DACにAKMのハイエンド(当時)AK4497EQを採用したZiShan DSD 4497EQという名称の典型的な中華DAPです.
普通は高級機種にしか採用されないAK4497EQをシングルDACとしてではありますが搭載し,1万円で買えるというあり得ない仕様です.AK4497EQ自体を買おうとすると日本でも5,000円以上します.そうすると,他のパーツ代はどこから出ているのか?
それから,注意点としては,ZiShan DSDには,DAC違いで数種類存在します.AK4497EQを2個使いしたモデルやAK4499もあり,価格もそれなりに違いますから,購入時にはご注意を!(基本的にAKモデルは,現時点では購入できません).
ZiShan DSDなどのDAPについては,海外のフォーラムサイト(米や露など)でも,結構盛り上がっています.改造例の紹介もたくさん上がっています.
Firmwareの情報も海外のフォーラムサイトから得られます(中国サイトより安心).
現在,AKMのDACは,工場火災事故の影響で,現在入手困難(不可)な状態です.DAPも据置DAC内蔵アンプも,発売終了,発売延期,DAC変更などの対応がされています.
そんなAKM製DACの(当時の)ハイエンドであるAK4497EQを搭載したZiShan DSD 4497EQというモデルを入手しました.結構アングラではメジャーな存在です.
AK4497EQを採用したDAPは,10万円を遥かに超える高級機種ではいろいろとありますが,我々庶民では手が出ない価格帯のものばかりです.しかし,このZiShan DSD AK4497EQは1万円程度で売られており,Amazon.jpでも1.6万円程度で購入できました.
ZiShan は,このDSD以外にも2万円以下で購入できるAK搭載の中華DAPがいろいろあり,高コスパで注目されています.ZiShan DSDのあと,AK4499やAK4497を2個搭載したDAPも発売されました.
もう一つ注目すべきは,ZiShan DSDはポータブルDAPでありながらオペアンプがソケット式になっています.つまり,交換を前提に作られています(ただし,開腹するとメーカー保証はなくなります).据置アンプであれば,基板に余裕がるのでソケット対応のものも見られますが,ポータブルDAPでソケット式はびっくりします.
もう一つびっくりするのは,梱包にお金をかけていません.本体(箱なし)とUSBケーブルのみ状態で届きます.マニアルもありません(本体にボタン表示もありません).しかも,運よく電源が入っても,初期設定が中国語なので,英語に切り替えるだけでも苦労します.要するに現物が届いても,聴くこと自体苦労します.一応,ネット上には先人の努力が掲載されていますので,参考になります.
さすがの中華品質です.
出力は3.5mmアンバランス,2.5mmバランス,3.5mm同軸デジタルと,一通り揃っています.USB-DAC機能やイコライザ機能もあります.ただ,WiFiやBluetoothなどの通信機能はなく,USB端子もmicro-Bのままです.内蔵メモリはなく,microSDカードのみの対応です.UAB-DAC機能は,16bit/48kHzに制限されるんので,使用機会は無しとなります.
筐体にはデザイン性は感じられず,DAP機能に特化して,最低限のボタンと表示画面のみ配置した感じです.ハイレゾDAPの出始めの頃のようなレトロ感さえあります.大きさ的には小さい(スマホの半分程度)ですが,厚みが24mmもあるのでスマホの2倍以上です.画面も小さく,中華DAPらしいデザインです.とはいえ,筐体は樹脂ではなく金属製で出来ており,必要な箇所にはしっかりお金をかけています.
XDP-300Rと比較するとこの大きさ.とても小さいことがおわかりいただけると思います.
特徴としては,今どきのDAPにしては珍しく,爆速で起動し,電源OFFも速いです.これは,Androidを搭載せず,独自SWの効果だと思います.AndroidベースのDAPだと,電源SWを押して,メーカーロゴが出る頃には,ZiShan DSDはすでにレジューム再生しています.ただ,レジューム時,再生開始がDSDファイルの場合,再生しない時があります.Flacなら,問題ありません.
操作が非常に軽い反面,フリーズしやすいです.連続再生時にフリーズすることはありませんが,再生中にメニュー操作すると,高確率でフリーズします.特にDSDファイルの場合は100%フリーズです.
それと,発熱が大きいです.ポケットに入れて再生するのは敬遠したくなります.この熱対策で,筐体が金属製しか採用できなかったのではないかとさえ疑いたくなります.さらにHi Speedモードというのがあるのですが,これをONにするとより熱くなります(音も良くなります).
再生時間はやや短く7時間程度です.充電→電源ON→再生は出来ませんが,再生中に充電は可能でした.しかし,かなり熱くなるのでおすすめできません.
それから,タイマー機能(Sleep)があるので,意外に便利です.寝てしまうかもしてない状況だと,このスリープタイマーを設定しておくと,電源OFFになります.
肝心の音質ですが,3.5mmアンバランスの音は,1万円のDAPとしては突出しています.AK4497EQ搭載+αの効果で,非常に解像度が高く,スッキリしています.ドライで,色付け(艶とか色気)というものは一切なく,音響エンジニアがチューニングした形跡は一切感じられません.高級部品で基本構成をそのまま製品化したようなマニア向けコンセプトだと思います.AK4497EQは,“VELVET SOUND“の称号が与えられていますが,ZiShan DSD 4497EQでは残念ながらその面影は感じられません.
一方,2.5mmバランスの音は,傾向はアンバランスに準じますが,迫力に欠けます.よりそっけない雰囲気になり,バランス出力の効果は全く感じられません.特に,ヘッドホンで聴くとより顕著です.後でわかったのですが,バランス出力は,後段ampを経由していない(DAC→LPFのみ)ことがわかりました.
デジタルアウトは,このDAPのコンセプトからは外れてしまう(AK4497EQを通らない)ので,おまけだと考えられます.
総合的に値段を無視して考えれば,10万円クラスの最新DAPの音質には敵わないです.AK4490搭載のAK300と比較しても,AK300の圧勝です.
5-10万クラスのDAPならば,素の高解像度追求タイプなら,いい勝負です.3.5mmアンバランス同士の比較なら,PioneerのXDP-300Rとは好みの違いで意見が分かれると思います.個人的には,XDP-300Rのほうがより透明感と輝きがあって好みです.バランス出力では,XDP-300Rの圧勝です.
FiiOのX3 2ndなら,ZiShan DSD AK4497EQの圧勝です.解像度が別物です.ただ,ポータブル性は,X3 2ndに軍配が上がります.
メジャーなDAP製品は,各社のノウハウで各部品の性能を最大限引き出していると思いますが,このZiShan DSDはAK4479EQという名前で売っている感じです(それはそれで,十分魅力的ですが).
1万円のDAPとして,超高コスパの中華DAPですが,安定性やAK4497EQ(VELVET SOUND)に期待しすぎるとがっかりします.当たり前ですが,1万円で10万円以上の音質はなかなか得られません.
メインのDAPではなく,1万円のサブDAPとしては,いいと思います.スマホの音質とは別格ですし,1万円(中古も含め)で買えるメジャーメーカーのDAPとは別格の音です.
でも,もうAK4497EQは入手できないので,このZiShan DSD 4497EQも入手できません(一部改造品がヤフオクで売られていますが非常に高価).
あるエンジニアの方が,DACが音質に与える影響は全体の1/10だと言っていました.しかし,一番最初のアナログ信号になる部分なので,音の傾向が決まるという意味では重要だと思います.AKとESでは,明らかに音が違います(そのDACにあわせてチューニングした結果とも言えますが).
それにしてもAKMのDACは今後どうなるのでしょうか?
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購入金額
16,000円
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購入日
2020年頃
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購入場所
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