レビューメディア「ジグソー」

水冷にも相性抜群 間違いなく冷えるケース

HAF932は23cmファンを3つ搭載し抜群のエアフローが確保できる完成度の高いケースです。
最近のハイエンドGPUはひとつで290W近い最大消費電力に達しているため、これらのGPUを搭載したPCではケース内部の温度が非常に高くなります。
GPU コア部分のみではなく、グラフィックカード基盤そのものも60度以上に達する場合があり、CPU以上の高熱源となっていますが、GPUはCPUに比べ冷却するためのスペースがとても狭く廃熱を逃がしにくい場所にあるため、CPU以上にケースのエアフローに頼る必要があります。
そのため、PCそのものを長時間安定して起動させるには、ケース内部のエアフローを確保し、ケース内温度を下げる必要が出てきます。
HAF 932はケースの基本設計の完成度が高く、エアフローにこだわった造りとなっており、随所に工夫が見られます。
水冷で使用する場合にも、とても相性が良いと思います。

..フロントパネル..
フロントパネルにはUSB2.0×2、IEEE1394×1、e-SATA×1、ヘッドフォン×1、マイク×1、を接続できるパネルがついている。

また、フロントの5インチベイのパネルはすべてメッシュになっており通気性に優れる。
さらにこのパネルは非常に取り外しがしやすい設計となっており、脱着がとても楽にできるようになっている。

フロントパネル下部には23cmが内蔵されているが、この前面にあるカバーもとても取り外しがしやすいようになっている。
このカバーを外すと少し広い空間あるので、中にほこり対策用のフィルターを敷いておくこともできるだろう。

..サイドパネル..
両サイドパネルにはハードディスクを設置する場所近辺に通風孔が開いている。

左サイドパネルには、大口径の23cmファンが取り付けられている。
ちなみに、このファンは最大750rpmで回転するようで、風量もそこそこあるように感じられる。
この23cmファンは六角ネジで止められているため、外す場合には六角レンチが別途必要になる。
23cmファンを外すと、かわりに12cmファンを4個取り付けることができるようになる。

水冷で使用する場合、この部分にmagicoolなどの12cmファンx4で冷却できる正方形タイプ480サイズラジエーターを設置することもできる。

..リアパネル..
後ろには14cmファンが標準でついている。
ちなみに、12cmファンに換装することは可能だ。
HAF932にデフォルトでついている最小のファンがこれになる。
大口径ファンにより風量を保ちつつ騒音を抑え、高いエアフローをいかに確保するか、ということを重視していことがわかる。

..天板..
トップにも23cmファンがあらかじめ取り付けられていて、熱い空気を上に逃がせるようになっている。
ちなみにこれも六角ネジが使用されている。
トップはほぼ一面メッシュとなっており、ほとんど空気の流れをさえぎるものはない。
ちなみに、23cmファンの横に、もうひとつ12cmファンを追加で取り付けることができる。
また、23cmファンを外すと12cmファンを3連で取り付けることができるため、高速ファンを取り付けることで強力な排気を行うこともできるだろう。

HAF932はケースの下部と上部のどちらかに電源を設置することができるため、天板部分には電源を設置可能な広いスペースが確保されている。
よって水冷を使用している場合は、この天板部分に12cmファンx3を使用する360サイズまでのラジエーターを設置することも可能だ。

天板の外側には、水冷用の冷却液補充口がついている。
だが、あくまでもおまけの穴なので、当然、自分で工作する必要がある。

..底面..
電源を底面に設置することができるようになっている。
ケース内部の熱い空気を吸い込むのではなく、ケース外部の空気を電源が直接取り入れることができる位置に空気取り入れ口が開いている。

電源のとなりには、12cmファンを取り付けることができるようになっており、ケース外部の冷たい空気を底面から取り込むことが可能だ。

電源を天板部分に設置するようにした場合には、底面に12cmファンを2つ設置できるようになる。

..マザーボード裏..
電源のコード類を裏配線することができるようになっている。
これによりかなりすっきりとした配線が可能になり、エアフローを妨げることがなくなる。

ちょうどCPU裏は大きく切り取られており、CPUクーラーなどの設置がしやすいような設計となっている。

..ファン..
あらかじめ23cmファン3個と14cmファン1個が付属している。

23cmファン
型番:A23030-10CB-3DN-L1
電圧:DC 12V
電流:0.40A
回転数:750rpm (ファンコン読み)
サイズ:23cm x 20cm x 3cm

23cmファンは回転数が750rpmと少ないように見えるが、そもそも大きさが23cmあり面積は12cmファンの3.6倍になる。
そのため風速は低いが、750rpmで回る12cmファン3.6個分の風量があるとも考えられる。
音に関しては、耳を近づけると、扇風機を弱で回しているときの音が聞こえる。
少し離れると、ほとんど音は聞こえない。
23cmファンを回転させるために必要な電流は0.4Aで普通のファンよりかなり多い。
そのため、ファンコンなどで回転数を調整する場合は注意が必要だ。
ファンコンを分岐ケーブルなどで複数ファンを接続している場合などは、ファンコンの出力電流がいくらなのか確認しておく必要がある。
また、KAZE MASTERなどの場合、ファンコン本体の発熱に注意する必要もあるだろう。

14cmファン
型番:A14025-10CB-3BN-F1
電圧:DC 12V
電流:0.14A
回転数:1070rpm (ファンコン読み)
サイズ:14cm x 14cm x 2.5cm

かなり静かという印象を受ける。回転数は1000rpmと低く見えるが、面積は12cmファンの1.3倍となるため、風量は1000rpmで回る12cmファンの1.3個分と考えることもできる。

..付属品..
びっくりしたのが、キャスターの足がついていたこと。
フル水冷化した場合、ケースの重量がびっくりするような重さになるので、キャスターがついているというのは実は非常にありがたい。
ハイエンドをターゲットにしている製品らしい配慮かもしれない。

電源の延長ケーブルが付属していることも特徴的だ。
裏配線などを行うと、どうしてもケーブルの長さが足りないことがある。
おそらく、エアフローを確保するという徹底した設計思想に基づいているため、裏配線によりエアフローを妨げないようにする工夫というのも、あらかじめ織り込み済みなのだろう。
ちなみに別のケース、CM690では自分で別途購入した。

さらに驚いたのが、ケース内部の型紙。
これはマザーボードのスペーサーのネジ穴位置や、裏配線用の穴の位置などが記されている。
これを使って、組み込み前にエアフローを確保できる配置の検討をしてくれ、ということなのかもしれない。
水冷を組み込む場合には、あればそこそこ便利。
型紙の上で、ポンプやリザーバーの位置を大体大まかに決めることができる。

..総評..
まさにハイエンド向けのケース。
海外通販のみで購入できるケースを除いて、現状で手軽に入手可能なケースの中ではトップクラスのケースだと思う。
ケース内部のエアフローはこれを使えばまったく問題はなくなるだろう。
ケース内部のスペースも広めで、水冷で使用する場合にもとても使いやすいようだ。

惜しむらくは、工作精度の低さ。
サイドパネルのネジ穴がずれてしまっているため、一度外すと閉めなおすのにかなりの労力が必要だ。
また、フロントパネルをあけると、思いっきり傷を入れた後が残っていて塗料が剥げていたりする。

だが、「あ、そうそう、そこをこうしてほしかったんだよ。」といえるような工夫が見られ、素直にこれは良いなと思えるケースで満足度はとても高いものがある。
  • 購入金額

    22,000円

  • 購入日

    2009年07月30日

  • 購入場所

    パソコン工房

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