レビューメディア「ジグソー」

ケーブルもコネクターも全く同じ。でも音は違う

シェルリード工房KS-Remasta製のRCAインターコネクトケーブルのうち、今回聴いた2機種の中では上位モデルとなるのが、今回取り上げるKS-RCA-001/EVO.Iとなります。先に取り上げているKS-RCA-001/STDは希望小売価格55,000円、今回のKS-RCA-001/EVO.Iは丁度2倍の110,000円となります。

 

 

 

 

 

 

KS-RCA-001/STDのレビュー内でも触れていますが、KS-Remasta製RCAインターコネクトケーブルは、線材としては全モデル共通でBELDEN 88760という汎用の切り売りケーブルを採用しています。プラグの素性は明かされていませんが、これもずば抜けて高価なものでは無いはずです。

 

つまり、シェルリード線でも重要な差別化ポイントである、利用するハンダと仕上げの違いだけでグレード差が付いているということになります。

 

とはいえ、頭ではわかっていても外観上全く差が無いこの2つのケーブルに、本当に2倍もの価格差が感じられるほどの音の差が付いているのか、私も半信半疑で試聴していました。聴き取れない程度の差だったらどうまとめようかと考えていたのですが、幸い試聴時に録音しておいたWAVでもきちんと聴き取り可能な差がありましたので、安心して文章を書き進めることにしましょう。

 

 

 

 

 

 

こうやって写真を撮ってみると、KS-RCA-001/STDとの差を見つけるのは間違い探しのレベルです。実際にどう頑張って差を探しても、白いプレート上に記載された型番と、黒い型番ラベルに記載されている内容、そしてケーブルを束ねているバンドの色(KS-RCA-001/STDは白、KS-RCA-001/EVO.Iはクリア)しか差を見いだすことは出来ません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうやって写真を掲載していても、KS-RCA-001/STDの時に撮影したものが混ざっていないか、注意していないとわからなくなります。

 

更新: 2021/04/11
音質

KS-RCA-001/STDと傾向は近いが、確実にグレードは上がる

それでは実際に音を聴いてみましょう。

 

KS-RCA-001/STDの方にも追記しておきましたが、KS-Remasta製RCAインターコネクトケーブルには、接続方向の指定があるそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下流側に黒いラベルが来るように接続するのが推奨方向ということで、今回はその通りに接続されていることを確認して試聴を開始します。

 

 

試聴環境はKS-RCA-001/STDと同様に、Technics SL-1200G+Phasemation EA-200の間にこのケーブルを利用して、カートリッジは普段のメイン環境に合わせてaudio-technica AT-OC9/IIIを組み合わせます。比較対象のケーブルはaudioquest製Cheetahとなります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、試聴ソースも前と同じく

 

 

・「Luka / Suzanne Vega」(LP「Solituide Standing」収録)

・「L-O-V-E / Diana Krall」(LP「Turn Up The Quiet」収録)

・「New Frontier / Donald Fagen」(LP「The Nightfly」収録)

・「Monnlight Serenade / Chicago」(LP「Night And Day ~Big Band」収録)

 

 

を使います。

 

まず「Luka」を聴いてみますが、KS-RCA-001/STDと比べると、最低域の不足感が緩和していることがわかります。比較対象のCheetahと比べるとそれでもレンジはまだ少し狭いと思いますが、はっきりと出ていないという感覚は無くなりました。

 

基本的な音調はKS-RCA-001/STDと同様で、基本的には引き締まっていて硬質、押し出しや勢いが良いというものですが、それぞれの要素がKS-RCA-001/STDほど露骨な感じでは無く、強いて言うならそのような方向性という程度に収まっています。

 

一方でKS-RCA-001/STDの弱点となっていた要素は大幅に改善されていて、はっきりとしたレンジ感の不足のような印象は受けなくなりました。Cheetahと比較すると最低域は足りないようにも感じられますが、Cheetahは逆にこの部分がややブーミーであり、どちらがより正確なのかは私も判断しづらいところです。

 

次に「L-O-V-E」ですが、冒頭のピアノで左手方向の厚みやペダルを踏んでいる音など、低域方向改善したことでこれらの音が十分にリアリティを感じさせるようになりました。ピアノの右手方向は、相変わらずCheetahの方が響きが強めでKS-RCA-001/EVO.Iは打鍵感が強く出るという印象です。ダイアナ・クラールのヴォーカルは女性らしい柔らかさはCheetahの方が出ているでしょうか。KS-RCA-001/EVO.Iは少し乾いた感じがします。

 

 「Moonlight Serenade」ではKS-RCA-001/STDと同様にブラスの艶はCheetahよりもはっきりと出ます。ヴォーカルはCheetahの方がふくよかさが出ていますが、KS-RCA-001/EVO.Iの表現も悪くは無く、ソースへの忠実さはむしろこちらが勝っているかも知れません。音場はCheetahの方がまだ一回り広いでしょうか。

 

そして「New Frontier」ですが、この曲では高域方向のシャープさはKS-RCA-001/EVO.I、緻密さはCheetahという感じです。空間はやはりCheetahの方が広めですが、KS-RCA-001/EVO.Iも間接音やエコーは十分に出ています。この辺りはKS-RCA-001/STDよりも明確にグレードが上であることが表れている点でしょう。

 

 

総合的に見て、Cheetahを超えているとは思いませんが、張り合えるレベルではあるというのがKS-RCA-001/EVO.Iに対する評価となります。レベル差では無く、好みの音の方向性でどちらを選ぶか悩むという水準までは来ているでしょう。

 

繰り返しになりますがBELDEN 88760というさほど高価では無い線材からここまでの音を引き出しているというのが、KS-Remastaのノウハウの凄みでしょう。実際に同じパーツで自作してみれば、その違いが実感できるかも知れません。

  • 購入金額

    110,000円

  • 購入日

    2021年04月04日

  • 購入場所

    KS-Remasta

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