64AUDIOをはじめ、qdcやCampfire Audioなど高級イヤフォンを扱うブランドの代理店として、ポータブルオーディオのファンにはお馴染みに代理店ミックスウェーブが、11月下旬からBlack Fridayセールとして直販サイトで多数の商品を特売していました。その際に購入したのが、以前から「もう少し安ければ買い」と評していた、Unique Melody Mini MEST UNM-8862です。
Unique Melodyは元々補聴器の技術に定評があったメーカーがカスタム型IEMへ参入し、徐々に製品の幅を広げて高級イヤフォンの世界で確固たる地位を築いたブランドで、中国珠海市に本拠を置く企業です。
Unique Melodyは既成の概念にとらわれない設計に定評があり、例えば以前掲載したMAVERICKはDDとBAドライバーを併用するハイブリッド型イヤフォンですが、DDとBAに同じ帯域を受け持たせるなど、他社ではまず発想し得ない設計をして、それでいてきちんと高品位の音を出してくるのです。
そんなUnique Melody製品の中でも一際個性的といえるのが、骨伝導ドライバーを搭載するハイブリッド型イヤフォンのMESTシリーズです。
MESTシリーズ全製品に共通する特徴は、通常のDDやBA等のドライバーの他に、骨伝導ドライバーを搭載しているということです。骨伝導ドライバーを搭載するイヤフォンはアウトドア用向けを中心に他社からも発売されていますが、それらは騒音下などで空気振動の音声が聞き取りにくいときに、骨伝導を使って聞きやすくすることが目的となっています。しかし、MESTシリーズではこの骨伝導ドライバーを、主に中域の情報量を補うために利用していることが特徴となっているのです。
シリーズ第一号機のMESTではDD、BA、EST(静電型)、骨伝導と4種類ものドライバーを搭載していて、とても面白いのですが音が少しだけ「too much」という印象がありました。価格も実売で15万円クラスとなかなか高価です。面白いとは思ったものの手は出ませんでした。
その後シリーズの廉価モデルとして登場したのが、今回取り上げているMini MESTでした。初代MESTで4種類8個(片側)も搭載されていたドライバーは、Mini MESTではBA×3、骨伝導×1の2種類4個となっていて、これによりコストダウンを図っています。価格は8万円弱とまだまだ高価ではありますが、初代MESTの約半額であり、かろうじて考えられる範囲の額に納まっています。
というわけで、これが格安販売されていたものを見つけて、自分の環境でもMESTシリーズを使ってみたいと思い、購入することにしました。
内容物は標準的なUnique Melody製ユニバーサルIEMのものです。
箱を開けると、ケースメーカーとして知られるDignis製のUnique Melody専用ケースとご対面となります。
ケースの中ではイヤフォン本体やケーブルの他に、交換用イヤーピース、説明書や保証書など書面、クリーニングクロスが収納されていました。
カタログ写真で見ると外観は安っぽいのですが、実物を手にしてみると意外と格好が良いことに気付きます。
頭内定位の極致だが、音調はオーソドックス
それでは音を聴いてみることにしましょう。
組み合わせるDAPはCayin N6ii/T01、ケーブルはBrise Audio製SHP-001となります。
Mini MESTは骨伝導ドライバーを搭載している都合上、耳に直接シェルが当たっているか否かで音が結構変わってしまいます。そこで、装着感を改善するため、イヤーピースも純正ではなくAZLA Sedna Earfit XELASTECを組み合わせました。
試聴ソースはいつも通りのこの辺りです。
まず基本的な傾向として、骨伝導という言葉から連想されるような突飛な印象はなく、オーソドックスな弱ドンシャリタイプの音です。
骨伝導ドライバーを除けば3BAという割合ありがちな構成ですから、最低域の重量感などはさすがに出てきませんが、程々のレンジ感は出ていて、広さと見通しの良さを持った音場は構築されます。
イヤフォンを少しだけ浮かすと中域の密度感が一気に減りますので、この辺りは骨伝導ドライバーが補っているということなのでしょう。ずば抜けたものは特にありませんが、バランスが良く万人受けしそうな音です。
ただ、骨伝導を使っていることによる特異点は、例えば重めのバスドラムの音などを聴くと感じられるものです。具体的には、バスドラムを叩いた瞬間のアタック部分が、自分の頭の中心から響いてくきます。そしてその後に付いてくる音は通常のイヤフォンと変わらない定位となるのです。ソースの録音の質によっては殆ど感じられないのですが、「The Nightfly」辺りを聴いていると結構はっきりと違和感として現れます。
また、ヴォーカルやDavid Garrettのヴァイオリンなど中心の音もはっきりとした頭内定位となりますので、頭内定位が原因でイヤフォンやヘッドフォンになじめない人にはこのイヤフォンの音は受け入れられないと思います。
ただ、シェルが耳に密着する形状で、ノズルも含めて遮音性は高いため、骨伝導の威力と相まって騒音の中でも音楽の骨格ははっきりときこえてくるという特徴があります。ノイズキャンセリングなどがなくても、十分電車の車内程度の騒音であれば音楽に浸れる程度の音は保てるのでは無いかと思います。
音質そのものに骨伝導のデメリットを感じるという程では無いのですが、やはり骨伝導ならではの特徴は随所に現れます。それが受け入れられる人であれば、この音には十分納得できるのでは無いかと思います。逆にこの独特の定位を気持ち悪いと感じてしまった人には、お薦めはしがたい製品といえるでしょう。
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購入金額
41,800円
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購入日
2021年11月23日
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購入場所
MixWave直販
supatinさん
2022/01/01
(*・ω・)*_ _)ペコリ
Unique Melodyも気になっているブランドのひとつなんですが綺麗なフェイスプレートですね
骨伝導ドライバは未知の世界ですがこれもユニバーサルフィットとは言えカスタムIEM寄りの製品みたいですね
異端かもしれないですが頭内定位が結構好きなんで気になった次第です
harmankardonさん
2022/01/01
中華イヤホンとは違い,見た目やドライバー数だけでごまかさない本物があります.
ただ,高いのが難点.
jive9821さん
2022/01/01
実物を見ると思った以上にフェイスプレートは好みのデザインでした。
カタログでは写真写りで損をしている印象です。
Unique Melodyは、MAVERICK以降に発売された製品はツボを押さえた
造りでハズレはあまり無いメーカーだと思います。ただ、どれをとっても
高い(最近は比較的廉価な製品が増えてきています)辺りは弱点です。
このMini MESTは骨伝導ドライバーのせいで相性がかなり出るイヤフォン
となっています。人によっては低音が出ず密度もスカスカな音と評して
いますから、そのような人は恐らく耳の形状が合わないのでしょう。
jive9821さん
2022/01/01
初期のUnique Melodyは首をかしげる出来の製品も少なからずあったのですが、
MAVERICK以降は概ね手堅く出来ている印象ですね。
ただ、MAVERICK IIIがちょっとかつてのMAVERICKと方向性が変わって
きていて、Hi-Fi調にシフトしているのが少し気になるところです…。