先日までKS-Remastaの新スタンダード製品群の試聴記を投稿していました。
私が希望して貸していただいたのはこの3モデルだったわけです。
しかし、私の右腕の都合もあり長らく試聴から遠ざかっていたこともあり、KS-Remastaさんの方でも私に聴いて欲しいと思っていた製品が貯まっていたわけです。そのようなわけで、ついでに同梱されていたのが、先日新たに投入された新製品シリーズ、KS-Stagex23シリーズ、即ち第2世代鏡面加工をPC-Triple C単線に施した製品群です。ついでの方が明らかに多いのはきっと気のせいです…。
今回取り上げるのはシリーズのベーシックモデルとなるKS-Stage123EVO.IIです。以前取り上げたOFC単線を採用するKS-Stage121EVO.Iとは同グレードの音色違いという位置付けです。
写真ではNAGAOKA JT-80LB+Ortofon LH2000に取り付けていますが、実際に試聴した際にはこの組み合わせで聴いた後にaudio-technica AT-OC9ML/II+audio-technica AT-LH15/OCCに移して両方の環境で聴きました。
なお、最新の第2世代鏡面加工PC-Triple C単線を採用した製品以外にも旧世代の製品や、同世代のOFC単線製品も同梱されていましたが、それらはKS-Stagex23シリーズのレビューの中で比較対象として取り上げる形で、単体としての記事は作成しません。
KS-LW-1500STDと同じ線材とは思えない
試聴環境はいつも通りTechnics SL-1200G+TEAC PE-505という環境で、例によって聴きながらMOTU HD192を利用してハイレゾWAVも作っておき、改めて聴き直すという方法で評価しています。
また多くの製品を一気に評価するために試聴曲は固定しておきます。NAGAOKA JT-80LBとの組み合わせでは以下の2曲を利用しました。
・10 Miles / Champlin Williams Friestedt (アルバム「CWF 2」収録)
・Smile / Michiko Ogawa (78rpm LP「Balluchon」収録)
まずは「10 Miles」から聴きます。
これまで聴いたスタンダードクラス3モデルと一聴して違いがわかります。音場が一気に一回り以上広くなり、特に同じPC-Triple C単線を採用しているKS-LW-1500STDで感じられたギターのきつさが感じられなくなります。
ジョセフ・ウイリアムズの声はまだやや細身ではありますが、KS-LW-1500STDのような硬さはそれほど気になりません。声に付いているエコーは豊かかつ鮮明で、2.5倍の価格に見合った性能の向上がすぐに理解できます。KS-LW-1500STDでは途中でビル・チャンプリンのヴォーカルも声を張ったときに何か頭打ちに感じられる部分があったのですが、それもありません。
次に「Smile」を聴いてみると、まずイントロのピアノの時点で格の違いを感じます。KS-LW-1500STDではピアノの直接音が金属的な硬さを帯びていたものが、ピアノらしい音色へと変化します。またヴォーカルとピアノが別録りされたかのようにバラバラに感じられていたものが、きちんと弾き語りの空気感が出てきます。
間奏のサックスソロはまだ若干細身な感じはありますが、概ねOFC単線採用で好ましい音色と感じられたKS-LW-1800STDと同じような鳴り方ですし、エコーの豊かさや鮮明さはKS-Stage123EVO.IIが明らかに優位に立ちます。
KS-Stageシリーズを正確に評価するためにはJT-80LBでは少し弱いと感じられましたので、ここから先はaudio-technica AT-OC9ML/IIとの組み合わせに変更することにします。
AT-OC9ML/IIでは以下の4曲を聴きました。
・10 Miles / Champlin Williams Friestedt (アルバム「CWF 2」収録)
・Fields Of Gold / Eva Cassidy (アルバム「The Best Of Eva Cassidy」収録)
・First Time / David Paich (アルバム「Forgotten Toys」収録)
・Shostakovich: 3 Duets for 2 Violins and Piano, Op. 97D: I. Prelude / David Garrett feat.Itzhak Perlman (アルバム「ICONIC」収録)
まずはJT-80LBでも聴いた「10 Miles」から。
さすがにカートリッジのグレードが大きく変わるため、同じKS-Stage123EVO.IIでも聞こえ方は全く違っています。
音場は更に広くなり、前奏のギターソロもこの曲が本来持つ、甘くてややくどさすら感じる音色になります。旧世代の1グレード上位に当たるKS-Stage203EVO.IIと比較しても、ヴォーカルやギターの音色はこちらの方が少しだけですが好ましく感じられます。
ベースラインの低域の深さはさすがにKS-Stage203EVO.IIが貫禄を見せますが、楽器の質感という部分ではKS-Stage123EVO.IIが互角以上の表現を見せてくれます。
次に「Fields Of Gold」です。この曲はほぼヴォーカルの質だけに集中して聴く形です。
エヴァ・キャシディの声はKS-Stage123EVO.IIの方が少しだけ柔らかさがあり、KS-Stage203EVO.IIは少し硬さが目立ちます。エコーはKS-Stage203EVO.IIの方がより豊かですが、子音がちょっとキツい印象があり、自然さという意味ではKS-Stage123EVO.IIが優位に立ちます。OFC単線を採用するKS-Stage221EVO.IIではKS-Stage123EVO.II以上に声に豊かさがあり、KS-Stage203EVO.II以上にエコーが豊かで子音はキツく感じられませんので、声の表現に少し弱点を感じるのはPC-Triple C単線のキャラクターなのかも知れません。
次は「First Time」です。
面白いことに「10 Miles」や「Fields Of Gold」では低域の重さはKS-Stage203EVO.IIがKS-Stage123EVO.IIを上回っていたのですが、この曲ではむしろKS-Stage123EVO.IIの方が低域の厚みを感じられました。デイヴィッド・ペイチのヴォーカルはKS-Stage123EVO.IIの方が自然に近く、KS-Stage203EVO.IIはちょっとハスキーになってしまいます。もっとも、どちらもKS-Stage221EVO.IIのヴォーカルと比べると生々しさは後退してしまいますが…。ヴォーカルや弦楽器は同等グレードであればOFC単線の方が有利という傾向は間違いなくあります。
そして「ショスタコーヴィチ 3つの二重奏曲 作品97dから 第1番:前奏曲」です。
まずKS-Stage123EVO.IIはバランスは悪くないのですが、デイヴィッド・ギャレット、イツァーク・パールマンという2人の名手が奏でるストラディヴァリウスというほどの音色にまでは感じられません。特にイツァーク・パールマンの音色に哀愁が感じられないのはちょっと残念です。
ただKS-Stage203EVO.IIはKS-Stage123EVO.IIと比べても音色が硬い上に明るすぎて、曲とミスマッチな感じすら出てしまいます。それと比べればむしろKS-Stage123EVO.IIの方が曲のイメージの再現度は高いといえそうです。とはいえ、これもKS-Stage221EVO.IIでは上記の不満は殆ど感じられませんので、PC-Triple C単線の個性が悪い方向に作用したと考えられそうです。
KS-Remasta独自の鏡面加工が第2世代となった効果は大きく、KS-Stage123EVO.IIが旧世代の上位モデルKS-Stage203EVO.IIを上回って見せた点も多くありました。私が難を感じた点の多くはStage1の加工が原因というよりはPC-Triple C固有の音色が影響したものでしょう。
KS-Stage123EVO.IIは標準価格16,500円と、このシリーズとしては最廉価とはいえなかなか高額なシェルリードです。しかし鏡面加工をしていないスタンダードグレード製品とは一聴して違いがわかる程度に高い実力を持っていることは間違いありません。スタンダードグレードでも他社の同価格帯よりは情報量がまるで違いますが、そこそこの性能のカートリッジと組み合わせるのであればStage1であっても鏡面加工の製品を選びたいところです。
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購入金額
16,500円
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購入日
2025年08月22日
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購入場所





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