2007年に富士通コンポーネント(旧・富士通高見澤コンポーネント)が送り出したメンブレンキーボードの傑作、それがリベルタッチ(Libertouch)です。
「タイピングに限りない心地よさを」のコピーを引き下げてリリースされ、東プレのリアルフォースやFILCOのMajestouch等のプレミアム路線に名乗りを上げた意欲作です。
型番のFKB8540が示すとおり、富士通の系譜としてはFKB8520、つまりFKV-KB311の後継モデルといっても差し支えません。
(ロータリーエンコーダとパイロットLEDを埋込。手順はこちらを参照)
最大の魅力は独立したラバードームにあり、入力荷重をキー単位でカスタマイズ可能な点です。標準の45g(水色)を軸に55g(白)、35g(オレンジ)と上下10gに調整できます。現在でこそホットスワップ対応のメカニカルスイッチが同様のコンセプトを実現していますが、当時としては画期的でした。
メンブレンとしても特異なのは、一般的なメンブレン用のラバーはハウジング下に敷設されているのに対し、ハウジングとキートップの間に置かれています。この機構によって、ラバードームに直接アクセスできる訳です。カスタマイズのみならずメンテナンスの面でもこのレイアウトは秀逸で、掃除好きにはたまりません。
先祖ともいえるFKV-KB311との比較ですが、キー配列が106からWindowsキーありの108キーに変更されました。そして311では1枚だった鉄板が上下2枚に増強されたことで、底衝き時のダイレクト感と安定感が大幅に向上しています。(311は上部がプラスチック、鉄板は下部のみ)
またこれは後に悪評のほうが定まってしまいましたが、本体右上には指紋認証やICカードリーダーの搭載を視野にいれた空白が設けられています。その他にもUSBポートが1基設けられています。
拡張性を考慮したモデルではありますが、今にして思うと右上エリアもUSBも、リベルタッチの魅力を損なう結果になってしまったのがなんとも残念です。
拡張性はあくまでも文字通りの「余地」であり、富士通キーボードの中でもスペースが有効活用された事例はFMV-KB331Sくらいでしょう。リベルタッチ自体では活かされませんでした。
また拡張性が期待されたUSBポートも、本体への電力供給が不安定になり、キーの入力反応が怪しくなる不具合が出ました。公式にはRev.7で改善されたとのことですが、私がこれまで入手したリビジョンでも、電源投入直後の動作が怪しいものが時々ありました。どうもその辺は個体差もあるようです、同じ機種でも当たりはずれがあります。
このUSBポートですが、メディアリーダー等、データの送受信で消費電力が大きいものは装着に向かない一方、マウスなどの入力信号程度ならば動作にも影響しません。私の場合は市販のロータリーエンコーダを本体右上に内蔵し、その接続に使用しました。
手持ちのモデルは当たりかつ個体の程度もよく、新リベルタッチの手法と同様に筐体内の静音化やスライダ部分へのルブ、チルトスタンドへのラバー追加なども行なっています。手間をかけるとリアルフォース以上に快適な入力環境を実現でき、名機と呼ばれる先代の311、またミネベアのRT6652TWJPと比べても遜色ありません。メンブレンキーボードの中ではリベルタッチを凌ぐものはないんじゃないか、そう感じます。
(リブ間のゴムシートは0.5mmを二枚重ね)
(チルトスタンドにもグリップ用ラバーを追加)
ただし歴代メンブレンキーボードの中でナンバーワンかと言うと微妙なところで、後継となる新型(FKB8540-551/Gおよび552/G)のほうが当然ながら完成度は高いです。初代も新型も現在は製造を終了しているため、新品/ユーズドを含めてお目にかかる機会は少ないかも知れませんが、手に触れる機会があったらぜひとも試していただきたいと思います。ユーズドでも時おり見かけるのはこの黒タイプJISが多いですね、新型は希少というか製造台数自体が少なかったのかも知れません。
-
購入金額
17,980円
-
購入日
2022年07月頃
-
購入場所
aoidiskさん
2022/07/24
人それぞれの相性があるのでしょうが
実感できるとたまりませんね。
Daisyさん
2022/07/28
コメントいただきありがとうございます。
個人的には初期型の45g荷重も気に入っており、再販モデルで施した偏荷重と並んで手放せなくなってしまいました。リアルフォースも東プレの30g荷重とPFU Limited editionの45g荷重を都合2台所有し、違いを楽しんでおります。フィーリングもさることながら、タイピングで指先が疲れてきたときに荷重の違いを如実に感じます。