レビューメディア「ジグソー」

暗めの迷彩色が多いWorld of Tanksで敵を発見するのに有利なヴィヴィッドかつ高彩色な絵作りと広大な画面で、ゲームの世界に引き込まれる。

少し前までPC用のディスプレイというと、XGA(1024×768)やSXGA (1280×1024)など、アスペクト比4:3や5:4の比較的縦にも広いものが主流だったが、TV放送のアスペクト比変化やそれらをソースにしたDVDやBDの普及で2000年代後半に急速にFullHDサイズ(1920×1080)に移行した。

ただこのフルHDのアスペクト比16:9というのは映画などを見る分には縦よりも横に広い人間の視野と合っていてよいのだが、縦A4の書類を2枚並べてみるとか、縦に長いExcelの表の全体を俯瞰するという点では今一歩だった。そこで、業務用にはアスペクト比16:10のWUXGA(1920×1200)が根強い支持があったりもしたのだが、PCディスプレイの画面サイズが20インチ前半(22~24インチ)から後半(27インチ前後)に移るにしたがって別の解が出てきた。

-縦のピクセルは拡大するが、アスペクト比は16:9-

つまり「Wide-Quad-HD」=WQHD(2560×1440)。縦のピクセルは1080⇒1440となるのでDot by Dotでの表示の場合、約3割増しの表示となる。そしてアスペクト比は16:9のままなので、最近主流のFullHD映像=16:9を見ても上下に帯は入らない(拡大映写時)。

もちろん字は多少小さくなるが、21.5インチでフルHDのディスプレイを使っているならばドットピッチ的にはさほどに大きくは違わない(一般的な21.5インチサイズのフルHDディスプレイがドットピッチ0.248mmなのに対して27インチでWQHDの本品は0.2331mm)ににもかかわらず、縦横両辺1.33倍(4/3倍)、面積で1.8倍弱の広さが確保できるので、作業効率が良い。24インチサイズのFullHDに慣れているとさすがに小さいが、対21.5型のフルHDだと9割程度の大きさとなることさえ許容できれば、1.8倍の作業スペースが現れるわけで、大変効率が良い。

特にWindows 7以降装備された「ウインドウをポインタでつかんで縁にぶつけると定型の大きさになる」という機能を使えば、十分実用的なサイズで1画面で2ウインドウ、というのが実現できる。

実際会社で使っているFullHDの21.5型のLCD、iiyama ProLite E2208HDDと比べても特に文字が小さすぎるということはない(↓下の写真のFullHDの写真は手持ちの23型なので多少差が大きい)。
同じフォントサイズで作成した表計算シート。行数列数が全然違う。
同じフォントサイズで作成した表計算シート。行数列数が全然違う。
一方文字の差はこのくらい(対23型FullHD。対21.5型だとさらに差は少ない)
一方文字の差はこのくらい(対23型FullHD。対21.5型だとさらに差は少ない)
そんな「使い勝手の良い広さの」ディスプレイが、27型WQHD対応 AH-IPSパネル採用のI-O DATA LCD-MF272CGBRだ。
LCD-MF272CGBRの同梱物はシンプルだ。本体と説明書の他には電源ケーブルと、DisplayPortケーブル、DVI-D(Dual Link)ケーブル、オーディオケーブルのみが添付される。映像系コネクタとしては、他にアナログRGBとHDMIも備えるのだが、それらは2560×1440というWQHDの広さを活かしきれないのだ。HDMIはFullHDの1980×1080、アナログRGBは2048×1152(QWXGA)までしか対応していないためだ。もちろん、ズームやスマートズーム(アスペクト比固定)表示もできるので、使えないわけではないだろうが、PC用途においては基本はDot by Dotなので...
入出力端子。画像入力は4系統で万全。
入出力端子。画像入力は4系統で万全。
このLCD-MF272CGBRを語るうえで忘れてはならないのはそのデザインだ。一般的なPCモニタに多い枠(フレーム)ありタイプではない。もちろん表示画面上の「縁」はあるのだが、ディスプレイの全面は一枚のガラスが端から端までを覆っており、とてもスタイリッシュだ。スタンドも荒くブラスト加工されたアルミ風の継ぎ目のないスタンドで支えられており、(2009年度版以降の)iMac風のたたずまい。Mac miniなどにつなげてもしっくりくるようなデザインだ。

また、右下にあるスイッチはへこんでいて一見メカニカルスイッチに見える電源スイッチも含めてすべてタッチスイッチだ。ただ電源スイッチ以外のタッチスイッチが場所がわかりづらく、調整はすこし面倒。電源以外は頻回に触るものではないとはいえ、目安のくぼみや突起はあってもよかったかもしれない。また、ボリュームスイッチもこのタッチスイッチ調整。スピーカーは背面につくので完全にオマケの領域だが、もし、使用するならば突然の大ボリュームには気を付けたい。

残念なのはスタンド。固定であり取り外すことができない(推奨されていない)。したがってVESAマウントにも対応しておらず、複数の本品をアームで並べる...という使い方はできない。また画面の調整方向はチルト(前後の傾き)だけで高さ調整や左右の首ふり、スイベル(角度とともに高さも変わる)には対応していない。
スタンドは外してはいけないらしい。
スタンドは外してはいけないらしい。
また1枚ガラスに覆われているため目立たないが、「縁」にあたる左右上下の非表示部分はそこそこの幅(25~28mm程度)があり、このディスプレイを複数台使って多画面構成を構築する、というのは難しいかもしれない。

したがってこのディスプレイを使う時にはデンと正面に置いた1枚使いというのが現実的だろう。
ただそれでもWQHD(2560×1440)という解像度は圧倒的で、17インチのSXGA (1280x1024)を2枚並べたより縦方向に広く、ウインドウをいくつも並べてもそれぞれで作業ができる。17インチのSXGAや21.5インチのFullHDと比べて1割程度文字が小さくなる点に関しては、やや画面に近づく必要があるかもしれないが、そこで活きてくるのがAH-IPSパネルを採用したことによる広視野角だ。画面に顔が近づくいうことは画面の端を見る際には角度が付くことになるのだが、実際かなり斜めから見ても色合いが変わらない。
正面画像。くっきりとした色合い
正面画像。くっきりとした色合い
かなりナナメ(150°くらい)から。電灯が下端に反射しているが、色合いはほぼ完璧。
かなりナナメ(150°くらい)から。電灯が下端に反射しているが、色合いはほぼ完璧。
ちなみにこのディスプレイの表面処理はグレア(光沢)。さらに一般のIPSパネルよりも透過率を向上させたというAH-IPSパネルを採用し、輝度も440cd/㎡を実現しているため、絵作りがとてもヴィヴィッドかつ緻密。非常に「見栄え」がよく、特に暗めの諧調が多いシーンでもダイナミックに明暗を描き出す。そのヴィヴィッドな絵造りのため、映画鑑賞やゲームなどには大変適している。

またVA方式ほどではないとは言うものの、TN方式に比べてIPSパネル方式が不得手にしていた応答速度だが、G to G(グレー→グレー)という中間階調の変化ではオーバードライブ機能オンの場合で6.5msという高速応答を実現できている。これは残像が少ないことを意味しており、ゲームなどの用途にも適している。
ミリタリー系のゲームであるため、もともとの絵がかなり地味になっているのが「World of Tanks」。戦闘フィールドは多少草木などはあるが、ほとんどは土色の湿地や砂漠が中心で色合いがくすんでいる。さらに戦場にあらわれる人工物も廃墟となっているか、迷彩を施した陣地だったりと地味極まりない。このようなシーンでもダイナミックレンジが広くてきちんと明暗を描き出せるLCD-MF272CGBRはハッキリと戦車と背景を識別できる。

現在メインPCを接続しているEIZO FORIS FS2333-AおよびFullHDの液晶テレビ、LC-40DR9B

で比較してみた。

いずれもガレージ画面でウインドウを最大化したもので、同じ戦車を選択してある。コントラストは1000:1で同じだが、ノングレアで最大輝度250cd/㎡であるFS2333-Aは(長時間PC作業に適したように調整もしてあるため)、よく言えば落ち着いた、悪く言えばくすんだ色彩となっている。白地に黒の文章などを長時間見る分にはこの落ち着いた絵作りは疲れないが、逆に深緑~茶~灰色という迷彩に使われる色彩が中心となるWorld of Tanksのようなミリタリー系ゲームでは色彩の差がきちんと描き出せた方が敵を発見しやすいため、LCD-MF272CGBRのハッキリとした絵作りはゲーム攻略の一助になる。
FS2333-Aのシブイ画も捨てがたいが、細部がわかるのはLCD-MF272CGBR
FS2333-Aのシブイ画も捨てがたいが、細部がわかるのはLCD-MF272CGBR
一方迫力、という点では40型の液晶TV、SHARPのLC-40DR9のフルスクリーン表示は横幅90cm近くもあり、たしかに物理的な絵の大きさはすごいのだが、ドットピッチが荒く(0.461mm)それを目立たせなくするために離れて見るのであれば結局同じだ。また画質的にも黒に強いVA系のUV2Aパネルのはずだが、「TV」というデバイスのためか、どうしても白っぽい感じの調整となってしまう。
40型のTVは大きいがやや大味。
40型のTVは大きいがやや大味。
なお、シューティングゲームなどに使う時に特に問題となる内部遅延に関しては特に気にはならなかった(←自分のゲームプレイの腕だと単に操作の方が追い付いてないだけかもしれないが(^^ゞ)。
また画面の半分にウインドウが来る設定にしてみると、このディスプレイの2560×1440という広大なサイズが活きてくる。ガレージ画面では下部に所持する戦車が表示されるが、FullHDのハーフサイズのウインドウの5台に対して、WQHDの半分はそれでも横1280あるので6台が表示されている。この見通しの良さがゲームをするのにストレスがない。
下のスロットに表示される戦車数が違う
下のスロットに表示される戦車数が違う
40型で大きくともFullHDに「すぎない」LC-40DR9Bは情報量が少ない。
40型で大きくともFullHDに「すぎない」LC-40DR9Bは情報量が少ない。
また27インチ、という広さと合わせて考えればFullHD相当(1980×1080)のウインドウを開いていたとしてもさらに、まだサイドに580幅残るわけで、同時にチャットしながらの共動戦線も可能。

もちろん全画面表示にすれば、幅約60cmのビッグな画面が目の前に広がり、ベゼルレスのデザインのため、周りを暗くして、鳥瞰ではなく低めの視点に設定して戦場を駆け回れば、臨場感抜群!

この没入感と途切れる感じがない滑らかな描画がこのディスプレイをWorld of Tanksプレイに使う最大のメリットだ。
本ディスプレイの特徴は
・27インチのパネルサイズを生かし切るWQHD(2560×1440)の細密な描写
・表面処理がグレアで透過率が高いAH-IPSパネルによる鮮明な画質
・オーバードライブ機能による残像感の少ない映像
・リビングにも映えるモダンなデザイン
というあたりだ。

特にミリタリー系ゲームで地味な(迷彩性が強い)色調ばかりが使われるWorld of Tanksにおいても、その微細な差を描き出し、敵車両を発見しやすい。さらにその広大な画面をチームとのチャットを立ち上げながらのプレイに使ったり、フルスクリーン表示ではその大画面で迫力満点の没入感を味わったりできる。

残念なのは秀逸なデザインとの引き換えとはいうものの、スタンドが特殊でVESAマウントには対応しておらず、複数画面構成に発展しづらいことと、画質調整のタッチスイッチに物理的な目安がなく、うまく反応しないことがあることくらいか。

ただ、WQHDの27インチ画面であれば、ゲーム用途でも1枚使いで十分な臨場感と没入感が得られるので、リビングなどに置いたゲーミングPCのディスプレイとしてはデザインも含めてこの上ない性能と思われる。

このディスプレイで戦闘準備よし?

【仕様】
パネルタイプ:TFT27型ワイド LED/AH-IPSパネル/光沢パネル
最大表示解像度: 2560×1440(DVIデュアルリンク、DisplayPort接続時)
最大表示色:1677万色
視野角度:上下:178°、左右:178°
最大輝度:440cd/㎡
コントラスト:1000:1
応答速度:12.4ms(オーバードライブ最大時 6.5ms)
映像入力端子:アナログRGB、HDCP対応DVI-D、HDMI、DisplayPort
音声入力:ステレオミニジャック
フォン端子:ステレオミニジャック
スピーカー:2W+2W(ステレオ)
消費電力:最大時 87W~通常使用時(オンモード)42.5W~待機時0.4W
外形寸法:650(W)×200(D)×475(H)mm
質量:7.7kg
添付品:DisplayPortケーブル(1.8m)、DVI-D(Dual Link)ケーブル(1.8m)、オーディオケーブル(1.8m)、電源コード(1.8m)

コメント (8)

  • カーリーさん

    2014/09/01

    テレビとは全然色味違うんですねぇ
    びっくり。
  • cybercatさん

    2014/09/01

    並べてみると意外でした。
    この絵を撮るのは苦労しましたがw(ディスプレイの移動と周りの片付けw)ここは言っておきたかったところなので...
    参考になれば幸いです。
  • りーちゃんさん

    2014/09/02

    AH-IPSパネルがよさそうですね!
    27インチもあると、ゲームや映画で迫力が違いそうですね!
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