前回掲載したKS-Stage323EVO.IIの鏡面加工のレベルをStage3からStage6に向上させ、EVO.IIハンダに天然松ヤニを加えた製品です。使われているPC-Triple C単線自体は全くの同一品です。
現在リリースされている第2世代鏡面加工PC-Triple C単線を使用しているStageシリーズとしてはハイエンドモデルとなるのが、このKS-Stage623EVO.II-VKです。前世代では鏡面加工の極みといえるStage9に到達したフラッグシップモデル、KS-Stage903EVO.II-VKが用意されていましたが、Stage9については現時点では従来モデルが継続されています。
前回取り上げたKS-Stage323EVO.IIは38,500円でしたが、今回のKS-Stage623EVO.II-VKは66,000円と倍近い価格差が付いています。尤もこの価格でもKS-Remasta製品としては中級クラスなのですが…。
取り付けの難易度などは価格が1/10のKS-LW-1500STD等と変わりませんが、この辺りまで来ると価格を意識してどうしても交換作業は慎重になってきます…。写真の通り、試聴に際して組み合わせるカートリッジはaudio-technica AT-OC9ML/II+Ortofon LH2000となります。
全体的な性能は大幅に向上するが、PC-Triple Cの明るさがはっきりと出る
AT-OC9ML/IIとの組み合わせで以下の4曲を聴きました。
・10 Miles / Champlin Williams Friestedt (アルバム「CWF 2」収録)
・Fields Of Gold / Eva Cassidy (アルバム「The Best Of Eva Cassidy」収録)
・First Time / David Paich (アルバム「Forgotten Toys」収録)
・Shostakovich: 3 Duets for 2 Violins and Piano, Op. 97D: I. Prelude / David Garrett feat.Itzhak Perlman (アルバム「ICONIC」収録)
まずは「10 Miles」から。
KS-Stage323EVO.IIとの比較では低域方向が量感はさほど変わらないものの、より深さが出ると同時に解像度が向上してベースラインが鮮明になります。音場は更にもう一回り拡がりますが、見通しがハッキリしすぎと思うくらいに明るくなります。ジョセフ・ウイリアムズの声もKS-Stage323EVO.II比で若々しくなりますが、実年齢に対してちょっと若すぎるかも知れません。高域方向はハイハットの繊細さが一気に増してきますし、音色もより金属的です。
エコー成分はより鮮明かつ豊かになり、音像もシャープになります。ヴォーカルの口の大きさは下位モデルよりは小さくまとまっていて、これ位であれば口が大きすぎると感じることは無いでしょう。
続いて「Fields Of Gold」です。
基本的にこの曲ではヴォーカルの表現を見ていたのですが、KS-Stage623EVO.II-VKに替えて真っ先に気付いたのはギターの音色でした。弦の震えが明確に表現されるようになりましたし、胴鳴りの豊かさが明らかに増しています。
エヴァ・キャシディの声はやや明るいのですが、KS-Stage323EVO.II比ではニュアンスの表現力が向上していて、より歌がうまく感じられるというのが大きいところです。音場は「10 Miles」以上に広がりを実感できます。
次は「First Time」です。
KS-Stage323EVO.II比でデイヴィッド・ペイチのヴォーカルはやや硬いのですが、低域の深さや重さがやはりまるで違います。またイントロのパーカッションの叩き方の細かいニュアンスがここではっきりと聴き取れるようになりました。今まで単に叩いているだけに聞こえていたものが、実は細かく強弱が付いていることを意識できるようになります。
音場の広さは他の楽曲同様にはっきりと広くなっているのですが、どうしても気になるのはこの曲のイメージに対してやはりちょっと空間が明るすぎるかなということです。私が現在メインとして使っているAT-OC9/IIIには同グレードの音色違いとなるKS-Stage621EVO.I-VKを組み合わせているのですが、少なくともその環境では全体的にトーンがもう少し落ち着いています。電源ケーブル等であればともかく、シェルリード線にはPC-Triple Cのキャラクターはちょっと過剰な感じがどうしても残ります。
そして最後に「ショスタコーヴィチ 3つの二重奏曲 作品97dから 第1番:前奏曲」です。
この曲ではKS-Stage323EVO.II比で2人に関係性が変わって聞こえます。実はKS-Stage323EVO.IIではイツァーク・パールマンがかつての一番弟子であるデイヴィッド・ギャレットの前にしゃしゃり出て演奏しているようなアンバランスさが僅かに感じられていましたが、KS-Stage623EVO.II-VKでは対等の二重奏をきちんと奏でています。
強いて言えばヴァイオリンの音色がやはり少し乾き気味かなと思う部分もありますが、倍音や胴鳴りがきちんと表現されている分不自然さはさほど感じられなくなりました。この辺りはさすがに価格分の価値をしっかり感じさせるだけの向上幅です。
第2世代鏡面加工PC-Triple C単線のハイエンドモデルというだけあり、基本性能は下位と比べてもはっきりと向上していることが聴き取れます。後はPC-Triple Cのキャラクターが好きかどうかというだけのところです。
実はOFC単線とPC-Triple C単線の音は利用する環境で好みがかなり分かれるところであり、アナログオーディオフェアの会場でデモを実施した際には来場者の中でも割合均等にどちらが好きか分かれたのですが、先日オーディオユニオンアクセサリー館で同じようにデモを行ったところOFC単線のKS-Stage621EVO.I-VKが圧倒的に支持されました。
実際に、私が利用しているTechnics SL-1200G+TEAC PE-505の環境ではOFC単線の方がニュートラルに感じられるのですが、もう少し旧世代の製品と組み合わせた場合には結論は大きく変わるのかも知れません。少なくともKS-Stage623EVO.II-VKが第2世代鏡面加工PC-Triple C単線のハイエンドとして、それに見合った性能はきちんと持ち合わせているのは確かです。
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購入金額
66,000円
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購入日
2025年08月22日
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購入場所
KS-Remasta






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