レビューメディア「ジグソー」

PC-Triple CとStage3鏡面加工との相性の良さ

前回掲載したKS-Stage123EVO.IIの鏡面加工のレベルをStage1からStage3に向上させただけの製品です。使われているPC-Triple C単線やEVO.IIハンダなど、素材は全くの同一品です。

 

 

 

 

 

 

尤もこの鏡面加工こそKS-Remastaの上位製品の生命線ともいえるものであり、この鏡面加工による音質面でのメリットは実際に音を聴いたアナログオーディオファンが広く認めるものです。当然手間と技術が要求される加工を施すだけに、価格もKS-Stage123EVO.IIの16,500円に対してKS-Stage323EVO.IIは38,500円と大幅に上昇します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからは写真にある通り、試聴に際して組み合わせるカートリッジはaudio-technica AT-OC9ML/II+Ortofon LH2000となります。さすがにこの辺りまで来ると繊細さがあまり表現されないNAGAOKA JT-80LBではちょっと厳しくなってきますので…。

 

 

 

 

 

更新: 2025/09/02
総評

Stage3の「緩さ」がむしろ好相性

AT-OC9ML/IIとの組み合わせで以下の4曲を聴きました。

 

 

・10 Miles / Champlin Williams Friestedt (アルバム「CWF 2」収録)

 

 

 

 

 

・Fields Of Gold / Eva Cassidy (アルバム「The Best Of Eva Cassidy」収録)

 

 

 

 

 

 

 

・First Time / David Paich (アルバム「Forgotten Toys」収録)

 

 

 

 

 

 

 

・Shostakovich: 3 Duets for 2 Violins and Piano, Op. 97D: I. Prelude / David Garrett feat.Itzhak Perlman (アルバム「ICONIC」収録)

 

 

 

 

 

 

 

まずは「10 Miles」から。

 

先に聴いたKS-LW-1500STDやKS-Stage123EVO.IIでは、PC-Triple C単線の固有のキャラクターと思われる、独特の明るさと硬さが強く感じられました。このKS-Stage323EVO.IIもやはり音色は明るいのですが、前述の2モデルほどの硬さが感じられません。

 

実は以前のKS-Remasta製品のレビューでも触れているのですが、鏡面加工Stage3を施したモデルは、他と比べて主に低域方向がやや緩くなり、ベースラインなどが膨らむ傾向が聴き取れました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

KS-Stage323EVO.IIでも恐らく同様の方向の音色となっているのでしょう。やはりベースラインがやや柔らかめの音色となりますし、中低域の量自体も増しています。ただ、過去の製品ではちょっと緩さが気になるという印象だったのですが、PC-Triple C単線を採用するKS-Stage323EVO.IIではむしろ過度の硬さが取れて良いバランスとなったように感じられます。ジョセフ・ウイリアムズの声も硬さを感じるというほどでは無く、少し若いかなという程度に収まっています。前奏のギターソロももう少しこってりしていても良いかなとは思いますが、音色にキツさは感じられません。OFC単線Stage2加工のKS-Stage221EVO.II比では音場がもう少しずつ外に拡がり、音場の見通しも鮮明に感じられます。

 

 

続いて「Fields Of Gold」です。

 

こちらはやはり一聴してKS-Stage221EVO.II比で声が明るく感じられます。曲調を考えればもう少し声がしっとりしていた方が自然です。その意味ではKS-Stage221EVO.IIの方が好バランスと感じられますが、エコーの豊かさや間奏のギターの弦の質感はKS-Stage323EVO.IIの方が上位らしいところを見せてくれます。エコー成分はグレードの上下を見るのに判りやすく、KS-Stage323EVO.IIの方が量が多く、より広い空間に拡がっているように感じられるのです。

 

 

次は「First Time」です。

 

まずKS-Stage221EVO.II比で明確に差が付くのは低域の厚みです。前奏にベースが入ってくる所の時点で、低域の存在感が大きく変わったことが判ります。これはStage3の低域がやや緩む傾向が良い方向に作用した結果でしょう。デイヴィッド・ペイチの独特の性質はどちらも十分に表現できているといって良いと思います。全体的にはKS-Stage221EVO.IIよりも音色は明るいのですが、この曲のイメージが崩れるほどの明るさではなく、許容できる程度の範囲だと思います。

 

後半のサビで入ってくる彼の娘のコーラスはKS-Stage323EVO.IIの方が音像がはっきりして声に存在感が感じられます。この曲に関してはKS-Stage221EVO.II比でも完勝といって良いでしょう。

 

 

そして最後に「ショスタコーヴィチ 3つの二重奏曲 作品97dから 第1番:前奏曲」です。

 

どうしてもPC-Triple C単線のキャラクターでヴァイオリンの音色が明るめなのですが、KS-Stage123EVO.IIの時のように名手が弾くストラディヴァリウスに感じられないというほどでもなくなります。これは低域方向が充実して中域以下がやや緩くなることで胴鳴りや倍音が豊かに出てくるようになったためでしょう。ただ、KS-Stage221EVO.IIと比べるとイツァーク・パールマン側の主旋律がやや強めに出てくる辺りはPC-Triple Cの音ということでしょう。

 

どちらかというと結果論ではあるのですが、硬くて明るいという音色の方向性を持つPC-Triple Cに対して、音がゆるめに出るStage3鏡面加工を施すことで良いバランスに近づいたということでしょう。

 

より上位の加工を施せばまた違った結果になるのですが、PC-Triple C採用製品にはこのStage3鏡面加工はバランスが良好でオススメの組み合わせです。OFC単線では緩さの方が目立つのですが、PC-Triple Cではうまく弱点が緩和されています。

  • 購入金額

    38,500円

  • 購入日

    2025年08月22日

  • 購入場所

    KS-Remasta

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