Every Pad Proはヤマダ電機とDellが共同開発し、姉妹機と言えるDell Venue 8 Proの公衆無線機能を3GからLTE対応にグレードアップした8インチの液晶画面を持つWindowsタブレットだ。
同様のスペックを持つ8インチタブレットはここしばらくの間に驚くほど多くのモデルが発表、発売されたが依然としてLTE+SIMフリーという端末は選択肢に乏しいのが現状だ、それ故多くの方が気になる端末として心に留め置いているのではないだろうか。
動作上の速度やセットアップといった部分については多くのレビュワー、ライターの方々が詳細に書かれている為、本レビューではかゆい所に手が届く様なちょっとした部分、筆者個人が使用するに当たり気になった部分を中心に取り上げていきたいと思う。
■本体概要
チャーム呼び出し→PC設定の変更→PCとデバイス→PC情報 から参照できる本体の概要。
製品名 Dell Venue 8 Pro (5830)
プロセッサ Intel(R) Atom(TM) CPU Z3775D @ 1.49GHz 1.50 GHz
実装RAM 2.00 GB(1.89 GB 使用可能)
システムの種類 32 ビット オペレーティングシステム、x64 ベース プロセッサ
ペンとタッチ 10 タッチ ポイントでのペンと Windows タッチのフルサポート
となっている。
ここから見えてくるのは、冒頭でも触れたDell Venue 8 Proとの姉妹関係と、OSそのもののフットプリントの小ささだ。
外観上の違いは背面にプリントされたEvery Pad Pro BY YAMADAのロゴプリントぐらいで、その他の違いは全く無いと言って良いのだが、それがここでもハッキリと書かれている格好だ。
本体を縦向きに保持した時、上端右にWindowsボタン、右端上部に上から順にMicro USBポート(USB2.0)、電源ボタン、ボリュームUP、DOWNボタンがあり、右端下部にはカバーに覆われたMicro SIMカードスロット、Micro SDXCカードスロット(64GBまで対応)、下端右にスピーカーと筐体デザインはVenue 8 Proと全く同一、背面のロゴが無ければ違いを見分けるのは難しい。
違いはSIMフリーの対応範囲が3Gなのか、3G+LTEなのかの違いしか無いと言って良いだろう。
初期導入時のOS、Windows8.1 Update1 はメモリ搭載量の限られた小型端末でも快適に動作するべく、コンパクトになり使用しているメモリ量からもその効果が見て取れる。
CPUそのものの持つパワーに限界はあるが、軽作業ならば問題なくこなせるし、そもそもこういったタブレット端末での運用スタイルにおいて過度な期待はすべきでは無い。
参考までに筆者が想定する範囲において、本機にとって重たい作業になるであろう「艦隊これくしょん ~艦これ~」を動かしてみたが、wifi環境下においては戦闘時にやや動きが緩慢になるものの、おおむね動作するといった印象だ。
■プリインストールされたOffice Home & Business 2013
本機にはあらかじめOfficeがプリインストールされており、しかもそのエディションはHome & Businessである。個人用途以外に商用にも用いることが出来るため、外出先でのちょっとした空き時間や移動時等にも編集作業を行う事が可能である。自前の端末として職場に持ち込んでもOne Driveにデータを置いておけばUSBメモリ等を使用せずに閲覧、編集が出来るためセキュリティの観点からも安心出来る。
また、個別にパッケージ版を購入した場合、その価格はおおむね25000円~35000円程度となり本体価格にこれが含まれていると考えれば大変お得だ。
普段からエクセル、ワードといったアプリケーションを使用している方なら十分に魅力的であろう。
これは筆者の環境のみで起こった偶発的な不具合かもしれないが、初回起動時、同梱されたシリアルナンバーを用いて製品の最終インストールが行われるが、筆者の環境ではインストールが正常に終了せず、繰り返しシリアルナンバーを要求される状態となった。
調べてみると、他にレビューを書かれている方も同様の症状に見舞われた方がおり、これはどうも筆者の環境のみで起こっている問題ではなく、プリインストール版が持つ問題の様だ。
シリアルナンバーが印字されたカードが封入されているパッケージには、インストール時に問題があればこのページから再インストールが可能である旨が示されていた。
プリインストールされたOfficeをアンインストールし、再インストール手順が書かれたページに従いダウンロード→インストールと進むことで今度は無事にインストールを完了することが出来た。
この製品を手にするユーザーが必ずしもこういった問題に冷静に対処出来るとは言えない、せっかくのプリインストールもこれではつまらない事で魅力を落とすことになる、是非とも改善を望みたい所だ。
もっとも今後はプリインストール環境から、先日発表されたサブスクリプション版Officeに入れ替わっていくと見られ、こうした問題は少なくなっていくのかもしれない。
それ以外にプリインストールされているアプリケーションはヤマダ電機のIP電話アプリ、Dell製のバックアップユーティリティが導入されている程度で、ほぼ素の状態のWindows8.1 Update1と言って良い。
本体ストレージはeMMC64GBとなっていて、初期時の空き容量は50GB弱である点を踏まえても余計なアプリケーションが無い事は運用上の面から見ても好印象だ。
■実際に使用した上で
これから書く事は、すべて筆者の環境下で起こった事であり、全ての個体について同様の挙動を示すかは断言できない為、あくまでも一意見として受け取っていただければ幸いに思う。
・タッチパネルインターフェイスとWindowsの操作性には改善の余地あり
Windows起動時のログイン時にソフトウェアキーボードがまれに非表示になり再度表示される時もあれば、表示されない時もある。 これはハードウェアとしての問題というよりもWindows8.1のタッチインターフェイスに向けた最適化の途上故起こっている問題であるように見受けられる。
同様にソフトウェアキーボードを英字から数字に表示切り替えした時にも、同様に切り替えが解除されたり、英字、数字が繰り返し切り替えられたりする症状が出た。
これは、モダンUIと呼ばれるタイル状のスタート画面、クラシカルなデスクトップのいずれでも起こった問題だ。
こういった細かい部分でのインターフェイス上の不具合は、今後使用していく中でまだまだ出てくると思われる。 かなり完成度の高まっている状態ではあるが、まだまだ改善の余地は残されているようだ。 今後のドライバによる改善等で解消される部分も多くあると見られるので、積極的な更新を望みたい。
・動作時の発熱はやや気になるレベル
本体を縦に保持した時、右手で支える部分が主に発熱するのだが、本機にとって特に重たい作業をさせた時、この部分がかなりの熱を持つ。
明確に「熱い」と感じるほどの発熱で、少々心配になるレベルだ。
逆に、重たい作業をさせなければ「暖かい」といったレベルで、確かに発熱を感じるが持っていられない程という訳でも無い。
常用時にここまで発熱する機会は中々無いと思うが、気になるポイントではある。
・暗号化は本当に必要なのか
本機は標準でCドライブに暗号化が施されている。 これは言うまでもなく高度にパーソナライズされた端末である為に施されたセキュリティ上の対策と言えるのだろう。
(実際にはマイクロソフトアカウントに紐付けられたアカウントでログインした初回起動時に自動的に暗号化が有効になるようだ)
このクラスのタブレット端末に与えられたCPUパワーは限られており、安全性を重視して快適性を犠牲にしているとも言える。
だが、先にも書いたように本機の様なデバイスは立ち位置としては極めて携帯電話の様なデバイスに近く、複数のユーザーが使う状況は考えにくい。
仮にあったとしても家族や友人に一時的に貸与するといった使い方になるだろう。
こうしたシチュエーションでは個人のプライバシーを侵害されるほどの状況は考えにくい。
気になる方は他のレビュワーの方や、個人でブログなどに使用状況を書かれている方がおられるので調べてみると良いと思うが、暗号化をオンにしている状態と、オフにしている状態ではストレージの速度にかなりの差が見られる。
実使用においては体感出来るほどの悪影響では無いと言えるが、誤差の範囲と目をつぶれる程度の数字の開きというわけでも無い。
ここにCPUパワーを使うのであれば、そもそも第三者がWindowsにログイン出来ない様にログイン時のパスワードを工夫する方が良いのでは無いかと感じた。
・デスクトップPCとの設定共有
マイクロソフトアカウントに紐付けられたアカウントでWindowsにログインすると、最後に設定したデスクトップ周りの設定が他のデバイスにも影響を与える。
筆者はデスクトップPCでは少しでも多くモニタの縦解像度を使いたいと考えている為、デスクトップPCではタスクバーを自動的に隠す設定を使用している。
これが本機に適応された場合、マウスが無いとタスクバーを明示的に呼び出す事が出来ない。
共通の設定で運用できる向きには手間が無く便利であると言えるが、デスクトップPCとタブレット端末で個別に設定をしたい筆者のような運用スタイルには不向きだ。
この設定を個別に行う項目はきちんと用意されている。
デスクトップ設定の共有(Windows8.1では同期と呼ばれているようだ)はOnedriveの設定とひとくくりにされている。
チャーム→設定→PC設定の変更→OneDrive→同期の設定
と進むと、設定をOnedriveと同期する、という画面で各種の設定を行う事が出来る。
筆者の場合はデスクトップの個人設定をオフに設定した所、タスクバーの挙動を切り離す事が出来、事なきを得た。
この設定はデフォルトでオンになっており、意識せず同期が行われた。
同期をすることが出来る環境があった場合、設定を同期するか否かを選択肢として表示する心配りがあればユーザビリティの向上として好意的に受け入れられたので無いかと感じる。
■出来なかった事が出来た時のワクワク感
筆者はスマートフォンとしてiPhone6Plusを使用しているが、業務形態の関係上外出することが極めて少なく、LTE通信を行う事がほとんど無い。
その為データ通信の契約を2段階制契約としており、外出時はデータ通信をオフにして使用していたが、外出時にデータ通信をしたい局面も当然発生する。
そういった時は公衆無線LANを使用する事にしていたのだが、本機の特徴であるLTE対応SIMフリーを試すべくOCNモバイルONEのマイクロSIMタイプを導入してみた。
本機はCONNECTED STANDBY(Instant GOと呼ばれているが内部的にはCONNECTED STANDBYと表記されている部分があるため、本レビューではCONNECTED STANDBYとしている)に対応している。
多くのレビューや記事でも取り上げられている為、詳細は省くが、大雑把に書けばWindowsを携帯電話の様にスリープ状態でも通信、通知をすることで機能性を高めようという仕組みだ。
携帯電話では当たり前に感じている事だが、スリープ状態でもiPhone6Plusとの接続は維持され、電波状態さえ確保できればきちんと通信を行う事が出来る。
数年前であれば、たとえWiMAXの様な無線通信をサポートしたノートPCであっても出来なかった事が当たり前に出来る、これは出来てしまえば当たり前になってしまう事だが、すごい事だ。
これまでiPhoneの運用スタイル上我慢していた所を、通信容量の範囲ではあるがあれこれやってみようと考える様になる。
導入してからの日数が短い為、詳細な使用状況は別記事としたいと思うが、何が出来るのだろうと考える時のワクワク感は言葉に出来ない喜びだと改めて感じる次第である。
■何でも出来る訳じゃ無い
実際に持ち運び、使用して感じる事は、格安SIMとの組み合わせも含めて「何でも出来る様になる」訳では無い、という事だ。
数百グラムの重量、8インチという限られたフットプリントにWindowsが完全な形で動作する環境が詰め込まれている事から考えても仕方ない所だ。
だが、確実に「手の届く範囲は広がった」と感じた。
iPhoneでは運用上出来なかった事、持ち運べるWindows端末があるから考えられる事、外出時の暇つぶし程度ではとうてい収まらない様々な運用方法が考えられるだろう。
今考えつく範囲では、操作性の向上やOne Noteでの手書きメモの為にスタイラスペンの導入、外出時のテキスト操作の為にBlueToothキーボードの導入を考えている。
デジタル一眼を持って外出した時のために、Micro SDXCメモリカードを追加してストレージを強化するのも良さそうだ。
導入して数週間でこれだけの事が考えつく、これから使用していけば出来る事、出来ない事の判断が更に進みもっとスマートな運用スタイルも考えつくだろう。
こうして新しい環境を育てていくのも新しいデバイスを持つ事で得られる楽しい体験だ。
今後、本機を運用する上で重要であろうデバイスを導入した際には、追記をさせていただく事があるかもしれないが、ひとまずここで本レビューは締めとさせていただこうと思う。
購入を検討されている方や、本機が気になっている方の助けになればと願う次第である。
MicroHDMIポートがあれば尚良かった。
Officeプリインストール機なのでEXCELを使用する時や、自宅で落ち着いて使う際にサブモニタを使用したくなる。 外部モニタを使うにはメモリ不足なのだろうが外部出力としてMicro HDMIポートがあればと感じた。
飛び抜けて悪い所も無く、無難にまとまった印象。
本文でも触れているが、Dell Venue 8 Proとの差は無いに等しい。 目新しい印象は無いが、すっきりとまとまった印象である。
Every Pad Proのロゴが自己主張強し、と感じる向きもあるかもしれない。
本体右下付近の発熱が気になるが、それ以外は満足度高し。
運用スタイルを考える、環境を育てる、いずれの意味でも可能性を秘めている。
重たい作業を連続した場合、発熱は気になるレベルだが、それを考慮しても実用性は高い。
手触り、ホールド感、タッチパネルの感度など、上々の仕上がり。
本体背面のDELLロゴを中心に同心円状に凹凸が細かく施されており、樹脂素材の手触りも相まってホールド感は良い。
タッチパネルも必要十分な感度を確保しており、ともすれば敏感とも取れる。
使用感は総じて高い。
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購入金額
53,784円
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購入日
2015年01月29日
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購入場所
ツクモEx
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