■WQHDパネル搭載のLCD-MF272CGBR
アイオーデータのLCD-MF272CGBRは、WQHD解像度の液晶としては比較的購入しやすい価格帯に属する製品です。
WQHDとはWide Quad High Definitionの略称で、HD解像度(1280×720)の縦横2倍の解像度を持つためこの名称が付いています。
一般的なフルHDの液晶(1920×1080)に比べ、縦横それぞれ1.33倍、面積にして1.78倍のピクセル数を誇ります。
実際の描画面積を比べると、下記のような差があり、実際に使うと広々としたデスクトップに感激すら覚えます。
■4Kか、WQHDか
最近では10万円を切る4Kモニターも多数登場しつつあり、高解像度の製品は徐々に4Kにシフトしていくと思います。
4Kモニターはドットピッチが非常に細かいため、基本的には高解像度用にスケーリングして(画面を拡大して)使用することとなります。
ハードウェアとOSを独自で作っているAppleのMacではOSのスケーリング表示機能が優れていることもあり、Retina液晶に切り替えることでのデメリットはあまり感じられません(古いソフトは切り捨てるなどの思い切った対応ができるのも理由としてあると思います)。
これに対し、Windowsの場合は過去のアプリケーション資産との互換性などの問題で、固定ピクセル表示されるソフトウェアも多いことや、OS自体のスケーリングへの対応がMac OSに比べて遅れていることもあり、今のところは拡大表示せずに、固定ピクセルで使える高解像度モニターが一番使い勝手が良いと考えています。
特に、Windows7およびWindows8(8.1を除く)では、スケーリングが150%までしかサポートされていません。
このため、私個人の考えとしては、フルHD以上の解像度を持つWQHD液晶は価格も手ごろになってきたこともあり、今のところWindows環境で使うには、理想的なモニターと言えると思います。
■WQHD唯一のグレアパネル採用液晶
デザインは非常にシンプルで、画面はグレア処理されたガラス面となっており、下部のみつや消し処理されたパネルになります。
特に、WQHD解像度の液晶でグレアパネルを持つ製品はこのLCD-MF272CGBRしか存在せず、発色やコントラストの良さに強みのあるグレアパネルを探されている方は、他に選択肢がありません。
液晶画面と下部のパネルの間に段差はなく、フラットに仕上げられていますので、見た目もシンプルです。
操作ボタンはすべてタッチパネルとなっており、電源ボタンはいかにも押せそうなデザインになっていますが、触れるだけで機能します。
■スタイリッシュなデザイン
画面のチルトや高さ変更は出来ませんが、機能が簡素化されていることで可能となった、スタイリッシュなデザインのスタンドが付属します。
スタンドは4本のビスでスタンドに固定されていますので、VESA規格のマウントが利用できそうですが、液晶自体の重量があるためか、本体からスタンドを外して使用しないでくださいという警告が書かれています。
実寸では10cmピッチでネジ穴がありますので、VESA規格のマウンタが使用できると思いますが、メーカーサポート外の使い方となりますので、自己責任にて取り付けする必要があります。
■豊富な入力端子
入力端子は今時の液晶らしく、HDMI、DisplayPort、DualLink DVI-Dとデジタル入力は一通り揃っています。
大解像度液晶には珍しく、アナログRGB入力も備わっています。
また、スピーカーも内蔵しており、Display PortやHDMIであれば、映像用ケーブル1本で音声も伝送できますので、別途オーディオ用の配線が必要ありません。
フルHDを超える解像度の液晶を使う時に注意すべき点は、一部の例外を除き、DisplayPortまたはDualLink DVI端子を使う必要があるということです。
HDMIは1.4で3840×2160、4096×2160の解像度に対応したことで、WQHDの利用も可能となりましたが、1.3までのバージョンではフルHDまでの対応ですので、WQHDを使うには適しません。
また、通常のDVIもWUXGA(1920×1200)までの対応となりますので、WQHDはサポートしていません。
CPU内蔵GPUであるintel HD Graphicsシリーズの場合、DVI端子はDualLinkに対応していませんので、WQHD解像度の液晶を買う前に、DisplayPortが付いているか確認が必要です。
HDMIまたはDVIしかない場合には、別途ビデオカードを購入する必要がありますので要注意です。
■付属品はシンプル
付属品は簡易マニュアルのほか、電源ケーブル、オーディオケーブル、DualLink対応のDVIケーブル、DisplayPortケーブルとなります。
アナログ用のケーブルは付属しませんので注意が必要です。
DVIケーブルですが、WQHDの解像度に対応したDualLinkケーブルが付属します。
コネクタ部に大きくDualLinkの文字が書かれていますので、間違えることは無いかと思います。
■ベゼル相当部分はかなり太め
ベゼル部分もガラスパネルで覆われていますので見た目では感じませんが、LCD-MF272CGBRは25mm以上はありますので、狭いとは言えない感じです。
最近は極狭ベゼルの液晶が増えつつありますが、この液晶はそこそこ幅があるのでデュアルモニターで使われる場合は要注意です。
液晶自体が分厚い反面ベゼルを細くするか、あるいはスタイリッシュさを追求しパネルの薄さを強調する反面ベゼルが厚くなるアプローチの液晶パネルが多いですが、LCD-MF272CGBRは後者のタイプの製品となります。
■グレアパネルとAH-IPS液晶による美しい描画
発色の良さと広い視野角、コントラストの良さが特徴のAH-IPS液晶を搭載していることによる元々の素質の良さと、グレアパネルによる発色の良さが相まって、他社製品と比べて抜けるような発色の良さと引き締まった暗部の表現性に優れます。
この色の表現性はグレアパネルならではのメリットですが、反面、やはりグレアパネル独特の映り込みはいかんともしがたいところです。
コーティングのおかげでグレア液晶としては映り込みは少なめで、部屋が暗い、あるいは画面が明るい場合は気にならないものの、明るい部屋でPCを操作する時には、かなり盛大に映り込みますので注意が必要です。
WQHD解像度の液晶でグレアパネルを採用した製品はLCD-MF272CGBRのみとなりますので、きわめて貴重な製品であるといえます。
■画面暗転時のバックライト漏れ
この液晶で唯一気になる点が、画面が暗くなった際のバックライト漏れです。
症状としては、画面を真っ黒など、暗い色にした時に、画面の一部分にバックライトの光が漏れ、明るくなる箇所があります。
黒か、黒に近いグレーで無いと確認できない症状ですが、部屋が暗いとかなり明かりが漏れますので気になっていまいます。
最初に届いた個体のバックライト点灯時(黒画面)
下部の2カ所から、盛大にバックライトの光が漏れているのが解る
バックライト漏れについては、個体差がかなりありそうです。
届いたモニターが、電源をONにしてもディスプレーにはなにも表示されないという問題があり、代替機を用意いただけたので比較をしてみました。
交換用に届いた代替機のバックライト
漏れは満足のいく範囲内で、最初のモデルと比べて大幅に改善された
最初に届いた固体は下部に2カ所大きく漏れているところがあり、暗い映像を表示した際にそれなりに気になったのですが、代替機ではほぼ解決していました。
■画面が映らない!→初期不良交換
たまたま初期不良のモニターを引き当ててしまったのだと思いますが、電源が入らないトラブルが発生してしまいました。
原因が特定できていませんが、電源ON時に青色のLEDは点灯するものの、画面が真っ黒のままでなにも表示されないときがあります。
コンセントを抜き、10秒程度放置してから再度コンセントを繋いで電源を投入すると直りますので、静電気かなにかの問題だと思います。
OSDの操作をしようと思い、スイッチに触れても画面はまったく表示されませんので、入力端子の設定がミスっているわけでもありません。(入力の選択が間違っていると、入力がない旨のメッセージが表示されます)
zigsow事務局に確認したところ代替機を手配頂けることになり、代替機には問題はありませんでした。
青色LEDが点灯するがモニターが表示されないときは、説明書に「故障です」と明確に説明がありましたので、問題点の把握に役立ちました。
最悪マニュアルもなにも付属しない激安モニターと比べ、国産という安心感は大きいと思います。
、販売店に連絡をすれば大抵のところは初期不良で新品交換してもらえると思いますので、問題はないと思います。
■DELL U2713Hとの比較
メインPCのモニターとして使用しているのは、同じWQHDの解像度を持つDELLのU2713Hとなります。
こちらはsRGBカバー率が99 %超を誇るモニターで、出荷時に色のキャリブレーションが済んでいるDELLのハイエンドモデルとなります。
使ってみて感じたことを、比較してみたいと思います。
・デザイン
LCD-MF272CGBR:○
MF272CGBRのフレームもフラットな全面ガラスのグレアパネルと薄型のデザインが良く、スタンドもシンプルで好印象です。
ただし、下部の操作パネルの部分のプラスチック然とした作りがいまいち安っぽさを感じるところが残念。
DELL U2713H:○
U2713Hはデザインこそフレームのある旧来の作りですが、ヘアライン処理されたベゼルやタッチパネルのOSD操作パネルなどセンス良くまとめられています。
用途が違う液晶なので、それぞれに向けた個性となっています。
・発色
LCD-MF272CGBR:◎
動画やゲームなどのコントラストの良さ、発色が際立つ用途などで特にグレアパネルを採用したMF272CGBRの発色の良さが際立っています。
特に、つやのある黒のような表現はグレアパネルならではの発色で、派手めですがメリハリのある色の表現が可能です。
LCD-MF272CGBRを選ぶ最大のメリットはここにあると言っても過言では無いと思います。
DELL U2713H:○
発色の派手さではLCD-MF272CGBRに一歩譲るとしても、出荷時にカラーキャリブレーションを行っていることもあり、色についてのこだわりは遙かに高いです。
LCD-MF272CGBRのようなドラマチックさには欠けるけども、バランスが良好な印象です。
・輝度ムラ
LCD-MF272CGBR:△
MF272CGBRは輝度ムラこそ気になることはないものの、暗転時のバックライト漏れは如何ともしがたく、かなり目立ってしまいます。
代替機ではほぼ改善されていますが、グレーや黒一面表示ではやはりムラが出てしまいます。
U2713H:◎
U2713Hはユニフォーミティ機能も備え、出荷時にキャリブレーションも行うなど徹底した調整が可能なモニターですので、輝度ムラに関しても気になる点はありません。
この点についてはLCD-MF272CGBRよりも圧倒的に優れていると言えます。
・視野角
LCD-MF272CGBR:◎
AH-IPS液晶を搭載していることもあり、パネルの視野角はとても広く、実用において何ら問題はありません。
安価なTNパネルを採用した大型モニターにありがちな、周辺部の色反転も全く発生しません。
U2713H:◎
こちらもIPSパネルを使用している液晶ディスプレイで、視野角について全く問題はありません。
・スタンド
LCD-MF272CGBR:○
L字のシルバー塗装されたシンプルなスタンドで、スタイリッシュな外見と設置面積のコンパクトさに一役買っています。
スタンド中央にはケーブルを通す為の穴があり、ケーブルマネジメントが可能です。
ただし、角度調整のみ可能と機能はシンプルで、その点ではU2713Hには敵わない結果となりました。
U2713H:◎
高さ調整、ピボット機能を持つU2713Hのスタンドは、機能としてはこれ以上必要ないといえます。
設置面積がLCD-MF272CGBRと比べると大きいのですが、ピボット表示などを考えるとこれくらいの幅は必要かと思います。
・入力端子
LCD-MF272CGBR:◎
アナログ入力を持つ点が特徴で、実際にPC-9821を繋いでみましたが正常に利用できました。
他の入力も、DisplayPort、HDMI、DVIと系4系統を持っており、十分と言えます。
また、2Wのスピーカーを内蔵しており、Line-inとout端子も持っています。
U2713H:○
DVI、DisplayPort、Mini DisplayPort、HDMIとデジタルに特化した仕様です。
残念ながらアナログ入力が無いのが最大の欠点です(PC-9821が繋げない…)
・価格(執筆時点での最安値)
LCD-MF272CGBR:○
最安値は63,076円ですが、直近2カ月程度は58,000円前後を推移しており、価格としてはU2713Hとほぼ同価格帯です。
ただし、ドット抜け保証はショップ独自の保証に入る必要がありますので、別途保証料がかかってしまいます。
今回レビューで使用した個体は2台ともドット抜けはなく、かなり少ないケースだと思いますが、絶対に発生しない訳では無いので気になる方は保証に入っていたほうが安心です。
U2713H:◎
56,980円とキャリブレーションモニターとしては破格に安い価格で、他社製品を圧倒しています。
プレミアムパネル保証(ドット抜け不良ゼロ)が付きますので、ドット抜け(常時点灯)が1ドットでもあった場合には何度でも交換が可能。
ただし、常時消灯などの点灯しない暗部ドットについては6ドット以上となりますので、こちらは注意が必要です。
■PC-9821Anを繋いでみた
せっかくDsub端子がありますので、最新のWQHD液晶に1994年5月発売(20年前!)のPC-9821Anを繋いで、使えるかどうかテストしてみました。
PC-98シリーズの解像度は640×400ですので、縦横比は1.6となります。
これに対し、LCD-MF272CGBRは2560×1440ですので、縦横非1.78となり、左右を少し縮めれば問題無いと言えます。
U2713Hに繋げられないため放置状態だったPC-9821Anを久々に繋ぎ、電源を入れてみたところ、問題無く表示されました。
アナログ使用時に問題となるのが、モニター側での表示領域のズレ。
最悪、見切れて表示されない…なんてこともあるのですが、LCD-MF272CGBRは表示の幅、縦横の位置を調整可能ですので、きちんと画面内に納めることが可能です。
27インチ液晶表示は圧倒的ですね…
■グレアパネルが特徴な、動画鑑賞やゲームなどに最適の液晶
レビューの期間使用していて感じたのは、やはりグレアパネルによる発色の良さと、コントラスト。
特にWoTでは暗い茂みなどに隠れている敵を射撃したり、薄暗い市街地での戦闘など、暗部の認識ができないと難易度が増すマップも多数あるのですが、こういった場合暗部がつぶれてしまう液晶ではゲーム側でゲインを調整して黒レベルを底上げします。
ただ、この場合どうしても暗部のコントラストが破綻してしまい、安っぽい感じになってしまいます。
その点、LCD-MF272CGBRは暗部はキチッと引き締まった色ながらも視認性が良く、使っていてとても良い液晶だと感じました。
グレアパネルが好みの方には、WQHDでは唯一無二の製品であり、なおかつグレアパネルの特徴を生かした製品となっていますので、使用時の満足度は高いと言えます。
私は常にノングレアパネルを使っていますが、LCD-MF272CGBRの映り込みの少ないグレアパネルは使用中に違和感を感じることもありませんでした。
懸念点とすれば、やはりバックライトの漏れでしょうか。
すべての個体で発生するとは思いませんが、製品の出来が良いだけにここだけが気になる部分です。
あと、個人的にはPC-9821が繋げられ、かつ正常に使用できるのがポイント高いですね…
(超ニッチでセールスポイントに繋がらなさそうですが…)
りーちゃんさん
2014/09/25
デザインもスマートでよく、WQHDがいいですね!
4Kまでいっちゃうと、画面が見にくそうなんですよね…
ちょもさん
2014/10/05
4Kは実際に使ったことはありませんが、WQHDがバランス良くて良い感じです。
3Dゲームも解像度上がってしまうので、負荷高くなっちゃいますしね…
せっかく高解像度液晶を使うのであれば、ドットバイドットでプレーしたいところです。