今回私が試聴を希望した製品以外に送られてきた試聴機はこれが最後の1つとなります。
ちなみに希望して送っていただいた製品は既に紹介済みのこちらの2つでした。
この2機種は試聴カートリッジであるGoldring Eliteの音質傾向を活かせそうな感触があったものということで選んだものです。まあ、価格帯もある程度現実的なところを選んだ訳ですが。
しかし、ついでに送られてきたのはKS-Remastaの主力シリーズであるKS-Stage系の、まだ発売前の第2世代製品群であり、私が予定していた製品ではこの第2世代製品群の魅力の前にかすんでしまうという状況になってしまいました。結論としては第2世代の製品の中から購入することになりそうです。
今回試聴するのは送られてきた試聴機の中では最上位の製品となる、KS-Stage621EVO.I/VKです。
一応改めて型番の意味を確認しておきましょう。
KS=Karasawa Shingo
Stage=導体表面を鏡面仕上げ
600=鏡面仕上げのランク
20=鏡面加工の世代
1=海外製高純度OFC(無酸素銅)
EVO.I =KS-Remasta 特製半田の1つ
VK =天然松脂 VK
Stage3までの製品については、Stage10x → Stage12x、Stage20x → Stage22x、Stage30x → Stage32xとそのまま置き換わる形なのですが、前世代にStage6という製品は存在しておらず、このStage62xはStage40xを置き換える製品になるとのことです。
現在私がメインのカートリッジとして使っている、audio-technica AT-OC9/IIIに組み合わせているのは前世代のStage4グレードとなる、KS-Stage401EVO.II/VKです。
というわけで、このKS-Stage621EVO.I/VKは直系の後継モデルという存在ですので、今までの製品以上に実力が気になるものでした。早速試聴に移りましょう。
私が使っているKS-Stage401EVO.II/VKもヘッドシェル側のリードピンの皮膜は緑色であり、直系のシリーズであることが判ります。
鏡面加工のグレード以外は下位モデルと違いはなく、取り付けの難易度も変わりません。最初よりは少し慣れはありますが、手こずるのも同様です。
先代の最上位に肉薄する素晴らしさ
まずはこれまでと同様に、Goldring Eliteと組み合わせてTechnics SL-1200G+Phasemation EA-200で試聴してみましょう。
まずは「Babylon Sisters / Steely Dan」です。前回のKS-Stage321EVO.Iでもなかなかの好印象だったのですが、それを軽々と超えてきた感があります。低域~中低域にかけてのゆとりはKS-Stage321EVO.Iと同様なのですが、最低域の方にもう一伸びがありますし、解像度が増し引き締まってきます。
ドナルド・フェイゲンのヴォーカルはやはりというべきか、より口が小さくなり自然な定位となります。声の質自体もKS-Stage321EVO.Iで少し失われていた張りが戻ってきました。空間の見通しもより鮮明です。間接音ももう一歩はっきりと表現されてきます。
そして何よりも大きな違いが高域方向で、ハイハットの付帯音がさらに取れて金属の質感がはっきりとしてきました。この音を聴いてしまうと、これ以下の製品の高域にはまだ雑味が残っていたということを理解させられてしまいます。勿論、下位のStageシリーズでも数千円クラスの製品よりは圧倒的に緻密かつリアルに鳴っているわけですが、まだ完璧ではなかったということなのでしょう。
続いて「Runaway Dancer / Champlin Williams Friestedt」を聴くと、「Babylon Sisters」でも感じられたハイハットの描写の差が歴然としてきます。この曲のハイハットの僅かな不鮮明さは録音によるものとばかり思っていたのですが、KS-Stage621EVO.I/VKではそれが感じられなくなりました。バスドラムの重量感ももう一歩増すようですし、全帯域に渡ってより鮮明かつリアルに感じられます。
そして少し甘めの音だったKS-Stage321EVO.Iが得意とした「10 Miles / Champlin Williams Friestedt」ですが、より高解像度かつ鮮明でありながら雰囲気はKS-Stage321EVO.Iに全く劣っていません。ヴォーカルが他の製品よりステージの前方に出てきた感があります。以前Stageシリーズの最上位KS-Stage901EVO.I/VKのレビューでも書きましたが、オーディオ的に文句なく高性能でありながらもより快適なリスニング体験を提供してくれるという辺りに、この製品の次元の高さが感じられます。
こうなると気になってしまうのは、現在使っているKS-Stage401EVO.II/VKとの違いです。そこで、KS-Stage401EVO.II/VKと組み合わせているaudio-technica AT-OC9/IIIと組み合わせてみることにしました。
KS-Stage401EVO.II/VKは、私にとってはある意味衝撃的な製品でした。同時に最上位のKS-Stage901EVO.I/VKを聴いてしまったためにややインパクトが薄れた面はありますが、それでもAT-OC9/IIIを「オーディオ的に高性能だが素っ気ない面白みのない音」から「現代的Hi-Fiサウンドだがアナログ的な濃さや質感もきちんと出る高性能カートリッジ」へと一気に高めてくれた立役者でした。
しかしながら、KS-Stage621EVO.I/VKはそのKS-Stage401EVO.II/VKを軽々と上回ってきました。元々KS-Stage401EVO.II/VKはハンダがEVO.IIという若干ソリッド感の出るものであり、それと比べるとKS-Stage621EVO.I/VKのEVO.Iハンダの方が中低域のふくよかさなどは出やすい傾向があります。
それを差し引いてもKS-Stage621EVO.I/VKは空間表現が更にもう一歩色濃くなりますし、KS-Stage401EVO.II/VKでみられた高域方向の僅かな棘のような部分が綺麗に解消されています。アナログ的な濃い低域~中域と、デジタルソースとも真っ向から勝負できるような高域のクリアさが見事に両立しているのです。あのKS-Stage901EVO.I/VKの次元にかなり近づいています。
強いて言えばKS-Stage901EVO.I/VKが持つ、その場の空気を描き出してしまうような圧倒的な描写という領域には達していないのかも知れませんが、部分ごとの音の比較では決して引けを取っていないように感じられます。まあ当時とは組み合わせている環境が結構変わっていますので、あくまで私個人の印象でしかありませんが…。
KS-Stage621EVO.I/VKはKS-Stage401EVO.II/VK比で1万円高価(税別価格)な設定となりましたが、それでもコストパフォーマンスはむしろ高まったのではないかと感じられる進歩です。まだ店頭には出ていないようですが、2~30万円辺りのカートリッジを買う資金力のある方には是非お薦めしたい逸品となっています。
最小単位のオーディオケーブル
数あるオーディオケーブルの中でも、長さ3~4cm、直径1mm前後と、物理寸法で最小といえるものが、このようなシェルリード線でしょう。
しかし、中には数百万円というものが存在するスピーカーケーブル以上に、再生音に明確な変化をもたらすといえるのがシェルリード線という存在です。
近年ではストレートタイプのトーンアームから直接リード部分が出ているような製品も増えてきましたが、ユニバーサルタイプのヘッドシェルを使うようなレコードプレイヤーやトーンアームであれば、シェルリード線を交換して楽しむ余地があります。プレイヤーのグレードを問わず、体験した殆どの人が劇的な変化を感じ取ることが出来ますので、ヘッドシェルやプレイヤーに標準添付されているシェルリード線以外使ったことがないという方は、一度単売品に交換してみてはいかがでしょうか。
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購入金額
66,000円
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購入日
2022年05月03日
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購入場所
KS-Remasta
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