先日事業停止に続き破産手続きの開始が報じられたオンキヨーホームエンタテインメント社が扱っていた、パイオニアブランド最後のDAPとなったのが、このXDP-20でした。
発売当初は4万円弱という価格帯で投入され、一応オンキヨーおよびパイオニアのブランドから発売されたDAPとしては最廉価品となっていました。この価格であっても2.5mm4極バランス対応のハイレゾDAPで、D/Aコンバーター(ESS9018C2M)も2基搭載と、スペックだけ見ればそれなりに立派な構成でした。
これがオンキヨーホームエンタテインメントの事業停止に伴い、ONKYO DIRECT(同じオンキヨーのブランドを冠しているものの資本関係は消滅していた販売会社)で初期不良保証のみのアウトレット品として6,980円でたたき売りとなっていたのです。
はっきり言ってしまえば今更このクラスのDAPを買っても常用するとは自分でも思えなかったのですが、特に長い付き合いだったパイオニアブランド最後のオーディオ機器ということで、記念に持っておこうということで、つい購入してしまったわけです。
アウトレット品とはいえ、単にメーカー事業停止でサポート不能となったことによるものであり、中身はごく普通の新品です。
箱に印刷されたロゴで判る通り、MQAデコード・DSD再生にも対応しますし、BluetoothもaptX HDをサポートなど、機能面での不足は感じられません。
改めて写真に撮ってみて気付くのですが、売れているメーカーと比べるとパッケージの仕方が素っ気ないですね。このジャンルで人気のAstell&Kernなどは、趣味が良いかどうかは別にして開封したときにそれなりの雰囲気を作るようデザインされていますが、この製品は安物の小型家電そのものという感じです。こういったところで所有欲を満たせていないという部分はあったのでしょう。個人的には中身に影響する部分ではないので気にしていませんが、ライトユーザーが初めてDAPを買ったときにこの素っ気なさは感動に欠けるのではないかという気がします。
本体の質感も、価格相応と言われればそれまでなのですが、正直ちょっと安っぽいかなと思います。特に背面の演出が下手です。
添付品はクイックスタートガイドを除けば、USBケーブルと液晶保護フィルムのみです。しかもこの液晶保護フィルムがくせ者で、ディスプレイサイズとあまりにもピッタリ作られすぎていて、僅かでも貼る位置がずれていると、どこかが浮いてしまうのです。スマートフォンの機種専用設計のフィルムでも、各辺1mm程度の余裕を持たせるのが普通だと思うのですが…。
なお、本体の大きさは基本設計に共通部分が多いONKYO DP-S1/S1A、Pioneer XDP-30Rとほぼ同じで、サードパーティー製のケースなどでは共用可能となっているものも多いのですが、メーカー純正のケースはXDP-20専用XDP-APC020(CL)のみが対応品となっています。ちなみにXDP-APC020(CL)については、先日仕事途中で秋葉原のeイヤホンに寄って美品の中古(300円)を購入しています。
どうしても廉価品と判ってしまう音
それでは一応オーディオ機器としての実力を確認しておくことにしましょう。
幸いまだ普段使っているイヤフォンのケーブルも4.4mm5極のものは少なく、2.5mm4極が多く残っていますので、差し替え無しで使える以下の2組で試聴してみました。
・Unique Melody Mini MEST + Brise Audio STR7-std
Mini MESTは骨伝導ドライバーで中域を補うという珍しいタイプのイヤフォンですが、このイヤフォンらしい空間表現が思った程出てきません。フラットバランスという意味では悪くないのですが、帯域が狭めで低域のやや高めの周波数(7~80Hz辺り?)を盛って低域が出ているように見せかけているタイプです。高域方向も聴感上の伸びがなく、ハイレゾらしい広帯域という印象は受けません。
それぞれの楽器の音も派手に出ているのですが、分解能が低いためそれが分離して聞こえません。端的に言ってしまえば、低価格帯のDAPとしてありがちな音です。昔のiPodから楽しさを奪い去ったような音といえば良いでしょうか。iPodはオーディオ的な性能は高くありませんし、決してソースに忠実でもありませんが、聴いていて楽しい音ではありました。
特に気になったのは低域方向の不明瞭さと薄さでしたので、イヤフォンを変えてじっくりと聴いてみることにします。
・64AUDIO U4 + WAGNUS. Petit NEUTRON Lily
64AUDIO U4は低域過多という程に低域方向が分厚いイヤフォンで、64AUDIO独自の聴覚保護機構「apexモジュール」も少し低音を抜くようにm15というオプション品に差し替えているのですが、それでもまだ低域寄りバランスというイヤフォンです。
ところがXDP-20で聴く限り、U4が全くローブーストにはならず、むしろかなり丁度良いバランスに落ち着いてしまいます。U4でこのバランスであればMini MESTで低域が物足りないのも当然です。
そしてU4でも良いのはフラットバランスだけであり、一音ごとの妙な強調感が気になって聴き疲れしますし、アナログレコードから起こしたソースでもアナログらしい空間表現や質感は感じられません。率直に言って、最初からXDP-20より安価に販売されていたHiBy R3 Proの方がずっと良質な音です。いくら知名度の高い国産ブランドの名前が付いていても、この音で約4万円はちょっと無理があったと思います。2万円前後で登場していれば許容されたでしょうけど…。
私はアウトレット価格で購入していますので、この内容でこの価格という意味での納得感はありますが、発売当初の価格帯で、ライバル製品と聴き比べされてしまうとなかなか厳しかったものと思います。
評価として3.0をつけているのは購入価格を加味したものであり、本来の価格であれば良くて2.0という評価だったと思います。
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購入金額
6,980円
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購入日
2022年05月18日
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購入場所
ONKYO DIRECT
harmankardonさん
2022/06/05
jive9821さん
2022/06/05
見た目よりは大分軽いのでその点は良いのですが、敢えて持って
歩こうと思える程の音ではないのが残念です。
小型軽量でバッテリー持続時間が長い、WALKMAN Aシリーズの
方が使い途はありそうですね。