS/2です。
(花崗岩(グラナイト)のような外観が所有欲をくすぐります)
もともとはFKV-KB311を探し求めていたのですが、偶然にもフリマアプリでOEM版を見つけました。動作未確認のNC/NRということで、祈るような気持ちで購入したところ、幸いにも動作できました。
その一方で年式(1995年)なりのくたびれ具合でしたので、気になる箇所を中心にオーバーホールも兼ねてモディファイしています。主な補修ポイントは以下の通りです。
1.筐体黄ばみの漂白
2.加水分解によるゴム足のベタつき改善
3.LEDの接触不良(NumLockが点かない)
4.キータッチが若干渋い
購入時の時の状態はグレーの筐体といえども黄変が目立っていたので、ケースの上下ともレトロブライトを実施。ワイドハイターEXで漂白しています。だいぶキレイになったものの、Silicon Graphicsのロゴも溶かしてしまったので出来栄えは失敗のギリギリ手前。ドブ漬けするよりも、表面に絵筆で重ね塗りを繰り返すなどの方が安全だったかも知れません。
加水分解によるゴム足のベタつきは、2mm厚のEVAフォームを同サイズにカットして重ね貼り。これだけで机での引っかかりも無くなり、そこそこのグリップにもなります。
LEDに関しては、球切れというよりは接触不良を起こしていたようでした。先人の知恵によると、同キーボードのLEDはハンダ付けされておらず、通電ゴムでインナーケースにマウントされているとのこと。オリジナルのLED色は緑ですが、Silicon Graphicsのグレー筐体にあわせるべく紫(ラベンダー)を選択。画像では明らかな紫ですが、肉眼では青紫に近い発色で本体色にマッチします。
紫のLEDといえばFILCOの「Majestouch Lumi S」を連想しますが、LEDのガラス部分は透明なので、Lumi Sほどの毒々しさはありません。
LEDの窓は表面にプラスチックのプレートが貼られているのみで、そのままだと明る過ぎます。気持ちばかりの減光を図るべく、LED窓の内周にEVAフォームをミリ単位でカットし貼り合わせます。
筐体カバーを被せてみると、まさにイメージ通り。やはりグレーと紫は合います。
最後の仕上げに、キー軸にはシリコンオイルを一個ずつ筆塗り。先人の知恵では軸受けのパネル全面にドライルブを吹き付ける方法もあるようですが、丁寧に塗れば埃の心配もさほどありません。
富士通のキー印字といえばレーザーマーキングが有名ですが、本機の印字にはレーザー普及前の含浸印刷(現在でいうところの昇華印刷)を採用、耐熱性の高いPBTが使われています。サラサラの表面と引っかかりのないキー軸の組み合わせは、快適そのもの。最近のモデルに例えるならリアルフォースの静音モデル(R2SA)に匹敵します。むしろ、打ち比べるとこちらの方が気持ちいい。
Windows95が出た頃の富士通キーボードは標準価格でも20,000~30,000円+消費税という価格設定がされていました。現在の感覚だとにわかに考えられませんが、同時代のIBMなどでも5576-A01はじめ、また現在のリアルフォースも同様に相当のコストをかけているのがうかがえます。インターネット夜明け前の名機といっても過言ではなく、製造から四半世紀以上たった現在でも色褪せません。
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購入金額
7,800円
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購入日
2022年07月頃
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購入場所
aoidiskさん
2022/07/18
メンブレン 確かに廉価版というイメージ そんなこともないですよね
キーボードで気持ち 効率が変わることを知ってからは
一層そう思います。
キー配置も懐かしさ感じます。
Daisyさん
2022/07/18