先日入手したMCカートリッジ、AT-OC9ML/IIですが、これも常用に回せるレベルの実力を持ったカートリッジであることは実感できました。ただ、そうなるとシェルリード線が定番のaudio-technica AT6101では少々物足りません。
そこで質の良いシェルリード線となると、やはり専門であるシェルリード専門工房KS-Remastaに相談するのが早いということで、久々に連絡を取ってみました。以前オーディオユニオンお茶の水アクセサリー館で行われた試聴会の話もありましたので、直接電話で相談させていただき、KS-Remasta独自の「磨き」を施した中では安価な製品ラインである、Stage1のものを中心に試聴品を貸していただくことになりました。
ただ、その中でKS-Remasta主宰の柄沢さんから、良い機会なのでリベンジさせて欲しいという提案があったのです。
以前KS-Remastaが新たに手がけるようになったRCAラインケーブルを2種類テストさせていただいたのですが、その際の私の評価が他の評論家の方などと比べて高くなかったということで、より製造法を改良したものを試聴して欲しいということでした。
前回は4グレードあるインターコネクトケーブルの内、上から2番目、3番目の製品を試したのですが、今回は最上位と2番目で、私が愛用するaudioquest Cheetahと勝負したいということでした。
率直に言えば、以前聴いた中では上位製品の方となる、KS-RCA-001/EVO.Iでも、国産メーカーの10万円クラスと比較して遜色はなかったと思います。ただ、私はケーブルに関しては良く出来た海外メーカーの方が大抵の国産メーカーよりも音楽をきちんと聴かせるものが多いと思っていて、近い価格で完成度に定評があるaudioquestを超えるのはなかなか難しいという考えがありました。
しかし試聴会で伺った話の中で、コロナ禍で外出の機会が減ったことで製造法をより追求したために、インターコネクトケーブルの音質がはっきりと向上して、そのフィードバックでシェルリード線も同一モデルでも音質が向上しているという説明があり、実際にシェルリード線(KS-LW-8100EVO.I)を同一モデルの過去製造分と最新製造分とで比較しても、明らかな進化が見られました。
そこで今回取り上げるのは以前もテストしたKS-RCA-001/EVO.Iですが、以前の音は忘れて改めてaudioquest Cheetahと比較してみることにします。
銀線のような雰囲気の濃さはないが、直接音の質が高い
改めて現物を確認するところから始めましょう。
以前のレビューでRCAプラグは詳細不明と記しましたが、その後の情報でTOMOCA製ということが判明しています。
型番を表す黒テープには金文字で「KS-Remasta KS-RCA-001/EVO.I」と記載があります。以前伺った情報で、この型番ラベルがある方が下流の機器側になるとのことです。今回はターンテーブルTechnics SL-1200GとフォノイコライザーPhasemation EA-200との間を繋ぎますので、テープ側の端子をEA-200に接続します。
試聴環境は前述の通りTechnics SL-1200G+Phasemation EA-200の間に試聴対象ケーブルを使い、カートリッジはaudio-technica AT-ART7、シェルリード線はKS-Remasta KS-Stage401EVO.II/VKを組み合わせ、以下の楽曲を聴きます。
・Babylon Sisters / Steely Dan
・Prelude No.2 in C Minor / Jacques Loussier
・Angel / Generation Radio
・サイレント・イヴ / 辛島美登里
まずは定番の「Babylon Sisters / Steely Dan」です。
Cheetahと比較して、KS-RCA-001/EVO.Iは音場の濃さでは及ばないものの、ドラムなど直接音がクッキリと鮮やかに表現されます。特にハイハットの質感が以前より格段に進歩していて、Cheetahよりも金属感が強くなっています。ドナルド・フェイゲンのヴォーカルはKS-RCA-001/EVO.Iの方がハリが強くやや若さを感じます。
続いて「Prelude No.2 in C Minor / Jacques Loussier」ですが、以前はベースの質感でCheetahの方が明確に上回っていたのですが、今回はレベル差がほぼ無くなりました。タッチはKS-RCA-001/EVO.Iの方がはっきりしていて、胴鳴りや弦の震えはCheetahの方が表現されるという具合です。直接音のKS-RCA-001/EVO.Iと間接音のCheetahという図式が見えます。
意外なことにあまりAT-ART7が得意としていないハードめのロックとなる「Angel / Generation Radio」では、中低域の豊かさで勝るCheetahの方が空間に厚みがあり、音量が大きく感じられます。ドラムやハイハットの明瞭さではKS-RCA-001/EVO.Iが勝り、ギターやベースの質感でCheetahが勝ります。
一方で「サイレント・イヴ / 辛島美登里」は辛島美登里の声の強さはKS-RCA-001/EVO.Iが優位に立ちました。エコーは以前ほど差は感じませんが、それでもCheetahの方がやや豊かでしょうか。ピアノの音はKS-RCA-001/EVO.Iがややソリッド感があり、Cheetahの方がまろやかに感じられます。
以前もレベル差がそれほどあるわけではないと書きましたが、確かにKS-RCA-001/EVO.Iが以前よりも大きく進歩していることがわかります。完全に音色の差でどちらが好みかという次元の勝負となっています。
SL-1200G本来の音という意味では、むしろKS-RCA-001/EVO.Iの方がが正解に近いのではないかという気がしました。ただ、Cheetahが持つ個性がSL-1200Gにアナログらしい厚みを付加している結果として、Cheetahがウェルバランスに感じられるという程度の話ではないかと思います。
以前も書きましたが、KS-RCA-001/EVO.Iに使われている部材はTOMOCA製のプラグとBELDEN 88760というありふれた線材です。しかもシリーズの4モデル全てこれは同様なのです。ごく普通に入手できる部材を使ってここまでの音に仕上げるところが匠の技なのでしょう。
一度私が同じ部材を揃えて同じようなケーブルを作ってみると、このケーブルの凄さが実感できそうな気がします。
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購入金額
110,000円
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購入日
2023年09月27日
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購入場所
シェルリード専門工房 KS-Remasta
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