レビューメディア「ジグソー」

最強のSFチップ搭載SSD

追記:(2012/11/08 X79でのRAID0ベンチを追加掲載)


SATA3対応SSDの大本命として、登場してから一年弱。
現在もトップクラスの性能にあるのが、SandForce SF-2281コントローラー。

これを搭載するSSDをIntelが商品化するという話、昨年9月頃からありました。
それから暫くして、520はキャンセルしたとか710が登場するとか噂が二転三転。

年明けになって「520出ます」という話が出たとき、「え、今更?」という反応を示したのは私だけじゃないはず。
ただ、出てきた製品が「SF-2281なのに、ランダムでも速え!」と、中々の前評判。

「同じSF-2281搭載でも、Vertex3よか明らかに速い!」

ほうほう、それは「Vertex3を初期に入手して苦労したユーザー」としては、聞き捨てならぬ。
ならば、比べて試してみたいと思うのが人情ってものですよね?

というわけで、今回のお題は「異母兄弟対決」です。

Vertex3とSSD520、ほぼ同じ仕様を持つこのSSD、果たしてどちらが優秀でしょうか。



●○まずは組み込み○●

こちらが、今回のレビュー品の中身。

バルクなので、中身は本体とステッカーだけです。

リテールの場合、これらの他に2.5-3.5変換アダプタ、ネジ一式、SATAケーブル、SATA電源変換ケーブル、IntelSSDToolBoxの入ったミニCDが付属します。

・・・はい、実はリテール品も持ってます。

無論、二台目を用意した理由は、RAID0の検証目的です。
最初はVertex3とのRAID0を予定していたのですが、思いっきり不安定(速度が安定せず、酷い落ち込みを起こす)だったので、思い切ってもう一台用意してみました。

520同士のRAID0では、不安定な動作は一切見せていません。


さて、今回はデスクトップへの組み込みなので、余り面白い画になっておりませんが、組み込む位置はちょいと特殊です。


この3.5→5inchベイアダプタ、FP55は余剰スペースに2.5inchドライブを二つ固定出来ます。



このように、二つ並べて固定します。固定ネジは裏側です。

SSDを固定したら、3.5inchのカードリーダーを装着します。

後は元の位置へ組み直し、ケーブルを配線して終了です。
SSDはHDDと異なり、基板が外に露出していないので、設置位置が色々と無茶出来ていいですね。
最悪、両面テープで貼り付けておくだけでもどうにかなりますし(ぉぃ



●○起動速度比較○●

OSはVertex3と全く同じ状態を予めクローンしておき、同じSATAポートでつなぎ替える、要するに完全に同じ環境で、起動速度を比較しました。
RAID0の検証は、ほぼ同じ環境を構築してテストしていますが、ドライバVr.などに多少の差異があります。

OCZ Vertex3-120G
OCZ Vertex3-120G

Intel-SSD520 120G
Intel-SSD520 120G


シングル動作対決は、ほぼ完全に同じです。
多少の時間差は出ていますが、完全に誤差の範囲。

まあ、予想通りといえば予想通りです。
リードに関しては殆ど同じ特性の製品なので、差が出るわけ無いと思っていました。

ただし、RAID0だと若干ですが悪化の傾向が見られます。

無論、十分に高速な部類なのですが、OSのロード中に読み込むドライバ等が多いのか、5秒程度遅くなります。
RAID-BIOSの表示でも10秒くらいロスタイムが増えるので、実質15秒程度の起動時間遅延。
起動速度を速くしたいというなら、RAID0は余り良い選択とは言えません。



●○ベンチマーク○●


毎度お馴染み、CrystalDiskMarkによるベンチマークテストを取得してみました。
SSD510 250G ランダム
SSD510 250G ランダム

先代のIntel-SSD510で取得したベンチです。
SSD520と比較して、シーケンシャルR/Wは素直ですが、4kランダムでは大きく劣ります。
実際、OSを入れての体感速度では圧倒的に520のほうが速いです。

SSD320.300G 0x
SSD320.300G 0x

SATA2用のIntel-SSD320 300Gのベンチです。
Intelオリジナルチップ搭載のSSDで、SATA2では現在も最強の一枚。
QD32の数字が結構優秀です。

SSD520 ランダム
SSD520 ランダム

SSD520 0x
SSD520 0x

今回のお題であるSSD520のベンチ。120GBのSSDとしては、相当に優秀な数値ですね。
特に4k周りの速度が、従来のSFチップ搭載製品より大きく改善しています。

Vertex3 ランダム
Vertex3 ランダム

Vertex3 0x
Vertex3 0x

Vertex3で取得したベンチ。やはり120GBのSSDとしては相当に優秀。
ただ、同じチップを搭載したSSD520と比較して、書き込み性能で負けています。

同一のチップを採用した製品であるにも関わらず、書き込み性能でこれだけの差が出ているということは、SSD520のNANDが128G/25nmと進化していることだけでなく、ファームウェアの完成度が高いということでしょう。

ただ、この作り込まれたファームが裏目に出ているとしか思えないのが、次のデータ。
SSD520 RAID0 ランダム
SSD520 RAID0 ランダム

SSD520 RAID0 0x
SSD520 RAID0 0x


ライトのほうは順当に伸びているのですが、リードのほうの伸びがかなり低めです。
体感的には相当速くなっているのが判るのですが、ベンチマークは奮いません。
ATTO結果
ATTO結果


「こちらの数字も、なんか微妙にヘンな感じ。」

と、最初に書いてしまいましたが、よくよく見てみると正しいですね。
グラフを正しく読めば、『Read:730/Write:630』ですから、これが正しい数値と判断したほうが良さそうです。
0xでしか判定出来ないのが惜しいですが、きちんとRAID0の効果は出ています。
それにしても、CDMってSB950で相性あったんですね・・・・(汗)

-----------------------------

・・・・と追記しておいて何ですが、やはりなーんか結果がどちらも疑わしい。
定番ベンチマークだからと頭から信じ込むのもアレなので、追加検証をしてみました。

HD True 8M READ
HD True 8M READ

HD TrueのPro版(無論だが試用Vr)の結果です。
600前後ということは、CDMに近い結果。やっぱこっちが正しいのか?

AS SSD
AS SSD

SSD専用を謳う、AS-SSD Benchmarkの結果。
やはり600ちょいという結果が出ている。

HD True 0x Block
HD True 0x Block

HD TrueProでのみ取得出来るファイルベンチマーク。
実際の利用に近い状況で取得するテストで、このデータは0xのみ。
SandForce系で最も効率が良くなるパターンだが、やはりReadは「600強で頭打ち」している。
Writeについては600近くを平均的にキープしており、こちらも同様に600強で頭打ちしているが、Readと比較して、トップスピードに達するクラスタが小さい。

HD True ランダム Block
HD True ランダム Block

こちらはSandForceが最も苦手とするランダムパターンによる取得。
Readは0xと似たような傾向を示すが、Writeはかなりブレている。
ブロックサイズのほうは、変化なし。


0xとランダムを織り交ぜたパターンのテスト。
実際の利用に限りなく近いパターンの計測となる、とのこと。
こちらも、ランダムパターンが続くと落ち込む傾向があるようだ。


・・・・で、四種類試した結果で言うと、ATTOの結果だけが明らかに他と異なる。

つまり、「CDMがSB[950と相性抱えている訳では無く」、

『 S B 9 5 0 が 、6 0 0 ~ 6 5 0 MB/s 前 後 で 頭 打 ち す る 特 性 が あ る 。』

・・・・と考えた方が良さそう。

AMD神よ、FX8150に続いてこんなオチでは信仰が揺らいでしまいますぞ・・・・
ドライバで治る問題であることを祈るが、まあ・・・・どうせ駄目なんだろうな。



●○アプリケーションの比較○●

今回のレビューのお題の中で、一番困ったのがこれ。
いくつか試してみたのですが、明らかに速かったのがエクセルのデータを開く速度。
データ自体は業務で利用しているもの(工事見積の自動作成マクロ。テンプレだけで340MBある)なので、SSを付けられないのが残念ですが、完全展開終了までの時間が、以下のようになりました。

HDD(WD-15EARS):214
SSD(SSD-520) :53
SSD(Vertex3) :77
SSD(SSD-510) :82
SSD(SSD-320) :84(秒)

このデータを一番開く機会の多い業務用PC、WD-EARSより遙かに鈍足なHDDだったり。
SSD積みたいです・・・自腹でもいいから(涙)


このように、細かいデータを展開していくような場合、SSDの恩恵は絶大です。
ただ、画像が付けられない内容でレビューというのも何なので、画像がつけられるものでもう一つ試しました。

映像のエンコード(WMV→H264)で、
SSD→SSD と、HDD→HDD の双方で、作業時間を計測してみました。
ただ、一本ずつのデータだと恩恵が判りづらいので、まずは18本連続でエンコさせてみました。

SSD→SSD
SSD→SSD

HDD→HDD
HDD→HDD


恩恵と言えるほどの差は無いですが、それでも確実に一本あたり10秒単位で縮んでます。
これ、今回エンコードしたデータの大きさが元から小さいために差がわかりにくいですが、BD経由で取り出したMKVなどでは、相当な時間差となってハネ返って来そうです。



●○IntelSSD TOOLBOX○●

Intel製SSDにおける最大の強みは、その性能や信頼性もそうですが、私個人はこのツールBOXの存在だと思っています。

このツールBOXを使う事で、SSDで問題となる点が二つ解消されます。

・Trim非対応OSでも、定期的にTrim出来る。
・SSDのファームウェア更新が楽々。

何だ、そんなことかと思うかもしれません。
しかし、前者はともかく実は後者が地味に大きいアドバンテージです。

SSDは未だHDDと比較して「発展途上」の製品です。
確かに、初期の製品と比較すれば、段違いに使い勝手も性能も上がっていますが、同じチップを搭載したVertex3とSSD520で性能差があることからも判るように、実はファームウェアの出来・不出来によって、性能や安定性がかなり左右される傾向があります。

先日発覚したCrucial M4 SSDの5000時間問題や、Intel-SSD320の8MB病や、コルセアSSDのリコール回収等々、SSDはファームウェアのバグが製品の致命傷レベルとなる傾向があり、簡単にファームウェアが更新できるというのは、実は非常に有り難いことなのです。

実際、今回SSD520との比較対象に登場したOCZ Vertex3は、性能はともかくとして安定性に結構な問題を抱えた製品で、今までに10本近いファームウェアリリースが行われました。

私が購入したときのバージョンが2.02で、現在のバージョンは2.15。
何故かDL Failを起こす公式アプリ。
何故かDL Failを起こす公式アプリ。

この間、アップデートした回数は三回で、しかも全て「OSが入った状態ではUG出来ない」とか、UGアプリ自体にバグがあってUG出来ないとか、結構酷い目に遭ってます。

ところが、このツールBOXを使えば、失敗なし、日本語対応、最新版ファームはツールに搭載と、かなり簡略化されます。
こいつの存在の有無だけでも、Intel-SSDを選ぶ価値は十分にあると言えます。

ツールBOXで提供される機能は、以下の通り。

・SSDの故障診断機能
・セキュアイレースによる完全消去
・ファームウェア更新(ツール提供時の最新Vrが格納済み)
・Superfetchによる動作の最適化(切った方が速いという報告も多いが)
・Trim実行のスケジューリング機能(RAID下にある場合は利用不可)


ちなみに、このツールはSSDがIntel製であると認識しない場合、利用出来ません。
つまり、RAIDを組んだことでドライブの型番がRAIDドライバと入れ替わってしまった場合、たとえIntelSSDが接続されていようが、その機能は使えなくなります。
520で組んでいようが、他のドライブ扱い
520で組んでいようが、他のドライブ扱い

ここが対応出来たら凄かったのですが、流石に無理でした。(IntelチップセットでのRAIDでは動作する模様。AMD神よ(以下略 )


○●まとめ●○

使ってみて思ったことは、IntelSSDは相変わらず完成度が高いという事です。
Vertex3で色々と振り回された身としては、ドライブ自体の性能や安定性もそうですが、やはりツールの存在が非常に有り難いと思いました。

今回、目玉にするつもりだったRAIDの検証では、肝心のツールBOXがRAID組むと使えなくなるわ、RAID0で不穏なベンチ結果が出るわで、ちょっと悲しい結末となってしまいましたが、ベンチはともかく動作上は結構快適で、安定性も中々です。

たぶん、Z68あたりならもうちょっと良い数字が出そうなのですが、検証のたびにOS入れ直すのは結構きついものがあるので、気が向いたら・・・・で勘弁してください(苦笑)


製品自体は素直な特性で、SFチップの割にはランダム書き込みの特性も悪くないです。
ファームの出来がいいんだろうなということは、使ってみただけで判りました。

ただ、個人的にやはり120GBモデルは価格を考えると微妙な気がします。
やはり買うなら250のモデルが本命じゃないかなと。

あちらはランダムライトでも300MB/sを軽く超えており、SFチップ搭載SSDとは思えないベンチ結果を出しているだけに、かなり気になる性能と言えますが、120GモデルはVertex3と決定的な差がわかりにくい性能で、Tool-BOXの存在だけで他のSFチップ搭載SSDとの5000円近い価格差をひっくり返す理由になるかと言われると、相当に厳しいと言わざるを得ません。

いま、この製品に求められるのは「5000円の価格差を2500円に縮めること」だと思います。
それだけで、確実に120G-SSDの定番となれる実力はあります。


最後に、今回レビューの機会を与えて頂いた、関係者様各位に御礼申し上げます。



追記:ドライバとか更新した際に、X79でのRAID0ベンチ取ったので、情報追加。

520-120GB RAID0 0x
520-120GB RAID0 0x

520-120GB RAID0 Random
520-120GB RAID0 Random

コメント (5)

  • トム様さん

    2012/03/05

    おお…ランダムリードが速い…そのRAID0とは羨ましい限りです。
    エンコードテストの結果が興味深いです。
    私も万一、本レビューに当選したらエンコードはやってみたいなと思っていました。
    多くの場合、エンコードなどの作業ではCPUがボトルネックになりそうなものですが、SSDにすることで速くなるものなんですね、驚きました。
    あと、本レビューの本筋からは外れますがSSDを使っても展開に50秒以上かかるエクセルシートってのも面白かったですw

    価格については発売当初から色々と言われてましたよね…なかなか強気の価格設定だな、と。
    公称シーケンシャルの値だけ見ると低価格帯なのにフルスペックに近いなと感心したものですが、ランダム性能が大容量のものと差が有るのですね。
    だとするとVossさんの仰る通りちょっと微妙なのかしら。
  • Vossさん

    2012/03/06

    性能面ではSF系としては最強、SATA3のSSDとしてもトップクラスな上にSF系の問題点をかなり解消出来ている製品なので、ToolBoxを含めて「付加価値にどれだけ投資出来るか」の判断が最大の焦点だと思います。

    というか、早速に多くの店舗で実売が18000を切ってきたので、リリース当初の割高感は速攻で消える予感。
    ライバルであるM3Pが弾数不足かつ、19800から降りてきていないので、私の懸念は杞憂で終わりそうです。

    RAIDについては、Z68ならもっと伸びる気がします。
    SB950での結果は、明らかに早い段階での頭打ちが発生しているとしか思えない傾向を示しているので。
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