レビューメディア「ジグソー」

シンプルとは『単純』という事ではなく『無駄な事が一切無い』事だと分かる一枚。

この度はHDクラシックスレビューアーに選んで頂き、本当に有難う御座います。
また、このアルバムと出会う機会を頂いたこと、重ねてお礼申し上げます。

まずはどの様なアルバムなのか、確認しようと思います。
(以下Amazonより抜粋)

曲目リスト
1. レーガー(1873-1916):無伴奏ヴィオラ組曲 Op.131Dより第1番 ト短調
2. J.S.バッハ(1685-1750):無伴奏チェロ組曲(ヴィオラ編) 第1番 ト長調
3. レーガー:無伴奏ヴィオラ組曲Op.131D 第2番 ニ長調
4. J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第2番 ニ短調
5. レーガー:無伴奏ヴィオラ組曲Op.131D 第3番 ホ短調

内容紹介
「ヴィオラの名手には何故女性が多いのだろう?やはり母の胸に抱かれているような安心感があるから?」そんな思いに捉われてしまいそうな魅惑的なこの1枚。ジャケ裏の彼女の至福の表情をぜひご覧ください。タベア・ツィンマーマンの初のソロ・レコーディングとなるこのアルバムには、彼女が精魂こめて奏でた音の一つ一つが大切に映し込まれています。オーケストラやアンサンブルとは全く違う孤高の世界がここにあるかのようです。バッハとレーガーの作品の間にはおよそ200年近くの隔たりがありますが、悠久の時の流れをいとも容易く飛び越えた表現力にも驚く他ありません。本当に音楽を愛する人にぜひお聴きいただきたい至高の響きです。

CDのブックレットを見た所、なんと三ヶ国語に対応している模様。
奏者自身の出身地であるドイツ、他英語、フランス語と三ヶ国語で内容が紹介されている様です。

……日本語が無かったのは非常に残念ですが、理解は放棄の方向で。


さて、このアルバムですが、現在書いているレビューは四度目のレビューとなります。
一度目はその圧倒的世界に魅了され、上手く表現する事が出来ず、
二度目はなんとか表面だけでも取り繕うと、四苦八苦したがやはり上手く言葉に出来ず
三度目はレビューを諦め、自分が感じた感想をそのまま掲載するという暴挙に至りました。

そんな訳で、これが四度目のチャレンジとなります。

正直上手く表現できる自信は全くありませんが、乱文、長文、お付き合い頂ければ幸いです。

まず、レビューに移る前に、四度目に至るまでの感想を述べたいと思います。

このアルバムの奏者、タベア・ツィンマーマン氏は紛れも無い天才です。そして、天から授かった才能に胡坐をかくことなく、一切の妥協を許さない努力を積み上げてきた方だと思われます。
よく楽器の音の表現で『楽器が歌を歌っている』という表現を耳にしますが、この方の場合はそのレベルすら生ぬるい様に思います。
この方のヴィオラには歌が、感情が、表情があります。一瞬一瞬、同じようなメロディでも、まるで無垢な赤子がコロコロと笑顔を浮かべる様に、常に変化し続けています。同じ表情はありません。そして、同じ声はありません。
この方のヴィオラはまるで生きているかのように、絶え間なく変化し、そしてその絶え間ない変化の中で、喜びを歌い、悲しみを嘆き、望みを欲し、痛みに声を上げます。
そしてその絶え間ない変化の中には、何一つとして、同じ表情はありません。
或いは泣き、或いは笑い、本当に生きているかのように歌います。
正直私が三度も筆をおいたのは、この世界観をどう表現したら良いのか、全く分からなかったからです。現在でもそれをきちんとした形にして言葉にする事はできませんが、少しでも多くの方にこのアルバムを知って頂きたく、四度目のレビューに挑んでいます。

浅学ゆえ、文章が乱文になってしまう可能性が高いですが、なにとぞご容赦頂ければ幸いです。

では、レビューをしていきたいと思います。
曲目は全部で24曲ありますが、上記の曲目リストにある様に五つの曲目リストを『演目』として、その演目を通して聞いた感想を述べて行きたいと思います。




・第一演目『レーガー(1873-1916):無伴奏ヴィオラ組曲 Op.131Dより第1番 ト短調』
この演目はとても妖艶なイメージが浮かびます。跳ねるようなヴィオラの音が、そのまま男女の駆け引きになっている、そんな印象を受けます。イメージで言うと貴族達の夜会に潜む欲望とでも申しましょうか、まるで言霊の様に響くヴィオラがとても艶やかです。
ある者は派手な真っ赤なドレスで、またある者はシックな黒いドレスで、意中の男性を射止めんとする駆け引きが目に浮かぶようです。
どうでもいい事ですが、聞いているイメージとしては女性側からの視線に思えます。
『あの人をどうやって落とすか』
『あの娘には絶対あの人を渡さない』
そんな水面下の戦いがまざまざと目に浮かびます。時に穏やかに、そして時には苛烈に、牽制しあう貴族令嬢達の戦い。顔には穏やかな笑みを浮かべているのが目に見えますが、内情は結構恐ろしいものがあるようです。
中盤の穏やかな流れは、上手くいきかけている駆け引きの様子を表している様子でしょうか。
上手いこと二人の世界を作っているような姿が目に浮かびます(どうでも良いですが、何故かその貴族令嬢は派手な赤いドレスの方です)。或いはもう勝負が付いたという余裕の現われか、それともただの油断か。どちらにせよ、勝負なんてどう転ぶか分からないものです。ちなみに自分はそう言う勝負には負けっぱなしデス。
しかしながら中盤の作りは凄く穏やかで満ち足りたものを感じます。

……が!

終盤になって思わぬ大物が登場。
穏やかだった空気は一瞬で不穏なものに。
跳ねるようなヴィオラの音が、まるで予期してなかった大物の登場を目の前にして、勝利を確信していた貴族令嬢の鼓動を表しているかのようです。早まる鼓動、引きつる笑顔。
手札のカードは使い切った。もう彼女に出すカードはありません。
『来るな、こっちに来るな!!』と必死に心で叫んでいる様が見て取れます。
どちらにせよ、一番の勝利者は狙われていた男性ですね。
一度で良いから狙われて見たいものです(しみじみ)



・第二演目『J.S.バッハ(1685-1750):無伴奏チェロ組曲(ヴィオラ編) 第1番 ト長調』
バッハといえば有名な作曲家です。この演目は第一演目とは違い、まるで春の到来を喜ぶ様な、どこしら長閑な情景が目に浮かびます。しかし演奏者が変わるだけで本当に曲自体の魅力が変わるのは凄いです。
前目は水面下ではとても酷い惨状が広がっていましたが、本当に同じ奏者なのか?と思えるくらいのびのびと緩やかな情景は続きます。聞いているだけで心まで絆されるような、そんなポカポカ陽気。どちらかといえば前目の様な恐ろしい争いに巻き込まれるよりは、こう言う穏やかな一生を過ごしたいと思います。
中盤になると、景色は変わります。長閑な田舎からちょっとした都会に出てきた少女が目に浮かびます。両手には少し重たげな荷物をもって、初めての都会に心躍らせているような感じです。いわゆるおのぼりさん的な少女。見慣れない建物にきょろきょろしつつ、期待に胸が膨らんでいる様子。
ともかく、住み込みで働ける場所を見つけた少女(以下少女A)忙しさに目をくらましながら、それでも一生懸命働いているようです。とにもかくにも見るものが全て新鮮で、あれはなんだろう?これはなんだろう?と興味が尽きない様子。ウン、自分モ働ク場所ガ欲シイデス……。
まぁそんな感じで忙しさに目を回しつつも毎日が楽しくてしょうがない、と言った様子。
ある日、そんな忙しい中でも楽しく過ごしている少女にちょっとした出会いが。
相手は少しだけ年上のまぁ階級もさほど高くない青年。前目ではまぁ内情が酷く恐ろしい女性同士の戦いでしたが、こちらは淡い初恋といった感じ。
身分の差はあれど、恋心はとめられない。そんな初々しい感じが終盤に続きます。しかしながら、やはり身分の壁は大きい。何よりも自分みたいな子があの人に見合う訳が無い……。そんな葛藤が見え隠れ。想い人を思い出してははふぅとため息をつく毎日。
果たして彼女の思いは届くのか。

……ドウデモイイデスガソロソロオレキメェトカオモッテキマシタ。

ある日、想い人から思わぬお誘いが。
『実は今度祭りがあるんだ。もし良かったら、僕と一緒に踊ってくれないかな?』
少女は信じられない想いでその言葉を受け入れます。
最後、陽気な音楽に手に手をとって踊る少女と少年。いいラストシーンですね。
そしてオレは自分の妄想力がどんどん酷くなっていくのを自覚しながら次に続きます。



・第三演目『レーガー:無伴奏ヴィオラ組曲Op.131D 第2番 ニ長調』
とどまる事を知らない妄想力で突っ走ります。
少々第二目に続きますが、これもまた愛情をもてあましてしまった人の苦悩を描いているようにも感じます。ただし、第二目は淡い恋心がテーマでしたが、こちらはそれよりも少し大人の恋愛のよう。ロミオとジュリエットではありませんが、それに近い、許されぬ恋をしている様にも感じられます。意中の想い人を思い出してはため息を付く。そんな情景が目に浮かぶようです。
しかして、恋心は簡単には割り切れないもの。愛したいあの人は愛してはいけない人。どうすればこの願いは叶うのだろう?そんな宛てのない考えを永遠と考え込みながら、『となりに貴方が居てくれたなら、私はそれだけで十分なのに……』男としては一度はこれ位に思っていただきたいですね。
思われた事なんぞありませんが。
中盤、まるで運命が変わったかのように、曲もヒートアップしていきます。どうしようも無い衝動はどう頑張っても抑えきれない物です。彼女は手紙に思いの丈をぶつけます。どうかあの人に届くように。
身分の差も何もかもを乗り越えて、一緒になりたいという少女の願い。その悲痛な願いをまるで代弁するかのようにヴィオラが歌います。どこか甘く、しかし痛みに胸が引き裂けそうな声で。
最後には、その少女の願いが叶ったのか、ヴィオラはどこか悠々と喜びを歌い上げます。幸せの絶頂とでも言うのでしょうか。まるで神の気まぐれの様に、想いは繋がり、二人は結びつきます。
オレに結びついてくれる人はどこに居ますか……?(血涙)


第四演目『J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第2番 ニ短調』
酷く寂しげに響き渡るヴィオラの声。イメージとしては、雨降る墓地でまだ若い貴族令嬢が何らかの病で無くなった夫への花を手向けているような、そんな悲壮な表情をヴィオラが歌います。
旦那を亡くしてから段々と力が無くなっていき、衰弱していく貴族。ただただ、悲しみにまみれたヴィオラがその景色を悲痛でゆがんだ表情で歌っています。
中盤、遂に家までが借金の肩にもっていかれ、彼女は住む家すら失ってしまう。酷く悲痛な声が聞こえてくるようです。

――どうでも良いけど、俺の頭の中が大変です。誰か止めてください。

何もかもを亡くしてしまった令嬢。荷物は少し大きめなトランクケースのみ。
旦那の後を追うか、それとも全く違う人生を歩き出すか、悲しみにくれる暇もなく、容赦なく突きつけられる現実の選択肢。それを前に、選ぶでもなく、ただただ疲れた目でその選択肢をうつろな表情で見る令嬢が目に浮かびます。そしてヴィオラが悲しく響く。
そして、違う道を歩き始めた令嬢。悲しみも辛さも、今は全てそこに置いて、前に歩き出そうとしている様子が見て取れます。迷いも何もかもを吹っ切った様子。前に進むことは、決して楽な道ではないでしょうが、彼女は恐らく前向きに生きていくでしょう。
ラストの曲は新天地へと向かう彼女の決意が表されているように思います。何事にも負けない。強い意志を感じられます。



・第五演目『レーガー:無伴奏ヴィオラ組曲Op.131D 第3番 ホ短調 』
第五演目は悲しい情景から始まります。まるで何もかもを喪った没落貴族の様です。悲痛なヴィオラの歌声が更にそれを陰鬱としたものにしています。
しかし中盤に入ると、ゼロからの再出立、といった具合にものすごく前向きな状態になっているのが見て取れます。それをヴィオラが応援している様子。
そして、安住の地へ……と言いたい所ですが、やはり不穏な気配はぬぐいきれて居ません。
ですが僅かばかり、希望が残っている、そんな感じがします。
できるなら、最後の曲は、満たされた曲で終わって欲しい。
そして最後の曲に……。
勇壮たるヴィオラの響き。自分自身に叱咤しているようにも聞こえます。何がおきても諦めない、そんな強い意志が聞こえてくるようです。



以上、レビューでした。
途中で頭が大変な事になりましたが、お許し下さい。

最後に。

このアルバムは完成度が非常に高いです。
星は上限五つしかありませんが、いくらあっても足りないくらいです。

もし、これをみた貴方が音楽を愛する人であるならば、是非買って聞いていただければ、と思います。
そのときはこの拙いレビューをみて感想をいただけると幸いです。

では、おやすみなさい。

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