所持する音楽データに対する私利私欲...イヤ私情私見あふれるコメント、音楽の杜。こういった分野のものは「好み」ですし、優劣を付けるのもそぐわない気がしますので、満足度の☆はあくまで私的な思い入れです。人工音声を使った楽曲。VOCALOIDをはじめとする「歌う(歌わせる)ソフトウェア」を使って表現する楽曲は、「ボカロ曲」として一つのジャンルを形成していますが、最近ソフトウェアの改良や、新形式の類似ソフトウェアの登場で、著しく自然になり、昔は鼻(耳?)についた人工臭=「ボカロ臭さ」がなくなってきました。しかし、人の歌唱との差が小さくなったことで、ジャンルとしての存在価値が揺らいでいる気もしています。そんなことを感じた作品をご紹介します。
GYARI、ことココアシガレットP(ココシガP)。2008年より継続的に同人系で活動するアーティスト。ニコ動でVOCALOIDを使ったジャズ風味の楽曲を投稿していたが、その演奏をVOCALOID達が演奏している、という設定で世界を創り、20分を超えるネタ曲を連続して投稿した後、本来「歌わせるソフトウェア」ではなく、「読み上げさせるソフトウェア」であるVOICEROIDを用いた「歌」を投稿することに活動の主軸を移す。
その後、一時期自身がデザインしたVTuber達の配信音声を切り取ってMOD化した曲
を発表していたが、以前の人工音声ソフトを使う路線に戻ってきたのが2023年の夏コミケC102で頒布開始の“チャンネル登録よろしくお願いします本”で発表された「チャンネル登録よろしくお願いします」。
この曲では、ずんだもんと東北きりたんという二人のキャラクターが登場するのだが、以前使っていたVOCALOIDやVOICEROIDではなく、AHSの新入力文字読み上げソフトシリーズVOICEPEAKと、クラファンで制作された歌声ライブラリNEUTRINOという新しいソフトウェアの組み合わせになっていた。
続く2023年末の冬コミケC103で頒布されたのが、本作“ありきたりな恋の歌”。
取り上げられたキャラクターは、TOKYO6 ENTERTAINMENTの小樽潮風高校Projectに属する、花隈千冬(はなくまちふゆ)と小春六花(こはるりっか)。
この二人(と小樽潮風高校Projectの残りのメンバー、夏色花梨(なつきかりん)の三人)は、複数の音声合成ソフトが創られていて、千冬と六花には
・CeVIO AI 花隈千冬 トークボイス:入力文字読み上げソフト
・Synthesizer V AI 花隈千冬:歌声データベース
・CeVIO AI 小春六花 トークボイス:入力文字読み上げソフト
・VOICEPEAK 小春六花:入力文字読み上げソフト
・Synthesizer V 小春六花 AI:歌声データベース
・Synthesizer V 小春六花(Standard):歌声データベース
の6種類の音声合成ソフトがある。
歌声ソフトウェアが、Dreamtonicsの音声処理エンジンを使った、自然な歌声が特徴のSynthesizer Vの歌声データベース、入力文字読み上げソフトウェアが、CeVIO AIとVOICEPEAKの2種が発売されている(VOICEPEAKは小春六花版のみ)。
今回、千冬はSynthesizer V AI 花隈千冬、六花の合いの手はVOICEPEAKの音声素材ファイル「ぴた声」を使っているのが、MVのラストのクレジットで明かされている。多彩な合いの手を入れている「ぴた声」だが、合計で1800以上もあるので、よく選んだな...と(つか、収録お疲れ様でした..六花の担当声優は青山吉能)。
冊子の構成としてはいつもどおり、MVのシーンをちりばめてあり、最終ページにダウンロードアドレスとパスワードを表示できるQRコードが掲載されているという創り(ダウンロード方法は前回不具合があったため改善されている:GYARIさん本人談)。
ダウンロードサイトには、off vocal版も含めて、音声ファイルがmp3形式とwav形式で、イラストは冊子の内容のpdfと冊子の表紙や動画サイトに上げられたMVのサムネイル類、そしてそのMVが動画として収められている。
収められた曲としては「ありきたりな恋の歌」と「ありきたりな恋の歌【六花OFF版】」の2種。
題名だけ見ると、【六花OFF版】とついている方が「マイナスワントラック」で、メインじゃ無いようだが、「楽曲としての完成度」としてはこちらが上?【六花OFF版】でない、「六花ON版」はとにかく六花が五月蠅い。
構成としては、軽快なアイドル系J-POPを歌う千冬に、六花がヲタ芸を打つ...?という感じの曲...つか、六花うるせぇぇぇぇぇぇぇ!!曲のイントロからアウトロまで、ありったけの「ぴた声」を使ってコールを入れ続ける六花。MVを観ると、出だしはかぶり物をかぶって歌うなど千冬も大概なんだけれど、曲だけ聴くと六花邪魔!w
千冬がいい曲歌っているのに、「ハイ!ハイ!」「千冬ちゃ~ん」とかけ声をかけ、「デュフフフフ」と怪しく笑う六花。あまりのうるささに?GYARI師も「しょうがねぇな~~コレの六花OFF版もYoutubeに上げてやるか~~」と【六花OFF版】の一般公開を決めたとか、そうでないとか。
ただ、【六花OFF版】を聴くと、なまじSynthesizer Vの完成度が、かつてのVOCALOIDと比べて高すぎるだけに、まるで中の人(千冬の担当声優は奥野香耶)がキャラソン歌っているのと区別がつかない感じで、あえて「ボカロ曲」である意味?という感じも受ける。
VOCALOID類を使ったボカロ曲と言えば、かつては「人ではない声」というのが明らかだったので、それが醸し出す独特の雰囲気があって、超高速歌唱などボカロ臭を前面に出していなくともジャンルとしてのまとまりがあった。一方、(当然「調教」はしているのだろうが)Synthesizer Vは歌唱の自然さが素晴らしすぎて?、「ありきたりな恋の歌【六花OFF版】」は、普通にネタなしの良曲....つか、普通の良曲過ぎて、GYARI師の作品でなくても良いような..(ぉぃ
一方「ありきたりな恋の歌」は、六花が五月蠅いが(なにせ投稿動画のタイトルが「花隈の歌は可愛いし小春六花はマジでうるさい」)、ネタ満載でGYARI節爆発で面白い。ただ、六花の合いの手の一部が動画を観ないとわからないと言う部分があるので「音だけで楽しみきること」が出来ない点はちょっと減点かも(たとえば歌い出しに、六花が爆笑する声が入っているが、曲だけ聴いてもおかしいところはどこにもなく、なぜかはわからない⇒映像や冊子では千冬が真面目な顔してワニのかぶり物をつけて歌っているのがわかる)。
そういう意味では、人工音声による「いわゆるボカロ曲」の一般的な意味での完成度が高くなりすぎて、消そうとしても消せないボカロ臭さから企画で目を逸らさせる、という手法をとらなくても良くなり、かといって素のままでは人間のヴォーカリストにはまだ敵わなくて...と、ジャンルとしての存在価値が薄れてきているのかも知れません。
「ありきたりな恋の歌【六花OFF版】」の楽曲としての完成度と、六花の入った「ありきたりな恋の歌」のネタ全振りという感じの落差を聴いて、そんな印象を持った冬でした。
ダウンロード内容
__MACOSXフォルダ
illustサブフォルダ
._artwork_1600x1600.png
._front-cover-book_A5size.png
._youtube-thumbnail_1920x1080.png
audioフォルダ
mp3サブフォルダ
ありきたりな恋の歌 - off vocal.mp3
ありきたりな恋の歌.mp3
ありきたりな恋の歌【六花OFF版】 - off vocal.mp3
ありきたりな恋の歌【六花OFF版】.mp3
wavサブフォルダ
ありきたりな恋の歌 - off vocal - limiterOFF.wav
ありきたりな恋の歌 - off vocal.wav
ありきたりな恋の歌.wav
ありきたりな恋の歌【六花OFF版】 - off vocal - limiterOFF.wav
ありきたりな恋の歌【六花OFF版】 - off vocal.wav
ありきたりな恋の歌【六花OFF版】.wav
illustフォルダ
artwork_1600x1600.png(冊子の表紙正方形変型データ-1600×1600-)
front-cover-book_A5size.png(冊子の表紙データ-3307×2331)
youtube-thumbnail_1920x1080.png(YouTubeのサムネイル画像~-1920×1080-)
ありきたりな恋の歌.pdf(紙の冊子全ページのpdfデータ)
movieフォルダ
・ありきたりな恋の歌【六花OFF版】.mp4(YouTubeにも上げられている動画-六花OFF版-)
・花隈の歌は可愛いし小春六花はマジでうるさい.mp4(YouTubeにも上げられている動画)
「ありきたりな恋の歌」
「ボカロ曲」というジャンルは、今後なくなっていくかも知れないなぁ..
「ありきたりな恋の歌【六花OFF版】」はすごくいい曲。でも人工音声である必要性があるかというと...
一方「ありきたりな恋の歌」は、完全ネタ曲。かつて“超銀河キズユカ歌合戦”
に収録されていた、同じ「合成音声ソフトウェアの収録セリフ」を繋いだ楽曲である「アカリがやってきたぞっ」はネタ曲であったが、同時に人工音声ならではの「色」があって、明らかにボカロ曲でもあったが....
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購入金額
500円
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購入日
2023年12月30日
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購入場所
ComicMarket103 東6ホール “ス”14ab「GYARISUTA!」
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