クラシックに造詣が深いわけではありませんが、選んでいただいた以上、頑張ってレビューさせて頂きますので宜しくお願いします。
さて、まず五枚中初めにレビューするは、この『ブラームス:オルガン作品全集』から。
とりあえず調べてみた所、wikiなどにも乗っていないようで、AmazonからこのCDがどう言うコンセプトの元作られた物なのかを抜粋。
Amazon
1.フーガ 変イ短調/2.前奏曲とフーガ イ短調/3.前奏曲とフーガ ト短調/4.コラール前奏曲とフーガ「おお嘆き、おお心の苦しみ」/5.11のコラール前奏曲
長きに渡る歴史を誇る聖ルパート教会は2回の戦災をも免れた貴重な建物として知られています。ここのロマンティック・オルガンは宝石のような音色に華麗さが加味された極めて独特な音色が特徴です。ブラームスのオルガン曲は彼の全作品の中ではあまり脚光を浴びることのないジャンルですが、若きオルガニスト、ホルシュの溌剌とした音楽性を得てこれらの作品の素晴らしさを丁寧にあぶり出すことに成功しました。もちろん素晴らしい録音を最大限に生かしたSACDの豊かな音色にも注目です。
という事だそうです。
まずは曲順というか曲目から。
No.01:Johannes Brahms (1833 - 1897)
Chorale Prelude and Fugue for Organ, WoO 7 "O Traurigkeit"
No.02:Johannes Brahms (1833 - 1897)
Prelude and Fugue for Organ in G minor, WoO 10
No.03:Johannes Brahms (1833 - 1897)
Fugue for Organ in A flat minor, WoO 8
No.04:Johannes Brahms (1833 - 1897)
Chorale Preludes (11) for Organ, Op. 122
No.05:Johannes Brahms (1833 - 1897)
Prelude and Fugue for Organ in A minor, WoO 9
すみません中のブックレットを開いてはみたんですが、全部英語で理解を放棄。恐らくAmazonにて説明のあった曲目に沿っているのだと思われます。
上記の物は曲目というよりも演目と言った方がいいのかも知れません。実際上記タイトルの下に曲目がありますので、演目から選んだ曲目かと思われます。
という事で一曲一曲をレビューする、という方法もあったのですが、演目ごとに分けてレビューをしていった方がしっくりくるのではないか、そう思いましたので、演目を通じてのレビューをしていきたいと思います。
・第一の演目
No.01:Johannes Brahms (1833 - 1897)
Chorale Prelude and Fugue for Organ, WoO 7 "O Traurigkeit"(1.フーガ 変イ短調)から。
この演目は2トラック分。曲名には申し訳ありませんが触れません。
通して聞いたところの感想ですが、非常に『悲しみ、憂い』を前面に出している感じがします。
少なくとも一曲目(1トラック目)には救いが見当たりません。透き通るようなオルガンの音が、麗人の悲しみの声の様にも聞こえます。まるでその世界観をそのまま続けていくような2トラック目も、やはり憂いや悲しみ等の感情が強く前面に出ています。ジャケットに荒廃した教会の様な写真がありますが、その中でまだうら若い女性が旦那さんを何かで喪い、シスターとなって、一心に何かを祈っているような絵が思い浮かびます。
悲痛、苦難、別離……そして喪失。
そんな単語が思い浮かびました。
・第二演目
No.02:Johannes Brahms (1833 - 1897)
Prelude and Fugue for Organ in G minor, WoO 10(2.前奏曲とフーガ イ短調)
こちらもトラックは二つ。
前演目とは全く異なる方向性です。
当然、前目から引き続いている悲しみや憂いが無い訳ではありませんが、前目が『悲しみ、憂い』自体をテーマにしたのならば、こちら側はそれらも含んだ、もっと大きな物をテーマにしているかと思われます。
例えば興奮、喜び、それらに前目の悲しみと憂いが入り混じり、一つの形となっています。
前目での悲しみ、憂いはそれらの前になりを潜めているだけで無くなっているわけではありませんが、方向性はまるで逆です。
第一演目を『喪失』とするならば、こちらは人生を歩んでいく上での『可能性』。失敗を恐れない前向きな心、勇気。そんな単語が思い浮かびました。しかしその可能性の中にも恐れ、不安などが入り混じった不安定な状態。
少々言葉で表すには難しいのですが、前目を『喪失』と捉えるなら、この演目は『可能性』という言葉が一番当てはまる気がします。
・第三演目
No.03:Johannes Brahms (1833 - 1897)
Fugue for Organ in A flat minor, WoO 8(3.前奏曲とフーガ ト短調)
前目を『可能性』と言う言葉で表現しましたが、この演目は更にその可能性の中にある感情を抽出した感じがします。前目では『可能性』の中には不安定さがある、と言いましたが、この演目はその『不安定さ』を更に前面に押し出してきている気がします。あるいは『揺れ動く心』と言ってもいいかも知れません。
全体的に演目一、演目二とは違い、ものすごく不穏な気配すら感じてしまいそうです。
悪魔の誘惑の様な、死の取引の様な。その様な物を目の前に出されて心が揺れ動いている様が見て取れるようです。
この様な捉え方は間違っているかと思いますけども、正直聞いた感想は『不穏』です。
第二演目では少々の戸惑い、恐れを感じながらも、それでも前に向かおうとしてた筈なのに、ここに至って何があったのか、悪い方向に進んでしまいそうな気配がします。
・第四演目
No.04:Johannes Brahms (1833 - 1897)
Chorale Preludes (11) for Organ, Op. 122(4.コラール前奏曲とフーガ「おお嘆き、おお心の苦しみ」)
第四演目は全部で11トラック。演目の中では一番長くなります。
こちらは……正直なんと表現したら良いのか、分かりかねます。拙い表現となってしまいますが、ご了承いただけると幸いです。
正直全11トラックを総括してレビューする事はあまりにも難しいので、印象に残った事を書いていきたいと思います。文がおかしくなるでしょうが、ご容赦下さい。
前目を『不穏』と表現しましたが、それはこの演目になっても引き続いているように思います。ただ、それは選択肢を突きつけられた前目とはまた違い、これから来る『未来』への不信感から来る『不穏』に変わります。疑心暗鬼、と言ったらいいのでしょうか。まるで目の前が真っ暗になった様な、そんな感じがします。
今までの演目が非常に感情に訴えてくる所があったので自分は演目ごとに自分が抱いた感想を『テーマ』として上げて来た訳ですが、下手に感情に訴えてこない、それでいて陰鬱とした感覚はどう表現したら良いものか分かりません。
しかし、決して全てに渡り陰鬱とした表情をしているのかと言うと、そうではありません。
唯一ここにきて演目に「おお嘆き、おお心の苦しみ」という言葉が入りますが、それでも所々に喜びの入り混じった所もあり、全体的にいうと非常にまだらな印象を受けます。
疑心暗鬼、さらに一喜一憂、或いは確かにそれらを総合して言えば『嘆き、悲しみ』となるのかも知れませんが、希望を持つこと、喜びを覚えることすら憂う事の原因になるだとしたら、それは非常に悲しいことではないでしょうか。
トラック10では、演目にテーマが決まっていると言うのに、非常に満ち足りた感情が思い浮かびます。
引き続いてのトラック11でもやはりどこかしら陰鬱とした表情はありますが、やはりどこかホッとするような、不思議な表情を持っています。
その様な感じで陰鬱とした中にもどこかしら喜びが見え隠れしていましたが
次のトラックに移ると一気に突き落とされます。
絶望。空虚感。虚無。
そんな言葉が頭に浮かびました。
前のトラックが比較的喜びの感情が強かったので、その絶望感は第一演目の比ではありません。
自分が信じていた物が全て崩れ落ちるような、全てに裏切られていたような、そんな感覚すら覚えます。
しかして、しばしの絶望を味わった後、また緩やかな調子に戻ります。トラック13はその絶望を通り越した後なのか、酷く、残酷な程に優しく、ゆったりとした流れになっています。
そして運命は廻り――
また地獄へ。
「おお嘆き、おお心の苦しみ」とありますが、確かに残酷な優しさは時として深い絶望の呼び水となる事があります。まるで示し合わせたように、偽りの安息のあとやってくる絶望。最初から喜びを知らなければ望みを持つ事も無かったはずなのに、下手に喜びを見つけてしまったが為に、その絶望は更に深いところに突き刺さります。
正直筆者も聞きながらこのレビューをリアルタイムで聞いて書いているのですが、酷く憔悴しそうです。
そんな、希望を何度も切り捨てられては絶望に突き落とされて、最終的にはもう憔悴しきっている状態にしか感じられません。
15,16トラックをそれだけで聞いた場合は恐らくさほど酷い印象は受けないと思います。
曲調は緩やかで、穏やかな印象を受けますが、曲の流れからくると、もう人生に憔悴しきった感覚しか浮かびません。
もし筆者が思う『希望がより深い絶望を知らせる』という事を考えてこの曲の流れを考えたなら、なるほど、確かに『嘆き、苦しみ』が非常によく理解できます。
第四演目がある意味このアルバムの一番の聞き所なのかも知れません。
・第五目
No.05:Johannes Brahms (1833 - 1897)
Prelude and Fugue for Organ in A minor, WoO 9(5.11のコラール前奏曲)
ラストの演目です。
印象として、非常に生き生きとした物を感じます。
今までの緩やかな曲から春を迎えたような、そんな感じを受けます。
最後の最後で、生の喜びを思い出せるような、ある種第四演目から見て一番良いエンディングだと思います。
総括。
オルガンという楽器一つでこれだけの感情を表せること自体が、一応音楽嗜んでいる自分から見て驚きでした。特に第四演目は非常に秀逸です。弾き手が優秀という事もあるでしょうが、それを加味してもオルガンという楽器一つでこれだけの事が表現できるのか、と改めて思いました。
作曲した方も相当天才だと思います。
特に第四演目は意図的としか思えない繋ぎです。悪意すら窺えます。ある種このアルバムの核となる部分ですが、聞くだけでも相当消耗する演目です。恐らく聞き流すだけならば問題ないでしょうが、第四演目の「おぉ嘆き、おぉ心の苦しみ」と言うタイトルを考えながら聞くと、非常に疲れます。
疲れる、という事はそれだけ人の心に訴えてくるという事です。人の声をいれず、ただオルガンの音色のみでそれが出来る、と言うのは恐ろしい事です。
天才にも程があります(ほめ言葉です)
音楽をやっている方、音楽を嗜んでいる方は一度聞いてみても良いかと思います。自分のような文才のない人間が百の言葉を並べるよりも、一度聞く方が分かります。
では。
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