ntel Core i5-3570Kに引き続き、core i7-3770Kのレビューを担当させていただく事となりましたので、
・Core i5-3570KとCore i7-3770Kの性能差
・Ivy BridgeとSandy Bridgeの性能差
について検証し、Core i7-3770Kの性能とポテンシャルについて詳しく確認していきたいと思います。
今回のレビューでは、Ivy BridgeのハイエンドモデルであるCore i7-3770Kと、4コア4スレッドの最高クロックモデルであるCore i5-3570K、Sandy Bridge世代のハイエンドモデルであるCore i7-2700Kの3モデルで比較を行います。
Core i5 3570KとCore i7-3770Kは共にIvy Bridge世代のCPUとなります。
メモリ周りやTDPなどのその他の項目については、両者とも同一のスペックですが、Core i5-3570Kが4コア4スレッド、最高クロック3.4GHz(TurboBoost時最大3.8GHz)なのに対し、Core i7-3770KはHyper-Threadingに対応しているため4コア8スレッドとなり、最高クロックも3.5GHz(TurboBoost時最大3.9GHz)と倍率にして+1ずつ強化されています。
また、キャッシュ容量もCore i5-3570Kの6MBに対しCore i7-3770Kでは8MBに増強されているなど、地味な性能差があります。
この差が、どのように性能に影響してくるのか、比較することにしてみました。
もう一つの比較対象であるCore i7-2700Kは、ひとつ前のSandy Bridge世代のCoreシリーズのベストセラーCPUであるCore i7-2600Kの上位モデルとして追加されたCPUです。
4コア8スレッド、最高クロック3.5GHz(TurboBoost時3.9GHz)などのスペックはCore i7-3770Kと同じものの、TurboBoost時の倍率がIvy Bridgeでは1/2/3/4コア時にそれぞれ+4/+3/+2/+2されるのに対し、Sandy Bridgeではそれぞれ+4/+3/+2/+1となり、4コア時のTurboBoost最大クロックが低く設定されています。
Core i7-3770Kと比較し、Ivy Bridgeで進化した点について検証してみたいと思います。
レビューについては、
1,Core i7-3770K vs Core i5-3570K
2,Core i7-3770K vs Core i7-2600K
3,Core i7-3770K vs Xeon E5530 OC
についてそれぞれ検証してみます。
それぞれのCPUのスペックを一覧にまとめましたので、詳細は下記にてご確認ください。
全開のCore i5-3570Kのレビューとの比較検証を行うため、Radeon HD 7850のドライバはCore i5-3570Kと同じバージョンである12.4を使用しました。
Core i5-3570Kのレビュー時同様、下記のパーツにて検証を行っています。
基本構成
マザー:ASRock Fatal1ty Z77 Professional-M
メモリ:CMP4GX3M2C1600C7(DDR3-1600 CL7)×4 8GB
ビデオカード:MSI R7850 TwinFrozr III OC
SSD:intel SSD320 120GB
電源:Antec Signature 850
運用構成(基本構成に追加)
RAIDカード:HP SmartArray P400
HDD:富士通 MDE2073RC(2.5" 15K SAS HDD)×4
LAN:NC360T(intel PRO/1000PT Dual Port Server Adapter)
さて、まずは前回のCore i5-3570Kのレビューとの比較から行ってみたいと思います。
他のCoreシリーズ同様の、比較的小型なパッケージに収まっています。
CPUクーラーもCore i5-3570やCore i7-2700Kと同一の厚みであり、製造メーカーごとの差異はありますが、同等の性能だと思われます。
CPUは違えど発熱も多くないためクーラーも共通化できますので、製造数も多いためかなりコストメリットがありそうですね。
今回使用する個体は、L224C371、マレーシア製のCPUとなります。
CPU-Zで確認したところ、リビジョン、ステッピング等すべてCore i5-3570Kと同一でした。
L3キャッシュがCore i5-3570Kの6MBに対し8MBになっているのがわかります。
検証で使用するクーラーは引き続きMegahalemsとなりますが、ファンを38mm厚のRDL1238S-PWMからGentle Typhoon D1225C12B7AP-29へ変更しています。
最大風量が94CFM→83CFMへダウンしていますが、なによりも気温が前回の計測時とはかなり差があるため、Core i5-3570Kについても新たに計測しなおしました。
CPU、マザーボード、メモリ、ビデオカード、SSDという最小構成でシステムの消費電力を比較します。
アイドル時の消費電力はほぼ同一ですが、OCCT全コア時のCPU負荷テストにおいては、26Wの消費電力差となりました。
これは100MHz上乗せされていることと、スレッド数が倍の8スレッドに増加していることに起因すると思われます。
FF14の消費電力比較では8Wの増加となり、Core i5-3570Kとはそれほど差がありません。
これはFF14がマルチスレッドに対応していないため、CPUの消費電力差がクロック分程度しかなかったことが原因だと思います。
アイドル時の消費電力はCore i7-3770Kとほぼ同じ値となりました。
むしろ、Core i5-3570KがCore i7-3770Kに対し2.4Wも低くなっているのが気になりますが…
OCCTによるCPU負荷時においては、27Wの消費電力差となり、Ivy Bridgeの省エネさが際立つ結果となりました。
FF14テストでは200WとCore i7-3770Kに比べ同じく27Wの増加となりましたが、こちらは1スレッドの処理ですのでここまでの差が出ないような気もしますが、数回測定してもこれくらいの値でしたので、とりあえず25~30W程度の差がある、という結論にさせていただきます。
3.6GHzにOCしたXeon E5530と比較すると、アイドル時で57%、OCCTテストでは36%、FF14テストでは33%と大幅な消費電力の削減が可能です。
両者とも同じ4C8T、3.6GHzのCPUだと考えると、この差はきわめて大きいと言えます。
アイドル時は実に80Wもの消費電力が削減されている訳で、LED電球であれば4灯分くらいに相当します。
Ivy Bridgeのエコさはすばらしいものがあると思います。
前回のCore i5-3570Kのテストでは、-0.200Vまでコア電圧を下げることが可能でした。
-0.200Vまで下げた時の消費電力差は、高負荷時で23Wも消費電力が削減される結果となりました。
今回も同様に、Core i7-3770Kを使用してコア電圧の引き下げによる消費電力の差を確認してみたいと思います。
BIOSの設定は前回同様、Loadline Caribrationは最低の5に設定し、CPU電圧設定を0.050Vずつ下げていく方式で動作確認を行いました。
消費電力の計測はサンワサプライのワットモニターを使用しています。
計測の結果、Core i5-3570K同様-0.200Vまで正常に動作する結果となりました。
-0.200V時の消費電力差は実に30Wと、4C/4TのCore i5-3570Kの23Wよりも大幅に消費電力の削減が可能となりました。
おそらく8スレッドのため消費電力が比較的大きいこともあり、削減幅についても大きくなっているものと思われます。
Core i7-3770KおよびCore i5-3570Kの両方とも、定格電圧よりもOffsetで-0.200Vまで動作しましたので、Ivy Bridgeの低電圧動作についてはかなりマージンがあると考えて良さそうです。
いすれのCPUとも、電圧を下げると消費電力もリニアに低下しますので、静音PCを組む際に、あえて定格動作で電圧を下げるというのも、選択肢の一つかと思います。
※全開のCore i5-3570Kの時とは一部構成が異なるため、システム全体の消費電力に差が生じていますので、ご了承ください。
3Dmark 11
3Dmark11では、Combinedを除くTotal Score、Physics、Graphicsについて検証します。
CombinedはCPU、GPUの複合テストですが、今回はCPUおよびGPU単体としての処理性能について検証するため、Combinedについては数値掲載をしていません。
グラフが見えにくくなってしまいますし。
ビデオカードはすべてのテストで同一(Radeon HD 7850)のためスコアに差はほぼありません。
CPUの演算能力がものを言うPhysicsテストでは、130%の9744と大幅にスコアが上昇しています。
HyperThreadingによる性能上昇は一般的には30%程度と言われていますが、ほぼこのとおりの結果となっています。(厳密には100MHzのクロックの差も含んでいます)
トータルスコアは104%の差と、Physicsの差がほぼない、かなり微妙なスコアとなりました。
3Dmark11で高スコアをたたき出すなら、ビデオカードに投資したほうが良さそうです…
両方とも同じ4C8TのCPUですが、Core i7-2770Kに対して107%のスコア上昇となりました。
TB倍率がSandyBridgeでは4コア負荷時に+1だったのに対し、SandyBridgeでは+2となっていますので、倍率にして35倍と36倍という差があります。
クロックの差でいうと、103%のスコア増加となるはずですので、残り4%がIvy Bridgeによる性能増加分といえなくも無いと思われます。
予想以上の差が出た結果となりました。
Graphicsについてはほぼ誤差範囲、トータルスコアについても微妙な差となっており、結果としてはほぼ同一となっています。
Physicsが116%に増加していますが、3Dmark11がPhysicsのスコア増加に対するインパクトが少ないこともあって、結果はほぼ変わらない値となっています。
Physicsのスコアとしては、ちょうどCore i7-2770KとCore i5-3570Kの間といったところでしょうか。
3Dmark Vantage
CPUについては133%となり、こちらもHyperThreading分の性能増加となっています。
トータルスコアは106%で、こちらも3Dmark11同様、どちらかというとGPU重視の傾向のようです。
Virtu有効時のテストですが、前回のテストではCore i5-3570KのGPUスコアが40000台とどえらいことになっていましたが、Core i7-3770Kでは26270とVirtu無効時の30%増しと落ち着いた値になっています。
Core i7-2700Kも似たような傾向ですので、前回のCore i5-3570Kのスコアが異常だったように思われます。
CPUテストにおいてCore i7-2700K対比107%と、3Dmark11と同様の傾向が現れています。
トータルスコアは102%と、こちらも微妙な増加となりました。
3Dmarkシリーズでは、ベンチマーク結果という点で見るとSandy BridgeからIvy Bridgeに移行することで大きなメリットは無いと思われます。
CPUでは118%となり、かなりの性能差が生じる結果となりました。
これくらいの差であれば、あと200~300MHzくらいOCしてやれば並びそうな気もしますが、すでに3.6GHzで空冷限界に近いところまで発熱しているので、現実的ではありません。
その点、IvyBridgeでは最高60℃弱でこなしてしまいますから、発熱の低さは特筆に値すると思います。
FinalFantasy 14 ベンチマーク
個別の比較がどうも微妙な結果となってしまっているため、総括。
なぜかCore i7-2700Kがもっとも高いスコアを叩き出しました。
といっても幅はどれも僅差であり、GPU依存という結果には変わりありません。
Virtuを有効にするとエラーが出て動作しない点も同様です。
Radeon HD 7850ではかなり引っかかりが出てしまい、スコアにマイナスの影響が出ていますが、最新のRadeonのドライバーでは引っかかりがかなり解消されており、スコアも300弱ほど増加しています。
BIOHAZARD 5 ベンチマーク Type B
ゾンビがわらわらと動き回るPCベンチマークです。
なぜか、前回のCore i5-3570Kが最速という微妙な結果となっていますが、Core i7は両方ともWindows環境を再構築してのテストであったため、何かしら他の影響があった可能性があります。
こちらのベンチマークもGPU依存と思われる結果となっており、Core i7、Core i5、Xeon E5530ともにスコアがほぼ変化しない結果となりました。
唯一、Xeon E5530定格時のみスコアが落ち込んでいますが、クロックが2.4GHzとかなり低いためと思われます。
3GHzクラスのCPUであれば、ほぼ結果は変わらないといって差し支えないと思われます。
PHANTASY STAR ONLINE 2
Virtuを有効にするとテクスチャがはがれるなどの不具合がありますので、今回はVirtuを除いてベンチマークを行いました。
このタイトルも一定以上のCPUであれば問題無いGPU依存らしく、Xeon E5530 2.4GHzからほぼ横並びのスコアとなっています。
CPUのスレッド数の違いによる差はありませんので、シングルスレッドのCPUか、あるいはWindows自身のリソースもあるので、出来ればデュアルコアのCPUであればなんら問題無いと思われます。
リアル彼女ベンチマーク
ベンチマークスコアに何が影響するのかいまいちどころか全く訳がわからないベンチマークですが、なんとCore i7-2700KとCore i7-3770Kが圧倒的な数値を叩き出しています。
8スレッドだと速いという訳でも無く(Xeon E5530のHT無効時も46sexyを叩き出している)、かといってクロックでもありません。
とりあえず、原因については検証しても答えが出なさそうなので、Core i7は速かった、という結果で良いと思います。
このベンチ、GPUって依存するのだろうか…というか、ベンチマーク対象として採用することに意味があるのだろうか…orz
※成年向けゲームですので、ベンチマークを利用する際はご注意を。
後日検証:
Core i7-3770K@4.8GHz+GTX580で、74を叩き出しましたので、GeForce系に強いのかもしれません。
CINEBENCH 11.5
CINEBENCHを使用して、CPUによるレンダリング速度を比較しました。
全スレッドを使用してガリガリとレンダリングを行いますので、CPUパワーがリアルに結果に反映されるベンチマークとなります。
Core i5-3570K比126%と、見事にHyperThreadingの有無がそのまま数値として現れる結果となりました。
Core i7-3770Kの値も凄いですが、逆に言えば4C/4Tで3.6GHzにOCしたXeon E5530の4C/8Tとあまり差のないスコアを叩き出すCore i5-3570Kも凄いスコアだと思います。
なお、4.8GHzにOCしたCore i7-3770Kでは9.42fpsを叩き出しており、CPUクロック3.7GHz→4.8GHzの上昇分33%がそのままベンチマークスコア7.51fps→9.42fpsの上昇分25%に繋がる結果となりました。
Core i7-2700Kと比べると107%となり、3Dmark系のCPUベンチマークと似たような差が付いています。
全スレッドを同時に使用するソフトウェアですので、TB倍率は+2となります。
Ivy BridgeではTB倍率UPは+2ですが、Sandy Bridgeでは+1に抑えられていますので、7%の内訳はTB倍率の差によるクロック100MHz分と、Ivy Bridgeでの改良による差と思われます。
3.6GHzにOCしたXeon E5530と比べると120%と大幅な上昇となっており、Core i7-3770Kの強さが光ります。
メモリは共にDDR3-1600となりますので、CPUによる性能差と思われます。
intelの発表ではSandy Bridgeの倍に強化されたという、Ivy Bridge内蔵のintel HD Graphics 4000ですが、ベンチマークソフトを用いてテストをおこなってみました。
テストに用いたCPUは、Core i7-3770KとCore i7-2700Kとなります。
3Dmark系などのベンチマークではなく、今回はBIOHAZARD5と、ちょっと古めのタイトルとしてFF11ベンチマークを使用して比較を行います。
※以下、intel HD Graphics 4000→HD 4000、intel HD Graphics 3000→HD 3000に略します
BIOHAZARD 5
さすがにRadeon HD 7850のベンチマーク時の設定である1920×1200ではあまりにも遅すぎたため、解像度を1280×800に落としてType Bのテストを実施しました。
Core i7-3770Kに内蔵されているHD 4000は、HD 3000に対し127%とかなりの性能アップとなっており、強化されたグラフィックスの速度差が現れる結果となりました。
実際、10fps近く違いますので画面を見ていてもなめらかさが異なるのが解ります。
これくらいの速度が出れば、内蔵グラフィックスでもそこそこ遊べる性能かと思います。
Final Fantasy 11
こちらはHD 4000とHD 3000共にほぼ同一のスコアとなってしまいました。
Final Fantasy11ベンチマークはCPU依存が高いベンチマークですが、この結果を見る限りHD 3000とHD 4000の差はなく、Core i7-2700Kと3770Kで処理能力の差があまりないため、スコアも拮抗しているものと思われます。
市川ソフトラボラトリーズのSILKYPIX Developer Studio Pro 5を使って、D90で撮影した4288×2848ピクセルのRAW画像100枚を、SILKYPIXの標準設定を用いてバッチ現像した際の処理速度を比較しました。
SILKYPIXはマルチスレッド処理に最適化されており、RAW現像時には全コアにほぼ100%の負荷がかかりますので、8スレッドに対応したCore i7-3770の比較用として優れていると言えます。
定格クロックにおいては26%、4.3GHz時には23%、4.5GHz時には20%もの時間短縮となりました。
Core i5-3570Kの4.5GHz時と、Core i7-3770Kの定格クロックがほぼ同一の結果となりましたが、Core i5-3570Kの4.5GHz動作はCPUのコア電圧をOffsetで+0.100Vほど上昇させないと安定しないクロックでしたので、発熱の問題が出てきます。
夏場のテストではCPUクーラーの冷却が間に合わず、80度近い温度を記録していたことを考えると、誰しもにお勧めできるクロックではありません。
この点、Core i7-3770Kは定格クロックで同等の速度を得られますので、RAW現像においてはCore i7-3770KのHyper Threadingが効果的に機能しており、おすすめのCPUと言えるかと思います。
両方とも同じ4C/8TのCPUですが、Core i7-2770Kに対して約3~5%のスコア上昇となりました。
TB倍率がSandyBridgeでは4コア負荷時に+1だったのに対し、SandyBridgeでは+2となっていますので、倍率にして35倍と36倍という差があります。
クロックの差でいうと、103%のスコア増加となるはずですので、定格時の差についてはこのクロック相当分かと思われます。
OC時はTB倍率を手動で設定しているため、Core i7-3770Kも2700Kも同じクロックとなります。
3Dmarkなどのテストでも数%Ivy Bridgeの方が高速な結果が得られていますので、こちらも同様の理由によるものかと思われます。
Ivy Bridgeといえば、トライゲートトランジスタと22nmプロセスの採用で消費電力が大幅に低下し、これに伴い発熱も低くなっています…が、CPUのコアとヒートスプレッダの間のTIMペーストの影響で、CPU温度が上がりやすい点についてはご存じの方も多いと思います。
Sandy Bridgeと発熱のテストをするにあたり、ハンダ付けされているSandy Bridgeと条件をなるべく合わせるため、TIMペーストをより熱伝導率のよい液体金属に置き換える作業(いわゆる殻割り)を行い、22nmの実力を探るべく発熱について検証を行いました。
コアとヒートスプレッダの間には、性能に定評のあるCoollab LiquidPro(いわゆるリキプロ)を使用しています。
CPUクーラーは一昔前に空冷最強と言われたMegahalemsを使用、CPUファンは3000rpmの高回転ファンであるD1225C12B7AP-29を全開状態にした状態で温度を計測しています。
CPUクーラーとCPUの間は、Arctic Silver5を使用しています。
まずは、定格動作における各CPUの温度を検証します。
Core i7-3770K/56~60℃
Core i7-3770K(殻割)/43~46℃
Core i5-3570K/53~55℃
Core i7-2700K/50~53℃
Core i7-3770KとCore i5-3570Kでは、Core i7-3770Kの方がスレッド数が倍ということもあり、3~5℃ほど高い温度となっています。
Core i7-3770Kのグラフは上下のぶれ幅が大きいのですが、だいたい中心は58℃程度となっています。
一方のCore i5-3570Kは54℃付近が中心となり、ぶれもそれほど大きくはありません。
これくらいの温度であれば、通常利用でもまったく問題無い範囲と言えます。
TDPが95WとIvy Bridgeに比べると高めのSandy Bridgeですが、実際の温度はSandy BridgeであるCore i7-2700Kの方が低いという結果になりました。
Core i7-2700Kはピーク53℃程度、中心は51℃とCore i7-3770Kに比べて7℃ほど低い結果となりました。
これはTDPは高い反面、ソルダリングによってコアの熱が効率よくヒートスプレッダに拡散しているためと考えられます。
殻割りを行い、Ivy Bridge本来の性能を測定した結果がこちら。
なんとピーク温度は47℃、中心は45℃と14℃の温度低下を確認しました。
定格動作ではTIMペーストによる熱伝導効率の悪さは致命的ではありませんが、やはりLiquidProにすることで劇的に温度を低下させることが可能です。
次に、4.7GHzまでOCした状態での温度を確認することにします。
電圧はOffsetにて+0.150Vを印加した状態で、LoadLine Calibrationは上から2段目のLevel2に設定しています。
Core i7-3770K/75~86℃
Core i7-3770K(殻割)/58~63℃
Core i7-2700K/70~73℃
コア電圧を0.1V以上昇圧した状態では、Core i7-3770KのTIMペーストがコアの熱をヒートスプレッダに伝えきれなくなり、CPU温度が86℃に達してしまっています。
どうにか常用はできますが、夏場などは積極的に使いたいと思う温度ではありません。
この状態でベンチマークを行っていて気になったのが、CPUクーラーの温度。
ヒートパイプ付近の温度を測定しても30℃程度であり、CPUクーラー全体に熱が均等に伝わっていません。
CPUコア内部の温度が急激に上昇しているにもかかわらず、ヒートスプレッダにはそれほど熱が伝わらない結果、ヒートシンク自体もそれほど温度を持っていない状態であると考えられます。
CPUは80℃を超えていても、ヒートシンクのヒートパイプは30℃程度にしか上昇していない。
Core i7-3770Kのグラフはとても上下のぶれが激しい状態となっています。
Core i7-2700Kでも定期的にぶれが出ていますが、それほどでもありません。
おそらくですが、コア内部の熱の拡散があまり良くないため、一瞬でもCPUの負荷が下がるとドカッとCPUの温度が低下するのではないか、と思われます。
熱伝導が良ければ、コアおよびヒートスプレッダ共に温度が均一化するんじゃないのかな…と思うのですが実際のところは不明です。
Sandy Bridgeはソルダリングされていることもあって、比較的落ち着いたグラフとなっています。
温度もピークで74℃ですから、これくらいであれば十分常用範囲内です。
殻割りしたCore i7-3770Kではピーク温度こそ63℃に達していますが、56~61℃の範囲に収まっています。
86℃に達した殻割り前と比較すると、実に25℃程度の温度差となります。
今回使用したCore i7-3770Kは比較的OC耐性が良好で、Vcore 1.45Vで5GHzの動作も可能でしたが、問題はCPU温度が90℃を余裕で超えてしまうため、ベンチマークを短時間で終了せざるを得ませんでした。
殻割り後は5GHzでも70℃以内に収まるなど、実に30℃程度の温度低下が確認できました。
トライゲートトランジスタと22nmプロセスで消費電力の大幅な削減が実現されたIvy Bridgeですが、OC用のCPUとして考えると、やはりTIMペーストによる問題というのは無視出来ないレベルであると思います。
とはいえ、そのままの状態であっても4.5GHz程度であれば十分にそのまま使用可能ですし(クーラーは大型のものを選ぶなどの対応は必要ですが)、4.7GHz程度であれば十分に冷却可能であれば、問題無いと思われます。
CPUは基盤の上にコアが載っており、コアの保護(割れやすい)と発熱の拡散(ヒートシンクと触れる面積を増やして、熱を伝えやすくするため)のため、ヒートスプレッダという銅板がCPUの上に被さっています。
CPUのコアとヒートスプレッダはSandy Bridgeではハンダ付けされており、コアの熱がヒートスプレッダに伝わりやすい構造となっています。
しかし、Ivy Bridgeでは熱伝導率があまり良くないグリスが使われており(図の「グリス①」)、これが原因でコアの熱がこもってしまい、CPUクーラーへ伝わりにくい構造になってしまっています。
CPUの殻割りとは、ヒートスプレッダを剥がし、CPUコアとヒートスプレッダの間をきわめて熱伝導率が良いLiquidProなどに交換することを言います。
これにより、Ivy Bridgeの発熱の低さという実力を引き出すことが可能です。
殻割りについてはいろいろな方法がありますが、私は使い終わったテレホンカードなどのカードを使用し、角からぐいぐいと差し込んでいく方法で取り外しました。
引いたり押したりせず、下に力を入れながら前後に揺らす感じでカードを差し込んで行くと、シーリング材がどんどん切れていきます。
カッターナイフを使用してもいいのですが、CPUが不安定なためけがをしやすいこと、万が一の際に基板を傷つけやすいことを考えると、この方法が一番簡単そうです。
CPUコアとヒートスプレッダの間にあるTIMペーストを、より熱伝導率の良いグリスに交換するために、ヒートスプレッダを取り外す作業を「殻割り」と言います。
お借りしているCPUをおもむろに殻割りするのもどうかな…とは思ったのですが、トライゲートトランジスタ採用&22mnプロセスの採用で省電力、低発熱になったIvy Bridgeの真の姿を確認&Core i7-2700Kと対等に比較するため、82.0W/m・kという凄まじい熱伝導率を誇るLiquidPro化(いわゆるリキプロ化)を行ってみました。
いろいろな方が殻割り方法について紹介されていますので、方法には困らないと思いますが、今回は使用済みのカードを使って(カッターは使わずに)取り外してみました。
この方法であれば基板へのダメージもなく、失敗も少ないと思われます。
【警告】
殻割りを行うと当たり前ですが保証外となります。
失敗してCPUがゴミになっても自己責任ですので、作業は慎重に。
1,角からカードを差し込み、少しずつ切断
これが一番大変です。
かなり固く固定されていますので、カードの先端部分をヒートスプレッダーと基板の間に差し込むのがかなり難しい場合があります。
このような場合は、ここだけカッターナイフを使用して、少し隙間を空けてからカードを差し込むと簡単に入ります。
カードを差し込んだら、切断していきます。
切れない包丁で固いものを切るとき、包丁は滑らせずに、前後に揺らして力を上から入れて切ることがあると思います。
これと同じように、カードを揺らしながら、ぐい、ぐいと力を下に入れ、少しずつシーリング材を切り取っていきます。
周囲をぐるっと切り取ったら、ヒートスプレッダを外す
ヒートスプレッダに付いているシーリング材を切り取ると、パカッとヒートスプレッダが外れます。
ぼろぼろのシーリング材が見えますが、これはこのあと除去していきます。
シーリング材の除去
シーリング材を除去する際、一番便利なのは爪でそぎ取ることです。
プラスチックの板などをスクレイパーのように使ってもいいのですが、爪が一番便利でした。
この際、シールはがしを吹きかけておくと、綺麗に取ることが可能。
石油系のシールはがしはグリスを除去する際にもとても便利ですので、100円ショップなどで数個買っておくことをおすすめします。
除去がおわったら、無水エタノールで油分を綺麗に拭き取っておきます。
ヒートスプレッダを磨く
ヒートスプレッダに付いているシーリング材のカスも上記の方法で除去した後、CPUコアが接触する箇所を磨き上げておくことにしました。
この方がおそらくLiquidProがなじみやすい…はず?
ルーターにパフを装着、コンパウンドをつけて磨いてみました。
リキプロを塗る
LiquidProはなじみにくいため、CPUコアの上などに置くと丸くなってしまいます。
昔、ガラス製の体温計を割って水銀を出してしまった記憶がある方は、水銀の感じに近いと言えます。
米粒の1/3くらいの量を注射器から絞り出したら、不要なカードを切り取ったヘラなどで伸ばしていきます。
写真はちょっと出し過ぎで、これだと多いのでもう少し少なめでOKです。
ヒートスプレッダにも塗る
CPUと組み合わせたときになじみやすいよう、両方にLiquidProを塗ります。
LiquidProを塗り終わったら、最後にヒートスプレッダの周囲にシリコンのシーリング材を薄く塗ります。
私は99工房のすきまシール剤を使用しましたが、HOLTSのブラックシーラーを使う方が多いみたいですね。
DIYショップ、またはカーショップで販売しています。
塗りすぎは禁物なので、薄くのばして塗りましょう。
取り付け→放置→完成
ヒートスプレッダをCPUの上にかぶせたら、そのままLGA1155ソケットの上に置き、レバーで固定します。
この際、レバーに押されてヒートスプレッダがずれますので、ずれる位置分あらかじめヒートスプレッダをずらしておくといい感じです。
レバーで固定したまま、数時間放置すればシーリング剤が固まって元通り!
Core i7-3770KとCore i7-2700Kについて、Windows 8 Professionalのエクスペリエンス インデックスを測定してみました。
計測の結果、CPUの項目がCore i7-3770Kが8.0、Core i7-2770Kが7.9と、0.1の差が生じました。
おそらく、4コア時のTB倍率の差によるところではないか、と思われます。
…といっても、体感ではまったく差がわからない状態ですので、気分的に8に乗って良かった良かった!といった程度の差となります。
Core i5-3570KとCore i7-3770Kの差についてですが、使用するPCの目的如何により、評価が大きく変わってくるかと思います。
至って当然の結論ですが、動画エンコードやRAW現像などのスレッド数勝負なアプリケーションを使用する場合には、Core i7-3770Kがお勧め。
ベンチマーク至上主義であればもちろん、CPUの全スレッドを使用して重たい処理を行うRAW現像や動画の編集・エンコードについては、HyperThreadingによる8スレッド同時処理が効果的に機能しますので、総じて2~3割の処理速度の増加が見込めます。
今回のテストにおいても、エンコードはintel Media SDKのハードウェアアクセラレータを使用することを考えるとCore i5-3570K、Core i7-3770Kともにあまり差はありませんが、CPUで処理を行わざるを得ないRAW現像においては、4スレッドと8スレッドの差はとても大きいと言えます。
動画のエンコードであれば、Core i5-3570K、Core i7-3770KともにIntel Media SDKによるハードウェアエンコードが使用可能ですが、Media SDKが使えないエンコード形式などもありますので、やはりCPUでエンコードする可能性も考えると、4C/8Tにメリットがあると言えます。
RAW現像では、3割近い性能差がありますので、大量のRAWファイルを一気に現像する場合にはかなりの処理速度の短縮が見込めます。
同様に、3Dのレンダリングテストでも同様の差が生じていますので、なによりもCPUパワーを必要とする場合は、Core i7-3770Kを選んでおけば問題ありません。
RAW現像などのスレッド数がものを言うアプリケーションとは反対に、PSO2やFF14、Battle Field3などのゲームではマルチスレッドに対応していないタイトルでは、Core i7-3770KとCore i5-3570Kでほぼ差がないという結果となりました。
このようなシングルスレッドのアプリケーションにおいては4コア4スレッドと4コア8スレッドのCPUには大きな差は認められませんでしたので、CPUの価格差である1万円を、もう1ランク上のビデオカードの購入に充てた方が良い結果が得られると思われます。
Core i5 3570KとCore i7-3770Kでは動作クロックが100MHzしか変わらず、これくらいの差であればアンロックされているK型番のCPUということもありますので、OCしてしまえばクロックの差は無いも同様となります。
また、内蔵GPUはCore i5-3570K、Core i7-3770Kともにintel HD Graphics 4000を搭載していますので、Lucid Virtu MVPにおいて差は生じないと思われます。
コストパフォーマンスを優先するのであれば、Core i5-3570Kという選択肢は大いに有りだと思います。
スレッド数重視なのか、はたまたビデオカードやSSDなどに資金をまわすのか…
使用するアプリケーションによりどちらのCPUを選ぶか決めるのが一番良いかと思われます。
もちろん、迷ったときはとりあえずCore i7-3770Kを買っておく、という方法も有りかと思います。
下小川さん
2012/11/15
グラフや図解も綺麗でまるで本の特集記事のよう…
やはりマルチスレッド対応のソフトでないと、3570Kとの差は出にくいんですね。
私の方では最小限のテスト・ベンチによる比較しかできなかったので興味深いです。
コア電圧を下げた時の変化もわかりやすいですね。
そして殻割でここまでOC時の挙動変化するとは…K型番なのに元の状態だともったいない感じですね。
harmankardonさん
2012/11/15
いつもながらの詳細レビューで,参考になりました.
みなさんの殻割り結果をみると,やりたくなります.
ちょもさん
2012/11/16
下小川さんのレビューのようなネタが思いつかなかったので、スタンダードな比較にしちゃいました。
マルチスレッドでないアプリは、100MHzの差しかないので、Core i7である必要はあまり無かったりしますね。
コア電圧の変化もほとんどCore i5と素性は似てる感じです。
K型番の特徴を生かすには殻割り必須のような気がします。
現在、メインマシンに組み込んで4.8GHzで使っていますが、アイドル時25℃前後、CPU全コアに負荷をかけても60℃程度です。
凄まじい低発熱でビックリ。
harmankardonさん:
殻割りですが、カッターナイフでやるのが簡単だと思いますが、今回はあえて失敗してもCPUへダメージが少ないであろう方法でトライしてみました。
薄いカードでも、切断する相手がゴムのような樹脂なので、簡単に切れちゃいます。
カードを隙間に差し込むのが難しいのですが、ここだけどうにかなれば簡単だったりします。