またかよと皆様から顰蹙を買いそうな"サテン"ネタです....w (備忘録として登録...)
SATIN(サテン)MCカートリッジ M-18BX 当時価格 ¥42,000 1.5mV (1975)
特徴は交換針のベリリウムカンチレバーです と言っても今回の品物はレコード針は付属していませんで本体だけでした 画像右の前面エッジが破損してました 理由は不明ですがかなりな衝撃が掛かっているのかも知れませんね 如何したらこういう状態になるのか不思議です。
画像で針受けのアマーチュアが左にずれています この時点で内部機構がロックしてるんじゃないかと思いました サテンのカートリッジは発電コイルに薄く塗布されているグリスが硬くなるのが多いのです で冬になると音が歪む。コイルはLR共断線していませんでした 交換針は無いのでM-117の針を付けてみました
M-18BX とM-117の交換針の(音質は抜きにして)形状互換性は有りました 取り付け可能です。 ですが今回のM-18BXは音が出ません 出ないというかよく聴くと(MCトランス経由して)左側から小さい音が出ました 右は更に小さい音 殆ど出ません コイルに付けたグリスが固着してアーマチュアが動かないものと思いました カートリッジ全体をポリ袋に入れてアルコールで浸してみました 2日ほど経ってから取り出しシェルに取り付け、M-117の交換針を取り付けて音出しをしました 色々やっているうちに右側が断線で全く音が出なくなりました 左だけMCヘッドアンプを通して音がなんとなく出ました 正常な状態の音質ではないのですが一応WAVE録音をしました 音の素性の良さは判りました。
(M-18BXは出力1.5mVなのでMC昇圧トランス介さなくても音量はやや低いですが普通に出ます)
カタログから...
"M-18BXの内部構造は他の18シリーズと、僅かに異なっています。この僅かは大さな違いであり、他の18シリーズのボディーにM-18BXの交換針18-NBXを装備しても、M-18BXとはなりま
せん。M-18BXは全体として一つのバランスの完全な究極として成立するものであり、完全なる別機種" と書かれています
特徴は①交換針にベリリウム銅カンチレバー採用です ②出力電圧が低い、と言うことは発電コイルの巻き数を少なくしてコイル可動を高域まで追従可能としています(発電コイルが軽いので)高音まで追従できるわけです ③結果として高域まで周波数特性がフラットになり針先可動のコンプライアンスも良くなる コイルは細いアルミ線を亜鉛でメッキし絶縁しています 高度な技術です
右が出ないので殻割をしてみようとしました M-18BX内部がどうなっているのか知りたかったのもあります 元々、正常に動作しないのが判っていたのでM-117と如何違うのか知りたかったし、再生できないなら殻割りも覚悟してました その通りになりましたが。
殻割りは結構大変でした M-117は割と簡単でしたがM-18BXは剥がれないのでマイナスドライバーでこじ開けました キャビネットもM-117とは違っていてガチガチです 接着剤もかなり塗られているのも有りますがキャビネットも厚くて硬いです M-117は玉子の殻みたいでしたが、M-18BXは金属部にベターと付いていて難儀しました このキャビナットの構造も音に寄与していると思います。
キャビが厚みがあり接着剤も盛ってあって共振しないようになっているようです 前部は特に硬くて剥がれません。
フロント
--------------------------------------------輸送状態----------------------------------------
段ボール紙にビニール線を通してカートリッジを固定しています 通販業者が良く使う方法です
--------------------------------------------------第二部-------------------------------------------
内部を観てみます
メラミン?樹脂シャーシーにマグネットコアを載せています
コイルは導通していましたが、正常時でも鈴虫の羽のように微小に振動するくらいでハッキリ動くわけではないのです 何かに当たっているとレコード針の振動がコイルに伝わらず電圧が出ないようです 凄く繊細です。
コイルの下側が白くなってますがグリスが付いている場所です マグネットのギャップのグリスですが工場でコイルの制動目的で付けたものです ダンパーが無いのでその代わりです このグリスは初期は柔らかいものでしたが40年も経つと固着します 寒い時に音がビリつくのはこれが原因と思われます マグネットが寒さでギャップが狭くなるのも関係するかもしれません 部屋を暖めれば良いようですが アルコールでもグリスは取れないようです。
↓フロント中央に支柱が有って左右にコイルを設置 コイル中央下をベリリウム銅ステーで支柱に繋ぎ支持しています 支柱の上部に見えるアーマチュアとコイル枠、ステーはベリリウム銅で一体成型
になっています コイル枠内にコイルを嵌め込み其処からでた信号線を後部の出力ピンに接続します
絶縁で亜鉛メッキされた極細アルミ線ですが普通は半田付け出来ないはずですが特別な処理かアルミ用半田を使用しているのかな? よく判りません....
富士山型の部分とコイルのフレーム部分、コイルの下部などはベリリウム銅で一体成型です フォトエッチング加工なんでしょうけど 精度が高いです 40年前ですからね凄いですよ
コイルの間にはギャップがありマグネットのギャップです(磁束が通過してます)
左右にムービングコイルが在って細いアルミ線でコイルが巻いてあるのです 三角の溝でレコード針を受けてレコード溝の振動をコイルに伝え、マグネット溝でコイルが振動し磁束を切って起電します
中央の銅版と菱形の構造は一体成型でベリリウム銅です コイルは嵌め込みです 富士山型の
頂上にレコード針のカンチレバーが載り、レコード再生時の振動でコイルが振動し発電します
富士山型アーマチュアでレコード針のカンチレバーを受けます 針の振動で左右のコイルが動きマグネットからの磁束を切りコイルで発電し、コイルに繋がっているリード線が端子に接続されているので電圧がアンプに出力されます 現代から見ればローテクですが40年前のハイテク技術です。
マグネット部は寸法も同じみたいで、違いは白いベース部分だけです 重量は両者8グラムです
2つのカートリッジの内部形状を見るとM-117はM-18の廉価品という事も可能ですね どれ位の数量が出荷されたのか不明ですが大量生産で、しかも顕微鏡見ながら手作りで作っていたとは驚きです
M-18BX M-117
マグネット磁力の強さは我流ドライバー簡易チェック?では両者同一の様です
結果
M-117,M-18BXの違いはケース厚、ベース形状、ケースの接着方法、可動コイル巻数、カンチレバー、針形状ということになりますね アーマチュアも若干違うようです。
此れだけのカートリッジは再び造れるとは思いません 京都SATIN社の製造技術には感嘆します 試行錯誤の結晶がこれらのカートリッジだと思います ありがとう SATIN...
ベリリウム銅
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A0%E9%8A%85
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購入金額
0円
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購入日
2016年頃
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購入場所
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