もはや恒例行事となりつつあるKS-Remastaさんのシェルリード線の新製品試聴ですが、今回は今までと少し異なる形の試聴となります。
今回聴くのは現代的な線材を使用した製品群ではトップグレードとなるStage9シリーズだけで、旧製品のKS-Stage901EVO.I-VKと、新製品となる予定のKS-Stage921シリーズ3種類を聴き比べるという趣向です。送られてきたのは以下の3製品でした。
・KS-Stage921EVO.I-VK(現代高級ハンダを独自ブレンドしたEVO.Iハンダを採用)
・KS-Stage921SR.I-VK(ビンテージソリッドハンダ採用)
・KS-Stage921SR-NVK(ビンテージソリッドハンダ+天然松ヤニ採用)
つまりEVO.Iハンダを採用したKS-Stage921EVO.I-VKは従来品とワイヤー部の研磨方法のみが異なるもの、他2種はこれまでビンテージワイヤーとだけ組み合わせていたビンテージハンダを組み合わせた新展開となるものです。
なお、この4種類に使われているワイヤーは0.6mm径のOFC単線です。実際には他にPC-Triple C単線を採用したシリーズも送られてきていますが、そちらは機会を改めて掲載します。
従来モデルとなるKS-Stage901EVO.I-VKは、過去私が自宅で試聴したシェルリード線の中では間違いなく最高峰といえる音質の持ち主でした。下位のラインナップが世代交代した後もそれを寄せ付けない、まさに至高のシェルリード線と思っている存在です。それを改良して主宰の柄沢さんが「良くなったと言って貰えると確信している」とまで仰る新製品ということで、是非聴いてみたいと思い今回の試聴となったわけです。
ビンテージハンダ2種の内、SR-NVKはKS-Remastaのビンテージワイヤー採用製品の中のハイエンド系で必ずといって良いほど使われる、最高級ハンダです。これまでは音質的な相性もさることながら、限りあるビンテージハンダということで消費量の兼ね合いもあり現代ワイヤーとは組み合わせていなかったものです。しかし本当のハイエンドを完成させるためにはこの組み合わせも考えなければいけないだろうと、今回初めて現代ワイヤーとの組み合わせが実現しています。
なお、組み合わせたカートリッジはaudio-technica AT-OC9ML/II、ヘッドシェルはAT-LH15/OCCとなります。
また、この4製品を含めた送られてきた全製品は2日間で連続して一気に聴いています。試聴曲や取り付けてから試聴開始するまでの時間やウォームアップの時間も可能な限り同一条件にして聴いています。
なお、あまり時間をかけずに試聴した理由は今週末5月30日、31日に秋葉原損保会館で開催されるアナログオーディオフェアの兼ね合いがあります。
KS-Remastaは5月31日の16:00からデモの機会が用意されていて、その際の方向性を決める参考にしたいというご意向がありましたので、今日までに一通りの結果をまとめておく必要があったためです。
これだけの伸び代があったことに驚く
今回は全ての製品で課題曲として計5曲を聴きました。いつも通りMOTU HD192で録音しておき、後で聴き直せるようにしています。
課題曲は以下の5曲です。
・It's A Feeling / TOTO (「TOTO IV」収録)
・First Time / David Paich (「Forgotten Toys」収録)
・Fields Of Gold / Eva Cassidy (「The Best Of Eva Cassidy」収録)
・Shostakovich: 3 Duets for 2 Violins and Piano, Op. 97D: I. Prelude / David Garrett feat.Itzhak Perlman (「ICONIC」収録)
・Sing, Sing, Sing / 井筒香奈江 (Black & Clear EP SetよりBlack盤)
まずはこれらをKS-Stage901EVO.I-VKで聴き、その後新製品の試作3製品で聴きます。
まずは「It's A Feeling / TOTO」から。KS-Stage901EVO.I-VKの時点で「AT-OC9ML/IIってこんなに音良かったっけ?」と思うほど素晴らしい音が出てきます。音場が広く密度感もありながら見通しも良く、ヴォーカルもピシリと定位して口が大きくなったりもしません。
しかしこれを全く同じハンダで研磨法だけが異なるKS-Stage921EVO.I-VKで聴くと大きな驚きがありました。低域の解像度がより上がっていながら、重さや力感も増しています。最も驚くべきはヴォーカルの定位で、KS-Stage901EVO.I-VKと比較してもよりきちんと鮮明に定位します。今まで聞き取れなかったようなハイハットの叩き方の細かなニュアンスが伝わってきます。写真で例えるとKS-Stage901EVO.I-VKはごく普通に精度の高いオートフォーカスで撮影したものとすれば、KS-Stage921EVO.I-VKはごく稀に撮れるマニュアルフォーカス出撮影しているのにオートフォーカスよりも鮮明な、ハッとするような鮮やかな画に例えられる印象です。音数自体もKS-Stage901EVO.I-VKよりも更に増えたように感じられます。
次にハンダがビンテージとなるKS-Stage921SR.I-VKで聴きますが、こちらはKS-Stage921EVO.I-VKと比べると若干ですが音量感が下がる印象がありました。恐らく150~200Hz辺りの量感が僅かに減っているのではないかと思います。またベースラインがやや細身に感じられます。その代わりというわけでもないのですが、ビンテージワイヤーの製品で感じられるような一音ごとのタッチが少し強調されるような、筆圧の濃さが出てきます。今まではビンテージワイヤーの特徴と思っていたのですが、ハンダでもビンテージはその傾向が出るようです。単体で聴けば十分素晴らしい音なのですが、KS-Stage921EVO.I-VKの後で聴いてしまったので、音数が僅かに減ったような印象を強く受けてしまいました。
そしてビンテージワイヤーとの組み合わせでは最上位となるハンダを採用したKS-Stage921SR-NVKです。基本的なバランスはKS-Stage921SR.I-VKに近いのですが、ドンシャリ傾向がやや薄れ、ヴォーカルや主要な楽器がグッと前に寄ってきます。全体的なエネルギー感は3機種の中で最も強いでしょう。ただ意外だったのですが、KS-Stage921EVO.I-VKよりは僅かにこれも音量感が下がっています。KS-Stage921SR.I-VK以上に筆圧の濃さがありますので、人によってはこれが最も好きという方も出てくると思いますが、私としてはニュートラルでありながら音数が最も多いKS-Stage921EVO.I-VKがこの曲のベストと判断します。
「First Time / David Paich」は前回下位製品を聴き比べた時のソースなのでここに加えましたが、聞き取れる傾向は「It's A Feeling」とほぼ同じでした。正直この2曲はどちらか一方で良かったですね…。
「Fields Of Gold / Eva Cassidy」では、エヴァ・キャシディの声に注目します。ヴォーカルの近さは
KS-Stage921SR-NVK > KS-Stage921SR.I-VK > KS-Stage921EVO.I-VK
となりますが、KS-Stage921SR.I-VKはちょっとハスキーな声になってしまうのがマイナス要素です。声質はKS-Stage921SR-NVKが太め、KS-Stage921EVO.I-VKが細めとなりますが、イメージ的にはKS-Stage921EVO.I-VK程度が適切な気がします。KS-Stage921SR-NVKで少し気になるのはヴォーカルが少し近すぎるかなと感じる部分があることです。ステージから乗り出すように歌っている印象を受けてしまうのですが、この曲調であればもう少し抑え気味が正しいと思えるのです。ただ、これも圧倒的に筆圧の濃い音ですので、これがベストと判断される方も多くいらっしゃるのではないかと思います。
次は「Shostakovich: 3 Duets for 2 Violins and Piano, Op. 97D: I. Prelude / David Garrett feat.Itzhak Perlman」です。巨匠イツァーク・パールマンと、その一番弟子デイヴィッド・ギャレットの共演で、恐らくこの曲では2人ともストラディヴァリウスを弾いていると思います。
オーディオ的に最も好バランスなのはやはりKS-Stage921EVO.I-VKだと思いますが、惜しいのは少しだけヴァイオリンの音が浅いかなと感じる部分です。まあ、これはKS-Stage921EVO.I-VKの問題ではなくAT-OC9ML/IIの表現力の方が原因なのでしょうけど。KS-Stage921SR.I-VKはちょっとヴァイオリンの音が直接音に寄っているかなと感じられます。この曲に関してはKS-Stage921SR-NVKの僅かにくすんだような音色が曲調に合った哀愁を感じさせてベストと思います
そしてカッティングエンジニアが「限界超え」と語った高音質EP、「Sing, Sing, Sing / 井筒香奈江」です。今回は統一して黒盤の方を使いました。
まずヴォーカルに付帯するエコーの緻密さはKS-Stage921EVO.I-VKが最も表現されていて、音場の上下方向の広さもこれが最も出ています、ヴィンテージ2種は少し上下が狭く感じられます。またKS-Stage921SR.I-VKはこれまでのソースと同様ヴォーカルが少しハスキー気味です。ヴォーカルの存在感はやはりKS-Stage921SR-NVKが最も濃いのですが、気になるのは間奏のドラムで、ヴィンテージ2種は力感は申し分ないものの、本当に低い部分が出切っていない印象を受けました。
KS-Stage921EVO.I-VKはとにかくワイドレンジで高解像度、音場も三次元的で広大と、オーディオ的要素が高い次元でまとまっていると感じられます。現代的な高音質ソースであれば個人的にはこれがベストと思います。ただ、アナログを好きで聴いている人はKS-Stage921SR-NVKの「濃い」音が好みに合う可能性が高く、案外「一番好きなものはどれ?」と多数決を取るとKS-Stage921SR-NVKがトップになるかなとも思います。
改めて断っておきたいのは、ここまでの論評は全て極めて小さな特徴の違いを拡大して書いています。3モデルどれを取っても単体で聴けばただただ素晴らしい音なのです。ただ、柄沢さんは「現代ワイヤー製品の決定版を出したい」と仰っていて、この中のどれかをフラッグシップモデルとして製品化したいというご意向でしたので、結構無理をして私なりの結論を出してみたということです。恐らく他のテスター数人(私以外はいずれも音楽やオーディオのプロの方です)との意見を総合して結論を出すことになるのでしょう。
前述の通り今回の新モデルは31日のアナログオーディオフェアで実際に聴くことが出来ます。先ほど打ち合わせた限りでは少なくともKS-Stage921EVO.I-VKとKS-Stage921SR-NVKは実際に再生される予定となっていますので、是非この音を実際に体感していただければと思います。
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購入金額
0円
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購入日
2026年05月28日
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購入場所
KS-Remasta










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