現在の楽器やDTMの分野では信号のやり取りはMIDIでほぼ統一されている。
MIDI、Musical Instrument Digital Interfaceはもともと同期演奏やシーケンサーによる音源のコントロールのために策定された楽器間の通信規格だったが、その同期の仕組み(強弱や音の発音開始と停止、変調の具合などが送信できるよう定義されている)と(今の感覚から言うと太くてごついが)単純でタフな接続ケーブルの構造などから照明コントロールなどにも応用されている。
専用のシーケンサーであれば当然MIDI端子を備えるが、PCでMIDI機器を制御するためにはPC側にMIDI端子を備える必要がある。
DTM黎明期、当時の国民標準機だったNEC PC-9801シリーズ向けにRolandから「ミュージくん/ミュージ郎」という、シーケンサーソフトと音源モジュールのセット販売がされた際は、98の拡張ボードであるCバス向けのMIDIインターフェースが同梱されていた。その後DOS/V機が勢力を伸ばすにつれISAバス用の製品も発売されたが、いずれも「PCに拡張ボードを積んでMIDI端子を実装する」手法。要するにシリアルポート増設などの手順となんら変わらなかった。
それがUSBという規格によって一変する。
PCとはUSBで接続し、変換ボックスでMIDIに変換し楽器とつなぐ、という手法。
本品はその変換ボックス。
PCのUSBの出力をMIDIに出力する、MIDI機器からの入力をUSBでPCに渡す、というもの(バスパワー動作なのでUSBケーブルは電源を兼ねる)。MIDI端子は4チャンネル分だが、4台併用できるため、その場合MIDI規格上限の16チャンネルが制御できる。コンサート/ライヴなどでの使用も考えた、ヘビーデューティーな金属製ボディとゴツイフォルムで、端子類以外は作動確認のインジケータのみ、というそっけなさだが、必要にして十分であり、RolandがDTMの広がりにあわせてこの分野の商品群を、いわゆるステージ楽器類/電子ピアノなどに用いるRolandから“EDIROL(Roland ED)”として分離させた際も(2013年現在EDIROL(Roland ED)ブランドはRolandに再統合されている)、「UM-4」と名前とカラー(EDIROL(Roland ED)ブランドのホワイト系)の変更のみで継続販売された。
完成形といえる枯れた商品です。
【仕様】
入出力端子:MIDI INPUT/4PORT(フロント×1、リア×3)、MIDI OUTPUT/4PORT(フロント×1、リア×3)、USB端子×1
インジケーター:9/USB(赤)、MIDI IN 1~4(赤)、MIDI OUT 1~4(緑)
外形寸法:218(W)×100(D)×46(H)mm、1Uハーフラックサイズ
消費電流:150mA(動作時)
対応OS:Windows98以降、MacOS8.5以降/X以降
ドライバはUM-4と共通で、以下のOS用のドライバあり
Windows XP / Windows 2000、Windows 98 / Windows Me、Mac OS X
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購入金額
2,200円
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購入日
2006年06月08日
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購入場所
Yahooオークション
Schrödingers Katzeさん
2013/05/17
その辺りには一般の人が外部音源モジュールを買うことも少なくなったんじゃないかと。
「楽器」をPCの音源として使っていた人もソフトウェア音源に移行したりと、現実にMIDIケーブルを介して制御を行う必然性自体が減ったように思います。
一時期は、音源モジュール側にもシリアルポートがあったり(これも、レガシデバイスとして、PCから消えていっていますが)したこともあったのですけども。
Rolandのセット品も88Pro辺りは、確かインターフェイスではなくシリアルケーブルだったような気がします。
cybercatさん
2013/05/18
>「楽器」をPCの音源として使っていた人もソフトウェア音源に移行したりと、現実にMIDIケーブルを介して制御を行う必然性自体が減ったように思います。
そうですね。ソフトウェアシンセやシミュレーターの進化とそれを実現するPC側の高性能化でホンモノらしい音は簡単に手に入るようになりましたから。
でもホンモノを識っていると例えばmoog
...それとも今後さらにシミュレート技術と演算力が高度化するとそれすらも再現してしまう時代も来るのでしょうか。
Schrödingers Katzeさん
2013/05/18
逆に本当に「制御」のために必要としているところでは生きているので、まだインターフェイスが動くように製品が出ているんじゃないかと。
個人用の外部音源モジュールの進化は、そのサウンドフォントの品質と、量にあったので、ソフトウェア的にもっとそれらがフレキシブルになってしまえば、ROMで固定されるそれは存在意義が薄れてしまっていくのですよね。
FM音源や、LA音源などもアルゴリズムとパラメータ、それに付随するデータが多くを占めますので差異が出るとすれば、足回りのほうの処理でしょうし、裏を返せば、「設計から出るべき生の音ではなかった」部分が問題になってしまってるようにも思います。
ただ、これらのデジタルシンセサイザは作るため以外に、「与えたデータによる再生の再現性が高い」所も当時としては重要だったわけですから、そういう用法、目的では、やはり、取って代わられる運命にあったのかもしれないです。
アナログシンセサイザでシミュレートすれば、外的要因を計算に含めていく形になるのではないでしょうかね。
「音作りの」現場ではそういう意味ではまだMIDIは制御系に生きていくのかもしれませんし、SMFなどのファイルフォーマットは、Vacaloidの演奏データの根底にあったりと、延長線上の技術は今でも生きているのですけどね。
cybercatさん
2013/05/18
そうですね。ライヴなどで場所的な問題やキータッチの問題でマスターキーボードで音源をコントロールしたいというニーズはまだありますが(それでもサンプラーやシミュレータの発展で「この音はこの機材でなければ!」というものが減ってきましたが)、PCとともに使うというシーンでは一般的にはSC-55/88などの音源コントロールがメイン。
GMやその拡張版であるXGはサンプラーやデジタルデータの扱いが一般化する前に、どの機器を使っても制作者が意図した音色(に近い音)で再現できるというのが狙いというのが一番のポイントでしたから、それがソフト的にできるようになればわざわざ外出しする必要がないわけです。