なぜダブルブランドという形での販売になったのか?というと、もともと、PS/55noteというのは、IBM製のPCと言っても、日本独自の製品でした。あくまで、ワールドワイドで展開していたのは、PS/2ブランドでした。
しかし、C52を発表する際、PS/55noteを世界的に売ろうとする流れ起き、イメージ変化のため、ブランドも新しく作ろうという事になった結果が「ThinkPad」という訳です。ThinkPadの名前の由来となったのは、IBMの社員が持っているメモパッドのニックネームから来ているとされています。
C52は、国内ではPS/55noteとして発売されましたが、国外ではThinkPad 700Cとして発売されました。その高性能の為、多くの賞を受賞し、多くのユーザーの賞賛を浴びました。この700Cの成功が、日本IBMが、IBMのノートPCを開発・製造を任される上での大きな礎になったとされています。
このマシンは、当時A4サイズのノートPCでは考えられなかった、10.4インチのTFTカラー液晶を搭載しています。10.4インチというと、今ではモバイルPCの液晶ですが、当時はノート用としては大型なディスプレイだったのです。
開発者はインタビューで、「A4用紙に液晶パネルを置くと簡単に納まるが、実際に組み込むのは非常に苦しかった」と語っています。今でこそLEDバックライトが普及していますが、当時は蛍光管だけでも、8mmの太さがあり、しかもそれを2本並べる必要があったそうです。このC23Vでは、液晶部分だけで20mm近い厚さがあります。
また、この液晶は、低反射処理が行われていない為、最近のツルテカ液晶ほどではありませんが、結構映り込みがあります。
この辺りのエピソードは、All about ThinkPadという本に詳しく書かれています。
このマシンと、ハイエンドであるC52はほぼ同じ液晶パネルを採用していて、外観上も似ている部分が多くありますが、同時に大きく違う部分もたくさんあります。
一つ目は、トラックポイントの有無です。C52には、ThinkPadでは始めてとなるトラックポイントが採用されていますが、C23V・M23Vでは採用されていません。
また、FDD、HDD等の配置もかなり違います。C23Vでは左右にFDDとHDD、バッテリーを分けていますが、C52では、後のThinkPadの標準的な配置となる、前面に全てを持ってきています。
ただ、C23Vにしかない物もあります。それはPCカードスロットです。C23Vでは1枚のPCカードが装着できるようになっていますが、C52では装着する事ができません。これは、PS/55noteが(ThinkPadに入ってからも数モデル存在)、IBM独自のアーキテクチャ、MCA(マイクロ・チャネル・アーキテクチャ)を採用し、本体背面にあるMCAバスによる拡張を踏襲している為、PCカードは不要となったのだと思います。C23Vは、PCカード+ATバスによって同じような拡張が可能です。
また、多分どちらの機種にも存在し、今のPCにはない機能として、デスクトップ用のキーボードと同じ様な折りたたみ式の脚が付いているという事があります。初代のPS/55noteでは自分で脚を出す必要があったそうですが、後に改良さればねの力によって、少しずらすだけで脚がでるようになっています。この脚によってキーボードに傾斜が付き、タイプがしやすくなるという事です。
自分がメインで使っているThinkPad 600Xでも、セレクタベースを付ける事でキーボードに傾斜を付ける事ができます。また、ThinkPad 760という機種ではキーボードのみがチルトアップできるようになっています。これは、前面にCDドライブを配置している為、本体が傾くとディスクの入れ替えができなくなるためらしいですが、剛性がイマイチらしく、キータッチはあまり良くないという事です。600シリーズでは、傾斜をつけた状態でもディスクの入れ替えができるようになっています。
MCAというのは、後のPCIと同じようなコンセプトであったそうですが、IBMの独自規格であったため、普及せずに終わり、ThinkPadもATバスへ移行する事になります。
このC23Vは、CPUにi386SX 25MHz、メモリは2MB(最大10MB)、HDD 80MB、10.4インチVGAカラー液晶搭載というスペックを持っていました。HDDはEPSONのPC-386NOTEと同じ様にパック式を採用し、脱着が容易にできるようになっています。これをA4ジャストサイズ・3.4Kgの重量に収めているのです。
参考までにですが、当時のハイエンド機、C52はCPUにIBM486SLC 25MHz(i386ピン互換CPU)を搭載、メモリは4MB(最大16MB)、HDDはパック式の120MBでした。CPUは内部2倍速である、IBM486SLC2 50MHzへアップグレードでき、i387SL 25MHz数値演算プロセッサもオプションで提供されていました。
C23Vと、C52の価格差はおよそ10万円から30万円でした。普及機という位置付けのC23Vですが、それでも69万円という価格で、最高グレードのC52は100万円近い値段になってしまっています。ちなみに、モノクロ液晶搭載のC23Vの廉価版、M23Vはおよそ40万円です。A4サイズのコンピュータというのが、いかに高価であったかというのが良く分かりますね。
また、バッテリーの種類も違います。C23V・M23VはNiCdですが、C52はNiMHを使用しています。これにより、C23Vの大型バッテリーと比べて小型のバッテリーでも2時間という長時間の動作を実現しています。ちなみに、モノクロ液晶のM23Vは3時間の動作が可能とされています。
ところで、自分が入手したこのマシンは、通電はする物の、液晶が全く映らず、HDDのヒュイーンという轟音は聞こえるものの、何が起こっているのか分からない状態でした。それでも、通電すらしないレノボ売却直前の時期の機体が存在する中、18年の年月を経て、通電するだけでもすごいと思います。一応、CapsLockや、NumLockを押すとLEDが反応してくれますし、FDを入れているとちゃんと読みに行ってくれます。
始めは、電源スイッチを押してもランプが一瞬付くだけでしたが、バッテリーを外してみると、電源が入ってくれました。また、専用っぽいケースが付属してきたので、また別で登録します。
HDDの回転音しかしないC23Vを眺めていて、良く分からない感動をしました。どのような事かというと、同じ時期に出たThinkPad 700Cを開発された方というのは、恐らく今でも現役でThinkPadを開発(X300の頃は確実)されています。自分が生まれた頃から、今までにかけて、ずっと現役でずっと同じ物を開発しているのです。その一番始めに位置する(PS/55noteはあえて含まない)このPCを見ていて、生まれた時にはもうそんなすごい人達がいたんだなと感動したのです。もちろん、分厚い筐体ではあるものの今と基本的に変わらないデザインも、すごいと思いました。
さて、動いてくれないこのPCですが、どうしましょう。とりあえず実家に持って帰って、ほぼ同じ時期のPC、EPSON PC-386NOTEとのツーショットは絶対ですねw
あと、この文章は気分的に535Eで書きましたが、古いと思っていた535Eが、新しく見えてしまうほどの出来事でした。
2012/05/30
カメラ新調に伴い、一部写真を置き換えました。
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購入金額
2,500円
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購入日
2011年02月05日
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購入場所
ヤフーオークション
リンさん
2011/02/14
写真を見ていてもレトロ感がありますね><
>2011年02月05日
これ最近買ったの!?
この前言っていたワクワクドキドキの奴はこいつですか><
普段のレビューがプレミアムレビュー並みの内容でビックリしたリンでした☆
復活待ってましたよ~☆
名湯さん
2011/02/14
古いマシンと、新しいマシンを並べてみると、当時の苦労というものがそれとなく分かって面白いです。これでも、当時は最先端だったのだと。
これは、最近買った物で、こないだちょろっと話していたやつです。すぐに載せるつもりが、ずるずると延びてしまいました。。。
オークションで21円で買って、送料等で2500円というわけですw
リンさん
2011/02/14
ぉぃw
吹いて驚いちゃいましたよ(笑)
名湯さんのIBMにかける心にCool!^^
bibirikotetuさん
2011/02/14
同じことしているなぁ(笑)
同じ年の物って感慨が深いよねぇ^-^
南部町さん
2011/02/14
名湯さん
2011/02/14
世の中には、海外から1万円ぐらい送料をかけてThinkPadを買う人もいるので、自分なんてまだまだ…と思いつつも、普通に考えて変ですねw
名湯さん
2011/02/14
最近、旧車も、古いPCも同じように感じるようになりました。
新しいものもいいと思いますが、古いものも見ていて楽しめると思います。動きでもしたら、もっと楽しめますしね。
名湯さん
2011/02/14
自分でも何やってるんだろうと思いましたが、届いてからは何も感じないようになりました。
ぽんさん
2012/02/24
実機は触ったことなかったんですけどね。^^;;;
名湯さん
2012/02/24
この時代のThinkPadを触ると、大抵、剥げた塗装によって手が黒くなってしまいますf^_^;
konbu_chaさん
2012/05/30
私が初めて買ったパソコンです。
ただ型式は違ってたと思います。
液晶がモノクロ16階調でしたから。
CPUをCyrixの486互換チップに換装して、コプロセッサの80387も実装して使ってました。
懐かしいなぁ。
名湯さん
2012/05/30
最近は、小さいノートパソコンが3万円もあれば買えてしまいますが、こういう時代のパソコンを見ていると、すごい事だな、と実感しますね。