写真は南部鉄器で炊いたカニたっぷりの鉄釜飯。 ムラなく炊き上がるためお米がふっくら美味しい。
カニ肉の炊き込みご飯は、紅白のめでたい色になるので正月におすすめ!
Kindle で最近お気に入りのシリーズを購入。魚、肉、と来て、次は「お米」。
今回も面白かった。年末年始にくつろぎつつ、ゆったりと読書できるなんて贅沢だな。
今まで年末年始は世界中で休みになるので、どの拠点の役員・部長とも必ず都合を合わせられて出席できる貴重な日だったから事業計画の WEB 会議を必ずやってたからなぁ。
芦垣裕さん著の「米ビジネス」は、日本の主食である「米」を中心としたビジネスの可能性や課題、そしてその未来について深掘りした一冊です。この本では、米の生産、流通、販売の各段階で起こる課題を分析しながら、業界全体が直面する問題とそれを乗り越えるための具体的な提案、雑学にしては深堀された米関係の知識が網羅されて掲載されています。また、日本国内のみならず、海外市場での「米」を軸とした展開についても詳しく取り上げられています。
昨年は米がスーパーから無くなり高値で取引されるという事象が記憶に新しいですが、改めては農業インフラの整備の必要性、スマート農業というビジネスの可能性についても注目が上がっています。
米ビジネス・農業に参画してみようという経済至上主義の経営者も多そうです。
お米ビジネスや農業への参画は、参入障壁が低いように見えますが、実際は専門知識や技術、資本、規制対応が必要です。特に米は需要や価格が安定しにくく、綿密な計画と継続的な努力が求められます。簡単ではありませんが、ビジネスとして儲かりそう ── なわけあるかい。農家に失礼だろ。的なことが書いてあるわけではなく、純粋に米農家としてやっていけそうな知識がたんまりと書いてあります。
日本は1経営体当たりの農地面積が小さいという農地事情があるため、稲作の大型化・大量資本によるビジネスでの後追いというのが、少なくても国内ではやりにくと思います。趣味として、あるいは自分の好きな米という農作物を極めるため、この本はビジネスというより、市場やビジネスロジック面から「美味しいお米」を探索する、そんな内容だと思います。
著者の芦垣 裕(あしがき ひろし)さんは、横浜で3代続く老舗米店「有限会社初音屋」の代表取締役を務めるお米の専門家だそうです。現在は米を売らない米屋になっており、作り方というより美味しいお米の選別に目利きがありそうですね。資格として、米・食味鑑定士、水田環境鑑定士、調理炊飯鑑定士、おこめアドバイザーを保有しているようです。
また、全国の米・食味分析鑑定コンクール国際大会の審査員を15年連続で務めるなど、業界内で高い評価を受けているようです。
そんな米のプロとしての知識と経験を基に、この本では日本の米産業の現状や未来について詳しく解説しています。
しょっぱなからコシヒカリの名前の由来は「越前(福井県)・越後(新潟県)で光り輝くお米になってほしい」という意味があることを教えられ、いろいろ不思議に思っていた自分にとっては腑に落ちる知識ばかり。
他県で育てた米の趣旨を戻して植えると米の味が違う、というところも興味深い。なぜそうなるのか、という部分については研究待ちらしいのですが、自分でもいろいろ想像したり考えたりで知識欲が刺激されます。
TOPICS
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米産業の現状と課題
日本の米生産が抱える高齢化、耕作放棄地の増加、コスト高などの課題に焦点を当て、それらが国内の需要縮小とどのように結びついているかを分析しています。 -
新たなビジネスモデルの提案
伝統的な米の販売に加え、加工食品や健康志向の商品を通じた付加価値の提供、観光産業との連携による体験型ビジネスの可能性が提示されています。 -
海外市場の可能性
アジアを中心とした日本産の高品質な米の需要や、寿司文化の普及がもたらす輸出機会について解説。特に、ブランド戦略の重要性と現地の食文化との調和の必要性が強調されています。 -
イノベーションと技術革新
スマート農業やデジタルトランスフォーメーションを活用した効率化、サステナビリティの視点からの取り組みが紹介されています。 -
地域活性化と米ビジネス
地元の農家や自治体と連携し、地域の魅力を発信しつつ、米を活用した観光資源やイベントを活用する事例が挙げられています。
この本は、「米」という身近な食材を新たな視点で見直し、その可能性を引き出すための知識とヒントを提供する一冊です。特に、農業や食品業界に携わる方、地域活性化に興味のある方にとって有益な内容となっています。
個人的になるほどと思った内容
- 押さえておきたい米の新品種(12種類をリストアップ)
- 餅米と酒米の品種(12種類をリストアップ)
- カレーに向いている品種、花粉症対策に期待されている品種
- バケツ稲づくり(夏休みの課題でも良い……!)
- 無洗米を購入する家庭は統計で約45%
- お米は2週間ごとに買う(劣化対策)
- 米屋が扱う米には等級がある。袋には記載されないので購入者には分からない。
1等米の基準は整流割合70%以上、水分15%以下、異物15%以下 - 味の順位を決める「食味ランキング」https://www.kokken.or.jp/ranking_area.html
- 初心者向けは山形県産「つや姫」。万能品種で万人受けする。このお米を基準に好みにスライドしていく
- 最新の圧力IH式炊飯器で炊くとおいしい
- お米を6時間水で浸透させ早焚きモードで炊くと、さらに美味しいという研究報告
- 圧力IH式炊飯器は全国的に流通量の多い「新潟県産コシヒカリ」で炊くことを基準に調整されている
- 寿司米には、ササニシキ
- 丼系には、はえぬき、雪若丸
- おにぎりには、コシヒカリ、ミルキークイーン
- 弁当には、ミルキークイーン等の低アミロース米
- カレーに使う米はアリューロン層を剥がす
- 保温している炊飯器の中ではバチルス菌が繁殖しやすい
- 冷凍ご飯は1か月以内。熱伝導の高いアルミホイルで巻くとすぐ冷めるので冷凍しやすい
- お米の保存はペットボトルが最適。2リットルで約12合の計算。冷蔵庫の野菜室に入れればベスト
- ダイエットには冷や飯が最適。つまり、おにぎり。レジスタントスターチ(軟消化性でんぷん)が多く含まれ食物繊維と同じ働きをする
- コンビニのおにぎりのお米は地元のものなので、旅行先で同じブランドを食べると味が違う。お米の美味しい地域に行った時はチェック
- パックライス(包装米飯)を選ぶときはラベルで酸味料・Ph調整剤が入っていないか確認。入っている場合は蓋を開けてしばらく放置(独特の香りが抜ける)
また、巻末には「お米食感チャート」なるものが掲載されており、自分の好きなお米に辿り着くための道しるべになっています。
お米に詳しくなると、品質や品種の違いを理解し、より美味しいご飯が楽しめます。
また、適切な保存や調理法で無駄を減らせ、健康や食文化への理解が深まりました。
さらに、ビジネスや地域活性化にも役立てる知識として活用でき、次世代、これからの日本農業にちても考えさせられました。ちょっと田んぼが欲しくなってきた。
美味しいお米を知る本
米産業全体を「デザイン」する視点が際立つ本です。
生産から販売、ブランド戦略、地域活性化まで、各要素を有機的に結びつけ、持続可能な仕組みを構築する設計思想が感じられます。ビジネスモデルを再設計するヒントが詰まった一冊です。
コンテンツとして
本自体に物理的な効用が当然あるわけではないですが、内容には持続可能な米産業を支えるメンテナンス性の重要性を示しています。効率的な生産体制や地域連携、サステナビリティを考慮した仕組み作りが強調されており、安定した農業インフラを保つ視点が深く掘り下げられています。
お米の蘊蓄
米産業の全体像を網羅しつつ具体的な事例や提案が豊富で、価格以上の価値があった一冊です。
特に農業やビジネスに関心がある人にとってコスパは高いと感じます。
何より、美味しいものに対する探究心がある人なら、読んでおいた方が将来のために良いと思います。
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購入金額
1,485円
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購入日
2024年11月30日
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購入場所
Kindle
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