それでは早速音質のチェックに移りましょう。

組み合わせるカートリッジはZYX R50 Bloom（ヘッドシェルはaudio-technica AT-LH18/OCC）、試聴環境はTechnics SL-1200G＋Phasemation EA-200となります。

まずは「10 Miles / Champlin Williams Friestedt」から聴きます。音場の広さはKS-LW-4000MRとほぼ変わりませんが、空間は明るめに描写され、中低域の濃厚さが薄れました。ただ、周波数レンジそのものはむしろ広くなった印象があり、KS-LW-4000MRよりはフラットの近いのかなと思わされます。ジョセフ・ウィリアムズのヴォーカルはKS-LW-4000MRより若々しさが出ますが、少し細身かも知れません。

この曲はハイレゾ版もダウンロード購入していますが、このハイレゾ版に近いバランスとなるのはKS-LW-4500LTDの方です。ただ、アナログ的な旨味は減るため、恐らく多くのレコードユーザーの好みに近いのはKS-LW-4000MRのような気がします。

次に「Babylon Sisters / Steely Dan」です。こちらも基本的な傾向は「10 Miles」と同様で、フラット傾向に近づく代わりに空間の濃厚さが薄れる感があります。冒頭のドラムのキレはKS-LW-4000MRよりも向上しますが、少し上ずった印象が出てきます。

ドナルド・フェイゲンの声はやはり若々しくなるのですが、少し声が軽く感じられます。空間の見通しは向上し、濃厚さが減ってデジタルソースの傾向に近づきます。個人的にはこのような傾向も嫌いではないのですが、アナログファンには濃厚さが減ることで不満が出てくる傾向でしょうか。

そして「One Last Kiss / 宇多田ヒカル」ですが、これも宇多田ヒカルのリードヴォーカルはやはり少し声が細くなりました。ただ、打ち込みのバスドラムはKS-LW-4000MRよりもはっきりと明瞭になり、より低い方まで出てくるようになりました。KS-LW-4000MRではバスドラムの音の頭が丸まってやや不明瞭になり、周波数的にも低い方がきちんと出ていない印象があったのです。KS-LW-4500LTDではその辺りの不満は大きく改善しています。

そしてセルフコーラスの質や厚みは、リードヴォーカルで感じられた細身な感がそこまで目立たず、トランス的なアレンジから生まれる浮遊感はこちらの方が出ているように思います。音作りが新しいこの曲はKS-LW-4500LTDの方がしっくりときました。

KS-LW-4000MRは出てくる音が「いかにもアナログ」という雰囲気を漂わせていたのに対して、KS-LW-4500LTDはオーディオ的にきちんと整った音という印象を受けました。audio-technica AT6101辺りからグレードアップすれば、それまでの長所を消すこと無くより豊かな音楽性を見せてくれるのでは無いでしょうか。

古めの録音を当時のテイストのまま楽しみたいのであればKS-LW-4000MRが、新しい録音をオーディオ的に高い水準で楽しみたいのであればKS-LW-4500LTDが、それぞれ第一歩としておすすめできそうです。