先日、 デファクト・スタンダードではあるものの、なにかと欠点が多いイヤホン/IME⇔ケーブル間の接続規格、0.78mm 2pinとMMCXに代わる新しい接続規格、Pentaconn earを採用したCIEM=アルファ☆デシベルのmiro BLEST(以下BLEST)のレビュー
をしたが、その時添付品に選んだオプションケーブル、日本ディックスのWistaria(PRS04-44-es:Pentaconn Ears ⇔ 4.4mm5極バランス)は、元々の標準ケーブル=日本ディックスのRegulus(PRS01-44-es)と比べるとかなり上位のケーブルだった(単品売価で44-es仕様のRegulusが25,000円なのに対し、Wistariaは39,600円)。標準添付品と交換で「差額(14,600円)」で選択できたので、あまり印象が強くなかったが、考えてみれば自分の持つリケーブルのなかで頭抜けて高級品(いや標準品のRegulusですら、たいがいな高額品だが)。
BLESTは店頭でWistaria込みで評価して購入したので、そのレビューは「自分にとってのBLEST標準品」であるWistaria装着状態で評価したが、あれだけ地力のあるケーブルでブーストしていれば、BLESTの評価が上方補正されていることも考えられる。
BLESTは販売店で多数のケーブルを視聴し、Wistaria込みで評価して購入したのでともかく、他のPentaconn ear端子装備のイヤホンの評価には、ややオーバースペック/もしくは/加飾しすぎかもしれない(Pentaconn ear端子装備のイヤホンが他にないとは言っていないw)。
そこで、ベーシックな「Pentaconn Ears ⇔ 4.4mm5極バランス」のケーブルを入手し、それを基準として今後その形式のリケーブルを評価するのがよいのではないかと考えた。
....で、市場を見渡すと「Pentaconn Ears ⇔ 4.4mm5極バランス」の「ベーシックなケーブル」って...ないw
NOBUNAGA Labsの冩楽にせよ、AcoustuneのACO-ARS133によ、3万円以上のプライスタグが付いていて、とても「ベーシックケーブル」とは呼べない価格帯。かといって、Aliなどにあふれる中華ケーブルには、Pentaconn Ears端子を採用したものがなく、安価なケーブルが選べない。
そんな中唯一、なんとかベーシックと言ってよい範疇の価格で「Pentaconn Ears ⇔ 4.4mm5極バランス」のリケーブルを出しているのが、ひさご電材株式会社が手掛けるリケーブルブランドonso(音素)。
このonso、ハイクオリティなリケーブルを比較的安価に市場に供給している。以前MMCX端子タイプのものをいくつか手に入れたとこがあるが、「見栄え」はそっけなく、アピールするものはないが、価格に比べて質が高く良いリケーブルだと感じた。
当時は01~04の4種類あったが、2023年現在は一番充実しているMMCXコネクタシリーズでは01~06の6種類がある。上記リケーブル入手当時とは同じ型番でも若干内容が異なっているようで、現時点のイヤホンリケーブルの線材内容は以下の通り。
01:PCUHD+OFC(なおヘッドホンケーブルの01はPCUHDのみになる)
02:PCUHD+OFC
03:6N+PCUHD+HiFC+OFC
04:6N+Silver-plated 4N-OFC
05:PCOCC+Silver plated 4N-OFC
06:high purity copper (6N+4N)
という感じ。線材の外皮は最上位の06(TPUを使用)以外は、若干の色違いはあってもPVCで統一だし、コネクタとプラグは上から下まで金メッキ仕様(安いのがニッケルメッキで、高価なものがロジウムメッキ...なんてこともない)。
包装も簡単な袋入りで飾らず、「線材にコスト全振り」なので、コストパフォーマンスが高いリケーブル。
ただ、残念ながらニーズが弱い?「Pentaconn Ears ⇔ 4.4mm5極バランス」タイプは最安価な01や最上位の06などは用意されず、ラインアップは03と05の2種のみ。
売価としては、03が約1万円、05が1万3千円程度。
03であれば、なんとか「ベーシックリケーブル」と言えると考え、これ(iect_03_bl4p_120)を入手した。
03の線材は「6N+PCUHD+HiFC+OFC」で
・6N-OFC:純度99.9999%以上の高純度無酸素銅。
・PCUHD:古河電気工業が開発した高純度無酸素銅線。純度99.99%以上の4N銅。
・HiFC:日立金属が生産していた高機能純銅。純度99.99%以上の4N銅。既に生産終了。
・OFC:銅の純度99.99%以上の無酸素銅(4N)。
という感じで、6NのOFCと3種の4N銅線を使っている。
被覆は赤(...というよりエンジっぽいが)のPVCで、両端のプラグとコネクタは金メッキ。
6N+4Nの純銅、PVCの被覆、接点は金メッキ、プラグの持ち手部分はアルミ
なお、Pentaconn Earsコネクタもすでに2種類あり、「ショート」もしくは「標準」、それとも何も注釈がない単なる「Pentaconn ear」と呼ばれるタイプと、「Pentaconn ear(異形)」もしくは「Pentaconn ear(ロング)」と呼ばれるものがある。「Pentaconn ear(異形)」は、イヤホン/IEM側の Pentaconn端子がやや奥まったところにあり、ケーブル側がそれに合わせて、Pentaconn端子が「台座」に乗っているような感じになっている。
この「Pentaconn ear(異形)」タイプはSennheiser IE PROシリーズが採用しており、販売規模が大きいこと、Pentaconn ear(異形)タイプのケーブルは、標準(ショート)のPentaconn earイヤホン/IEMに使えるが(接続部分に「台座」分隙間が空くけど)、その逆は接続できないのもあって?このiect_03_bl4p_120はそうとは明記されていないが、「Pentaconn ear(異形)」タイプ(HPの説明に「IE PROシリーズ(100/400/500)との嵌合を想定した設計」とあるので「異形」と判る)。
Pentaconn ear(標準)のBLESTに繋ぐと、iect_03_bl4p_120は赤矢印の台座部分の隙間が空く
線材としては、銀線や銀メッキは使っていないが、実際の音はどんなものなのだろうか。
BLESTに、iect_03とWistariaを接続し、いつものように現在のメインDAP=Shanling M3X Limited Edition
の4.4mmバランスアウトに直結で評価してみた(セッティングは、ゲインLowでDUAL DAC(DAC Turboモード)、EQはスルー)。
吉田賢一ピアノトリオのハイレゾアルバム(PCM24bit/96kH)“STARDUST”
から、「Never Let Me Go(わたしを離さないで)」。6N OFC+銀コート6N OFCの日本ディックスWistariaに比べると、銀は入っていないのに、むしろ高音が目立つ。シンバルのキレなどはiect_03の方がむしろあるくらいなのだが、逆にベースが若干芯がない印象。ただ、比べなければ「明らかな欠点」という程ではなく、iect_03は充分スタンダードケーブルたり得る感じ。
同じハイレゾ曲、USBメモリでの販売だった宇多田ヒカルの“Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.1+2 HD”
から「First Love」(PCM24bit/96kHz)。対Wistariaだと、高域がやや立つのは同様だが、比較するとiect_03は残響音などが少なく、イントロ~Aメロのギターの響きが直接音中心。また、ベースのアタックが強くなり、前進感はむしろ強くなるが、打ち込み音源ならではの平坦さが聴き取れるようになってしまう。
女声バラードのもう一曲、女性声優洲崎綾(あやちゃん)の歌う「空」は、メモリアルフォトブック“Campus”から。
これは結構差が大きい。Wistariaと、最も違うのはキック。アタックの立ち上がりはむしろiect_03の方があるのだが、Wistariaに感じられたアタックの後の膨らみがない。あと音がやや平坦になる。Wistariaの方が立体的で音場も広い感じ。
打ち込みダンス曲、アイドルマスターシンデレラガールズの新田美波(CVあやちゃん)の初期持ち歌「ヴィーナスシンドローム」
は、ジャンル的にiect_03に合ってる。やや直接的に高音が響き、低域の立ち上がりも良いのが、鞭でしばかれるような(←?)やや変調を効かしたような16ビートのハイハットや、バスドラのアタックの鋭さによって、ダンサブルに聴こえる。こういったデジタル系飽和音数楽曲では、Wistariaの絵画的描き出しがむしろ過剰演出か。
キレが必要と言うことでは、キメキメのフレーズが多い、ジャパニーズフュージョンはどうか。T-SQUAREの「RADIO STAR」を、ゲストベーシストにJINOこと日野賢二を迎えたセルフカバーアルバム“虹曲~T-SQUARE plays T&THE SQUARE SPECIAL~”
の方のヴァージョンで。一番違うのはベースソロ後半の部分。前半のスラップソロの部分は、プルの音が硬く立つiect_03とプッシュの響きが良いWistariaで甲乙つけがたいが、ベースに加えて、スキャットとバスドラの刻みの三つ巴になる後半は、iect_03は明らかにバスドラフォーカスだが、Wistariaはベースもしっかり聴こえる。リズムのキレがあって、ビート主体のiect_03も決して悪くはないが、ベースもしっかり味わうとなるとWistariaかな。
オールドロック、Eaglesの「Hotel California」は同名アルバム(24K蒸着CD盤から起こしたFLAC)より。
iect_03のギターの明確さ、カランとした乾いた感じ、ベースのしっかり感、ティンパレスのアタックがキツイ感じなど、やや現代的。明瞭で、これはこれで悪くはないが、すべてがベルベットに包まれたような優しくまるめの音になるWistariaを聴いてしまうと、曲の時代背景に合うのはこちらかな、という感じ。アコギの響きなどはクリアなiect_03の方が、むしろ好きまであるのだが。
勇壮なオーケストラ曲、ゲーム艦これの初期BGMのリアルオーケストラアレンジで「鉄底海峡の死闘」を交響アクティブNEETsの“艦隊フィルハーモニー交響楽団”
から。これは曲調的にはiect_03の方が切迫感があって、合っているかも。ティンパニや低音弦の塊感とか芯の強さはWistariaなのだけれど、金物系の立ち上がりなどはiect_03で、攻撃的な戦闘BGMの曲調にはiect_03か。
最後に配信楽曲として高ビットレート(269kbps)のmp3として、YOASOBIのサポートベーシスト、団長ことやまもとひかるの2nd配信シングル「NOISE」。
これは見事に明確に分かれた。ヴォーカルとピアノを前に出し、リズムはむしろキックを中心に語るWistariaに対して、声はやや埋もれるものの、ベースをガッツリ前に出すiect_03。楽曲を味わいたいならWistaria、ベースプレイを聴きたいならiect_03。アーティストひかるちゃん≧ベーシストひかるちゃんならWistaria、アーティストひかるちゃん<ベーシストひかるちゃんならiect_03。
全体として、ヴォーカルを「聴かせる」Wistariaに対して、各楽器を押し出しよく「聞かせる」iect_03という感じ。ただ、基準ケーブルとしては、特に大きな欠点も、強い音色指向もないのでちょうどよい感じ。Pentaconn earのイヤホン類を手に入れた際、標準添付ケーブルのプラグ側が3.5mmアンバランスだったような場合は、バランス接続音色は本品を基準にして評価しようかな。
【仕様】
コネクタ:Pentaconn ear 金メッキ仕上
プラグ:4.4mm 5極プラグ 金メッキ仕上
プラグスリーブ:アルミニウム+アルマイト処理
導体:6N-OFC、PCUHD(古河電工製4N高純度無酸素銅)、
HiFC(日立金属製4N高純度無酸素銅)、OFC(4N無酸素銅)
ジャケット:PVC
長さ:1.2m
わりに主張が強い
硬さがあり、スピード感もあるので、わりに目立つ。キラキラ感やアタックの立ちは強めで、主張する。
悪くはないが、特徴も....
嫌な響きや、定位の甘さなどはないが、特徴としては音の「立ち」が良いことくらい?
アタックが出るスピード感ある音
「厚い」というほどではないが、ガツンとしたアタックがあるので、現代的楽曲には合う。
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購入金額
9,900円
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購入日
2023年07月11日
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購入場所
e☆イヤホン(Amazon)
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