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ELSAオリジナルクーラー「S.A.C.」の効果を確認してみた

数少ない国産メーカーとして根強い人気をもつ、ELSA製のビデオカードの中でも、ハイエンドなGeForce GTX780を搭載したのがこの製品となります。
(※独ELSA AGの日本法人としてスタート、後に独立)


最近はGPUメーカーのリファレンスデザインの基板を使う製品が多く、なかなか他社製品との差別化が難しい中、独自のクーラーを搭載し、冷却性能や静音性で独自性を打ち出すモデルを数多く見かけます。


この度レビューさせていただくGTX 780 S.A.Cも、S.A.Cと名付けられたELSA独自の3連装ファンによる冷却機構を搭載しており、従来のモデルと比べると冷却効果に優れる上、静音性も確保しているとのことです。
今回はGTX780のパワーの確認のほか、アイドル時と高負荷をかけた状態での騒音、発熱について確認し、S.A.Cクーラーの実力に迫ってみたいと思います。

 

 

■まずはパッケージをチェック


 

 

パッケージは同社製らしい、黒を基調にした青いアクセントのラインが入ったパッケージとなっています。
ビデオカードのパッケージは差別化を図る為か、かなりど派手なCGを使ったものも多いのですが、ELSAはシンプルなパッケージを貫いており、売り場でもすぐにELSAと解るのが良いところです。


パッケージには、日本語と静音、それに2年間保証のマークが付いています。
ビデオカードの保証期間が2年間というのは、最近代理店保証で2年というところも増えてきているように思いますが、国内メーカーの保証が2年、というのはかなり良い条件だと思います。
ビデオカードは今までの経験上VRAMチップが故障することが多く、動くんだけど画面にノイズが載るような故障が多々起こりえます。
その場合、修理に出しても基板交換となり、結局は新しいビデオカードを買った方が良いのでは…?といった金額になることも多かったりします。

 

 

パッケージの中身はマニュアル、保証書、はじめにガイド、ドライバディスク、DVI→Dsub変換コネクタとシンプルな構成になっています。
日本語のはじめにガイドとマニュアルが付属するのは、日本メーカーならではの気配りかと思います。

 

 

■コネクタはDVI×2、HDMI、DisplayPortの計4系統


 

出力端子は、下記の通りです。
デュアルリンク DVI-I × 1 (デジタル・アナログ出力対応)
デュアルリンク DVI-D × 1 (デジタル出力のみ)
DisplayPort × 1 (DisplayPort 1.2 準拠)
HDMI × 1 (HDMI 1.4 準拠)

 

 

今回はWQHD解像度の液晶を使うため、1.3までのHDMIでは解像度が足りませんが、ELSA GTX780 S.A.C.はHDMIも1.4に対応していますので、3840×2160、4096×2160の解像度での使用が可能です。
旧来のGeForceシリーズは同時に使えるモニターは2台までという制約がある製品が多かったのですが、GTX780はすべての端子に同時にモニターを繋ぐことが可能で、最大4画面まで対応しています。

 

 

■電源はPCI-E 8ピン×1と6ピン×1が必要


 

ハイエンドビデオカードよろしく、電源は別途PCI-Eの8ピンおよび6ピンの2本を接続する必要があります。

 

 

GTX780の推奨電源容量は600Wですが、このクラスの電源ユニットであればPCI-E電源コネクタは8ピンが4本分(SLIまたはCrossFireが可能な本数)ありますので、問題になることはないと思います。
基板側面に電源コネクタがあるため、長さが290mmと長いビデオカードですがケーブルの取り回しは比較的良好です。

 

 

■3連装のファンが目を引くS.A.Cクーラー


 

ビデオカードはS.A.Cと名付けられた独自クーラーが全面を覆っている構造となっており、ヒートシンクの上には3連のファンが取り付けられています。

 

 

ヒートシンクの基部はGTX780チップにしっかりと取り付けられており、ヒートパイプを利用してカード全体を覆うヒートシンクに熱を伝える構造となっています。
ヒートシンクもカードの全面を覆うサイズとなっており、3連ファンが効果的に冷却できるようになっています。

 

 

ヒートシンクの下部には空気が逃げるための隙間が設けられており、ヒートシンクの下にあるメモリや電源回路を冷却するためのプレートに風が当たるような構造になっています。

 

 

3連ファンには金属のプレートのカバーが取り付けられていますが、このカバーは風の流れをコントロールするためのもので、ファン自体はヒートシンクに爪で取り付けられています。

カバーを固定しているビスを取ると、カバーを取り外すことができます。

 


カバーとファンを外すと、ヒートシンクを貫いているヒートパイプが確認出来ます。
GPUに近いエリアは4本、カード後半部分のヒートシンクにも2本のヒートパイプが貫いており、熱伝導の効率が良さそうな印象を受けます。

 

 

使用しているファンはCOLORFUL製(中国 COLORFUL INDUSTRIAL LIMITED)製のスリーブベアリングファンで、CF-12815Sという型番のものとなります。
メーカーサイトのスペックでは0.2Aまでの製品しかリストアップされていませんが、搭載されているのは0.28Aのものとなりますので、詳細なスペックは不明です。
0.2A対応のもので、2800rpm/28.4CFM、34.5dBというスペックです。
ファンのリム部分は大きく削られており、ヒートシンクに効率よく風が当たるように工夫されています。

 

 

表側だけではなく、裏側にもヒートスプレッダーを兼ねたパネルが装着されています。

しっかりと基板にネジで留められていますので、重量級のカードですが基板がたわむこともなく、安定感があります。
使用中はかなり熱を持ちますので、放熱という点でも効果的に機能しているように思われます。

 

 

■全長290mm、ケースによってはギリギリのサイズ


 

3連ファンのS.A.C.を搭載しているため、カード長よりも冷却機構のほうが長く、全長が290mmとかなり長いカードとなっています。

リファレンスクーラーを搭載したELSA GeForce GTX780ではカード長が267mmとなっていますので、小さいケースに入れるときには要注意です。

 


マザーボードに載せてみるとカードの方が長く、大幅に後ろにせり出しているのが解ります。

実際、AntecのNine Hundred Twoに入れてみましたが、5インチベイとギリギリ(マージン1mm以下!)という状態で収まりました。

 


購入される前に、ケース側の調査は必須かと思います。

 

 

■オーバークロック用のユーティリティが付属


 

GeForce GTX780 S.A.CはGPUコアクロックが863MHz→901MHzにオーバークロックされているモデルですが、さらに専用のユーティリティを使ってオーバークロックすることが可能です。

ELSA製のGPU Optimizerというソフトウェアを使用して設定を簡単に変更することが可能です。

 


簡単設定と拡張設定の2つのモードがあり、簡易モードはパフォーマンス、標準設定、エコの3つから選ぶだけの簡単操作です。


パフォーマンスではGPUコアのBOOSTクロックが1045.2MHz、メモリが1502.3MHzの設定ですが、パフォーマンスにするとメモリの速度は変わらないものの、GPUコアが1123.5MHzと7.5%の上昇となりました。

 

 

標準のGTX780はブーストクロックが900MHzですので、約25%のOC率となります。

拡張設定では、GPU、メモリのクロック数をオフセットで設定することが可能です。
GPUは-105~200MHzの間、メモリは-500から0までの間で調整が可能です。
メモリクロックを定格以上に上げることが出来ませんので、その場合には別途のツールが必要かと思います。

 

 

■GK110コアを採用したGTX780の圧倒的なパワー


 

GTX780のパワーを比較するため、3Dmarkベンチマークソフトを使用し、性能を測定することにします。

比較対象として、GeForce GTX60Tiの1枚および2枚のSLI構成と、Radeon HD 7850を用意し、スコアを計測しています。
それでは、さっそく3Dmarkから見ておくこととします。

 

 

3Dmarkは、グラフィック性能を見るGraphicsの値を比較しています。

リリース当時1桁fpsも当たり前だったFIRE STRIKEも、今時のカードでは30fpsとか出てしまってびっくり。
GTX780の標準時では10290と、1万の大台を超えてきました。
GPU Optimizerでパフォーマンス設定にしたGTX780(1123MHz)では、10837と約5%の伸びを記録しています。

一世代前のアッパーミドルであるGTX660Tiは、半分程度の5465となっていますが、SLIにするとほぼ倍の10750という秀逸なスコアを示します。
標準のGTX780よりは少し上、OC状態にはとどかず、といったスコアです。

 

続いては新しい3Dmarkから登場した、SKY DIVER。
あれだけの翼…というか帆?であんな風に飛べる訳ないんじゃないかな…と思いますが、まあ、それはそれ。
おっぱいが風に揺れる新しいベンチマークです。

さて、スコアは…というと、GTX780は標準、OC共に似たような傾向で、他のスコアもほぼFIRE STRIKEと似ています。
ただし、GTX660TiのSLIはどうやら効いていないようで、1枚のときとほぼ同じスコアとなってしまっています。

 

続いてはCLOUD GATEですが、こちらはGTX660TiのSLIがGTX780のOC時を抜くというスコアになっています。
その他の傾向については、上記2つのベンチマークテストとほぼ同一のスコアとなっています。

 

最後のICE STORMですが、なぜかGTX780で標準クロックとOCでのスコアが逆転しています。
今となっては軽いテストのためか、GTX660Ti SLIのスコアが頭一つ分飛び出た数値となっています。

 

 

■ELSA独自のS.A.Cクーラーのパフォーマンスを詳しく検証


 

高速性に定評のあるGTX780ですが、ベンチマークやWorld of Tanksの快適において性能を遺憾なく発揮する結果となりました。

続いては、ELSA独自のS.A.C.クーラーの性能について調べていきたいと思います。

 

まずは、World of Tanksプレー時の高負荷状態におけるクーラーの温度を、放射式温度計を用いて測定しました。
計測したポイントは4カ所で、GPU裏側、GPU付近のヒートパイプ、びでおカード末端のヒートパイプ、メモリおよび電源回路用のヒートスプレッダーとなります。
GPU表面はクーラーで覆われてしまっていますので、今回は裏面の基板の温度を測定します。
GPUの裏側を測定することでGPU周辺の温度を、2カ所のヒートパイプの温度を調べることでヒートパイプ末端まで熱が伝わっているかを、ヒートスプレッダーがきちんと冷却されているかを確認することとしました。

 

 

結果は上記の通りとなり、最も熱いヒートスプレッダーでも63℃程度、GPU裏も55℃程度という温度になりました。
60℃を超えているので触るとかなり熱い状態ですが、予想よりは遙かに低い温度となりました。

この状態ですが、ファンの回転数はアイドル状態とほぼ変化がないように感じられます。
ファンのノイズもケースファンの方がうるさく、ビデオカード側のファンのノイズはほぼ聞こえません。

 

そこで、ビデオカード別のファンの騒音について調査しました。
アイドルと高負荷時のファンの騒音を、ビデオカードから20cm離した距離にiPhoneを置き、iPhoneのDecibel 10thアプリを使用して計測しています。

 

 

ELSA GeForce GTX780 S.A.C.は上記の結果の通りノイズ量はわずか1dBとほぼ変わりませんので、高負荷時においてもファンの回転数が劇的に上昇することはありません。

一番騒々しいのは660Tiで、全力で描画するためブロアーファンもかなりの回転数となり、騒音をまき散らしています。
660TiのSLIでは、WoTがSLIに対応していないためそれぞれのカードが50%ずつの分担で描画していると思われるため、温度が低く抑えられた結果騒音も少なくなっています。

TwinFlozr IIIを搭載しているMSIのRadeon HD 7850ですが、高負荷状態では55dBとそれなりに大きい騒音をまき散らしています。

 

ファンの騒音は少なくても、必要以上に回転数を抑えた結果、冷却が不十分という状態であれば元も子もありません。

そこで、GPUに100%の負荷をかけた状態における、ファンの回転数とGPU温度の推移を、GPU-Zを用いて調査してみました。

 

 

結果ですが、GPU温度は65℃で安定しています。
ハイエンドのビデオカードとして、最高でも65℃という温度はかなり低いと思われます。
GTX780のリファレンスクーラーは80℃程度まで温度が上昇しますので、-15℃という差はとても大きい値です。
温度が低く抑えられればその分GPU BOOSTも効きやすくなりますのでメリットがあります。

さらに、ファンの回転数もピークで1450rpm程度であり、このあたりの回転数であれば他のファンのノイズに紛れてしまい、そこまでうるさいと感じません。


実際、GPUに100%の負荷をかけた状態であっても、ファンのノイズが目立つことはありませんでした。
標準のクーラーに比べて、高い冷却効率を持つと思われます。

 

 

■高い満足度と2年間保証


 

S.A.C.クーラーを中心に製品をレビューしてみましたが、GTX780の高性能とS.A.C.の冷却性能の高さがバランス良くまとまった、秀逸な製品だと感じました。

しかも、メーカーによる2年保証もありますし、価格も他社のGTX780搭載ビデオカードと比べると、決して安い部類ではありませんが、価格差を補って余りあるだけの付加価値がある製品だと思います。

 

今まではGTX660TiのSLI構成を使っていましたが、どうしてもミドルクラス特有のピーキーさもあり、安定しないタイトルやそもそもWoTのようにSLIに対応していないタイトルもあります。

そういった側面を考えると、あとからカードの能力を引き上げられるSLIも魅力ですが、ハイエンドカードの優位性はやはりかなりのものだと感じました。

 

大切に使わせていただきたいと思います。

 

30人がこのレビューをCOOLしました!

コメント (2)

  • カーリーさん

    2014/08/28

    FIRE STRIKEが1万超えはすさまじいですね・・・
  • ちょもさん

    2014/08/28

    カーリーさん:
    CPUの差を除外するため、Graphicsのスコアですが、1万超えはびっくりです。
    トータルスコアでも、FIRE STRIKEで9000超えますからね…
    昔はカックカクだったのに。恐るべし。

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