このマザーボードは、LGA1155対応のintel Core/Pentium/Celeron/Xeonシリーズ対応のZ68チップセット搭載のマザーボードになる。
同梱物はマニュアル、ドライバCD、フレキシブル型のSLIケーブル、バックパネル、USB3.0ブラケット、SATAケーブル4本、それとケース用のピンプラグが2つとあっさりとしている。
オーバークロックなどの機能も充実しており、中上級者でも満足できるであろう構成となっている。もちろん、普通に使う場合にも、コンデンサすべてに個体コンデンサが利用されているなど、長時間駆動の信頼性という面からみても安心でき、長寿命を期待できる。
このマザーボードの一番の売りは、とにかく豊富な高機能のI/Oを多数搭載していることだろう。
パッと見でわかるのはPCI Express x16を3本搭載しているという事。(※ただし、3本目はx4動作となる)そのうち上から2つのPCI Express x16にnVidiaのGeForceシリーズを搭載することでSLI動作が可能で、もちろんATIのRADEONシリーズを2枚搭載してCross Fire Xとさせて動作させることも可能となっており、ハイエンドゲーマーでも満足のいくボードとなっている。(※SLI/CrossFireXでの動作の場合、PCI Expressは各x8での動作となる)
そして、このPCI Expressは、製品名称のGEN3というオプションネームからもわかるように、PCI Express 3.0に対応している。(※ただし、PCI Express 3.0に対応したCPUやデバイスが必要となる)
Z68チップセットなのに、PCI Express 3.0対応をどのように実現しているのかというと、ASUSの子会社であるasmediaのASM1480というPCI Express 3.0対応のレーンスイッチを搭載することで実現している。ここでちょっと面白い動画を1つ紹介したい。PCI Express 3.0の帯域が実際の環境でどれほどの差が出るのかというテストをこのマザーボードを利用してテストした動画だ。
SSDなど高速なI/Oを必要するようなデバイスを接続する場合に、PCI Express 3.0対応のCPUに対応のRAIDカード、またビデオカードなどを利用したときに、机上だけではなく実際にパフォーマンスとして現れるのがよくわかる。2011年12月の段階では、残念ながら、まだPCI Express 3.0に対応したCPUやデバイスは販売されていないが、今後のことを考えると、既にマザーボードが対応しているというのは心強い。
ただし1つ疑問も残る。PCI Express x16とx1の間に、同様にPCI Express 2.0対応のレーンスイッチであるASM1440が搭載されているのである。もしかしたら、中央部のPCI Express x1スロットに関してはPCI Express 3.0に未対応なのかもしれない。
また、一般的なintel 67チップセットシリーズ搭載のマザーボードでは2つ程度しか搭載されることのないUSB3.0も、このP8Z68-V PRO/GEN3では4ポートサポートしているのもトピックだ。USB3.0は、まだチップセットレベルで対応していないため、外付けのチップで対応しているのだが、こちらもasmediaのチップを利用していたのが印象的だ。このチップはPCI Express 2.0 x1で接続されるため帯域にも問題はない
もちろんZ67が搭載するUSB2.0にも対応しており、4ポートのUSB3.0の他に最大で12ポートのUSB2.0が利用可能だ。
Serial ATAも、チップセットが対応するRAID対応の6Gbps2ポート、3Gbps4ポートの他に、更に6Gbpsが2ポート、eSATAが1ポート用意され、ストレージを大量に搭載したい人にもありがたい仕様となっている。コントローラーは、追加の6Gbps2ポートは、チップセットのヒートシンクに隠れてしまって見えないが、Marvellのコントローラーが搭載され、eSATA用のコントローラーにはJMicronのJMB362が搭載される
ネットワークコントローラーには、1000BASE-T対応のintel 82579が搭載される。人によってはRealtekなどの廉価なコントローラーを嫌い、わざわざオンボードの廉価なネットワークコントローラーを無効にして、ネットワークカードを搭載するような人もいると思うが、intel 82579とパフォーマンスや安定性を考えても安心できるチップを搭載しているのはありがたい。
オーディオコントローラーは、RealtekのALC892が搭載され、7.1chのアナログ出力が可能。S/PDIFも搭載しているが、ビットストリーム出力およびステレオ出力のみで、Dolby Digital LiveやDTS Connectなどのリアルタイムステレオサラウンドエンコードには対応しない。正直言って、その他のオンボードデバイスが豪華なだけに、オーディオ部分だけ廉価なALC892が搭載されてしまっているのは残念に思われる。
Z67チップセットは、直接のI/OとしてPCIを持たないため、PCI Express - PCIブリッジチップが必要となるが、こちらもasmediaのASM1083が搭載される。このASM1083は3ポートのPCIに対応したブリッジチップなのではあるが、帯域幅がそれほど大きくは無いようで、あまりに大きな帯域幅を持つPCIデバイスを同時に利用する場合などに問題が出ることがあるようだ。もしそのような事態が起きてしまうような場合には素直にPCI Expressに対応したデバイスを使った方がいいだろう。
最近はめっきり搭載されることの減ったFireWire(IEEE1394)も用意されており、前述したasmediaのPCIe - PCIブリッジの下にVIAのVT6308Pが接続され、オンボードのピン出力から2つのFireWire(IEEE1394a)が利用できる
SuperI/OにはnuvoTonのNCT6776Fが搭載される。nuvoTonというメーカーは聞きなれない方も多いと思うが、旧Winbondと言えばわかる方も多いだろう。
バックパネルにはUSB2.0が6つ、USB3.0が2つ、eSATA、HDMI、VGA、DVI、S/PDIF、1000BASE-Tがそれぞれ1つずつ、7.1chのオーディオ入出力がある。左側上部の赤いUSB端子上部にあるのはBluetooth 2.1のモジュールとなっているが、取り外しなどはできないようになっている。
…と、I/Oだけでこれだけの数を搭載しているのを見るだけでも、いかに豪華な仕様になっているかがお分かりになってもらえるだろう。もちろん豪華なのはI/Oだけではなく、例えばCPUとGPUの電源に関しても、CPUに8Phase、GPUに4Phaseとオーバースペックともいえる電源構成が用意されているのも見逃せない。これらはもちろんCPUおよびGPUのオーバークロック時に有効で、廉価なマザーボードでは大電流を流した場合にCPUやGPU周りの電源回路が飛んでしまうことも多々ある話だが、そういったことを防ぐ意味でもこのような豪勢な仕様となっているのだろう。
そしてオーバークロックに関しては、自動オーバークロックのASUS TPUという機能も搭載されており、物理的なスイッチをONにすることで、オーバークロックにそれほど詳しくない方でも自動でパラメータを設定してくれるという機能も有している。個人的には、詳しくない方がオーバークロックをするのはどうかとは思うものの、自己責任を理解している人で、オーバークロックとはどういう状況なのかを試してみたいというような人には面白い機能であると思う。
また、ASUS EPUという省電力モードに移行するスイッチもあり、CPUの電圧や周波数などを調整し、パフォーマンスよりも省電力となるように自動で設定してくれる。…のだが、このマザーボードを選んだ時点で大量のI/Oデバイスがあったりするので省電力思考の方が選ぶとは考えにくいのだが、全部入りというようなコンセプトとして搭載されたのだろう。
■UEFI
今までのBIOSに代わってUEFIがベースとなっている。そのため、今までのBIOSセットアップなどと同等の機能の設定時にUSBマウスなどで設定ができるほか、USBメモリなども認識でき、F12キーを押すことでUSBメモリにスクリーンキャプチャをBMP形式で保存することも可能になっていた。
■ドライバ・ユーティリティのインストール
ドライバのインストールや、各種ユーティリティは、独自の一括セットアッププログラムが用意されており、DVD-ROMからのセットアップはとても簡単だった。自作初心者でも初期セットアップは問題なくできるだろう。
■ASUS AI Suite II
マザーボード…というよりは、ASUSのOC向けマザーボードの特徴ともいえるユーティリティ群であるASUS AI Suite IIが使えるのもP8Z68-V PRO/GEN3の特徴でもある。このAI Suite IIではオーバークロックからモニタリング、省電力機能やファンコントロールなど様々な機能に直結るユーティリティへ簡単にアクセスできる
■オーバークロックをしてみて
オーバークロックなどは、BIOS(UEFI)、ユーティリティであるTurboV EVOなどから細かい調整が可能で、わかりづらいintelのユーティリティとは対照的に、非常にわかりやすいと感じられた。また、電圧をAutoに設定しておくことで、とても良い感じで電圧を上昇してくれる印象だ。intelのP67BGB3では、自動で上がる電圧は控えめで、結局は手動で細かく調整してあげなければならなかったのだが、P8Z68-V PRO/GEN3では、AUTO設定のままで4.8GHzまでクロックを上げても、Autoのまま電圧も追従して上がってくれた。なお、その際には1.45v程度となっており、CPUクーラーが貧弱…なこともあり、95度を超える状況となってしまったのだが、高温を検知して自動でクロックが落とされ、フリーズやブルーバックを見ることにもならずに安心して遊ぶことができた。こういう点は、オーバークロックを楽しみたいというユーザーであれば安心できる機能であるといえるだろう。
■総評
P8Z68-V PRO/GEN3は、ユーティリティの充実や高い品質を持つ電源周りからオーバークロッカーだけでなく、単純に長期間使いたいというユーザーにも向いているといえるだろう。また、VGA、USB3.0、SATA6Gbps、intel NIC、IEEE1394などオンボード機能の充実さを考えても、これらの機能が必要だと思っていたユーザーであれば、コストパフォーマンスにも優れているといえる。そしてゲーマーであれば、SLIやCrossFire Xに対応しているのはもちろんのこと、x4動作とはいえX16スロットが用意されていることで、SLIした上に、さらにPhysX用のGeForceを追加することも可能であるので、ゲーマーにも満足できる仕様だ。さらにストレージマニアにとっても、オンボードでSATA6Gbpsが4つ、3Gbpsが4つ、eSATA 3Gbpsが1つ、さらにx16スロットがx8/x8/x4動作とはいえ、3つも搭載されていることで、ここにRAIDコントローラーを追加することもできるため、HDDやSSDを追加し放題と、ストレージマニアにとっても嬉しいボードであるのではないだろうか?
2万円前後と、最近のマザーボードの中では比較的高めの設定かもしれないが、これらの充実したボードであることを考えるとコストパフォーマンスは非常に優秀で、「どのマザーボードがいいのかわからないけどどれにすればいいのだろうか?」というような人なんかにもうってつけのマザーボードだろう。
「迷ったらとりあえずこれにしておけ!」というような、安牌ともいえるそんな器用で非常に優秀なマザーボードであると感じられた。
はにゃさん
2011/12/15
Sandy世代のマザーって ASUSが抜きんでている気がしますね。
次が ASRock、その次が GIGABYTEかな。
ところで、nuvoTonって Winbondだったんですか!知らなかった…
anzuさん
2011/12/17
主要チップに突然見たこともないメーカーロゴがあったりすると大丈夫なのか?とハラハラしてしまいますよね(笑)
makibisiさん
2011/12/30
> Super I/OにはnuvoTon(Winbond)のNCT6776Fを利用している
nuvoTonって聞いたことがないなと思ったら、Winbondですか~><
はにゃさんと同じく、知りませんでした。
最近、Winbond見ないと思ったらそういうことだったのですね。^^;
ちゃなさん
2012/01/06
使用デバイスの状況等資料価値大故最新マニュアルと同じフォルダへ保存しました!
PCIe は個人的望みとしては x16 が1~2スロット、 x8 が1スロット、 他は x1 で。と思うのですが設計上の事情もあるんでしょうね。このチップセットではどのみち無理なのかな。
x16にグラフィックスかオンボードグラフィックス有りなら tesla (は高価だなぁ;;)。 X8 に RAID controller で帯域が必須な物は大丈夫かなと。x4って存在(の印象)が中途半端でかわいそうではあります。
いや、俺も早く書かなきゃ~(^^ゞ
anzuさん
2012/01/06
リスク回避のためか、分社化するところが増えましたよね。MotorolaのPowerPCも、いつの間にやらFreescaleのPowerPCに名前を変えていたり…
>ちゃなさん
チップセット…というよりはCPUに内蔵されたPCI Expressのレーン数が少ないので、基本的には16が1本、もしくは16の形状をしたx8を2本、それと単レーンが数本というシステムになってしまいますね。
多数のレーンが必要な場合はブリッジを乗せて拡張することもできますが、同時使用時に結局帯域が足りなくなってしまうので、多くの帯域を消費するデバイスを多数載せる場合には、Core i7 38/39xxシリーズ、もしくはXeonの上位シリーズを使ってくれという事なのでしょう。
それでもGen.3に対応することで帯域が2倍になりますから、Gen.3対応デバイスを使うのであれば、気にするほどでもないかもしれませんね。