レビューメディア「ジグソー」

メニーコア・クリエイティブPCを構築!!


 AMD Ryzen 7 1700は、ZENマイクロアーキテキチャに基づき製造された8コア16スレッドのCPUです。AMDのミドルスペックCPUとしては、第三世代Bulldozer以来となる製品です。

私自身としては、AMD製品はPhenom II X6 1055Tを所有していましたので、7年ぶりとなるAMD製品になり、否が応でも期待で胸が高まります。
今回のレビューでは、8コア16スレッドというメニーコア環境がクリエイティブ用途において、どのような影響を及ぼすのか、通常のベンチマークや実アプリケーションを用いながら多角的に調べていきたいと考えています。

目次:
(1). Introduction
(2). Design
(3). Accsesaries
(4). Specification
(5). Benchmark
(6). Application
(7). Overall 

 

 
CPU表面に刻印された情報は予め編集で削ってありますが、
今回頂いたCPUはマレーシア産でした。

中国産とかもあるようですが、どちらが廻る石なんでしょうね。

中央に「Ryzen」の刻印・・・、格好いいっ! 
 

 


・CPU本体
・Wraith Spire Cooler
・Wraith Spire Cooler用LEDケーブル
・マニュアル
・Ryzenロゴシール
 今回のリテールCPUクーラーは光るということでちょっと話題になってますね。

互換性のあるマザーボード(ASUS Aura sync、Gigabyte RGB Fusion、MSI Mystic Light、Biostar VIVID LED DJ、ASRock RGB LED​など)を選択すると、RGBカラーコントロールが可能になっています。

 

 Ryzen 7シリーズの仕様を並べてみました。

ZENマイクロアーキテキチャより、サイマルテイニアスマルチスレッディングという機能が付与され、INTELにおけるハイパースレッディングと同じくして実コアの倍の処理を可能にしていることが大きな特徴となっています、
また、Ryzenシリーズは内蔵GPUは非搭載となっていることは留意しておくべきかと思います。
1800Xから1700までを比べると、定格やターボ時のクロック、及びTDPに差が認められますが、それ以外に差はありません。基本的に選別上位品が1800Xで、選別下位品が1700ということなんでしょう。

しかし、表に纏めてみても8コア16スレッドという数字は圧巻です・・・っ。
 

 
 今回、ベンチマークをするにあたり、以下の環境で調査することにしました。

 

 基本的にはINTEL Corei7 3770Kの環境をブラッシュアップする形にしていますので、
違いはCPUとメモリーだけになるはずです。

また、Ryzenをオーバークロックした場合の比較についてもグラフを纏めるようにしました。

 

 

値が小さいほど高速
 円周率計算プログラム「スーパーπ」を用いてシングルコア当たりの性能を調べてみたところ、Ryzen 7 1700は定格及びオーバークロックともに、5年前のモデルになるIntel Core i7 3770Kより遅いと言う結果になりました。

Intel Core i7 3770Kは定格3.5GHzあり、Ryzen 7 1700の定格3Ghzに比べて高クロックであるため、この結果は予想通りでしたが、3.9GHzまでオーバークロックした場合においても3770Kが速いというのは予想外でした。
恐らくは、Intel系のCPUはL1キャッシュを使い、同じ計算をキャッシュから引き出すので、演算ループせずベンチマークが走る為だと思われます。

 スーパーπでは純粋なCPU性能の計測が出来なかった為、CINEBENCHを使いメニーコア当たりの性能とシングルコア当たりの性能を計測しました。 

比較動画を作成しましたので此方をご覧ください。



 

 値が大きいほど高速
 メニーコア当たりのCPU性能を調べたところ、流石は8コア16スレッドですね。
Intel Core i7 3770Kの倍以上というスコアを付けました。

オーバークロックした場合においては、2.5倍の差が付いています。
  

 
 シングルコア当たりのCPU性能を調べましたが、Ryzen 7 1700は定格時においてはIntel Core i7 3770Kより性能が低いということが分かりました。5年前のCPUよりスコアが小さい原因としては、やはりベースクロックの低さが問題になっていると思われます。

流石に、オーバークロックした場合においては、Ryzen 7 1700のほうが性能が上回るという結果に落ち着いています。 

 値が大きいほど高速
 
 PCMARK10は実際にソフトウェアを動かした時を想定し、サンドボックス内で実操作を模したエミュレートを行いスピードをはかるため、今回検証に使ったベンチマークソフトの中では、最も実挙動に近い結果を残してくれます。
そして、計測してみたところ、CINEBENCHのシングルコア当たりの計測結果によく似た結果が出てきました。ここでも定格のRyzen 7 1700がIntel Core i7 3770Kよりスコアが小さいという結果です。

CINEBENCHのメニーコア当たりの性能で考えれば、Ryzen 7 1700のほうがスコアが大きくなりそうなものですが、GIMPや動画再生などのメニーコアが必要としないソフトウェアをサンドボックス内で動かしていた為でしょうか。

現段階において、事務作業や動画再生、ちょっとした編集で使うソフトウェアは、8コア16スレッドに対応しきれていないということなのかもしれません。 

 消費電力(W)
 OCCTによるCPU負荷テストを用いて、消費電力の計測を行いました。

流石に4コア8スレッドしかないIntel Core i7 3770Kが一番消費電力が低いという結果になりましたが、殆ど誤差の範囲内だと考えれば8コア16スレッドでこの低消費電力に抑えているRyzen 7 1700は驚きに値すると思います。
 
 オーバークロックすると大幅に消費電力が増えるので注意が必要ですね。(VCORE:1.3V)
 

 ここまではベンチマークソフトを使った性能調査でしたが、やはり実際のソフトウェアを使ったときの性能差が重要だと考えますので、手持ちのソフトウェアを使って調査をすることにしました。

調査に使用したソフトウェアは、グラフィックデザインや映像制作分野における業界標準といえるAdobe社のAdobe Photoshop CCと、Adobe Premiere Pro CC、Lighroom CCを使うことにしました。
 

 

値が小さいほど高速
値が小さいほど高速


今回、Photoshopの実挙動テストをするためにSpeedTest-Gavtrainを使うことにしました。
PhotoshopのRAM設定などは全て標準設定(8GB)にしてあります。

シングルコア当たりの性能で言えば、Intel Core i7 3770Kが定格のRyzen 7 1700より速いので、メニーコアへの対応が遅れているPhotoshopにおいては、Intel Core i7 3770Kのほうがスコアが良いのでは無いかと考えていましたが、実際はその逆でした。

Ryzen 7 1700のほうがIntel Core i7 3770Kより速い結果になっているのは、テスト内のフィルター処理においてメニーコアが効く場面があったからだと思います。


その証左としては以下のテスト結果になります。

値が小さいほど高速

 

Keith Simonian氏のサイトで公開されている「Free Radial Blur filter test」を使い、16M画素の写真データにぼかし(放射状)を掛けた場合の速度結果です。

Photoshop CCのぼかし(放射状)は、メニーコアが効くフィルターで、Ryzenの性能をフルに使うことができる為、Intel Core i7 3770Kと比べても定格のRyzen 7 1700は2倍以上速い結果になっています。

この速度差が、先の総合テストでの結果に反映されたと考えられます。

つまり、Photoshop CCにおいては、8コア16スレッドの効果は限定的で、基本的にはシングルコア当たりの性能が高いCPUが最適だということが結論づけることが出来ると思います。

 

 

 値が小さいほど高速

 Adobe Premiere® Pro CCでのエンコード速度調査には、「PPBM」を使用しました。このベンチマークファイルには、動画ファイルとPremiereプロジェクトファイルが含まれており、H264エンコード、DISKシーケンス、MPEG2エンコードなどを行った時間を計測する事により、PCのシステム、CPU、メモリ、ストレージが如何にAdobe Premiereに最適化されているかを計測することを目的としていますが、今回はMPEG2エンコードによるCPU性能のテストのみ実施しました。

流石に得意分野のエンコード処理では、Ryzen 7 1700が圧倒的な速度差で処理を終えました。

今時は、nVidiaのマーキュリーエンジンや、Intelのクイックビデオシンクなどの機能もあるとは言え、この速度差は実用に十分なものではないでしょうか。
 
 

 値が小さいほど高速
 最後にLightroom CCを使って写真100枚にフィルター処理を施して書き出す作業を行い、速度比較を行いました。
結果としては、Intel Core i7 3770KがオーバークロックしたRysen 7 1700(3.9GHz)よりも速いと言う結果になりました。これは流石に意外でした。

オーバークロックした状態であれば、シングル性能が上のRyzenのほうが高速なはずのなのですが・・・。

調べてみても答えが見つからなかったので、時間があれば再テストをしたいと考えていますが、
現時点における答えとしては、「写真編集においてはRyzenは力を発揮しきることが出来ない。」
という事になります。
  

 AMDの反撃の狼煙となるZENマイクロアーキテクチャによるRyzen 7シリーズ。
ここまでベンチマークや実アプリケーションによる挙動テストや消費電力の計測などを行ってきましたが、その結果は非常に面白いものでした。

8コア16スレッドを使い切れる場面においては、圧倒的な性能を示すが、Ryzen 7 1700 の弱点としてベースクロックが低いため、5年前のCPUに負ける場面がありました。

肝心のクリエイティブ用途におけるRyzen 7 1700の有用性については、写真編集PCとしてはシングルコア当たりの性能において力不足の部分が多く見られた為、不適である一方、動画編集PCとしては体感レベルで実作業のスピードアップを図ることができる感じました。
個人的には、ホビーユーザーであれば、そこまで重い画像処理をすることも少ないように思うので、動画編集が高速なほうが総合的な体感レベルでは快適じゃないかな?なんて思います。

また、本レビュー自体では結果のみ書いていますが、オーバークロックの伸びしろは驚異的で上位製品である1800Xを超える事も可能です。(定格3GHzから3.9GHzまで簡単にオーバークロックできるって驚異的ですよね。)下克上を図れるRyzen 7 1700は非常に面白い製品だと思います。


なんにせよ、AMDによる反撃の狼煙、確かに受け止めました・・・!これから自作PC界隈がまた昔のように面白くなってくるでしょう。また、それを期待してAMDを今後も応援してきたいと思います

コメント (4)

  • kaerkiさん

    2018/01/04

    レビューお疲れ様でした。
    PC1台増えましたねんw
  • Picardさん

    2018/01/04

    一番乗りレビューお疲れ様です。
    正月返上でのレビュー?

    メニーコア良さそうですね。
    私は、先日購入した、Core i7 8700Kの6C/12Tでも充分速さが実感できたのですが、8C/16Tというと、つい先日までのメインストリームCPUの倍ですから更に凄そうですね!
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