長い前置き

 会社への通り道にアンティークショップが出来ていた。
開店前のガラス窓越しに店内を覗いてみると、店の奥の仏像が目にとまった。
坐像のようだ。もっと近くで見てみたい。
値札は見えるのだが、価格が見えない。
どうやら４桁の金額ではなさそうな感じがする。

あゝ手を伸ばせば届きそうな距離なのに・・・。.JPG

当然、帰り道の時間にはとうに店は閉まっている。
先日の阿修羅に続く煩悩がまたひとつ増えた。

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えにし

 知人がアンティークショップを開業したときいて出かけてみると、驚いたことにその仏像がいる店だった。
巧く表現できないがここに強烈な縁を感じた。

店番のわんぱくスージー君は歯茎も剥き出す箱付き美品.JPG

 

 

わんぱくスージー君

 つい先日も我が家で連日放映された『トイ・ストーリー３』の悪役ロッソの一味にこのサルが起用されている。
幼い頃、従兄弟の家にこれがあって、歯ぐきを剥きだしにしてシンバルを鳴らすその顔が恐ろしくて仕方なかった。こうして見ると、材質、大きさと色合いとまた粋な具合である。
後々、気になってゆきそうな予感が強い猿との出会い。


３０～40年代のハリウッド映画のワンシーンが再現されそうな雰囲気の良い店で、コーヒーなんかを出されると長居してしまいたくなる。
（実質店をまかせられている奥さんがこれまた大層美しい方で。。。）
そのうちにカフェとしても営業したいと聞いてなるほどと思う。

仏様を手に入れる

 「ところで奥に仏像があるでしょう？」
「もうご存知でしたか？！」
「実は毎朝拝んでいたんですよ、これ」
「vingt-et-unさんなら値札の半分でいいですよ」
なんの御利益があるのかぁなどと横で惚けたことを言っている家内の肩を私は強く揺さぶっていた。


ぼってり顔が多い仏陀像にしては、どことなく半跏思惟の弥勒菩薩のような女性的な魅惑の表情。
透徹で静謐。そして幽玄な印象を感じる。
細く通った鼻筋に緩やかに弧を描く眉線。
口もとには薄っすらと笑みを浮かべているようにも見えたりする。

いつ頃に何処で作られたのだろう。
はじめて飾られたのは一体どんな建物だったのだろうか。
一体どれほどの人々が祈りを捧げてきたのだろう。
美しい容相についつい見入ってしまい、果てしない空想が駈け巡り時間ばかりが過ぎてゆく。

材質は青銅であろうか。ズッシリとくる重みは5㌔はありそうだ。
焔のような天頂部まで40ｃｍ。

IMG_5625.JPG

「仏像は彫像としての美を具えるとともに、
その美を超える仏教上の教理を具現化された、いわば偶像としての理想美も兼ね具えられている。」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　入江泰吉

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ちょうど蓮の花が美しい光景です。
やはり「邂逅も、縁であり、偶然ではなくすでに必然だった」のでしょうか。

蓮の花の咲くころ２.JPG