IEEE802.11ac対応、ビームフォーミング、電波の死角がない新技術「360コネクト」採用をうたったWN-AX1167GR。レビューアー50人という太っ腹な企画のおかげで選出していただけたため、現在利用しているNetgearのR6300と比較します。
住まいは3LDKのマンション。間取りがL字型になっており、一辺の端にリビング、ルーターの設置場所から見て右90度、もう一辺の端に主寝室があります。
現在、R6300はリビングの端、マルチメディア端子がある場所に設置しており、特に電波干渉が少ないとされる5Ghz帯では快適に利用しています。
ところが反対側の主寝室では、障害物に弱い5Ghzの特性があだになり、使えないことはありませんが不安定で、途切れることもよくあります。その際は2.4Ghzや、docomoネットワークに切り替えて使ってはいますが、不便このうえありません。
そこで、本機種。特長で目を引いたのが、R6300にはない「360コネクト」でした。逆に言えば、それ以外はR6300と同等か、むしろ最大速度1300MなどはR6300の方が優れているぐらいです。従って、私にとって本機の評価ポイントは、「360コネクト」が有用かどうか、が大きな位置を占めることになります。
新技術の恩恵うけられず
まず、現在の状況から。
比較には、
を使います。最新かつ最上位機種なので、各種の技術要件もクリアしているはずです。アプリでは、
- Wifi Analyzer
- 電波強度チェッカー
- Speedtest
を利用します。
まずルーターを設置してあるリビングの状況です。
若干見づらいですが、一番上がドコモ。広告を挟んで、R6300の5Ghz、2.4Ghz、以下は隣家のもの。2.4Ghzで-44dBm、5Ghzで-57dBm出ています。5Ghzが弱い気がしますが、リビングで使っている限り、PCでもスマホでもタブレットでもまったく不満はありません。
これをWifi Analyzerで見てみると、
上が2.4Ghz、下が5Ghzです。2.4の方は以前、隣家の干渉を避けるためにChを変えたため、左の山から離れています。そのため、2.4でもリビングでは快適です。下の5Ghzでは、隣家で使っていないためか、独立していて、さらなる快適さにつながっていると思われます。
廊下とドア2枚に隔てられた反対側の寝室では、それぞれ以下のようになります。
リビングで-40台前半だった2.4Ghzでは-60台前半に、5Gは-50台前半が-70台前半にまで落ち込んでいます。
電波強度も、
となっており、2.4Gのオレンジ色がなくなり、5Gではさらに弱くなっているのが明確に分かります。
Speedtestしてみると、
一番下がリビングでの5G。マンションの回線がベストエフォート100Mbpsなので、ダウンロードで60M、アップロードで89M出ていればまあそこそこでしょう。その上が2.4Gの数字。それが主寝室では2.4Gがダウンロード17M、5Gで35Mと、3分の1ほどに減速してしまいます。上2つの結果です。
寝室で5Gはつながりづらく速度が出ない、2.4Gも不安定といった私の不満が、数字で裏付けられた格好になります。
ではさっそく、本機を導入してみましょう。
筐体は驚くほど軽く、しかもR6300がiPadならこちらはiPad miniかのごとく、全体的に2回りほど小ぶりです。事前の情報通り、確かに前面にインジケータすらなく、電源が入っている間は前に白くロゴが浮き上がるR6300とまったく正反対です。
リビングで電波強度チェッカーを見てみます。比較のため、R6300はそのまま電源を入れてあります。
ここでちょっとした驚き。上から2番目のR6300が5Gで-51ですが、上から3番目の本機は-57と、わずかながら弱くなっています。
本機、R6300とも、メーカーサイトの仕様には出力の大きさがありませんが、もしかしたらR6300の方がわずかながら無線出力が大きいのかもしれません。もしくは、アンテナが各帯域でR6300は3本、本機は2本という点が影響しているのかもしれません。
このことは、Wifi Analyzerからも伺えます。
上が2.4G、下が5Gですが、いずれもR6300(上は灰色、下は赤)の方が、本機(上は黄緑、下は青)よりも山が高くなっています。
肝心の主寝室ではどうでしょうか。電波強度はやはりリビング同様でしたが、衝撃的なのは5G接続によるSpeedtest。
まずPingがR6300より下手をすれば倍かかっているほか、ダウンロードが0.22M。その下のグラフを見てもらえれば分かりますが、これは途中で接続が切れ、以後、データなしになったためと思われます。何度か測りましたが、通信できてもR6300のように35Mなどという数字が出ません。実利用でも、通信ができなかったり、できてもひっかかったような感じになり、明らかに使い勝手が低下しています。
もちろん、ルータの向きは公平を期すために同じにしてあります。加えて、本機をさらに寝室の方向にあからさまに向けてテストもしましたが、同様の傾向は変わりません。
本機の中で最も惹かれた点、新技術「360コネクト」について製品サイトでは、
上下・左右・奥行き360度全方向に電波が放出されるよう最適化されたアンテナを搭載し、さらに最大通信距離を極限まで高める高性能パワーアンプを併用した当社独自の「360コネクト」技術を搭載しています。同じフロア内(横方向)はもちろん、1階から2階へ(上方向)、2階から1階方向(下方向)へもムラなく電波を飛ばします。
この360コネクトによって、ハイパワー通信を全方向に対して行うことができるようになりました。
とあり、垂直方向の優位さは強調されているのですが、やはり障害物には勝てないようです。その場合は、アンテナ数や出力の大きさがきいてくるのかもしれません。
設定引っ越しは便利
機能面で興味を引いたのは、「業界初」というWi-Fi設定コピー機能です。私の場合、現在のR6300でも特段、複雑な設定をしているわけではないのですが、手順通りにやってみるとルーターをつないだだけで各機器が問題なく接続されました。
今回のレビューで、「このコピー機能が働かない」といったものも散見されます。もちろん、機器同士の相性問題はあるでしょうが、説明書にやや小さな字で書いてある「コピーの際は双方のルーターからネット回線を外す」という点が盲点のような気がします。無論、確証も技術的裏付けもないのですが、どちらかにネット回線(要するに壁からルータまでのケーブル)がつながっていれば、外部との通信をしてしまい、うまくいかないこともあるのではないかと。
ということで、本機とR6300との間では、指示通りにすれば問題なくコピー機能が使えました。とはいえ、あくまで接続のための「コピー」のようで、Wi-Fiのチャンネル設定まで変えるものではなさそうです。そこまで求めるのもまたやりすぎのような気はします。
コストパフォーマンスは良し
残念ながら、私の環境では私の不満を解消するに至らなかった本機ですが、kakaku.comによると最安値が6970円で、11ac、ビームフォーミング、最大867Mbpsに対応し、ユニークな設定コピー機能や360コネクトがある、という点では、非acルーターや旧世代ルーターを使っている人には、value for moneyの点でいい選択肢になるのではないでしょうか。
反面、デザイン上のこだわりがある人、より高性能機を持っている人が買い替える対象には残念ながらなりそうにありません。
最初に触れたように、筐体はプラスチッキーで、前面にインジケータや装飾はなし、色も微妙な藍色(紫色?)と、物欲に駆られる要素がありません。スタンドも、取り付け・取り外しとも力技であり、スマートさには欠けます。逆にいえばシンプルなわけで、「無線ルーターなんてそこそこの速さで通信できればよい」という視点で見れば、ばっちりはまる人もいるでしょう。
yosyos888さん
2016/05/09
Quadrigaさん
2016/05/09
コメントありがとうございます。
マニュアルの字、ちょっと分かりづらいですよね。そしてふつう、マニュアルってあまり読まないですよね。私の場合、すでにみなさんが「コピーできない」というレビューをされていた「後出しじゃんけん」だったため、念のため読んでみただけです。
また、機器の相性も特にネットワーク機器ではまだ大きく残っている気がしていますので、もしかしたらマニュアルの注記もyosyos888の環境で試してみると変化はないかもしれませんし。
いずれにせよ、レビューの緻密さに感服いたしました。大いに勉強になりました。ありがとうございます。