レビューメディア「ジグソー」

何故、これほど音が変わるのか

シェルリード線の試聴機をお借りした際に、ある意味私への挑戦状的に同梱されてきた2種類のRCAインターコネクトケーブル。(送られてきた中では)下位のKS-RCA-001/EVO.Iは前回掲載していて、以前の同一モデルよりも明確な進化が聴き取れる完成度となっていました。

 

 

 

 

 

 

そして今回はインターコネクトケーブルとしてはハイエンド製品となる、KS-RCA-001/SR-NVKを聴きます。価格は何と220,000円。私の所有する中では最も高価なaudioquest Cheetah(1.5m)よりも約10万円も高いという凄まじい価格です。

 

見た目はこれまで取り上げたKS-Remasta製インターコネクトケーブルと全く変わりません。型番の識別ラベルがなければ見分けるのはお手上げです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当然見た目だけではなく、使われている線材はBELDEN 88760、プラグはTOMOCA製金メッキでKS-RCA-001/EVO.Iや、更に下位の製品と全く同じです。

 

下位モデルとの明確な違いは使われているハンダです。型番末尾のSR-NVKという部分がそれを表しているのですが、このハンダは私が以前KS-Remasta製のビンテージワイヤーの中で最も高く評価した、KS-VWS-Tempest.I/SR-NVKで使われているものと同じもののようです。

 

 

 

 

 

 

 

 

つまり、不純物が無いソリッドビンテージハンダに、別に音質面で有利な天然松ヤニを添加したというKS-Remasta特製ハンダを使っているということです。

 

更新: 2023/09/29
総評

インターコネクトケーブルではこれがダントツ

それではこれまでと同様に、ターンテーブルTechnics SL-1200Gと、フォノイコライザーPhasemation EA-200の間の接続に、今回テストするKS-RCA-001/SR-NVKを使う形で試聴してみましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

使う楽曲はKS-RCA-001/EVO.Iのレビューと同じもので、

 

 

・Babylon Sisters / Steely Dan

・Prelude No.2 in C Minor / Jacques Loussier

・Angel / Generation Radio

・サイレント・イヴ / 辛島美登里

 

 

となります。

 

まずは「Babylon Sisters / Steely Dan」から。

 

最初の一音から、KS-RCA-001/EVO.Iとの明らかな差があります。低域方向の余裕が出て芳醇さを感じます。更に感心するのが、ハイハットの音がKS-RCA-001/SR-NVKと比べると、KS-RCA-001/EVO.Iでは少し耳に付く部分があったことに気付かされます。緻密さや解像度はKS-RCA-001/SR-NVKの方が上回るくらいなのですが、そこにやかましさのようなものが全く感じされません。

 

さらにヴォーカルに入るとKS-RCA-001/EVO.Iや、私が愛用するaudioquest Cheetahと比べるとより肉薄するような感覚が得られますし、女声コーラスの存在感が明らかに増します。KS-RCA-001/EVO.I(110,000円)とKS-RCA-001/STD(55,000円)の間でもきちんと価格なりの差が付いていることに驚かされたのですが、このKS-RCA-001/SR-NVKは下位とそれ以上の明確な差が感じられます。

 

続いて「Prelude No.2 in C Minor / Jacques Loussier」ですが、ピアノの音色はCheetah比ではKS-Remastaの2製品はいずれもややソリッド系です。ただKS-RCA-001/EVO.Iではそこまで豊かでは無かった間接音がCheetahに負けないくらいに豊かに感じられるようになります。

 

ベースの量感は Cheetah > KS-RCA-001/SR-NVK > KS-RCA-001/EVO.I ですが、KS-RCA-001/SR-NVKはCheetahに近いレベルの量感を保ちながらもKS-RCA-001/EVO.Iと同じくらい明瞭に描いて見せます。胴鳴りや弦の震えも十分感じられ、描写力の高さを感じさせます。

 

ハードロック系の音である「Angel / Generation Radio」では「Babylon Sisters」の時に触れたハイハットの音の違いがより強調されます。KS-RCA-001/EVO.Iではドラムの描写は心地よいのですが、ハイハットにやや刺々しさがありました。しかしKS-RCA-001/EVO.Iではスネアドラムはやや地味になるものの、ハイハットはより緻密に鳴っていながら耳に付くような刺激が全く感じられません。

 

さらにこの曲は歌声の特徴が異なるリード・ヴォーカル(ジェイ・ディマーカス、ジェイソン・シェフ、ディーン・カストロノヴォ)が3人歌い繋いでいくのですが、その声質の違いをKS-RCA-001/EVO.IやCheetah以上にはっきりと表現してくれますし、声に生っぽさが感じられるようになります。

 

最後に「サイレント・イヴ / 辛島美登里」ですが、Cheetahでは少しヴォーカルが遠く感じられ、KS-RCA-001/EVO.Iでは声を張ったときに金属的な響きが乗るのですが、KS-RCA-001/SR-NVKでは生々しさが出てきてヴォーカルとの距離が近づきます。録音の意図がCheetah寄りなのかKS-RCA-001/SR-NVK寄りなのかは判断できませんが、辛島美登里のヴォーカルを最も堪能できるのはKS-RCA-001/SR-NVKの音ではないかと思います。

 

 

何度も書きますが、このケーブルはBELDEN 88760という決して高価でもない線材と、市販プラグの組み合わせで作られているのです。それが世界的な大手メーカーであるaudioquestの純銀ケーブルと一歩も引かない戦いをしているどころか、価格で上回るだけの貫禄を見せてくれたことには驚かざるを得ません。

 

正直このケーブルの価値は音を聴かなければ理解できないでしょう。KS-Remastaはシェルリード線の世界では確たる地位を築いていますが、インターコネクトケーブルは存在自体がさほど知られていません。多くの人に音を聴いてもらう機会を設けるべきでしょう。KS-RCA-001/SR-NVKは聴けばわかるだけの説得力が感じられました。

  • 購入金額

    220,000円

  • 購入日

    2023年09月29日

  • 購入場所

    KS-Remasta

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