ゲーム、特にオンラインゲームを快適に行うためには
・十分な処理能力
・高画質な画像出力
・臨場感あふれる音響
・安定した通信
・マウス/キーボードなど入力デバイスの遅延なき処理
といったことが求められる。
こういった性能を担保するゲーミングPCの基礎性能を決めるのは、それに使われているマザーボード(M/B)だ。
この用途で使われるM/Bに要求される性能は高い。
処理能力的には、最新/最高CPUへの対応はもちろん、メモリやストレージの反応速度も最高である必要がある。さらにOCにまで対応していればいうことなしだ。
また迫力ある映像に対応するためには、高性能ビデオボードの搭載を可能にするレイアウトに加えて、それらの複数台使って画質向上のアップグレードパスとなる“NVIDIA SLI”や“AMD CrossFire”への対応も要求される。
また最新ゲームにとって音、というのも重要なファクターだ。ショボイ音質だとゲームに没頭できないし、一部の戦闘アクションゲーム(FPSゲーム)では、音響効果によってどこに敵が潜んでいるのか聞き分けることが、勝敗を分けたりもする。
そして、オンラインゲームで何より重要なのは通信だ。これが安定していないといくら高性能なPCを用意して腕を磨いても無意味である。
最後に入力デバイスたるキーボードやマウスとのインターフェイス。ずいぶんUSB接続の入力デバイスも同時押しなどに対応してきたといっても、瞬間を争うゲーム上ではPS/2接続の安心感を採るゲーマーも多いと聴く。また、ゲームによって最適なものにマウスを換えたりジョイスティックやマクロ登録可能な特殊キーを備えた左手用入力デバイスを追加することもあるだろう。これらデバイスの交換にも耐久性の高い仕様が求められる。1986年設立のM/B界の老舗、MSI(Micro-Star International)はマザーボードとビデオカードとをその主力商品とする。
現在マザーボードに関しては
・Overclocking
・Gaming
・Eco
・Classic
の4ラインアップで展開している。
このうち「Eco」ラインは「ミリタリークラス4」準拠パーツは使いながらもH87やB85チップセットを使用した低消費電力用のラインアップ。2014年8月現在、まだBroadwellに対応する最新の9シリーズチップセットを積んだ製品はない。「Classic」がいわゆるスタンダードラインで、廉価版から高機能版まで幅広くラインアップする。
「Overclocking」はその名の通りオーバークロック特化型で、出荷テストにオーバークロック状態でのPrime95の24時間テストがなされているとか、独自のクロックジェネレーターでCPUに他のデバイスのベースクロックを連動させないとか、いざというときのCMOSクリアボタンや初期化ボタンを物理的に実装するとか、まさにオーバークロックマニアのためのボード。
そして「Gaming」シリーズがゲーマーの要望を網羅した板だ。十分な処理能力を実現するための最新CPUへの素早い対応やオーバークロックメモリへの対応、高画質な画像出力を実現するための“NVIDIA SLI”や“AMD CrossFire”への対応(一部機種除く)、臨場感あふれる音響を実現する独立設計のオーディオ回路や、電源強化。ゲームを優先した安定した通信、そして入力デバイスの遅延なき処理を実現する専用ポート装備とすべてはゲームのために設計されている。
2014年8月現在、OC対応可能なZ97チップセットを採用し、複数枚ビデオカードが積めるATXフォームファクタの「Gaming」シリーズマザーボードは4種。上から「Z97 GAMING 9 AC」、「Z97 GAMING 7」、「Z97 GAMING 5」、「Z97 GAMING 3」だ。このうち「3」だけは拡張スロットの構成が大きく異なり、x16のPCI-Eスロットが2本だけで、PCIスロットが3本あるなど廉価版の造りだ(それでもデータ転送速度10Gb/sを実現する最新のM.2スロットは装備する)。「7」と「9 AC」の差は最上位の「9 AC」がその名の通り「802.11 AC」に対応した無線機能を持つほかは、USB3.0ポートやPCI Express x1スロットの数が多少違う程度だ。
今回使用した「5」は「3」を除く「Gaming」シリーズZ97採用ATXマザーボードのベーシックボードで、USB3.0ポート数やSATAIII(6Gbps)ポート数を絞り、Optical S/PDIF出力やディスプレイポートなどを省略して価格を抑えた板だ。
メインPCとして使うにはSATAIII(6Gbps)ポートが6つしかなく、RAIDを組んだ場合には若干余裕がないとか、リアのUSBポートが2.0が多く3.0が少ないなど少し使いづらい面もあるが、ゲーム用として考えた場合、同社の「Gaming」シリーズマザーボードのフィーチャリングデバイス/機構はすべて網羅しており、お買い得度が高い。
早速、構成をみてみよう。フォームファクタは拡張性が高いATX。その広さを活かして、拡張スロットも充実している。新世代のM/Bらしく、拡張ボードのスロットはすべてPCI Expressで統一されており、旧来のPCIスロットはない。形状としてはPCI-Express 3.0 ✕16が3スロット、PCI Express ✕1が4スロットと、7つの拡張スロットがフル装備となる。スロットの配置も良く、上から✕1、✕16、✕1、✕1、✕16、✕1、✕16となっており、2枚のグラフィックカードを使用した場合も、2スロット占有型のビデオカードなら間に1枚分の空間が得られる上に、1番のスロットは空いているので、少し不足しているUSB3.0の拡張ボードを積むことも可能だ。もちろんPCI-Express 3.0 x16を3スロット埋めて、3枚のビデオカードを使うこともできる(その場合の動作モードは✕8、✕4、✕4)。当然、InteのlHaswellマイクロアーキテクチャから採用されたLGA1150を備えるM/Bだが、チップセットは最新の9シリーズ、それもオーバークロックに対応したZ97となる。CPU周りも余裕があり大型クーラーや簡易水冷の硬いラインの取り回しへの対応も万全だ。
付属品も充実しているが、おもしろいものがいくつか。竜をかたどったPCケース用バッジや部屋の扉に「ゲーム中だから邪魔すんな!」とぶら下げるサインボードがゲームへの気分を高揚させるが、パーツとして面白いのは二つ。ひとつは組み立て時に重宝する「M-コネクタ」という部品。これらはパワーランプやアクセスランプ、電源スイッチやスピーカーからのラインをヘッダピンに繋ぎやすくするもの。これらのケーブルは必ずしも同じ長さではなく、またロックがあるわけではないので抜けやすいにもかかわらず、マザーボードをケースに固定してから取り付けることになるので、のぞき込んでの作業がしづらい、それを一度に接続できるようにとりまとめたコネクタだ。これで文字もよく確認でき、繋ぎミスもない。
そしてもう一つが、「ダイレクトオーディオ電源コネクター」。これは、マザーボード上のオーディオ回路にペリフェラル4Pの電源ケーブルから直接電源を安定供給できるようにするアダプタだ。
PCの内臓音源というものはあまりほめられた音質ではないことがほとんどだが、この「Gaming」シリーズマザーボードは力を入れている。まず一番キモとなるオーディオチップは比較的よくつかわれているRealtek ALC1150だが、上記の電源強化のほかに、オーディオ部分の他の基盤からの独立、Texas Instruments(TI)1652デュアル・ヘッドホン・アンプ、金色に光るニチコンのオーディオコンデンサなど、使う部品と構成が凝っている。これを使ってゲーミングPCを構築した。
今回World of Tanksのために組んだPCの構成は...
【ゲーミングPC構成】
・CPU:Intel Core i7-4790K(Devil's Canyon、4C8T、4.0GHz、TB時4.4GHz)
・CPUクーラー:Intel Core i7-4790K純正
・M/B:MSI Z97 GAMING 5(LGA1150)
・メモリ:CORSAIR VENGEANCE LP CML8GX3M2A1600C9W
・VGA:ELSA GeForce GTX 780 S.A.C(901MHz(BC941MHz)、メモリGDDR5 3GB、6,008MHz)
・システムドライブ:Intel SSD 520 120GB SSDSC2CW120A3K5
・光学ドライブ:未搭載
(OSインストール時にはLogitec USB接続BDドライブLBD-PME6U3VBK使用)
・サウンドカード:未搭載
・カードリーダー:未搭載
・電源:Seasonic SSR-650RM(80 PLUS GOLD、出力 650W、+12V 54A×1系統)
・ケース:Abee AS Enclosure M2
なお、今回利用したビデオカードはnVIDIAのハイエンドGPU「GeForce GTX 780」を積んだトリプルファンのカード長がほぼ30cmの巨大なものだが、SATAポートとのクリアランスはギリ。ちょうどプライマリのPCI-Express 3.0 ✕16スロットにビデオカードを積むと、ちょうどSATAの1、2番の上にくるので、コネクタの形状は薄型のものにしなければ干渉する。これによってかっこよい竜のエンブレムが隠れてしまうのは残念だ。
他は組みづらいところもなく(強いて言うならDIMMスロットを2番と4番を組で先に使うことくらい?←でも基板上に印刷がある。)、普通に組み上げることができた。まずゲームを優先した安定した通信を担保するのが、「Killer E2200」。これはQualcomm Atheros製のゲーマー向けGbEコントローラ。一般的にネットワークの信頼性を採るマザーボードのLANコントローラにはIntel製が採用されることが多いが、あえてこのチップが採用されているのはわけがある。「ネットワーク処理の一部をCPUからオフロードする」ことを目的にしたLANチップなのだ。それにより、CPUの負荷を減らす。
また同時にこの「Killer E2200」に合わせて用意される「Killer Network Manager」が秀逸だ。これは通信速度の測定などができるほかに、ゲームの通信を自動検知して優先度を設定する機能がある(マニュアル設定も可)。ゲーミングPCで他の大きなファイルのダウンロードを行うかどうかは別として、ゲーム通信を最優先して遅延や寸断を予防する。実際、ゲーム中に通信が不調になることは全くなかった。
さらに、「Gaming App」というのも面白いアプリだ。これはWindpws上から操作できる簡単モード設定アプリで「OC Mode」、「Gaming Mode」、「Silent Mode」の3種が用意される。実際、これの「Gaming mode」を押すことで3DMark
のFire StrikeのGraphics Scoreが9701⇒9970と上昇した(「OC Mode」に関してはリテールクーラーを使っているせいか、むしろ「Physics Score」が悪化したので、クーラーを換えて再検証したい)。さらに追い込みたいときには、リアルタイムでクロック変動などがモニタリング/調整可能な「MSI Command Center」も用意されているので、CPUのクロックやメモリのタイミングなどだけではなく、ファン回転数などまで追い込めるので、性能を追求しながらも静かなゲーミングPCも構築できる。その他にも「Xsplit Gamecaster」と呼ばれる配信ソフトも用意され(有料版の6か月無料利用権)、これを利用して自分のゲームプレイをYoutubeやニコ動に配信することもできる。
全体としてかなりゲームに役立つ/ゲームを面白くする機構・ソフトに溢れており、「Gaming」シリーズの名に恥じないものだ。これで、World of Tanksの戦闘準備よし?
【MSI Z97 GAMING 5 製品仕様】
チップセット :Intel Z97 Express
対応CPU:LGA1150(Intel第4世代および第5世代(Haswell Refresh)Core i7/i5/i3/Pentium/Celeronプロセッサ対応)
フォームファクター :ATX
電源フェーズ数: 8
メモリソケット: DDR3 DIMM×4(最大32GB) DDR3-1066~3300(OC)対応
拡張スロット :PCI Express 3.0 x16スロット×3、PCI Express x1スロット×4
インターフェース:USB 3.0×6(うちヘッダピン×2)、USB 2.0×8(うちヘッダピン×4)、PS/2×1、ALC1150 HD Audio(8ch)、Killer E2205 ギガビットイーサネット×1
映像出力:HDMI×1、DVI-D×1、VGA×1
SATA:SATA 6Gbps×6、M.2×1(SATA 5,6と排他使用)
対応RAID:RAID 0,1,5,10
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